本問答集は、法律、実施要領等の解釈を中心に作成したものであり、各自治 体から寄せられた具体的事例を引用しているものもあるが、多くはそれにまつ わる諸々の条件の中から主要と思われる条件のみを抽出し、一般化して問答を 設定している。 これらの問答は、あくまで保護の実施機関が判断し決定を下す に当たっての考え方を示したものにすぎず、個々の事例についての判断は、実 際に発生した具体的事実に即して行うべきものである。
このため、本問答集の活用にあたっては下記の事項に留意の上、保護の実施 に遺漏のないよう配意されたい。
記 1 常に生活保護法の理念に立ち返って考えること 保護の決定実施に当たっては、保護の実施要領や本問答集等の規定を参考 とすべきことは当然のことであるが、生活保護制度は人の生活全般に関わる 制度であり、そのすべてについて実施要領等で規定できるものではない。 し たがって、判断に迷った場合には、「本法の基本理念は何か」という原点に 立ち返って考える必要がある。
2 被保護者に対しては、常に公平・公正であり、決定実施には統一性が確保 されていること 生活保護法は、すべての国民に対し無差別平等に最低限度の生活を保障す るものであり、保護の決定実施に当たっては、公平・公正な取扱いに努める 必要がある。 そのために生活保護担当職員は、法律、保護の実施要領等を熟 知し、これを遵守するとともに、被保護者の実情を客観的立場で把握した上 で、保護を決定実施するという基本的な態度を忘れてはならない。
3 要保護者の立場や心情を理解し、その良き相談相手であること 要保護者が生活保護の申請に至るまでには、さまざまな生活課題に直面し、 心身共に疲弊していることが少なくない。 また、要保護者には相談にのって くれる人がいないなど、社会的なきずなが希薄で、不安感、疎外感を持って 生活している場合も多い。
したがって、ケースワーカーはそうした要保護者の立場や心情をよく理解 し、懇切、丁寧に対応し、積極的にその良き相談相手となるよう心がけなけ ればならない。
4 要保護者の個別的、具体的事情に着目し、決定実施は具体的妥当性を持つ ものとすること 要保護者に対する保護の決定実施に当たっては、要保護者それぞれのもつ 様々な事情を十分に把握するとともに、それらの点に着目した実施要領の引 用を行うなど、その個別性、具体性に即応した妥当な取扱いをしなければな らない。
前述した行政の統一性を確保することと、この具体的妥当性を求めること とは、何ら矛盾するものではなく、この調和を図ることは保護の実施機関の 大きな任務のひとつである。
5 被保護者に対しては常に説明と同意に努めること 保護の実施機関は、被保護者に対し、本制度の趣旨及び被保護者の権利、 義務の内容について十分説明し、正しい理解を得るように努めなくてはなら ない。
また、被保護者に対する保護の決定実施の内容や援助方針については、被 保護者自身が理解できるような言葉や表現を用いて丁寧に説明し、理解と同 意を得るよう努めなくてはならない。 生活保護制度は最低生活の保障ととも に自立を助長することをも目的とした制度であるが、自立はあくまでも被保 護者自身の力によって図られるものであることを忘れてはならない。
6 本法の正しい理解と協力を得るため、啓発に努めること 生活保護制度の適切な運用は、保護の実施機関、関係機関、地域住民の相 互の理解と地域社会の協力によって確保されるものである。 そのため、保護 の実施機関は関係機関、地域住民に対して、本制度の趣旨や、実施機関の役 割とその限界、被保護者の権利、義務の内容等について十分説明し、協力が 得られるよう啓発に努める必要がある。
このような日頃の取組があってこそ、保護の実施機関の行う決定実施の一 つ一つが真に具体的妥当性をもって生きてくるものであり、本法実施に対す る国民の信頼を高めることにもなるのである。
7 常に保護の実施機関としての組織的な判断に基づき、業務を遂行すること 保護の決定実施に当たり、問題や疑義が生じた場合は、ケースワーカーの 独断で処理することがあってはならない。 ケース診断会議や査察指導員等と の協議により、十分納得のいくまで検討し、その中から一つの結論が導かれ なくてはならない。 そして、一度保護の実施機関の判断として決定したもの については、ケースワーカーはそれに従い業務を遂行しなくてはならない。
ケースワーカーは、あくまで保護の実施機関の一員であることを自覚して 業務の遂行に当たらなくてはならないものである。
(問1-1)〔世帯を異にしている夫婦〕
(問1-2)〔擬装離婚〕
(問1-3)〔生計の同一性〕
(問1-4)〔入院期間が長期にわたる場合〕
(問1-5)〔夫婦の一方の入院〕
(問1-6)〔夫婦の一方が入院している場合〕
(問1-7)〔長期間別居している夫婦-その1〕
(問1-8)〔長期間別居している夫婦-その2〕
(問1-9)〔長期間別居している夫婦-その3〕
(問1-10)〔別居している親と未成熟の子-その1〕
(問1-11)〔別居している親と未成熟の子-その2〕
(問1-12)〔別居している親と未成熟の子-その3〕
(問1-13)〔伯父に引き取られた保護者のない児童〕
(問1-14)〔出かせぎしている場合の世帯及び最低生活費の認定〕
(問1-15)〔他の土地に寄宿している場合〕
(問1-16)〔里親とその養育する児童〕
(問1-17)〔職親に措置委託されている知的障害者〕 2 世帯分離
(問1-18)〔世帯分離と要否判定〕
(問1-19)〔真にやむを得ない事情〕
(問1-20)〔労働争議中の従業員からの大量の保護申請〕
(問1-21)〔保護を要する者の転入〕
(問1-22)〔親と未成熟の子との生活保持義務関係〕
(問1-23)〔保護を要しない者の転入〕
(問1-24)〔いわゆる寝たきリ老人等の世帯分離-その1〕
(問1-25)〔いわゆる寝たきり老人等の世帯分離-その2〕
(問1-26)〔常時の介護又は監視を要する者の判定〕
(問1-27)〔常時の介護を要する者が入院中である場合〕
(問1-28)〔要保護世帯となるか否かの判定〕
(問1-29)〔自立を阻害するかどうかの認定〕
(問1-30)〔自立阻害の認定の判断基準〕
(問1-31)〔長期入院見込みの期間が短縮された場合〕
(問1-32)〔入院を要する場合の判断方法〕
(問1-33)〔入院している期間の考え方〕
(問1-34)〔救護施設等に入所しようとする者〕
(問1-35)〔施設入所者の世帯分離〕
(問1-36)〔世帯分離と地域の生活実態〕
(問1-37)〔入院患者の世帯分離(内部障害者更生施設に入所するまでの取扱い)〕
(問1-38)〔実施要領に定める場合以外の世帯分離〕
(問1-39)〔住み込み勤務する子と自宅から通勤する子の取扱いの均衡について〕
(問1-40)〔世帯分離の場合の基準生活費の認定〕
(問1-41)〔世帯分離した後の日用品の支給〕
(問1-42)〔世帯分離の解除-その1〕
(問1-43)〔世帯分離の解除-その2〕
(問1-44)〔世帯分離と出身世帯の資産活用-その1〕
(問1-45)〔世帯分離と出身世帯の資産活用-その2〕
(問1-46)〔税法上の扶養親族の世帯分離〕
(問1-47)〔世帯分離により被保護者でなくなった者の収入の認定〕
(問1-48)〔施設入所者と生活保持義務関係にある者との世帯分離〕 3 高校・大学等における就学
(問1-49)〔外国人学校の高等部〕
(問1-50)〔世帯内の専修学校又は各種学校就学〕
(問1-51)〔高等学校卒業直後の者が専修学校等に就学する場合〕
(問1-52)〔大学進学を希望する者〕
(問1-53)〔短期大学進学と生活保護〕
(問1-54)〔夜間大学等の就学〕
(問1-55)〔各種学校等での修学〕
(問1-56)〔世帯分離により就学している者の医療費の取扱い〕
(問1-57)〔大学就学者の医療費の取扱い〕
(問2-1)〔実施責任についての規定の意義〕
(問2-2)〔居住地保護と現在地保護の違い〕
(問2-3)〔入院を直接の契機として居住地が消滅した場合〕
(問2-4)〔入院を直接の契機としないで居住地が消滅した場合〕
(問2-5)〔単身入院患者に住宅費が認定されなくなった場合〕
(問2-6)〔入院中に保護開始になった単身者〕
(問2-7)〔住所不定者が急病により管外に入院した場合〕
(問2-8)〔保護施設から入院した場合〕
(問2-9)〔保護施設から入院した者の実施責任と事務費の関係〕
(問2-10)〔委託替えをした場合〕
(問2-11)〔自費で施設に入所している者が保護申請をした場合〕
(問2-12)〔更生施設に入所している者で保護を再申請した場合〕
(問2-13)〔障害者自立支援法に規定する障害者支援施設の居住地特例による実施責任〕
(問2-14)〔施設長に対して行う葬祭扶助〕
(問2-15)〔養護老人ホーム入所者からの保護申請〕
(問2-16)〔テントや段ボールハウス等で生活する者〕
(問2-17)〔飯場を転々とする者〕
(問2-18)〔現在地の認定〕
(問2-19)〔簡易宿泊所に滞在する者〕
(問2-20)〔更生保護施設の宿泊所にいる者〕
(問2-21)〔住み込み就労している者〕
(問2-22)〔災害による避難〕
(問2-23)〔出かせぎとは認められない場合〕
(問2-24)〔世帯と実施責任の不一致〕
(問2-25)〔世帯と実施責任が一致しない場合の取扱い〕
(問2-26)〔帰来の期待性〕
(問2-27)〔他管内に確実な帰来先がある場合〕
(問2-28)〔帰来の意思はあるが、住民登録を他市にしている場合〕
(問2-29)〔家族全員の入院〕
(問2-30)〔出身世帯員の付添い〕
(問2-31)〔外国から帰国した者〕
(問2-32)〔出身世帯の移転-その1〕
(問2-33)〔出身世帯の移転-その2〕
(問2-34)〔出身世帯の移転-その3〕
(問2-35)〔出身世帯の移転-その4〕
(問2-36)〔出身世帯の分散-その1〕
(問2-37)〔出身世帯の分散-その2〕
(問2-38)〔子を預けて入院している場合〕
(問2-39)〔出身世帯員が引き取られた場合〕
(問2-40)〔全世帯員が別の病院に入院している場合〕
(問2-41)〔世帯分離後の世帯の分解〕
(問2-42)〔仮釈放された場合の帰住地〕
(問2-43)〔実施責任をめぐる見解の対立〕
(問2-44)〔実施責任の取扱いが誤っていた場合の取扱い〕
(問2-45)〔実施責任と繰替支弁〕
(問2-46)〔実施責任と費用負担〕
(問2-47)〔帰郷旅費を必要とする場合〕
(問3-1)〔不動産取得による生活困窮〕
(問3-2)〔処分価値が著しく大きな田畑の処分〕
(問3-3)〔処分することができない資産〕
(問3-4)〔処分困難な農地の取扱い〕
(問3-5)〔利用能力のない者の所有する農地の処分〕
(問3-6)〔田畑の保有限度〕
(問3-7)〔家屋の遺贈を受けた場合の取扱い〕
(問3-8)〔公営住宅の有価譲渡〕
(問3-9)〔ローン付き住宅の取扱い〕
(問3-10)〔事業用資産保有の判断基準〕
(問3-11)〔船舶、自動車の項目分類〕
(問3-12)〔他法からの貸付金による事業用資産の購入〕
(問3-13)〔処分価値の小さいものの判晰〕
(問3-14)〔自動車の保有〕
(問3-15)〔自動車による以外の方法で通勤することがきわめて困難な身体障害の程度〕
(問3-16)〔公共交通機関の利用が著しく困難な地域〕
(問3-17)〔保育所等の送迎のための通勤用自動車の保有〕
(問3-18)〔公共交通機関の利用が著しく困難な障害の程度〕
(問3-19)〔障害者の通院等の用途の自動車の維持費〕
(問3-20)〔他人名義の自動車利用〕
(問3-21)〔特定中国残留邦人等世帯と同居している場合の自動車の使用〕
(問3-22)〔テレビの維持費の取扱い〕
(問3-23)〔オートバイ及び原動機付自転車の保有〕
(問3-24)〔保護開始申請時の保険解約の取扱い〕
(問3-25)〔保護受給中に受領した生命保険の解約返戻金、保険金等の取扱い〕 2 学資保険
(問3-26)〔学資保険の解約返戻金が高額な場合〕
(問3-27)〔申請時の学資目的の預貯金〕
(問3-28)〔学資保険と生命保険との両方に加入していた場合〕
(問3-29)〔学資保険の保険料額及び満期保険金額〕
(問3-30)〔学資保険の満期保険金の受取時期と保有の可否〕
(問3-31)〔別世帯の子の学資保険〕
(問3-32)〔別世帯の者が契約した学資保険〕
(問3-33)〔保護受給中に学資保険の保有が判明した場合〕
(問4-1)〔稼働能力判定会議の構成と会議での検討事項〕
(問4-2)〔定時制高校や通信制高校に就学している者の稼働能力の活用〕
(問5-1)〔扶養義務履行が期待できない者の判断基準〕
(問5-2)〔生活保持義務関係者の居所の確認〕
(問5-3)〔死別した妻の実家と弟の妻の実家〕
(問5-4)〔相対的扶養義務者に対する調査の意義〕
(問5-5)〔事業所得者の扶養能力の判断基準〕
(問5-6)〔扶養の程度の判断基準〕
(問5-7)〔扶養義務関係と世帯〕
(問5-8)〔扶養義務調査の頻度〕
(問5-9)〔扶養義務における感情問題〕
(問5-10)〔扶養能力の程度と扶養義務不履行の申立て〕
(問5-11)〔現に行われている扶養の生活保護法上の取扱い〕
(問5-12)〔重点的扶養能力調査対象者以外の扶養義務者への扶養能力調査〕
(問6-1)〔健康保険組合における附加給付の取扱い〕
(問6-2)〔国民健康保険の被保険者資格との関係〕
(問6-3)〔健康保険の被保険者資格との関係〕
(問6-4)〔健康保険の被扶養者の範囲〕
(問6-5)〔社会保険適用の確認〕
(問6-6)〔遭難者の救助費用〕
(問7-1)〔出かせぎ者の級地基準〕
(問7-2)〔出身世帯を離れて居住する者の級地基準及び基準生活費等の認定方法〕
(問7-3)〔若者自立塾入塾者の基準生活費〕
(問7-4)〔児童福祉施設入所者の基準生活費〕
(問7-5)〔養護老人ホーム入所者の加算の取扱い〕
(問7-6)〔養護老人ホーム入所者の入院中の生活費〕
(問7-7)〔義務教育中の者が寄宿舎等に入所している場合〕
(問7-8)〔在院中の新生児の生活費〕
(問7-9)〔医療扶助単給世帯に一時扶助を支給する場合〕
(問7-10)〔付添いに当たる世帯員の適用級地〕
(問7-11)〔特別支援学校への進学者の基準生活費〕
(問7-12)〔短期入所事業の取扱い〕
(問7-13)〔最低生活費の日割計算〕
(問7-14)〔知的障害者通勤寮等に入寮している者の食費として施設に支払うべき額〕
(問7-15)〔警察官署に留置された場合〕
(問7-16)〔12月中途に入院入所した者等への期末一時扶助〕 (2)加算
(問7-17)〔加算についての届出〕
(問7-18)〔月の中途で死亡した場合〕
(問7-19)〔妊婦についての認定〕
(問7-20)〔妊産婦加算の認定における妊娠期間の換算〕
(問7-21)〔介護人が認められる場合〕
(問7-22)〔障害者加算額の範囲で介護人が得られない場合〕
(問7-23)〔家族介護料の認定〕
(問7-24)〔家族介護料又は他人介護料の適用〕
(問7-25)〔扶養義務者が介護する場合〕
(問7-26)〔在宅患者加算の適用〕
(問7-27)〔在宅患者加算の認定更新期間〕
(問7-28)〔在宅患者加算の認定月〕 (3)入院患者の基準生活費
(問7-29)〔入院患者の基準生活費の算定〕
(問7-30)〔入院患者日用品費の支給方法〕
(問7-31)〔入院患者日用品費の病院長に対する一括支払〕
(問7-32)〔精神科病院入院中の単身者の入院患者日用品費の交付〕
(問7-33)〔入院患者が外泊した場合の飲食物費の支給〕
(問7-34)〔入院・入所中の者が体験入所した場合の取扱い〕
(問7-35)〔児童養護施設入所中の児童が入院した場合の入院患者日用品費〕 (4)一時扶助 ア 被服費
(問7-36)〔被服の自然消耗と一時扶助〕
(問7-37)〔小規模罹災の場合の被服費〕
(問7-38)〔被服(平常着)の支給〕
(問7-39)〔収入のない非稼働世帯の保育所入所支度費の支給〕
(問7-40)〔被服費の現物給付と金銭給付〕
(問7-41)〔出産準備の被服費〕
(問7-42)〔紙おむつ等の範囲〕 イ 家具什器費
(問7-43)〔家具什器費における実施機関限りの特別基準設定について〕
(問7-44)〔長期入院患者が退院した場合等の暖房器具〕
(問7-45)〔家具什器費の支給対象品目〕 ウ 移送費
(問7-46)〔外国へ帰還する場合の取扱い〕
(問7-47)〔施設見学や体験入所の際の移送費〕
(問7-48)〔老人ホームの移送費〕
(問7-49)〔公共職業能力開発施設等の「等」の範囲〕
(問7-50)〔公共職業能力開発施設等の通所交通費〕
(問7-51)〔転居時のルームエアコンの移設費用〕
(問7-52)〔就職地へ赴くための費用〕
(問7-53)〔葬儀等の移送費の対象〕
(問7-54)〔遺体遺骨を引取りに行く場合の代理人の範囲〕
(問7-55)〔刑務所長等の要請〕
(問7-56)〔断酒会に参加する際の移送費〕
(問7-57)〔入院患者が断酒会に参加する場合の移送費〕
(問7-58)〔精神障害者等の社会復帰対策事業への参加〕
(問7-59)〔福祉事務所職員の付添い〕 エ 入学準備金
(問7-60)〔入学準備金の一括支給〕
(問7-61)〔外国から帰国した児童等に係る入学準備金の取扱い〕 オ ひとり親世帯就労促進費
(問7-62)〔ひとり親世帯就労促進費の認定方法〕
(問7-63)〔ひとり親世帯就労促進費の日割り計上〕
(問7-64)〔ひとり親世帯就労促進費の支給要件〕
(問7-65)〔ひとり親世帯就労促進費の遡及支給〕
(問7-66)〔ひとり親世帯就労促進費の職権認定〕
(問7-67)〔ひとり親世帯就労促進費と技能修得手当〕 カ その他
(問7-68)〔2世帯以上で共同水道を設置する場合〕
(問7-69)〔配電設備外線工事費〕
(問7-70)〔水源地変更に伴う利用者負担金〕
(問7-71)〔水道設備費の範囲〕
(問7-72)〔液化石油ガス設備費の範囲〕
(問7-73)〔家財処分料と家財保管料の併給〕
(問7-74)〔妊婦定期検診料の支給回数〕
(問7-75)〔不動産鑑定費用等の「その他必要となる費用」〕 2 教育費
(問7-76)〔学級費等の認定〕
(問7-77)〔学校給食費の認定方法〕
(問7-78)〔欠席がある場合の学校給食費〕
(問7-79)〔正規の教材として格技等の用具〕
(問7-80)〔課外クラブ活動に要する経費について〕
(問7-81)〔通学交通費の支給要件〕
(問7-82)〔通学に伴う付添交通費〕
(問7-83)〔特別支援学校の寄宿舎利用者の帰省旅費〕
(問7-84)〔夏季施設参加費の範囲〕
(問7-85)〔学用品費の再支給と扶助費の再支給〕
(問7-86)〔学用品費再支給の災害時等〕
(問7-87)〔学校で徴収する暖房費〕
(問7-88)〔通学用オーバーの取扱い〕
(問7-89)〔長期欠席児童に対する教育扶助の支給〕
(問7-90)〔外国人の民族学校に就学する者〕
(問7-91)〔国立学校等への就学の可否及び教育扶助の範囲〕 3 住宅費 (1)家賃・間代・地代等
(問7-92)〔単身入院患者の住宅費〕
(問7-93)〔単身の入院患者、施設入所者等に係る住宅費の取扱いの特例〕
(問7-94)〔世帯員全員が入院した場合の住宅費〕
(問7-95)〔単身者の退院等に伴う住宅費の認定〕
(問7-96)〔7人以上世帯の住宅費の認定〕
(問7-97)〔単身者が転居指導に応じない場合の取扱い〕
(問7-98)〔明渡請求に応じない場合の住宅扶助〕
(問7-99)〔借家の一部を転貸している場合〕
(問7-100)〔間貸収入が実際家賃を超える場合〕
(問7-101)〔借家の破損がひどい場合の転居〕
(問7-102)〔敷金の限度額〕
(問7-103)〔他県へ転出する場合の敷金及び家賃の限度額の認定〕
(問7-104)〔社会福祉施設等の範囲〕
(問7-105)〔新規就労地への転居と敷金〕
(問7-106)〔敷金の返還金の取扱い〕
(問7-107)〔居宅生活ができると認められる場合の判断の視点〕
(問7-108)〔契約更新時と異なる時期に火災保険料や保証料が必要となった場合〕
(問7-109)〔地代の一括支給後における保護廃止の場合の取扱い〕 (2)住宅維持費
(問7-110)〔家屋内に入った土砂の除去〕
(問7-111)〔風呂釜の取替え〕
(問7-112)〔井戸さらいの費用〕
(問7-113)〔風呂設備費の範囲〕
(問7-114)〔入浴設備の敷設が必要な者〕
(問7-115)〔近隣に公衆浴場がない場合の取扱い〕
(問7-116)〔住宅用火災警報器の設置に係る費用の取扱い〕
(問7-117)〔賃貸家屋からの転出にあたり原状回復費用の請求を受けた場合〕
(問7-118)〔住宅維持費の年額の承認方法)
(問7-119)〔災害による家屋の補修-その1〕
(問7-120)〔災害による家屋の補修-その2〕
(問7-121)〔雪下ろし等の費用と一般の住宅維持費との関係〕
(問7-122)〔白ありの駆除のために要する費用の取扱い〕
(問7-123)〔医療扶助単給世帯に住宅維持費を支給する場合の収入充当順位)〕 (3)代理納付
(問7-124)〔代理納付の対象-その1〕
(問7-125)〔代理納付の対象-その2〕
(問7-126)〔代理納付の対象者〕 4 出産費
(問7-127)〔施設内分べんに係る出産扶助と医療扶助との関係〕
(問7-128)〔妊娠4か月以上の妊婦が人工妊娠中絶した場合〕
(問7-129)〔助産師と産婦人科医との両者で分べんの介助を受けた場合〕 5 生業費 (1)生業費
(問7-130)〔生業費を支給できる業種〕
(問7-131)〔かんがい用水の引水工事と生業費〕 (2)技能修得費(高等学校等就学費を除く)
(問7-132)〔内部障害者更生施設入所者の自動車学校への入学〕
(問7-133)〔通信教育における美容師の資格取得〕
(問7-134)〔公共職業能力開発施設在校者の作業衣〕
(問7-135)〔雇用対策法等に基づき支給される技能修得手当〕
(問7-136)〔職業訓練手当受給者の取扱い〕
(問7-137)〔特別支援学校高等部別科の技能修得費〕
(問7-138)〔技能修得費の再支給〕
(問7-139)〔自動車運転免許の更新等に要する費用〕 (3)高等学校等就学費
(問7-140)〔高等学校等就学費の対象範囲〕
(問7-141)〔高等専門学校の給付期間〕
(問7-142)〔高等学校等就学費基本額〕
(問7-143)〔高等学校等に通学するための交通費〕
(問7-144)〔高等学校等就学費の教材代〕
(問7-145)〔高等学校等就学費の授業料、入学料、入学考査料(受験料)〕
(問7-146)〔高等学校等就学費の入学準備金の対象品目〕
(問7-147)〔修学旅行費について〕
(問7-148)〔高等学校等就学費に係る保護開始前の需要の補填〕
(問7-149)〔高等学校等就学費の給付手続等〕
(問7-150)〔高等学校等就学費の要否判定上の取扱い〕
(問7-151)〔高等学校等へ就学している者が被保護者となったときの取扱い〕
(問7-152)〔留年、中退、休学、転校時における高等学校等就学費の取扱い〕
(問7-153)〔高等学校等の進学先の選択について〕
(問7-154)〔高等学校等就学費を給付する年齢の範囲〕
(問7-155)〔高等学校等就学中の者が資格検定費用を要する場合〕 6 葬祭費
(問7-156)〔救護施設入所者の葬祭〕
(問7-157)〔三親等以内の血族等の葬祭を行う場合の葬祭扶助〕
(問7-158)〔土葬の場合の特別基準〕
(問7-159)〔小人の葬祭費〕
(問7-160)〔自殺者等の葬祭〕
(問7-161)〔慣行料金のない場合の死体検案〕
(問7-162)〔老人福祉施設入所者が入院後死亡した場合〕
(問7-163)〔死体を保存するために特別の費用を必要とする事情〕
(問7-164)〔医療保険制度の埋葬料等の支給が遅れる場合の取扱い〕
(問8-1)〔収入の実態がつかめない場合の取扱い〕
(問8-2)〔時間外手当の認定〕
(問8-3)〔入院患者が作業療法により工賃収入を得ている場合〕
(問8-4)〔通勤用自転車等の維持修理費〕
(問8-5)〔社内規程による退職金積立金の取扱い〕
(問8-6)〔JRの特別割引制度を利用しない場合〕
(問8-7)〔賞与の分割認定とひとり親世帯就労促進費〕
(問8-8)〔賞与等の分割認定期間〕 (2)農業収入
(問8-9)〔納屋と住居とを同時に補修する場合〕
(問8-10)〔農業収入で収穫皆無の場合の諸控除の取扱い〕
(問8-11)〔野菜の収入認定に伴う必要経費の算定〕
(問8-12)〔野菜の自給割合〕
(問8-13)〔一毛作地帯の収入の認定〕
(問8-14)〔農業収入が少額な場合と分割認定〕 (3)自営収入
(問8-15)〔土地改良法に基づく土地改良区の分担金の取扱い〕
(問8-16)〔原価償却に要する経費〕
(問8-17)〔事業拡張に伴う仕入代の認定〕
(問8-18)〔収入を得るための必要経費の判断〕
(問8-19)〔魚介を自給している場合の必要経費〕
(問8-20)〔自動車の維持費〕 (4)不安定な就労収入
(問8-21)〔不安定な就労による収入と臨時又は不特定就労収入との相違〕 2 就労に伴う収入以外の収入
(問8-22)〔定期的に支給される公の給付〕
(問8-23)〔求職者給付及び就職促進給付〕
(問8-24)〔借金の担保となっている恩給受給権〕
(問8-25)〔自立支援教育訓練給付金の取扱い〕
(問8-26)〔親族里親の里親委託費の収入認定〕
(問8-27)〔年金受給のための診断書の費用〕
(問8-28)〔高齢者世帯に対する電話設置費の贈与〕
(問8-29)〔主食、野菜、魚介以外の現物援助〕
(問8-30)〔臨時的に支給される公の給付〕
(問8-31)〔不動産の処分等による臨時的収入の取扱い〕
(問8-32)〔債務整理にかかる必要経費の認定について〕
(問8-33)〔少額な臨時収入の分割認定〕
(問8-34)〔健康保険組合の還付金〕
(問8-35)〔年金の過払いがあった場合の収入認定〕 3 収入として認定しないものの取扱い
(問8-36)〔慈善的恵与物の取扱い〕
(問8-37)〔収入として認定しない社会通念上の程度〕
(問8-38)〔祝金等の取扱い〕
(問8-39)〔貸付金の事前承認の取扱い〕
(問8-40)〔一般法人又は私人からの貸付金〕
(問8-41)〔就学資金の範囲〕
(問8-42)〔医療に伴って通常必要とする間接経費の例〕
(問8-43)〔扶養義務者からの指定つき援助〕
(問8-44)〔恵与金による保育所への入所〕
(問8-45)〔恵与金による幼稚園への就園〕
(問8-46)〔扶養義務者からの恵与金〕
(問8-47)〔災害見舞に贈与された主食〕
(問8-48)〔恵与金、補償金等の取扱いと被保護者の自立更生計画との関係〕
(問8-49)〔恵与金等の預託の期間〕
(問8-50)〔恵与金等の民生委員への預託〕
(問8-51)〔弔慰にあてる場合の使途〕
(問8-52)〔農業災害補償法による共済金〕
(問8-53)〔土地収用法に基づく補償金〕
(問8-54)〔公営住宅の改善移転補償金〕
(問8-55)〔保護開始前の災害等に対する補償金等〕
(問8-56)〔保護開始前に受けた補償金等〕
(問8-57)〔保護開始前の災害に起因する後遺症等が開始後に生じた場合〕
(問8-58)〔自立支度金の取扱い〕
(問8-59)〔保護の実施機関の指導、指示による動産、不動産の売却〕
(問8-60)〔年1回の福祉的給付金〕
(問8-61)〔在宅の高齢者を現に介護している家族に対して支給される金品の取扱い〕
(問8-62)〔国民年金保険料のための貸付金の取扱い〕 4 勤労に伴う必要経費 (1)基礎控除
(問8-63)〔不就労期間中の農業収入と基礎控除〕
(問8-64)〔主業による収入のない期間の基礎控除〕
(問8-65)〔現金収入の伴わない就労の場合〕
(問8-66)〔一日一食程度以下の給食付稼働の場合の基礎控除〕
(問8-67)〔賞与支給月における基礎控除の算定方法及び賞与の分割認定月数〕
(問8-68)〔基礎控除に対応する収入額〕
(問8-69)〔高校就学者の稼働収入と基礎控除〕
(問8-70)〔出かせぎ者等のいる世帯の基礎控除の認定〕 (2)特別控除
(問8-71)〔自営業者の特別控除〕
(問8-72)〔内職をしている者の特別控除〕
(問8-73)〔被用者の場合の特別控除〕
(問8-74)〔特別控除の認定限度額〕
(問8-75)〔特別控除対象となる収入年額と保護停止期間中の収入〕
(問8-76)〔臨時収入のない者の特別控除〕
(問8-77)〔特別控除の夏冬の配分〕 (3)新規就労控除
(問8-78)〔日雇就労者が常用勤労者になった場合〕
(問8-79)〔入院前の職場への復職〕
(問8-80)〔在宅患者等の就職〕
(問8-81)〔就労中断後の再適用〕 (4)未成年者控除
(問8-82)〔未成年者控除適用者が成年に達した場合〕
(問8-83)〔未成年者だけの世帯〕
(問8-84)〔未成年者が2人以上の場合〕 (5)その他の必要経費
(問8-85)〔出かせぎ者がいる世帯の保護の決定と必要経費の認定〕
(問8-86)〔帰省に要する交通費の認定〕
(問8-87)〔幼児を知人に委託して看護師宿舎に宿泊する者〕
(問8-88)〔隣人への託児〕
(問8-89)〔季節保育所への委託〕
(問8-90)〔幼稚園への託児〕
(問8-91)〔保育所入所支度費対象品目の範囲〕
(問8-92)〔スモック等が消耗した場合〕
(問8-93)〔土地改良区の分担金〕
(問8-94)〔保護開始前に借り受けた貸付金の償還金控除〕
(問8-95)〔保護開始前の借金〕
(問8-96)〔事業を失敗した場合の生業資金の償還金〕
(問8-97)〔交通事故による罰金の取扱い〕
(問8-98)〔独立行政法人住宅金融支援機構への償還金〕
(問8-99)〔固定資産税の取扱い〕
(問8-100)〔開始前に取得した作業場の税金〕
(問8-101)〔原動機付自転車等の容認総排気量と必要経費の範囲〕
(問8-102)〔交通災害共済制度の保険料〕
(問9-1)〔口頭による保護の申請〕
(問9-2)〔代理人による保護の申請〕
(問10-1)〔交通事故と生活保護〕
(問10-2)〔傷害事件による被害者と生活保護〕
(問10-3)〔廃止した者からの再申請〕
(問10-4)〔保護の決定以前に申請者等が死亡した場合〕
(問10-5)〔仕送りを受けている者の期末一時扶助費〕
(問10-6)〔申請時の要否判定〕
(問10-7)〔定期的就労収入と程度の決定〕
(問10-8)〔医療扶助単給世帯で月の途中において治癒した場合〕
(問10-9)〔居宅から保護施設へ月の中途で入所した場合〕
(問10-10)〔養護老人ホーム入所者の要否判定〕
(問10-11)〔授産施設利用者の期末一時扶助費〕
(問10-12)〔授産施設利用者と国民健康保険〕
(問10-13)〔保護決定の法定期間〕
(問10-14)〔決定通知書の決定理由〕
(問10-15)〔ケース移管時の保護費累積金の取扱い〕 2 扶助費の再支給
(問10-16)〔保護金品の再支給〕
(問10-17)〔支給日に保護金品を紛失した場合の再支給額〕
(問10-18)〔収入として認定された金品の再支給) 3 保護の停廃止
(問10-19)〔停止の決定とその期間〕
(問10-20)〔保護の廃止日〕
(問10-21)〔協議離婚により贈与した資産と保護の停廃止〕 4 海外渡航
(問10-22)〔世帯員の一部が海外渡航した場合の取扱い〕
(問10-23)〔他からの援助金で海外渡航する場合の取扱い〕
(問10-24)〔被保護者が海外に渡航した場合の渡航期間〕
(問11-1)〔保護申請者に対する指導指示〕
(問11-2)〔労働運動と能力の活用〕
(問11-3)〔職業選択の自由〕
(問11-4)〔医療扶助と法 第63条の適用〕
(問11-5)〔生別母子世帯から保護申請があった場合の前夫(夫)の扶養について〕 2 保護受給中における指導指示
(問11-6)〔裁判を受ける権利と指導指示〕
(問11-7)〔信仰の自由と指導指示〕
(問11-8)〔職業選択の自由と指導指示-その1〕
(問11-9)〔職業選択の自由と指導指示-その2〕
(問11-10)〔被保護者が選挙に立候補した場合の指導指示〕
(問11-11)〔居住の自由と指導指示〕
(問11-12)〔被保護者の届出の義務と指導指示〕
(問11-13)〔暴力常習者等への対応〕
(問11-14)〔パソコンの購入と生活指導〕
(問11-15)〔資産活用の指導指示〕
(問11-16)〔恩給受給権に関する指導指示〕
(問11-17)〔年金等の裁定請求の指導〕
(問11-18)〔医療扶助単給世帯の自己負担分納入の指導指示〕
(問11-19)〔命令入所患者等に対する指導指示〕
(問11-20)〔指導指示及び審査請求〕 3 検診命令
(問11-21)〔労働能力と検診命令〕
(問11-22)〔検診命令と診断書-その1〕
(問11-23)〔検診命令と診断書-その2〕
(問12-1)〔援助方針策定上の留意点〕
(問13-1)〔不当受給に係る保護費の法 第63条による返還又は法第78条による徴収の適 用〕
(問13-2)〔扶助費の遡及支給の限度及び戻入、返還の例〕
(問13-3)〔戻入すべき場合の収入充当〕
(問13-4)〔戻入又は返還の適用〕
(問13-5)〔法 第63条に基づく返還額の決定〕
(問13-6)〔費用返還と資力の発生時点〕
(問13-7)〔返還金等の滞納処分〕
(問13-8)〔緊急保護と費用返還〕
(問13-9)〔給料未支給期間に対する保護の適用と費用返還〕
(問13-10)〔死亡後の費用返還〕
(問13-11)〔保護施設入所者が月の中途で保護廃止となった場合の返還金の取扱い〕
(問13-12)〔費用返還義務の相続-その1〕
(問13-13)〔費用返還義務の相続-その2〕
(問13-14)〔費用返還義務の相続-その3〕
(問13-15)〔遺産相続と費用返還〕
(問13-16)〔抵当権を設定されている資産の処分と費用返還〕
(問13-17)〔法 第63条の費用返還と法第80条の返還免除との関係〕
(問13-18)〔費用返還請求の時期と消滅時効の開始時期〕
(問13-19)〔返納告知書発行後の返還免除〕
(問13-20)〔保護金品の一部返還免除〕
(問13-21)〔法 第63条に係る資力について収入申告しなかった場合の取扱い〕
(問13-22)〔法 第78条の全部又は一部の解釈〕
(問13-23)〔法 第63条・法第78条と控除〕
(問13-24)〔法 第78条による費用返還義務〕
(問13-25)〔法 第78条による費用徴収と資力との関係〕
(問13-26)〔不正受給の徴収と罰則〕
(問13-27)〔司法処分と徴収額の関係〕 2 秘密保持
(問13-28)〔監査委員からの監査及び地方公共団体の議会からの検査と秘密の保持〕
(問13-29)〔捜査機関からの照会に対する回答〕
(問13-30)〔民間同体から説明を求められた場合と秘密保持の関係〕
(問13-31)〔被保護者の氏名と秘密保持〕 3 外国人保護
(問13-32)〔外国人保護の実施責任〕
(問13-33)〔外国人であるDV被害者の取扱い〕
(問13-34)〔外国人登録証明書を紛失した場合〕
(問13-35)〔外国人からの不服申立〕 4 その他
(問13-36)〔立入調査の時間的限界〕
(問13-37)〔調査に協力しない場合〕
(問13-38)〔委任状による保護費の受給〕
(問13-39)〔保護施設入所等の場合の保護金品の前渡〕
(問1)〔いわゆる三者連携について〕
(問2)〔嘱託医業務の兼務について〕
(問3)〔医療扶助ケースに対する指導と他のケースに対する指導の差〕
(問4)〔患者に対する指導方法〕
(問5)〔地区担当員及び医療事務担当者が行う「指定医療機関、管内町村等との連絡」内 容の差異〕 3 町村関係
(問6)〔町村長が発行する場合の取扱い〕
(問7)〔転帰事項の確認方法〕
(問8)〔医療要否意見書等様式の追加事項〕
(問9)〔併発病がある場合の要否意見書の提出〕
(問10)〔一時入院外治療を中止し、引き続き入院外治療を開始する場合の要否意見書〕
(問11)〔費用概算額に差がある場合の取扱い〕
(問12)〔精神疾患入院要否意見書に「診察料・検査料請求書」が含まれていない理由〕
(問13)〔眼鏡給付に伴い医療機関が行った検査料等の請求方法〕
(問14)〔医療扶助決定に当たり「問題があると思われるとき」とは〕 3 指定医療機関等の選定
(問15)〔患者委託に当たっての医療機関の選定〕 4 医療扶助の決定
(問16)〔決定通知書を省略できる場合とは〕
(問17)〔診断が確定しない場合の保護の要否判定〕
(問18)〔福祉事務所が指定医療機関に対して行うことができる病状調査の範囲につい て〕
(問19)〔医療扶助単給における患者以外の世帯員について〕
(問20)〔入院患者日用品費の累積額に係る調査について〕
(問21)〔医療券を直ちに発行する取扱いの趣旨及び留意点〕
(問22)〔保護施設等に入所中の被保護者の取扱い〕
(問23)〔婦人保護施設入所者の取扱い〕
(問24)〔保護変更申請書(傷病届)と学校保健法との関係〕
(問25)〔医療券の有効期間の取扱い〕
(問26)〔「傷病名」欄の記載方法〕
(問27)〔生母入院中、新生児に医療扶助を適用する場合の取扱い〕 5 急迫保護等
(問28)〔休日、夜間における受診確保〕
(問29)〔修学旅行時における児童生徒の傷病への対応〕 6 給付方針及び費用 (1)診療方針及び診療報酬
(問30)〔ニコチン依存症管理料について〕
(問31)〔病室の差額請求〕
(問32)〔高度先進医療や治験の取扱いについて〕
(問33)〔被保護者の治験参加について〕
(問34)〔入院治療について嘱託医と主治医の意見に相違がある場合の取扱い〕
(問35)〔同一疾病により国保の被保険者が医療扶助患者となった場合の初診料の取扱 い〕
(問36)〔指定医療機関の開設者の変更に伴う初診料の算定について〕
(問37)〔主治医の許可を得て外泊中である患者への往診料〕
(問38)〔骨髄提供者の入院費等について〕
(問39)〔骨髄移植のための組織適合性試験の費用について〕
(問40)〔外泊中に準備した給食費の請求〕
(問41)〔違法行為により自傷した者に対する医療扶助の適用について〕
(問42)〔精神保健福祉法の規定に基づく仮退院の期間と医療扶助の取扱い〕
(問43)〔精神保健福祉法 第29条の措置入院患者の併発疾病〕
(問44)〔感染症予防法による入所患者の併発疾病〕
(問45)〔入院措置の解除と医療扶助との関係〕
(問46)〔月末に翌月にわたり投薬した場合の取扱い〕
(問47)〔初診時の検査の程度について〕
(問48)〔時間外診療〕
(問49)〔A医療機関にX線撮影設備がないためB医療機関に依頼した場合の検査料の 請求〕
(問50)〔入院中の施術料金の請求〕
(問51)〔2戸以上の患家に対して引き続き往診を行った場合の往診料について〕
(問52)〔医療扶助の診療報酬の不服申立て〕 (2)調剤 (3)治療材料
(問53)〔手術時における多量のサラシ〕
(問54)〔コルセット運搬に要する旅費の請求は認められるか〕 (4)施術
(問55)〔計画的な往療について〕
(問56)〔柔道整復の医師の同意について〕 (5)移送
(問57)〔自家用車による往診の燃料代の算定方法〕
(問58)〔自家用車による往診の燃料代の支給方法〕
(問59)〔給付要否意見書(移送)の見積りについて〕
(問60)〔福祉事務所管外の医療機関を受診する際の移送費の取扱いについて〕
(問61)〔福祉事務所管内の範囲について〕
(問62)〔福祉事務所管内医療機関での対応が困難な場合について〕
(問63)〔過度の受診に対する移送費支給の可否について〕
(問64)〔付添人の日当について〕
(問65)〔宿泊費を伴う場合の取扱いについて〕
(問66)〔待機料の取扱いについて〕 7 他法関係
(問67)〔従前、国民健康保険の被保険者であった者が保護決定前において国保による 受診をした場合の取扱い〕
(問68)〔医療費貸付金との関係〕
(問69)〔障害者自立支援法 第5条第18項に規定する自立支援医療のうち精神通院医療と の関係〕
(問70)〔自立支援医療の認定を受けている者が生活保護開始や廃止になった場合の取 扱い〕
(問71)〔妊娠中毒症等療養援護制度との関係〕
(問72)〔集団検診と医療扶助〕
(問73)〔原爆援護法との関係〕
(問74)〔感染症予防法との関係〕
(問75)〔母体保護法による不妊手術〕
(問76)〔社会保険に加入している被保護者に係る肝炎治療特別促進事業との関係〕
(問77)〔予防接種と医療扶助〕
(問78)〔町村合併による所在地の変更〕
(問79)〔開設者の死亡後相続人が引き継いでいる場合の取扱い〕
(問80)〔指定医療機関の告示事項〕
(問81)〔指定申請書が出された場合いかなる判断に基づいて指定を行うか〕
(問82)〔届出を行わないため移転先が分からないものの取扱い〕
(問83)〔無届転居し新たに開業した場合の指定の取扱い〕
(問84)〔分院の指定は本院と別個に行うべきか〕
(問85)〔検査によらないで不正を発見した場合でも指定医療機関の取消しができるか〕
(問86)〔指定医療機関の有期指定はできるか〕
(問87)〔指定取消し後の再指定〕
(問88)〔施術所を開設していない施術者の指定の取扱い〕
(問89)〔指定の辞退を拒めるか〕
(問90)〔診療報酬等の年度区分〕
(問91)〔現在使用を認められていない薬品の調剤の審査〕
(問92)〔調剤券による診療報酬明細書の審査要領〕
(問93)〔支払基金審査後知事決定を行った額は、支払基金審査委員会の意見に拘束され ることなく決定してよいか〕
(問94) 〔知事決定後、個別指導の結果によって減点する場合の支払基金への再審査依頼〕 2 診療報酬以外の費用 3 金銭給付
(問95)〔指定医療機関に対する個別指導について〕
(問96)〔行政区域外の医療機関の検査と行政措置〕
(問97)〔指定医療機関の取消しについて〕
(問98)〔立入検査を拒否した場合の診療報酬支払停止の根拠〕
(問99)〔福祉事務所職員による立入検査結果の是正状況の確認〕
(問100)〔指定施術者に対する指導及び検査〕
(問101)〔個別指導において看護師等の定数を欠く場合の処置〕
(問102)〔医療扶助に関する審議会において入院継続を要しないと判定された者に対す る事後処理〕
(問103)〔入院に関し同意あるときは精神保健福祉法の措置入院の対象にならないので はないか〕
(問104) 〔保護の実施機関で精神保健福祉法 第23条の申請を行うこととされている趣旨〕
(問105)〔保護の実施機関からの精神病院又は指定病院等への連絡〕
(問106)〔急迫時の保護と精神保健福祉法との関係〕
(問107)〔精神科嘱託医の立入検査及び立入調査〕
もちろん、世帯単位の原則は保護の実施のための原則にとどまるものであり、生活保護 法上の請求権は個々の困窮者が有するのであるから、保護申請や不服申立ては当該要保護 世帯員のいずれもが行うことができる。
<世帯の認定> 「世帯」とは、通常社会生活上の単位として、居住及び生計をともにしている者の集ま りをいうが、生活保護法に規定する「世帯単位の原則」における「世帯」は、主に生計の 同一性に着目して、社会生活上、現に家計を共同にして消費生活を営んでいると認められ るひとつの単位をさしている。もっとも、次官通知は、同一居住、同一生計の者は原則として同一世帯と認定すること としているが、これは、生計を一にしているか否かの認定が主として事実認定の問題であ るところから、比較的事実認定が容易な同一居住という目安をあわせて用いることとした ものである。 このような目安としては、他に重要なものとして居住者相互の関係(親族関 係の有無、濃密性等)があるが、判定が困難なケースについては、更に消費財及びサービス の共同購入・消費の共同、家事労働の分担、戸籍・住民基本台帳の記載事実等の事実関係 の正確な把握に基づき、個々の事例に即して適正な世帯認定を行うこととなる。
なお、同一居住は同一生計の判定の上で重要ではあるが、ひとつの目安であるにすぎな いから、同一の住居に居住していなくても社会生活上同一世帯と認定するのが適当な場合 がありうる。 夫が出かせぎに出ているとか、子が義務教育のために他の土地に寄宿してい るとか、あるいは病院に入院している等の場合は、それぞれ農閑期、義務教育期間、入院 必要期間が終了すれば、他の世帯員の居住する住居に帰来することが予定されているもの であり、このように、やむをえない事由によって同一の住居に居住していないが、それが 一時的なものであって一定の時期が到来すれば、再び他の世帯員の居住する住居に帰来し て生活することが予定されているような場合は、居住を異にしていても同一の生計を営ん でいるものであり、これを同一世帯として認定することとなる。
1 同一世帯
(問1-1)〔世帯を異にしている夫婦〕 夫婦であっても世帯を異にしていると判断しうる場合はあるか。 もしあるとすれば いかなる事実により判断するか。 また、その場合扶養義務は消滅するか。
〔参照〕次 第1 局 第5-3 民法 第752条 (答)法における世帯の認定にあたって、夫婦は原則として同一世帯に属していると判断 されるが、夫婦であっても、夫が妻以外の者と同棲し、妻と別居している期間が相当長期 にわたっている場合等夫婦関係の解体が明白である場合には、世帯を異にしていると判断 すべきものと考えられる(後出の具体例参照)。
世帯を異にしている場合であっても、夫と妻は生活保持義務の関係にあるわけであるか ら、扶養の履行(民法 第752条による夫婦間の同居、協力、扶助の義務)につき協議する ことは必要であり、能力があるにもかかわらずこれに応じない場合には、家庭裁判所に対 する調停又は審判の申立ての指導を考慮する必要がある。 夫婦の一方の同居協力義務違反 が明らかである場合には、他方の義務は免責されることが考えられるので、実態を勘案の 上措置することが必要である。 また、夫婦の間に子がある場合は、子に対する扶養の権利 及び義務の関係についても考慮しなければならない。
(問1-2)〔擬装離婚〕 入院中の夫が全財産を妻子に贈与し、妻と離婚した場合、作為的な離婚と承知され るときであっても、法律上有効な贈与及び離婚であることを理由にこれを認め、単身 者として取り扱わねばならないか。
〔参照〕次 第1 (答)離婚が保護の程度を高めるためのいわゆる擬装離婚であることが明らかに立証され、 従前と生活実態が変わらない場合は、同一世帯として認定すべきである。
(問1-3)〔生計の同一性〕 A町に居住する甲、甲の子乙及び丙の3人からなる世帯において、甲が発病し通院 治療を必要とすることとなったため、保護の開始の申請がなされた。 乙は現在A町に 所在する某工場に勤務しており、乙の給与が本世帯のただひとつの収入源となってい るが、乙は工場の食堂で昼食を給与され、夕食も帰宅の遅い日は外食しており、また 自己の収入中から食料品等を購入して世帯員全体で消費している事実が認められる。
この場合、乙が自己の生活及び勤労に必要な経費の大部分を直接支出していることか らいって、甲及び丙と乙との間には生計同一の事実がなく、したがって、甲及び丙と 乙とは別世帯と考えられるかどうか。 また仮に同一世帯としても、乙が収入の一部し か家計に繰り入れないことは、法 第4条第1項の要件を欠くものであるから、乙を世 帯分離し、甲と丙を保護することが許されると思われるがどうか。
〔参照〕次 第1 局 第1-2-(1) (答)法にいう世帯とは、社会生活上の単位として居住及び生計をともにしている者の集 まりをいうものであり、世帯の認定に当たっては消費物資の共同購入、炊事の共同及び家 具什器の共同使用等の諸要素を勘案して判断すべきものである。 ここにいう生計の同一と は、家計上の計算の単位がひとつの総枠の中におさまっていることを意味するにとどまり、 世帯員のひとりが自己の得た収入のうち若干又は相当部分を家計の中心者に手渡すことな く、直接物資の購入等の支払にあてている事実があるとしても、そのことはその者をそれ 以外の者と別世帯として認定する決定的な要素とはならない。
設問においては、乙の給与収入が世帯の生計源となっていること、乙が購入した物資を 世帯員が共同で消費していること等の事実がみられるのであり、乙及び丙の3人をもって 有機的な生活共同体が構成されていることが推察され、前記の法における世帯の解釈にあ てはめて考えるならば、甲及び丙と乙とを別世帯と認定する根拠はきわめて希薄であると いわざるを得ない。
次に、設問の「仮に同一世帯であるとしても、乙を世帯分離することができる」のでは ないかという点であるが、これは「稼働能力があるにもかかわらず収入を得るための努力 をしない等保護の要件を欠く者があるが、他の世帯員が真にやむを得ない事情によって保 護を要する状態にある」場合に当たるとの判断に基づくものと思われる。 しかし、乙は能 力を活用し現に稼働しており法 第4条第1項の要件を満たしているのであるから、設問に ついて、乙の生計援助の態様をもって世帯分離の要件を満たすとするがごとき判断は、早 計かつ不適当である。 したがって、乙の世帯分離は認められない。
(問1-4)〔入院期間が長期にわたる場合〕 「病院等に入院している場合」は入院期間が長期に及んでも別世帯として認定する 必要はないか。
〔参照〕局 第1-2-(5) (答)病院その他特定の目的のために入院・入所する施設は、救護施設、母子生活支援施 設のように生活維持を目的として入所する施設を除き、その場所は居住地として認定され ない。 したがって、その期間の長短のみをもって世帯認定を変更すべきではない。
例えば、長期入院の間に出身世帯そのものが消滅する場合(残存世帯員が一人でその者 が死亡したような場合、夫婦間に離婚手続がとられ、かつ、それが擬装でないことが明ら かな場合等)は、入院患者が単身世帯を営むこととなり世帯の認定を変更すべきであろう。
この場合、通常、保護の実施責任も、出身世帯の所在地(居住地保護)から、病院所在地 (現在地保護)に変わることになる。
また、出身世帯がある場合にも、入院患者又は出身世帯員を世帯分離する取扱いが認め られることがある。
(問1-5)〔夫婦の一方の入院〕 一方の入院により別居している夫婦は、療養期間の長短にかかわらず、離婚しない 限り同一世帯に属していると判断しなければならないか。
〔参照〕局 第1-2-(5)-イ 局 第1-2-(5)-ウ 局 第1-2-(8) (答)夫婦の一方の入院により夫婦が別居している場合は、疾病の治療のための別居以外 に夫婦関係の解体を意味する他の事由が存するときを除き、同一世帯として認定すべきで ある。
ただし、配偶者が精神疾患に係る患者、中枢神経系機能の全廃若しくはこれに近い状態 にある者である場合又は長期の入院患者若しくは救護施設等入所者である場合には、世帯 分離してその者を保護する取扱いが認められている。
(問1-6)〔夫婦の一方が入院している場合〕 肺結核で入院中の妻乙、その夫甲及び甲乙間の子2人並びに甲と同棲している女丙、 甲丙間の子1人及び丙の先夫の子1人。 上記のものによって構成される集まりを同一 世帯と認定してよいか。 ちなみに、現在乙を除く者は同一住居に居住して消費生活を 一にしており、入院中の乙にも毎月一定の送金が行われている。
〔参照〕次 第1 局 第1-1 (答)乙を除く者については、消費物資の購入、家具什器の使用等各種の現象から総合的 に判断して、これらの者が消費生活上のひとつの単位を形成していることが明らかに認め られれば、同一世帯として認定すべきである。
問題は入院中の乙を他の者と同一世帯と認定すべきであるかという点であるが、設問の 場合、甲は妻乙以外の女丙と同棲しており、この点で甲乙間を一般の夫婦の一方の入院の 場合と同一視して、直ちに同一世帯と認定することはできないのではないかという疑問が ある。 しかし、設問のように甲と乙が依然として法律上の夫婦関係にあり、甲が乙に一定 の送金を継続し、乙も甲との婚姻を解消する意思はなく、退院後は甲のもとに帰ることを 予定しているような場合には、乙を甲と同一世帯と認定すべきであろう。 これに反し、甲 と乙との間には全く音信が途絶え、乙が甲のもとに帰来することが期待できず、夫婦関係 が全く解体したような場合には、たとえ法律上は夫婦であっても別世帯と認定すべきであ ろう。
<参考図> (婚姻) (同棲) (離婚) 乙 甲 丙 先夫 (夫) 子 子 子 子(問1-7)〔長期間別居している夫婦-その1〕 乙は夫甲と別居し、先夫(すでに死亡)の子丙及び甲乙間の子丁を連れてA県に落 ち着いた。 その後約10年聞、乙は自己の内職収入及び丙の勤労収入によりかろうじ て生活を維持したが、その間、甲はA県から遠く離れたB県内におり、乙からの生活 援助その他の訴えに対し何らの意思表示をしなかった。 丙はすでに結婚して子をもう け、乙及び丁は現在、長男(丙)夫婦とともに暮らしている。 最近、甲はB県内の病 院から保護の申請を行った。 この場合の世帯の認定はどうか。
〔参照〕局 第1-1 (答)設問において、甲と乙、丙及び丁はひとつの単位として生活を営んでいることは認 めがたく、「居住を一にしていないが、同一世帯に属していると判断すべき場合(局 第1 の1)」の範囲をこえている。 したがって、甲は単身者として取り扱われるべきである。
<参考図> 甲 乙 先(死亡) (夫) (妻) 夫 (入院中) 丁 丙 妻 子(問1-8)〔長期間別居している夫婦-その2〕 甲は、1O年前に妻乙及び子を捨てて丙と同棲生活に入り、その居所が明らかでなか ったが、最近A市において丙とともに生活困窮におちいった。 妻子はB市に居住して 雑貨商を営み、相当の収入を得ており若干の扶養能力があるものと判断される。 この 場合の世帯の認定その他の取扱いはどのようにすべきか。
〔参照〕局 第1-1 (答)設問の夫婦の生活の実態は、夫と妻子が消費生活上の一単位をなしているものとは 認めがたいので、居住を一にしていないが同一世帯として認定すべき限界をこえていると 判断すべきであり、甲及び丙は甲の妻子とは別世帯として保護の要否を判断するのが妥当 である。
<参考図> (同棲) (婚姻) 丙 甲 乙 (夫) (妻) 子(問1-9)〔長期間別居している夫婦-その3〕 妻乙及び子とともにA市に居住していた甲は、5年前に妻子を捨て丙とともにB市 において同棲生活を始めたが、1年前に肺結核にかかりB市内の医療機関に入院した。
その後丙は行方不明となった。 現在、乙はC市に居住し、工場に働いて子とともに生 活している。 この場合、世帯の認定については、どのように判断すべきか。
〔参照〕局 第1-1 (答)設問の状態においては、甲と丙との生活は解消されていると見るのが妥当である。
次に甲乙間については、夫婦が居住を一にした状態から直ちに甲が入院したものではない ので当然に同一世帯と考えるわけにはいかない。 したがって、甲が妻子のもとに帰る意思 があり、かつ、乙も甲を引き取る意思があると認められる場合を除いて、甲と妻子とは別 世帯であると認定するのが妥当である。
<参考図> (同棲) (婚姻) 丙 甲 乙 (甲入院後失踪)(夫) (妻) (入院) 子(問1-10)〔別居している親と未成熟の子-その1〕 乙は夫甲の死亡後、未成熟の子を自己の父母に託して丙と再婚したが、その後、乙 の父母が生活に困窮して保護の申請を行った。 この場合の世帯の認定はどのようにす べきか。
〔参照〕局 第1-1 局 第5 (答)乙が子を父母に託したとき、再婚による生活が軌道にのればただちに引き取ること を約していた場合もあろうし、設問のように、乙及び丙と、乙の父母及び乙の子とは、恒 常的に別個の生活を営むことを前提として乙と丙との婚姻がなされるケースもあると思わ れる。 したがって、前記の約束がある等乙及び丙と乙の子とを同一世帯として認定すべき 要素のある場合を除き、大体において、乙及び丙と、乙の父母及び乙の子とは、別世帯と して認定するのが妥当である。
この場合でも夫婦と未成熟の子との関係は生活保持義務の関係として取り扱われること となるので扶養の履行については、十分留意する必要がある。
<参考図> 父 母 (初婚) (再婚) 甲 乙 丙 (先夫死亡) (妻) (夫) 子(乙の父母が養育)(問1-11)〔別居している親と未成熟の子-その2〕 A県B町を居住地として保護が行われていた世帯の世帯主と妻が、生活が落ちつき しだい子を引き取るとの条件で、未成熟の子3人をA県C町に居住する妻の父母に預 けて、N市に転出した。 現在この夫婦はN市の某事業所で住込み勤務しているが子に 対する扶養を履行せず、そのため妻の父母及び子は要保護状態に陥った。 この場合、 世帯の認定はどのようにすべきか。
〔参照〕局 第1-1-(3) 問1-10 (答)当該夫婦が子に対し生活保持義務関係にあること、妻の父母に子を預けたのが新た な就労地における生活の安定までという暫定的なものであることを考えれば、夫婦及び子 を同一世帯として認定すべきである。 もっとも、生活の安定までというのは、かなり漠然 とした表現であり、夫婦に子を引取る意思がまったくない場合や、夫婦のN市への転出時 から要保護状態におちいるまでの期間が相当長い場合もあるであろう。 かかる場合は当該 夫婦と子はむしろ別世帯であって、妻の父母及び預けられた子をもって同一世帯と認定す るのが適当である。 この場合でも夫婦と未成熟の子との関係は生活保持義務の関係として 取り扱われることとなるので扶養の履行については、十分留意する必要がある。
<参考図> 父 母 主 妻 子 子 子 (妻の父母が養育)(問1-12)〔別居している親と未成熟の子-その3〕 A県B市に居住する甲及びその子4人(いずれも未成熟)は、母子世帯として保護 を受けていたが、甲が同市の病院に入院したために、病気回復までの間ということで、 子はC県D市に居住する甲の兄乙のもとに引き取られた。 乙は、妻及び子からなる5 人世帯の世帯主であるが、甲の子を扶養するまでの能力がない。 この場合の世帯の認 定はどのように取り扱うべきか。 ちなみに、B市には甲所有の家屋があり、家財道具 はそのまま残されている。
〔参照〕局 第1-1-(5) 局 第1-2-(2) (答)設問において、家財道具が入院前の居住地に残されていることから考えれば、母の 退院が近い将来に予想される事例と解され、したがって甲の子が乙のもとに引き取られて いるのは母の入院に伴う臨時的な状態と考えるべきであり、甲と子4人は、乙の世帯とは 別の世帯として取り扱うのが適当である。
しかしながら、もしも甲の入院治療が相当長期にわたることが予想されるならば、甲の 子が乙のもとにある状態は臨時的とはいえず、甲の子は乙の妻子とともに同一世帯を構成 すると判断される(問2-37参照)。 なお、この場合局 第1の2の(2)による世帯分離の 取扱いについて検討する必要があろう。
(問1-13)〔伯父に引き取られた保護者のない児童〕 父母を失って保護者のない中学3年在学中の児童が、伯父に引きとられた。 伯父は、 児童との同居及び食事の提供は可能であるが、それ以外の生活の援助は不可能である と申し立てている。 この両者を同一世帯と認定すべきか。
〔参照〕局 第1-2-(2) (答)両者の生活実態からみて、両者が同一世帯を構成するものと判断されるが、この場 合、生活保持義務関係にない要保護者が転入した場合にあたるから、伯父の収入等世帯の 状況によっては、世帯分離をして差し支えない。
(問1-14)〔出かせぎしている場合の世帯及び最低生活費の認定〕 「出かせぎしている場合」は必ず同一世帯として認定すべきか。 また最低生活費の 認定はどのようにすべきか。
〔参照〕局 第1-1-(1) 局 第7-2-(1)-エ 局 第7-2-(1)-ケ 局 第8-4-(1) 問8-85 (答)特定又は不特定期間他の土地で就労のために仮の独立生活を営んでいて、いずれそ の世帯へ帰ることが予定されている場合は、一般に同一世帯として認定すべきである。 た だし、この場合の最低生活費の認定は、他の世帯員とは別に一般生活費を計上することに なっている。
しかしながら、出かせぎの場所が一定でないような場合については、当該出かせぎ者に かかる最低生活費及び必要経費の認定は困難なことが多いので、保護の決定実施の実務に おいては、最低生活費は残存世帯員のみについて計上し、出かせぎしている世帯員につい ては、いわゆる仕送りの認定を厳正に行うこととして処理することもやむを得ないであろ う。 この場合、出かせぎ先から帰ってきたときは最低生活費の認定を変更する必要がある。
なお、収入認定に関する実施要領の規定において、出かせぎ等の場合「一般生活費又は 住宅費の実際必要額から、当該者の最低生活費として認定された一般生活費の額を差し引 いた額を必要経費として認定すること」と定められているが、この考え方と上記の取扱い は結果的には同じこととなる。
(問1-15)〔他の土地に寄宿している場合〕 就学又は技能修得のために他の土地に寄宿している場合は、義務教育以外であれば 別世帯と考えてよいか。
〔参照〕局 第1-1-(2) 局 第1-4 局 第1-5 (答)「義務教育のため」と規定されているのは、あくまで例示であって、その他の場合 でも同一世帯と認定すべき場合が考えられる。 例えば、高等学校に就学中の者が寮生活等 を営んでいる場合である。 つまり、全く自活をしており将来とも帰来することがないとい うような場合を除き同一世帯と認定すべきものである。
(問1-16)〔里親とその養育する児童〕 児童福祉法による里親が要保護者となった場合、その養育する児童も含め同一世帯 として保護を行ってよいか。
〔参照〕次 第1 児童福祉法 第27条第1項第3号 (答)里親制度は、保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認め られる児童の健全な育成を図るため、これらの児童の養育を希望する者に養育を委託する という趣旨で設けられているものであり、里親は、ある程度の経済的余裕を有すること(親 族里親を除く。 )が前提となっている。 したがって、里親が要保護状態に陥った場合には 児童の委託は解除され、児童に対しては別の措置が検討されるであろうから、基本的には 設問のような問題は生じない。 しかし、里親と児童との間に強い信頼関係が築かれている など、引き続き児童と里親が一緒に生活することが、児童の健全な育成を図る観点から望 ましい場合も想定される。 このような場合は児童相談所等とも協議の上例外的に里親及び 児童を同一世帯に属すると認定することも考えられる。
(問1-17)〔職親に措置委託されている知的障害者〕 知的障害者福祉法により管外の職親に措置委託されている知的障害者が疾病にかか り医療が必要であるとして職親から医療扶助の申請について相談があったが、この場 合、世帯認定、実施責任、また、職親に住込委託されている場合の最低生活費及び収 入の認定について、教示されたい。
〔参照〕局 第1-1-(6) 課 第8-46 次 第8-3-(1)-エ 知的障害者福祉法 第16条第1項第3号 (答)知的障害者福祉法により職親に措置委託されている場合は、その態様からみて職親 のもとで新たに生計の本拠を構えたものとは認められないので職業訓練校、国立光明寮等 に入所している者と同様の状態にあるものとして出身世帯と同一世帯員として認定すべき ものであり、この場合の実施責任は、出身世帯の居住地を管轄する実施機関が負うことに なる。 したがって、当該実施機関へ保護申請を行わせ、一般の例により医療扶助を決定す ることになる。
最低生活費の認定は、一般の例によって認定し、就労先において給食を受ける場合には、 課 第8の46の例により取り扱うこととなる。 また、その者の就労の状態によって職親から 就労の対価として相当の賃金が支払われる場合には、これを正確に把握し、一般の例によ り収入の認定を行うことはいうまでもない。 就労収入を得るにいたらない者に対して、職 親から日用品諸経費相当の手当が支給される場合には、少額不安定な就労による収入とし て取り扱うこととしても差し支えない。
2 世帯分離 保護の実施は世帯を単位として行うのが原則であるが、生活保護法 第10条ただし書にお いて、これによりがたいときは個人を単位として保護の要否及び程度を定めることができ るとしている。 個人を単位として保護を実施することは、その個人を世帯から分離して取 り扱うことにほかならないのでこの措置を世帯分離と称している。 世帯分離は、世帯単位 の原則によれば、法の目的である最低生活の保障に欠けるとか、被保護者の自立を損なう と認められるような場合に、同一世帯ではあるが保護の要否程度を決定する上で別世帯と 同じように扱うという擬制的措置であるので、保護の実施に当たっては、世帯の実情、低 所得世帯との均衡等を考慮し機械的な取扱いに陥らないよう十分留意するとともに、世帯 全体の生活状態を観察し、分離の結果保護を受けないこととなった世帯員の収入が充分増 加した場合等には必要に応じて世帯分離を解除し、保護の停廃止を考慮することも肝要で ある。
世帯分離措置の効果は、基本的には分離によって保護を受けないこととなった者が(保 護)基準に定める最低生活の枠内に入れられるという制約を受けない点にある。 ただし、 世帯分離がなされても扶養義務関係については、当然存続することはいうまでもない。 ま た、世帯分離は別世帯として認めることではなく、あくまで同一世帯であることには変更 がないのであるから、世帯全体の要保護性を必要としている取扱いも行われており、この 場合には、分離前の最低生活費を限度に分離後の保護を受けないこととなった世帯員の生 活水準が 引き上げられることになる。 実施要領には、特定の場合に世帯分離の措置が認められる旨 が規定されているにすぎず、世帯分離の要件に該当する世帯については必ず世帯分離を行 わなければならないというように、機械的に適用するのは誤りである。
例えば、「世帯員のうちに、稼働能力があるにもかかわらず収入を得るための努力をし ない等保護の要件を欠く者がある」場合は、原則としてその世帯の全体が保護の要件を欠 くものとして申請を却下すべきものであって、例外的に「他の世帯員が真にやむを得ない 事情によって保護を要する状態にある場合」にはじめて世帯分離の措置を適用する余地が 生じるものである。
また、長期の入院患者等が世帯のうちにあれば必ず世帯分離の措置を適用するという取 扱いも誤りであって、世帯の状況からみて「出身世帯員の自立助長を著しく阻害すると認 められるとき」であって、かつ、原則として、世帯分離を行わないとすればその世帯が要 保護世帯となる場合に限って世帯分離の措置が可能となるものである。
この場合、さらに「地域の生活実態」を考慮して世帯分離を適用することが適当である か否かを判断する必要がある。
なお、実施要領で示されている世帯分離は次のような視点からも整理することができる。
正確な世帯分離の要件については実施要領を参照されたい。
世帯分離 収入のない者を分離し、分離 収入のある者を分離し、残り 稼働能力を活用していない した者を保護する場合 の世帯員を保護する場合 者を分離し、残りの世帯員 を保護する場合 居住を 1.自己に対し生活保持義務 ① 被保護世帯に当該世帯員 1.稼働能力があるにもか 同一に 関係にある者がいない世帯 の日常生活の世話を目的と かわらず収入を得るため する場 に転入した要保護者 して転入した保護を要しな の努力をしない等保護の 合 局 第1-2-(2) い者 要件を欠く者 ② 常時の介護又は監視を要 局 第1-2-(3) 局 第1-2-(1) する寝たきり老人、重度の 2.結婚、転職等のため1年 2.大学等に就学する者 心身障害者等 以内に転出する者であって 局 第1-5 局 第1-2-(4)-ア、イ 同一世帯員のいずれにも生 活保持義務関係にない収入 のある者 局 第1-2-(7) 居住を ① 出身世帯に自己に対し生 ① 局 第1の2の(5)のア、 異にす 活保持義務関係にある者が イ、ウ又はオ以外の場合で る場合 いない者であって、6か月 6か月以上入院している患 以上入院を要する患者 者等の出身世帯員であって 局 第1-2-(5)-ア 当該患者等と生活保持義務 ② 出身世帯に配偶者が属し 関係にない収入のある者 ている者であって1年以上 局 第1-2-(6) 入院しており、かつ、引き 続き長期にわたり入院を要 する精神疾患に係る患者又 は中枢神経系機能の全廃若 しくはこれに近い状態にあ る者 局 第1-2-(5)-イ ③ 出身世帯に自己に対し生 活保持義務関係にある者が 属している者であってすで に入院期間が3年をこえ、 かつ、引き続き長期入院を 要する者 局 第1-2-(5)-ウ 4.局 第1の2の(5)のア からウにより世帯分離され た者で、感染症予防法 第37 条の2等の公費負担を受け て引き続き入院又はその更 生を目的とする施設に入所 している者 局 第1-2-(5)-エ ⑤ 局 第1の2の(5)のイ、 ウ又はエにより世帯分離さ れた者で、退院又は退所後 6か月以内に再入院し、長 期にわたり入院を要する者 局 第1-2-(5)-オ ⑥ 救護施設等の入所者又は 出身世帯員 局 第1-2-(8) ※○印は世帯全体の要保護性の規定のある事項
(問1-18)〔世帯分離と要否判定〕 世帯分離の要件として局 第1の2に規定する各項目は、それぞれ世帯全体の要保護 性を要件とするものか否かを次の事例について説明願いたい。
[事例] 妻 長女(稼働収入あり1年以内に結婚予定) 長男 主 二男 主の妹(入院患者) ○世帯全体で要否判定するならば医療費全額支払可能となり保護否となる。
○主の長女を世帯分離した上で要否判定するならば保護要となる。
〔参照〕局 第1-2-(7) (答)局 第1の2の各項に定める世帯分離の要件は、「世帯分離を行わないとすれば、そ の世帯が要保護世帯となる場合に限る」という条件をつけている項目を除いては世帯全体 の要保護性を問うものではなく、したがって世帯分離の各項に定める要件を満たし、かつ、 世帯分離を行うことが適当であると認められる場合は、その者を世帯分離した上で保護の 要否を判定するものである。
いうまでもなく、世帯分離の取扱いは機械的に行うことなく、世帯の状況及び地域の生 活実態を十分考慮した上で実施しなければならないことは、局 第1の2の本文にも明記さ れていることである。
事例の場合、長女を世帯分離すべきか否かについては、長女の現在置かれている立場及 び結婚後の生活環境等について十分な配慮検討を加えた上で決定すべきである。
(問1-19)〔真にやむを得ない事情〕 局 第1の2の(1)において、「他の世帯員が真にやむを得ない事情によって保護を 要する状態にある場合」とはどんな場合をいうのか。
〔参照〕局 第1-2-(1) (答)一般に次のいずれにも該当する場合をいうものと解すべきである。
(1)当該世帯の資産の保有状況が生活保護法 第4条の許容する限度であること。 (この 点については、一般の保護 申請世帯の場合と同様の標準で、実施要領の規定等に照ら して判断すべきである。 ) (2)他の世帯員(例えば争議参加者の配偶者等)が、その健康状態等に応じて可能なか ぎり生活の維持に努力して いると認められる状況にあること。
(3)扶養義務者からの扶養を受けることについても最大限の努力が払われていること。
(4)その世帯の収入が要件欠如者を除いた当該世帯の最低生活費を下回るため生活に困 窮すると認められること。
(問1-20)〔労働争議中の従業員からの大量の保護申請〕 労働争議中の事業所の従業員から、長期間のストライキ及びロックアウトにより生 活に困窮したとの理由で、大量の保護申請がなされたが、ストライキに参加している 者を世帯分離し、世帯員のみに保護を行うこととしてよいか。
〔参照〕局 第1-2-(1) 問1-19 (答)労働争議に参加していることをもって直ちに保護の要件を欠くと解することはでき ないから、個々の事例につき要件を欠くかどうかについて検討しなければならない。 病気 中等で要件を欠かない者がもしあれば世帯単位に判断し、それ以外の者については、急迫 の状況にある者を除き(ただし、労働争議参加が原因で、直ちに急迫の状況にあると判断 すべきでないことは当然である。 )稼働能力を活用しない限り、保護の要件を欠く旨を十 分説明した上、原則として保護を行わないこととする。 ただし、真にやむを得ないと認め られる事例については、世帯分離により、世帯員のみに対し保護を行うこととして差し支 えない。
なお、保護の実施機関としては、純粋に保護法上の問題として取り扱うとの態度を堅持 し、労使間の紛争に介入するかのごとき印象を与える行動を差し控えることが肝要であろ う。
(問1-21)〔保護を要する者の転入〕 離婚し、親元へ身を寄せることとなった母子世帯等、直系血族の世帯に転入した要 保護者から保護申請があった場合、局 第1-2-(2)の世帯分離の取扱いにより転 入者のみを世帯分離して保護することはできるか。
〔参照〕局 第1-2-(2) (答)局 第1-2-(2)の世帯分離の取扱いは本来身寄りの無い孤児を引き取り、生活 の世話を行う場合等を想定したものであり、いわば、法 第30条に規定する「私人の家庭に 養護を委託」する趣旨をも勘案した取扱いである。
したがって、直系血族の世帯に転入する場合まで機械的にこの取扱いによることは、そ の趣旨を逸脱するものであり、特に父母、子及び孫等が同居している場合は、通常は世帯 単位の原則をそのまま適用すべきものである。
しかし、なかには、その転入目的、生活実態、受け入れ側の援助能力、更には地域の生 活実態との均衡等を十分考慮した上で、転入者のみを保護することがやむを得ない場合も ある。
なお、その場合においても、世帯全体で最低生活維持が可能な場合には分離を行うこと は認められないこと、分離により保護を要しなくなった者からは可能なかぎり援助を求め るべきことに留意する必要がある。
(問1-22)〔親と未成熟の子との生活保持義務関係〕 「要保護者が自己に対し生活保持義務関係にある者がいない世帯」という世帯分離 の要件にかかる判断について、親と未成熟の子との関係はすべて生活保持義務関係に あると考えるべきか。 また常時の介護を要する重度の心身障害者甲、甲の成熟した長 男乙及び甲の未成熟の次男丙からなる世帯で、乙には一定の稼働収入がありそれで自 分自身及び丙の最低生活の維持は可能であるような場合、甲だけ世帯分離して保護す ることはできるか。
〔参照〕局 第1-2-(2) 局 第1-2-(4)-ア (答)親と未成熟の子の関係のうち生活保持義務関係にあるのは、親の未成熟の子に対す る関係だけであり、未成熟の子は親に対して生活保持義務関係にはないものである。
したがって後段の事例については甲に対し生活保持義務関係にあるものがいないので、 常時の介護を要する重度の心身障害者である甲を世帯分離し保護できるものである。
(問1-23)〔保護を要しない者の転入〕 局 第1の2の(3)の「同一世帯として認定することが適当でないとき」とはどん な場合をいうのか。
〔参照〕局 第1-2-(3) (答)その判断は、個々のケースについて実施機関が行うべきであるが、従前から継続ケ ースとの均衡上、元来出身世帯員でなかった者又は出身世帯員の場合は1年以上転出して いた者を一応の目途として取り扱われたい。
(問1-24)〔いわゆる寝たきリ老人等の世帯分離-その1〕 局 第1の2の(4)のイの「一般生活費」はどのように算定するのか。
〔参照〕局 第1-2-(4)-イ (答)基準生活費に加算を加えるものである。
なお、一時扶助費は含めない。
(問1-25)〔いわゆる寝たきり老人等の世帯分離-その2〕 重度の心身障害者の生活保持義務関係者が2人あり、そのうち1人の収入が局 第1 の2の(4)のイに定める額以上であるときは、世帯分離できるか。
〔参照〕局 第1-2-(4)-イ (答)2人分を合算した額により判断して差し支えない。
(問1-26)〔常時の介護又は監視を要する者の判定〕 局 第1の2の(4)にいう「常時の介護又は監視を要する者」の判定はどのように すればよいか。
〔参照〕局 第1-2-(4) (答)常時の介護を必要とするか否かの判断は、要保護者が食事、排便、入浴の日常生活 全般を常時家族の介護なしでできるかどうか、また常時の監視を要するか否かの判断は、 要保護者が家族による常時の介護を受ける必要はないが、家族が要保護者を絶えず監視し、 随時適切な介護を行う必要があるかどうかを目安にして、ケースの状況により医師の意見 を参考に実施機関が個別に判断すべきである。
なお、介護又は監視を要する状態については、当然その継続性が必要である。
(問1-27)〔常時の介護を要する者が入院中である場合〕 局 第1の2の(4)による世帯分離は、当該要保護者が短期間入院する場合も行っ て差し支えないか。
〔参照〕局 第1-2-(4) (答)局 第1の2の(4)は出身世帯員の生活にゆとりを生じさせ、要保護者に対する介 護に更にあたたかい配慮を期待するとともに、ひいてはその世帯の自立助長を図る趣旨で 設けられたものであり、病院に入院中又は施設に入所中のため世帯員の介護が行われてい ない場合はこの取扱いは適用できないものである。
ただし、現に局 第1の2の(4)により世帯分離して保護を行っていた者が短期間(お おむね6か月未満)入院する場合には、世帯分離の解除を要しないものとして差し支えな い。
なお、入院期間が6か月以上である場合は局 第1の2の(5)の適用ができるものであ る。
(問1-28)〔要保護世帯となるか否かの判定〕 「世帯分離を行わないとすれば、その世帯が要保護世帯となる場合に限る」という 規定の要保護世帯となるか否かの判定は、保護開始申請のときと、継続して保護して いるときとでは異なるか。
なお、世帯分離を解除する場合の判定基準如何。
〔参照〕局 第1-2-(4) 局 第1-2-(5)-ア、イ、ウ、オ 局 第1-2-(6) 局 第1-2-(8) 課 第10-4 課 第10-6 (答)要保護世帯となるか否かの判定は、保護開始決定時における世帯分離については保 護開始時の要否判定、即ち課 第10の4により、また、保護継続中の世帯にかかる世帯分離 については、程度の決定を行う場合の基準即ち課 第10の6により判定するものである。
なお、世帯分離した後の出身世帯の収入変動等により世帯分離の要件を満たさなくなる ため、保護を廃止する場合又は世帯分離を解除し世帯全体を保護する場合の判定基準は、 程度の決定を行う場合の基準によられたい。
(問1-29)〔自立を阻害するかどうかの認定〕 すでに入院期間が6か月以上である35歳の入院患者とその母からなる世帯の収入が 母の受給する年金のみである場合、世帯分離してよいか。
〔参照〕局 第1-2-(5)-ア 局 第1-2-(6) (答)本事例については、母の受給する年金で母自身の生活が維持されるものであれば、 母自身は経済的に自立していると考えられ、同一世帯として認定することは、かえって母 自身の自立を阻害することとなるので、分離ができると解して差し支えない。
(問1-30)〔自立阻害の認定の判断基準〕 入院患者の世帯分離は、出身世帯員と同一世帯として認定することは出身世帯員の 自立助長を著しく阻害すると認められる場合に限り認められているが、自立を阻害す るかどうかの認定にあたり留意すべき事項を示されたい。
〔参照〕局 第1-2-(5) 局 第1-2-(6) 問1-29 (答)どのような事情があれば出身世帯員の自立を阻害すると認め世帯分離してよいか(世 帯分離の基準)についての認定は、あくまで個々のケースの実態に応じて判断すべきもの である。 したがって、個々の世帯の状況を詳細に把握した上種々の事情を総合し、個別的 に判断を下すほかないが、この場合の判断材料としては、これまでの入院期間、出身世帯 員との関係、出身世帯員の収支の状況、資産の得喪、負債の増減、医療費の支払状況等が 考えられる。
(問1-31)〔長期入院見込みの期間が短縮された場合〕 6か月未満に退院する見込みの者は世帯分離することができないとされているが、 すでに世帯分離されている者は、たとえ5か月後に退院できることが判明したとして も、継続して世帯分離が認められると解してよいか。
〔参照〕局 第1-2-(5) (答)退院時まで世帯分離を継続して差し支えないものである。
(問1-32)〔入院を要する場合の判断方法〕 「6か月以上の入院を要する」場合又は「長期間にわたり入院を要する」場合につ いては、どのような方法で判断したらよいか。
〔参照〕局 第1-2-(5) 局 第1-2-(6) (答)かならずしも医療扶助の入院要否意見書によることとしなくてもよいが、少なくと も医師の診断証明により取り扱うこととされたい。
なお、「長期間」とは、1年を超える期間をいうものである。
(問1-33)〔入院している期間の考え方〕 世帯分離に関して「入院の期間がすでに1年をこえ」、「入院期間がすでに3年をこ え」とは、自費、他法いずれによる入院でもよいか。
〔参照〕局 第1-2-(5)-イ 局 第1-2-(5)-ウ (答)自費、他法、本法いずれをも問わず、当該入院の事実のみをいうものである。
(問1-34)〔救護施設等に入所しようとする者〕 救護施設、養護老人ホーム等にこれから入所しようとする者につき、入所時から世 帯分離を適用してよいか。
〔参照〕局 第1-2-(8) (答)世帯分離の要件中「入所者」には入所が決定してこれから入所しようとする者も含 まれる。 したがって、入所時から世帯分離を認めて差し支えない。
(問1-35)〔施設入所者の世帯分離〕 施設入所者につき世帯分離が認められるのは局 第1の2の(8)に掲げる施設の入 所者のみであって、職業訓練校等に在校している者は世帯分離が認められないと解し てよいか。 もしそうであるなら、特にこれらの施設を他と区別する理由は何か。
〔参照〕局 第1-1-(6) 局 第1-2-(8) (答)施設入所者につき世帯分離が認められるのは、局 第1の2の(8)に掲げる施設の 入所者に限定される。 すなわち、これらの施設は生活施設であって、その入所者はほとん ど出身世帯へ帰来する見込みがないからである。
個々の事例につき同一世帯かどうかを常時判断することは実際上著しく困難であり、さ らに長期間同一世帯と認定することは出身世帯員にとって酷な場合も存するので、取扱い 上世帯分離として処理することとしているのである。 その他の施設に入所している者につ いては上記の事情は存しないので、世帯分離は認められない。
ただし、以上は世帯分離の認定についてであって、これとは別に施設入所者と出身世帯 との生計関係が全く途絶え、帰来の見込みも全くないような場合には、別世帯と認定され ることもある。
(問1-36)〔世帯分離と地域の生活実態〕 入院患者等の世帯分離の適用にあたっては「地域の生活実態を十分考慮」すること とされているのであるが、生活に困窮するすべての国民に対し必要に応じて保護を行 うという法の目的との関連において、その理由は何か。
〔参照〕局 第1-2 (答)世帯分離は、世帯単位の原則をつらぬくとかえって法の目的を実現できないと認め られる場合に例外的に認められる取扱いであるが、これを行った場合、民法による扶養義 務の履行を指導するのは当然であるにしても世帯員のうちの保護を要しない者(例えば入 院患者を分離する場合の出身世帯員)は最低限度の生活を超える生活水準を許容されるこ ととなる。 したがって、これらの者は当然最低生活以上の生活を営むであろうことが予想 され、ここに地域住民の生活との均衡ないしは地域住民の生活感情の尊重の問題が生ずる。
法による保護の決定及び実施にあたってはこれらの要素を勘案する必要がある。 そこで実 施要領では、世帯分離の適用にあたっては世帯の状況とともに地域の生活実態を十分考慮 して決定することとされているのである。
(問1-37)〔入院患者の世帯分離(内部障害者更生施設に入所するまでの取扱い)〕 入院中世帯分離により保護を適用されていた者が内部障害者更生施設の入所手続を とったが、直ちに入所できないため出身世帯のもとで生活している間の保護の取扱い はどうなるか。
〔参照〕局 第1-2-(5)-エ (答)設問のように、退院時において内部障害者更生施設の入所手続を完了している者が 当該施設の入所期日が一定しているため直ちに入所できない場合は、その待機期間中は局
なお、待機期間中は当該世帯の収入充当額が最低生活費を超過することが予想されるが、 この場合は入所に至るまでの期間保護の停止決定をしておくこととされたい。
(問1-38)〔実施要領に定める場合以外の世帯分離〕 実施要領の定める場合以外でも、世帯の自立助長の見地から世帯分離を行ってよい か。
〔参照〕局 第1-2、5 (答)世帯分離の措置が認められるのは、実施要領に列記された場合に限られるものであ る。
(問1-39)〔住み込み勤務する子と自宅から通勤する子の取扱いの均衡について〕 被保護世帯出身の子で遠距離の会社、工場等に住み込み勤務をする者は扶養義務者 として取扱い、自宅から通勤する子は世帯単位の原則を適用することとしているが、 特にその子が未成年者であって将来の結婚のために身の廻品を整える必要がある場合 等は両者の取扱いに均衡を失するものがあるかと思われるがどうか。
〔参照〕局 第1-2-(7) 次 第8-3-(4) (答)本法で世帯単位の原則がとられている趣旨にかんがみると、設問のような場合も一 方は現に世帯を同一にしているものであり、他方は現に世帯を異にしているのであるから その取扱いに相違のあることはやむを得ないところである。
ただ、居宅から通勤している者について世帯分離の取扱いがなしうるかが問題となるの であるが、将来の結婚のために身の廻品を整える必要がある等の事情は十分理解しうる。
法の目的とする最低限度の生活の保障及び自立の助長の趣旨に照らし現行実施要領におい ては、結婚、転職等のため1年以内において自立し、同一世帯に属さないようになる場合 には世帯分離の取扱いが認められている。 また、同一世帯にいる未成年者が稼働収入を得 ている場合については、当該未成年就労者の特別需要に対応し、あわせて未成年者の勤労 意欲の助長を図るための未成年者控除が設けられているところである。
(問1-40)〔世帯分離の場合の基準生活費の認定〕 世帯分離の措置を適用して保護を実施する場合、当該世帯の基準生活費の2類経費 は保護の対象となる人員のみに応じて認定すべきか。
〔参照〕法 第8条 (答)世帯分離は、同一世帯ではあるが保護の要否及び程度を決定する上で別世帯と同じ ように扱うということであるので、保護の対象となる人員に応じて2類経費を認定するこ ととなる。
(問1-41)〔世帯分離した後の日用品の支給〕 入院患者を世帯分離した後、出身世帯からの仕送りがなくなったときは、入院患者 日用品費を支給してよいか。
〔参照〕告別表 第1第3章-1 局 第1-2-(5) 局 第1-2-(6) (答)支給して差し支えない。 ただし、世帯分離による単身入院患者はただ決定上だけの 単身者であって、本来、出身世帯は最低生活以上の生活をしていることを念頭におき、単 に仕送りが無くなったことを以て入院患者が収入を得ることができないと認識してしまう ことなく、当該者に対しては、出身世帯からの扶養の履行を求めるよう積極的に指導を行 い、出身世帯に対しては、扶養照会を実施すること。 この際、特に命令入所、措置入院等 により入院している者との均衡を十分注意し、著しく不均衡と認められる場合には、世帯 分離をやめ同一世帯として保護を行うことも考慮すべきであろう。
(問1-42)〔世帯分離の解除-その1〕 一度世帯分離を行った者を再び世帯に戻すことはできるか。 できるとすれば、いか なる場合か教示されたい。
〔参照〕局 第1-2 課 第1-8 問1-44 問1-47 (答)一度世帯分離をした者であっても、その後の事情の変更により、世帯分離を継統す べき事態が消滅した場合には、当然世帯分離の取扱いをやめて、世帯を単位として保護の 要否及び程度を判断すべきである。 この場合の取扱いは、個々の事例ごとに実態に即して 判断しなければならないが、その基本はあくまで世帯単位の原則及び世帯分離の本旨に立 ち返って行われるべきことはいうまでもない。
(問1-43)〔世帯分離の解除-その2〕 局 第1の2の(2)又は(3)による世帯分離が行われた後、時間が経過し世帯分離 を行った時と比べ世帯の状況が著しく変化した場合は同一世帯として認定してよい か。
〔参照〕局 第1-2-(2) 局 第1-2-(3) 課 第1-8 (答)個々の世帯分離の規定の要件に該当しなくなれば同一世帯と認定すべきである。
なお、世帯分離をした後少なくとも1年を経過した場合には世帯分離の妥当性について 再検討する必要がある。
(問1-44)〔世帯分離と出身世帯の資産活用-その1〕 世帯分離の結果、被保護者でなくなった者が保有を認められない自動車を購入して 利用しているため、地域の均衡を失する例があるが、資産の活用を指示し、これに従 わない場合最終的には保護の停廃止処分をすることができるか。
〔参照〕法 第27条 法 第62条 局 第1-2 (答)世帯分離の結果、被保護者でなくなった者が最低生活において保有を認められない 資産を保有し、あるいは新たに購入したとしても、その者には最低生活の規制が及ばない 以上、指示の上他の世帯員の保護を停止又は廃止することはできない。 したがって、設問 においては保護の実施機関は現に保護を受けている世帯員に対し、分離された世帯員から 扶養義務の履行を受けるよう指導することができるにとどまる。
しかしながら、世帯分離された者が、他にも相当の資産を有するに至り地域との均衡を 著しく失するような場合には世帯分離要件に該当しないこととなるので、この場合は、世 帯分離の取扱いをやめ世帯を単位として保護の要否を検討し、必要な措置をとることを考 慮すべきである。
(問1-45)〔世帯分離と出身世帯の資産活用-その2〕 保護の申請があり保護の要否判定の結果、当該世帯の1か月の最低生活費と収入と の対比においては、要保護世帯となるが当該世帯に資産(山林等)があるため処分す ることを指導した。
しかし、直ちにそれを処分することが困難であるのでとりあえず保護を決定するこ ととした。 この場合、当該患者が6か月以上入院を要し出身世帯員と生活保持義務関 係にないので、開始時点で世帯分離することは適当か。
また、世帯分離が認められるとすれば、被保護世帯員でなくなった出身世帯員の資 産について処分を指示し法 第63条による返還を被保護者ではない出身世帯員に対し て継続して求め得るか。
〔参照〕法 第63条 局 第1-2 問13-12 (答)設例は、資力を有しながらこれを直ちに処分することが困難なため、法 第63条によ る費用返還義務を前提として保護を開始するものであるので、世帯分離の要件に該当する 場合であっても、当該資産の保有者については世帯分離を行うことは適当でない。
なお、世帯分離後に贈与等により出身世帯員が所有又は利用を容認することができない 資産を有することとなった場合は、同一世帯としてとらえたときに、保護の要件(資産保 有)に該当しなくなる事例であるので、世帯分離の措置を解除することとなり、原則とし て解除後の扶助費について法 第63条の適用がある。
(問1-46)〔税法上の扶養親族の世帯分離〕 入院患者が出身世帯員の税法上の扶養親族と認定され、給与上扶養手当の算定の基 礎となり、または健康保険等で被扶養者と認定されている場合であっても、他の要件 をすべて満たしていれば世帯分離を認めてよいか。
〔参照〕局 第1-2-(5) 局 第1-2-(6) (答)世帯分離を認めて差し支えない。 この場合、出身世帯員からの入院患者に対する扶 養義務の履行にあたって、設問中の諸事実を考慮しなければならないことはいうまでもな い。
(問1-47)〔世帯分離により被保護者でなくなった者の収入の認定〕 世帯分離の結果、被保護者でなくなった者の収入のうち一定額(最低生活費及び教 育費等)を超える部分を他の世帯員の収入として認定してよいか。
〔参照〕局 第1-2 局 第1-5 局 第5-2 (答)そもそも世帯分離措置の効果は、基本的には、分離によって保護を受けなくなった 者が最低生活の枠内という制約を受けない点にある。 また、被保護者でない者の収入を被 保護世帯の収入として自動的に認定することは、いかなる場合にあっても認められるもの ではない。
したがって、世帯分離の結果被保護者でなくなった者の収入は、当然には他の世帯の収 入と合算して認定することはできず、扶養義務の履行等により現実に金銭の移転があった 場合に、はじめてその金額を収入額として認定すべきである。
とりわけ、「その世帯が要保護世帯となる場合に限る」という要件が課せられていない 分離については、世帯分離の趣旨が生かされるよう配慮が必要である。
一方で、局 第1-2-(1)に該当する事例にあっては、これが指導指示違反に対する 措置としての世帯分離であることを踏まえ、常時その者の収入状況を把握するとともに、 その者の最低生活費を超える収入があった場合には、直ちに世帯分離を解除し、改めて世 帯を単位として要否及び程度を定める必要がある。
(問1-48)〔施設入所者と生活保持義務関係にある者との世帯分離〕 救護施設、養護老人ホーム等の入所者と出身世帯員とを同一世帯として認定するこ とが適当でない場合とはどういう場合であるか示されたい。
〔参照〕局 第1-2-(8) 問1-35 (答)基本的には施設入所者と出身世帯員、特に生活保持義務関係にある者との関係、帰 来可能性の有無、本制度における他の世帯分離との均衡、当該施設入所者及び当該地域に おける低所得世帯との均衡、世帯分離した場合に保障されることとなる生活水準等を勘案 し、総合的に判断すべきである。
例えば、次のような場合には世帯分離して差し支えない。
(1)出身世帯に生活保持義務関係にある者がいても、その者の収入が自己 の一般生活費以下である場合 (2)出身世帯には確実な収入がなく、一方施設入所者の収入は福祉年金程度の額である 等自己の生活費、医療費がようやく賄われる程度で出身世帯への仕送りが期待できない場 合 (3)適正な仕送りが行われている場合で、世帯分離をする方がより適切であると考えら れるとき。
3 高校・大学等における就学 義務教育たる小学校及び中学校における就学については、その親権者に子どもを就学さ せる義務を負わせるとともに(教育基本法 第5条)、学齢児の就業を原則として禁止して いる(労働基準法 第56条)。 また、授業料は徴収しないなど(教育基本法 第5条)経済的 保障も行っており、生活保護法もこのような配慮から義務教育を最低生活の内容としてと らえ教育扶助を制度化しているのである。
ところで、高校・大学等において就学する者は、稼働年齢に達しているのであるから、 稼働能力を有する場合には、原則としてそれを活用することが保護の要件を充足するため に必要であるが、これと同時に自立助長及び一般世帯等との均衡の観点からの配慮も必要 になってくる。
そこで、高等学校(定時制及び通信制を含む)、中等教育学校の後期課程、特別支援学 校の高等部専攻科、高等専門学校、専修学校又は各種学校(以下「高等学校等」という。 ) に就学し卒業することが世帯の自立助長に効果的と認められる場合については、更に稼働 能力の活用を求めることなく、世帯内において就学すること(すなわち、その者の最低生 活費を生活保護の給付の対象とすること)を認め、生業扶助の技能修得費の高等学校等就 学費を給付することとしており、高等学校等就学費の支給対象とならない経費及び高等学 校等就学費の基準額で賄いきれない経費であって、その者の就学に要する最小限度の額に ついては収入として認定しない取扱いが認められている。 ただし、大学等に就学するもの については、すでに高等学校への就学によって得られた技能や知識によって、当該被保護 者がその能力(稼働能力)の活用を図るべきであることから、生活保護上は世帯分離措置 によって取り扱うこととしている。
なお、稼働能力を十分活用する等保護の要件を充足したのち更に夜間大学等に就学する 場合は、被保護者にとっても原則的に自由であることはいうまでもないことである。 この 場合において、更に就学が世帯にとって自立助長に効果的であれば、夜間大学での就学の ための費用にあてる自立更生のための恵与金等を収入認定除外することとしている。
高校・大学等における就学の要件等 教育の種類 取扱い 要件 収入の取扱い 高等学校(定 世帯内就 高等学校等に就学し卒 その者の収入のうち 次 第8-3-(3) 時制及び通 学 業することが世帯の自立 高等学校等就学費の -ク 信制を含 助長に効果的と認められ 支給対象とならない 課 第8-40-(2) む)、中等教 ること 経費及び高等学校等 -オ-(ウ) 育学校の後 就学費の基準額で賄 期課程、特 いきれない経費であ 別支援学校 って、その者の就学 の高等部専 に必要な最少限度の 攻科、高等 額を収入認定除外 専門学校、 専修学校又 は各種学校 夜間大学等 余暇活用 ①その者の能力、経歴、健 自立更生のための恵 課 第8-40-(2) の就学 康状態、世帯の事情等を 与金等を夜間大学の -オ-(ウ) 総合的に勘案の上、稼働 就学費用にあてる場 能力を有する場合には十 合、入学支度及び就 分それを活用していると 学に必要な最少限度 認められること の額を収入認定除外 ②就学が自立助長に効果的 であること 大学 世帯分離 ①保護開始時に大学に就学 収入が就学費用及び しており、就学が自立助 生活費を上回る場合、 生業扶助の 長に効果的であること 保護をうけている出 対象となら ②日本育英会法による貸与 身世帯に対する扶養 ない専修学 金等によって大学で就学 の履行 校及び各種 する場合であること 学校 ③生業扶助の対象とならな い専修学校又は各種学校 で就学する場合で、就学 が自立助長に効果的であ ること
(問1-49)〔外国人学校の高等部〕 外国人学校の高等部に就学する外国人については、就学しながら保護を受けること が認められるか。
〔参照〕局 第1-3 課 第1-7 (答)外国人学校は、学校教育法にいう高等学校又は高等専門学校ではないので、当該外 国人学校が各種学校であって、高等学校での就学に準ずるものであり、かつ、その者がか つて高等学校、高等専門学校、専修学校又は各種学校(ただし、外国人学校の小・中等部 を除く。 )を修了したことのない場合に限って、世帯内就学が認められる。
(問1-50)〔世帯内の専修学校又は各種学校就学〕 高校に準ずる専修学校等であるかどうかの判断の基準は、課 第1の7に示されてい るところがあるが、そのうち、客観的な要件である専修学校等の教育課程については、 本県においては、すでに管内の専修学校等で該当するものがわかっているので、これ を判断の目安として実施機関に示すことは差し支えないか。
〔参照〕局 第1-3 課 第1-7 (答)世帯内の専修学校等での就学は、一定の要件を具備した専修学校等の教育課程であ れば一律に認められるというものではなく、各ケースごとにその是非が検討され、自立助 長上高校での教育と同様の効果が期待できるだけの就学する側の就学の意欲、能力、健康 状態等も勘案されなければならないが、専修学校等の教育内容は客観的に判断することが できるものであるので、お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問1-51)〔高等学校卒業直後の者が専修学校等に就学する場合〕 局 第1の5の(3)の生業扶助の対象とならない専修学校又は各種学校で就学する 場合とは、高等学校卒業後に直ちにこれらの学校に就学する場合も含まれるのか。
〔参照〕局 第1-5-(3) (答)高等学校卒業後については、高等学校への就学によって得られた技能や知識によっ て、当該被保護者がその能力(稼働能力)の活用を図るべきであると考えられることから、 高等学校を卒業した者が直ちに専門学校(専修学校一般課程及び各種学校を含む。 )に就 学する場合については、生業扶助(技能修得費)の給付対象とはならないものである。
こうしたケースにおいて、当該専門学校への就学が特に世帯の自立に効果的であると認 められる場合には、局 第1の5の(3)で規定されているとおり、その者を世帯分離した うえで専門学校への就学を認めることが可能であるが、こうした取扱いとなることについ ては、当該被保護者が高等学校へ就学する前に十分説明することが必要である。
(問1-52)〔大学進学を希望する者〕 大学に進学する希望のもとに高等学校で就学している者についてはその「就学が世 帯の自立助長に効果的である」ことが認められるか。
〔参照〕局 第1-3 (答)設問のように大学に進学したいとの希望をもっている者であっても、高等学校への 就学によって得られる技能や知識により、稼働能力の活用を図ることが可能となり、世帯 の自立助長に役立つと判断されるものについては、就学を認めて差し支えない。
(問1-53)〔短期大学進学と生活保護〕 高等専門学校で就学する者については、その就学課程5年間中同一世帯として保護 を受けながら、就学が認められているが、その就学期間から推して、短期大学につい ても同様に認められると解して差し支えないか。
〔参照〕局 第1-3 局 第1-5 (答)高等専門学校については、その就学者を5年間の課程終了まで保護を行うことによ り、高等専門学校就学が真に世帯の自立助長に実効あるものとするために認められるもの である。
短期大学に進学しようとする者は、高等学校の就学課程を修了し、卒業時において、す でに、一応有利な条件による職業選択の機会があるのであるから、世帯内就学は認められ ない。 ただし、世帯分離により大学における就学が認められる場合もある。
(問1-54)〔夜間大学等の就学〕 保護を受けながら就学の認められる「夜間大学等」の「等」とはどのようなものが あるか。
〔参照〕法 第60条 次 第8-3-(3)-ク 局 第1-3 局 第1-4 局 第1-5 課 第8-40-(2)-オ-(ウ) 問1-55 (答)本人が稼働能力を有している場合にはそれを十分活用していることが必要であるが、 被保護者がその残りの時間をどのように使うかは、基本的には自由である。 なお、実施要 領において定めている「夜間大学等」の「等」には、通信教育専修学校及び各種学校のほ か、更に私塾のようなものも考えられる。 この場合の教育費は生活費から捻出することと なるが、自立更生を目的とした恵与金等により、夜間大学、一定の専修学校及び各種学校 に就学する場合は、入学の支度及び就学のために必要と認められる最少限度の額について 収入認定除外することができる。
なお、大学、専修学校及び各種学校については、世帯分離の扱いができる場合がある。
(問1-55)〔各種学校等での就学〕 高等専修学校(専修学校高等課程)や各種学校での修学が認められるのはどのよう な場合か。 生業扶助の適用と併せて示されたい。
〔参照〕次 第8-3-(3)-ク 局 第1-3 局 第1-4 局 第1-5-(3) 問1-54 問7-134 (答)高等専修学校や各種学校については、技能修得の期間が1年以内(世帯の自立更生 上特に効果があると認められる技能修得については2年以内)の場合、生計の維持に役立 つ生業につくために必要な技能を修得する目的であれば、技能修得費の給付対象となり、 就学が認められることとなる。
一方、技能修得の期間が3年以上の場合は、課 第1の7で示されている要件を満たす高 等専修学校や各種学校に就学し卒業することが世帯の自立助長に効果的であれば、高等学 校等就学費の給付対象となり、高等学校での就学に準ずるものとして就学が認められるも のである。
なお、上記のいずれにも該当しない場合、その就学は、稼働能力を十分活用していると 認められる場合に限り、余暇利用の一形態として認められるにすぎないものであり、生業 扶助を適用することはできない。
(問1-56)〔世帯分離により就学している者の医療費の取扱い〕 世帯分離の取扱いを受けて大学等で就学している者が病気にかかり、医療費の支出 ができない場合は医療扶助を行ってよいか。
〔参照〕局 第1-5 国民健康保険法 第6条第6号 (答)世帯分離の条件として、生活が維持されることが前提であるから、通学しながら治 療できる程度の病気にかかった場合は、その医療費は本来「生活の維持」の範囲内のもの であるから、保護をすべきではない。 しかし、一定期間通学が困難となるような病気にか かった場合には、出身世帯員とともに世帯を単位として保護の要否及び程度を判断し保護 をすべきである。 その後病気がなおって再び通学をはじめたときは、当然その者を世帯分 離しなければならない。
なお、世帯分離され被保護者でなくなった者は、国民健康保険の被保険者となることが できるから世帯分離の取扱いに際して十分これを指導しておく必要があろう。
(問1-57)〔大学就学者の医療費の取扱い〕 大学で就学している単身者が病気のため入院したが出身世帯がなく、自力等による その医療費の支出が不可能である場合の取扱いはどうするか。
〔参照〕局 第1-5 問1-56 (答)大学で就学する者に対しては本来法による保護は行われないのであるが、設問のご とく病気のため入院し働くことができない者に対してまで、大学に在籍していることを理 由に保護を拒むのは適当といえない。 通常の手続により要否及び程度の判定を行って保護 するとともに、休学等の手続をとり授業料その他の負担を免れるよう指導すべきである。
なお、出身世帯がある者については、世帯を単位として要否判定を行わなければならない。
保護の実施機関の要保護者に対する保護の決定実施の責任を実施責任というが、実施責 任を明確にしておくことは、国民が要保護状態に陥った場合にすみやかに保護を受けられ ることを保障するため、また、実施責任には保護に要する費用の負担と密接な関連がある ので、この負担関係を明確にしておくことが実施機関の円滑な事務の遂行のために必要で ある。
保護の実施責任は次のようになっている。
保護の種類 事 項 実施責任の所在 参照条文等 居住地保護 福祉事務所の管轄区域内に居住地 居住地の福祉事務所 法 第19条①Ⅰ を有する要保護者に対する保護 入院前の居住地のある者 又は居住地はないがその同一 入院前の居住地の福祉事 局 第2-1-(2) 管内に確実な帰来先のある入 務所 院患者に対する保護 局 第2-8 現在地保護 居住地がないか、又は明らかでな 現在地の福祉事務所 法 第19条①Ⅱ い要保護者であって、福祉事務所 局 第2-1 管轄区域内に現在地を有する者に 局 第2-1-(1) 対する保護 ただし、入院と同時に、又は入院 入院前の居住地の福祉事 局 第2-1-(3) を直接の契機として居住地を失っ 務所 た者に対する現在地保護の実施責 任は異なる。
急迫保護 他管内に居住地があることが明ら 現在地の福祉事務所 法 第19条② かであっても、要保護者が急迫し た状況にあるとき、その急迫した 事由が止むまでの保護 施設入所保護 生活扶助を行うために他救護施設 入所若しくは入所委託前 法 第19条③ 等の特例 ・更生施設に要保護者を入所若し の居住地又は現在地の福 法 第84条の3 くは入所委託した場合、介護扶助 祉事務所 局 第2-4 を介護老人福祉施設に委託して行 局 第2-6 う場合などの特例。
局 第2-9 局 第2-10 <居住地及び現在地の認定と実施責任の所在> (1)居住地の認定 居住地保護の実施責任は、要保護者の居住地によって定められるが、生活保護でいう居 住地とは、生活保護が最低生活の保障を目的としていること及び保護の実施上世帯単位の 原則によっていることから、その者の属する世帯の生計の本拠となっている場所をいい、 空間的には、居住事実の継続性・期待性がある住居のある場所をいう。
なお、入所している者の居住地の認定については、次のとおりである。
① 施設の性格上、入居者の生活の場所となる場合は、当該施設が居住地である。
ただし、生活扶助を目的とする救護施設・更生施設、介護扶助を目的とする介護老人 福祉施設、養護老人ホーム・特別養護老人ホーム、障害者支援施設などは、当該施設が 居住地となるが、実施責任については法に特別の定めがある(前表参照)。
② 特定の便宜のために施設を利用しており、一定期限の到来とともに従前の場所に復帰 していく性格の施設については、その施設は居住地ではなく、出身世帯の居住地を当該 施設利用者の居住地として認定することとなる。 (保護施設並びに養護老人ホーム及び 特別養護老人ホームに入所している要保護者が病院・療養所へ入院・入所した場合は (局 第2の5、局第2の7)従前の保護の実施機関が引き続き実施責任を負うこととな る。 ) (2)現在地と実施責任 現在地保護の実施責任を定める場合の現在地とは、居住地がないか明らかでない要保護 者が保護を受けることとなった時点における当該要保護者が所在していた場所をいい、例 外的に急病により保護を受けていなかった者が入院し保護申請が行われたときは発病地と される(局 第2の1の(1))。
したがって、A市において現在地保護を受けることとなった被保護者が病状の悪化等に よりB市の病院に委託替えをする場合においても(局 第2の2)依然として実施責任はA 市を所管する実施機関にあることとなる。
また、国立保養所、児童福祉施設への入所又は入所措置は、(局 第2の4、局第2の10) それぞれの根拠法令に基づいて行われるものであり、生活保護法による措置ではないが入 所前又は入所と同時に保護を開始される単身者については、生活支援の観点からは、前述 の指定医療機関への委託と類似するものであるので、実施責任は、入所前の現在地を所管 する実施機関が負うこととなる。 入所者に居住地があればその居住地を所管する実施機関 が実施責任を負うことはもちろんである。
(問2-1)〔実施責任についての規定の意義〕 実施責任についての実施要領の規定は、法にいう「居住地」や「現在地」の解釈に ついての標準を示したものと解してよいか。
〔参照〕法 第19条 次 第2 (答)実施責任は、基本的には生活保護法 第19条各項の規定の解釈により定められるもの である。
しかしながら、「居住地」や「現在地」の取扱いは事実判断の問題としてきわめて困難 な性格のものであるので、実施要領においては、事実判断等で実施機関相互に紛議の起こ り易い事例について、ある程度画一的な認定方法を明示することとしたものである。
したがって、これらの実施要領の規定は、単なる標準例示的な性格の規定ではなく、実 施責任の回避を防止し、財政負担の均衡を確保する見地から、各実施機関に対して拘束力 を有する規定として明定されたものである。
(問2-2)〔居住地保護と現在地保護の違い〕 実施要領の規定するところのうち「居住地保護の例による」と「現在地保護の例に よる」の意味はどう違うのか。
〔参照〕局 第2-1-(2) 局 第2-1-(3) 局 第2-2 (答)保護に要する費用について法73条 第1号の規定が適用されるかどうかの違いがある。
すなわち、現在地保護の例による場合は、市町村が実施機関の場合、支弁した費用の全体 が都道府県及び国の負担となるものである。
(問2-3)〔入院を直接の契機として居住地が消滅した場合〕 A市内の建築業者のもとに見習いとして住み込んで就労していた単身者が、誤って 足場から転落し重傷を負った。 直ちにB市内の病院に運ばれ、入院と同時に保護の申 請があったが、2週間後、住み込み先が引取りを拒絶し、居住関係が消滅した。 この 場合の実施責任はA市にあるか、それともB市にあるか。
〔参照〕局 第2-1-(2) 局 第2-1-(3) (答)設問においてA市内に確実な帰来引受先があればA市の実施機関が居住地保護をし、 そうでなければ、入院を直接の契機として居住地を失った者であるので入院前の居住地で あるA市の実施機関が現在地保護をすることとなる。 いずれにしても、A市が実施責任を 負う。
<参考図> A市 B市 建築業者に住み込み一一→病院 入院後直ちに保護申請 入院2週間後居住地消滅(問2-4)〔入院を直接の契機としないで居住地が消滅した場合〕 夫婦2人の世帯でA市内に居住していたが、妻が発病し、A市内に適当な医療機関 がなかったので、保護を受けてB市内の指定医療機関に入院した。 その後妻は夫と協 議離婚したためA市の居住地は消滅した。 この場合保護の実施責任はA市にあるとし てよいか。
〔参照〕局 第2-1(本文) 局 第2-1-(3) 局 第2-2 (答)A市内に確実な帰来引受先があれば、A市に居住地があるものとして従前の保護の 実施機関(A市)が従来どおり実施責任を負うことは前問と同様であり、帰来引受先がな ければ、現在地である医療機関の所在地を所管する保護の実施機関(B市)が実施責任を 負う。 ところで、設問においては、管外の指定医療機関に委託されているから局 第2の2 が適用されて従前の保護の実施機関(A市)が実施責任を負うのではないかとの疑問が生 ずるのであるが、元来局 第2の2は、いわゆる現在地保護のたらい回しを防止する趣旨に 基づくものであって、当初から居住地がない者に関する規定であるから、入院と関係のな い理由によって居住地が消滅した者についてまで従前の保護の実施機関に実施責任を負わ せる趣旨ではない。 したがって、設問においてA市内に確実な帰来引受先がないときの保 護の実施責任は、医療機関の所在地を所管する保護の実施機関であるB市にある。
<参考図> A市 B市 夫婦で居住一一一→妻入院(保護) その後協議離婚で居住地消滅(問2-5)〔単身入院患者に住宅費が認定されなくなった場合〕 A市内の借間に居住していた単身者が、B市内の病院に入院し、引き続き住宅費を 認定されていたが、入院見込期間が1年を超えることとなり住宅費が認定されないこ ととなった。 この場合の実施責任は従来どおりA市にあるとしてよいか。
〔参照〕局 第2-1-(2) 局 第2-1-(3) 局 第7-4-(1)-エ-(ア) 問7-92 (答)単身入院患者について、入院後6か月以内に退院できる見込みのある場合に限り、 住宅費を認定することができる(局 第7の4の(1)のエの(ア))が、当該住宅費認定 されなくなった場合、それ以後3か月以内に入院を原因として居住地を失ったときの実施 責任は、設問のとおり入院前の居住地を所管するA市にあるものである。
なお、設問の場合、住宅費が認定されなくなった以後3か月を超えて居住地を失ったと きは、病院所在地を所管するB市が現在地保護を行うこととなるので念のため。
<参考図〉 A市 B市 居住(単身者)→→→入院 入院後居住地消滅(問2-6)〔入院中に保護開始になった単身者〕 A市に住居をかまえて勤務していた単身者が、結核のためにB県S町の療養所に入 院した。 この者はA市の国民健康保険の被保険者として国民健康保険法による療養の 給付を受けていたが、給付期間の途中において一部負担金の支払能力がなくなり、保 護の申請をすることとなった。 この場合の実施責任についてはどう判断すべきか。
〔参照〕局 第2-1 (答)申請の時点においてA市に居住地があると認められる場合は、A市が居住地保護の 実施責任を負い、申請の時点においてA市における居住地がすでになくなっていれば、そ の者の現在地を所管する実施機関が実施責任を負うこととなるから、B県が現在地保護を 行うこととなる。 ただし、入院して3か月以内に入院を直接の契機として居住地がなくな った者が申請をした場合においては、A市が現在地保護を行う。
こうした場合の居住地の認定はあくまでも客観的な事実に従うべきことはいうまでもな いことであって、A市の国民健康保険の被保険者であるかどうかは参考となりうるが、法 における居住地の認定と直接の関係はない。
<参考図> A市 B県S町 居住(単身者)一一一一→入院 国保の一部負担金の支拡能力がなくなり申請(問2-7)〔住所不定者が急病により管外に入院した場合〕 居住地のない単身者である甲はA市の病院を退院し、B市に行くつもりで汽車に乗 ったところ乗りすごし、C市で下車した。 C市の道路上で急に腹痛をおこし苦しんで いたところを発見者により自動車でD市の病院に収容された。 翌日病院からD市の福 祉事務所に連絡があったが、甲に対する保護の実施責任はいずれの市の実施機関を負 うか。
〔参照〕局 第2-1-(1) (答)保護を受けていなかった単身者で居住地のないものが入院した場合は、医療扶助又 は入院に伴う生活扶助の適用について、保護の申請又は連絡のあった時点における要保護 者の現在地を所管する保護の実施機関が保護の実施責任を負うこととの取扱いをあらゆる 場合に適用するとすれば、住所不定者等居住地のない単身者が入院を要する場合は所管外 の地域の病院へ入院させることにより責任の転嫁が行われることになりかねない。 これを 防ぐために当該入院者が急病により入院した場合であって、発病地の実施機関に申請又は 連絡を行うことができない事情にあり、かつ、入院後直ちに実施機関に申請又は連絡があ った場合は、発病地の実施機関が責任を負うこととしているのである。 したがって、C市 の実施機関が、甲の現在地を所管するものとして、保護の実施責任を負う。
<参考図> A市 B市 C市 D市 病院を退院一乗りすごし→下車・腹痛→入院・D市福祉事務所に申請(問2-8)〔保護施設から入院した場合〕 A市に居住していた甲は、病気のため、B市内に所在する救護施設に入所したが、 最近になって入院を必要とする状態となりC市の病院に入院した。 この場合の保護の 実施責任は、局 第2の5によればA市にあることになるが、費用負担についてはどう か。
〔参照〕局 第2-5 (答)保護施設に入所している者が入院した場合には施設に入所していたときの保護の実 施機関が実施責任を負うとされているのは、施設入所が継統しているものとして、施設に あるのと同様の取扱いをするとの趣旨である。 したがって、設問においては、A市が居住 地保護を行うべきこととなる。
<参考図> A市 B市 C市 居住一一一一一→救護施設に入所→→→→→→病院 A市居住地保護 入院(問2-9)〔保護施設から入院した者の実施責任と事務費の関係〕 保護施設に入所している者が入院した場合で入院期間が3か月を超えるときは退所 扱いとして事務費が支出されないこととなるが、この取扱いと局 第2の5との関係は どうか。
〔参照〕局 第2-5 昭和53.4.1社施 第64号社会局長通知 問2-8 (答)保護施設に入所している者は、たとえ入院したとしてもそれはあくまでも病気の治 療のための一時的な現象であって、病気が治癒したときは再び保護施設での生活形態に復 帰することが予期されている。 局 第2の5はこの考え方に立脚しており、他方、保護施設 事務費の取扱いは入院患者が入所していた特定の施設に対する費用の支弁の基準を定めた ものであるから、両者の取扱いが異なるとしても矛盾はないものである。
(問2-10)〔委託替えをした場合〕 A市に居住していた被保護者甲を当初B市所在の更生施設に入所委託したが、甲の 希望もあって、C市所在の更生施設に委託替えをした。 この場合法 第19条第3項に いう「入所前の居住地」は、A市か、B市か。
〔参照〕法 第19条第3項 (答)施設入所は生活扶助の方法のひとつであって、入所による保護が継続している以上、 入所し、又は入所を委託された施設がかわっても、「入所前の居住地」はかわらない。 し たがってA市である。
(問2-11)〔自費で施設に入所している者が保護申請をした場合〕 甲と甲の娘乙とその夫丙とは、同一世帯としてA市に居住していた。 A市内の内部 障害者更生施設が満員のため、甲をB市所在の更生施設に入所させ、甲の生活費は乙 が仕送りすることとなった。 2年後、乙は仕送りを継続することができなくなったた め、甲は生活に困窮し、A市の福祉事務所に保護の開始申請をした。 この場合甲の居 住地は、入所中の施設にあると考えられるので、甲の保護の実施責任は、当該施設の 所在地を所管するB市の実施機関が負うと解するかどうか 〔参照〕法 第19条第1項、第3項 (答)法 第19条第3項の規定により入所前の居住地又は現在地を所管する保護の実施機関 が保護を行うのは、法 第30条第1項ただし書の規定により入所し又は入所を委託した者に 限られるから、自費で施設に入所した者が要保護状態になった場合は、その時点における その者の居住地を所管する保護の実施機関が保護を行わなければならない。 施設入所者の 居住地は当該施設にあると解すべきであるので、結局、施設所在地の保護の実施機関が保 護を行うべきこととなる。 したがって設問においては、お見込みのとおりB市の実施機関 が甲の保護の実施責任を負う。
なお、このように解した場合、施設所在地の都道府県又は市町村に財政的負担を課する 結果となるが、居住地保護の原則からみてかかる負担はやむを得ないものと考えられる。
<参考図> A市 B市 甲一一一一一更生施設 乙=丙 乙が仕送り 居住 2年後仕送り不能となり甲保護申請(問2-12)〔更生施設に入所している者で保護を再申請した場合〕 A市の保護の実施機関によりB市所在の更生施設に入所を委託された者が、一時に 多額の収入を得たため保護の廃止決定を受け、その後しばらくして再び保護の申請を した場合の実施責任はどうか。
〔参照〕法 第19条第1項、第3項 (答)設問のような場合の保護の実施責任の取扱いは、問2-11の場合と同様である。 す なわち、施設所在地を所管する保護の実施機関が保護を行う。 設問では、B市の実施機関 となる。
(問2-13)〔障害者自立支援法に規定する共同生活援助を行う住居に入居している者 についての実施責任〕 A県a市に居住していた甲(単身者)が、治療のためB県b市の医療機関、C県c市 の医療機関と転院した後、平成19年4月にD県d市にある障害者自立支援法に規定する 共同生活援助を行う住居(グループホーム)に入居した。 その後、甲から保護申請が あった場合の実施責任及び費用負担はどうなるか。
〔参照〕法 第19条第3項 法 第30条第1項 法 第84条の3 障害者自立支援法附則 第80条、81条 局 第2-1(本文) 局 第2-1-(2) 局 第2-1-(3) 局 第2-9 (答)法 第84条の3については、通常居住地(起居の継続性及び期待性が備わっている場 所)として認定すべき施設に関して、当該施設入所者を法 第30条第1項ただし書きの規定 により入所しているものと見なし、その居住地について、法 第19条第3項の規定により施 設所在地ではなく、入所前の居住地と擬制したうえで、保護の実施責任をこの「擬制され た居住地」をもって定めることが規定されているものである。
また、この規定は、施設に入居している者の居住地の設定に関する規定でもあり、被保 護者と要保護者の区別を行っていないものと解されることから、当該設問のように、障害 者自立支援法に規定する共同生活援助を行う住居(グループホーム)に入居中に要保護状 態に陥り、保護の申請があった場合における当該要保護者の居住地についても、入居前の 居住地又は現在地にあるものとし、これを所管する実施機関が保護の実施責任を負うもの と整理するものである。 (ただし、法 第84条の3の規定は、平成18年4月1日以後に障害 者自立支援法に規定する共同生活援助を行う住居(グループホーム)に入居する者につい て適用されるものである。 ) したがって、実施責任を判断するにあたっては、法 第84条の3に定める施設の入所前の 居住地又は現在地により判断することになる。 当該設問については、C県c市の病院所在 地を居住地又は現在地として、D県d市の施設入所直前の時点における状態により、次の とおり判断することになる。
(1)すでに居住地が消滅しているとき(入院3か月を超えている場合及び、入院を直接 の契機としないで居住地が消滅した場合) 局長通知 第2の1により、居住地のない入院患者については、その現在地である医 療機関の所在地を所管する保護の実施機関が実施責任を負うことになるため、C県c 市が実施責任を負うことになる。 また、現在地保護の例により、法 第73条第1号の規 定が適用されるため、C県に費用負担が生じることになる。
<参考図> 法 第84条の3 居住地消滅 ①入院 ②転院 ③入所 A県a市 B県b市 C県c市 D県d市 医療機関 医療機関 障害者支援施設 居住地又は現在地 ④保護申請 3か月経過 (擬制された居住地) 局 第2の1 (2)A県a市に確実な帰来先があるとき 局長通知 第2の1の(2)により、本人が退院後必ずその地域に居住することが予 定されているときは、入院前の居住地を所管する保護の実施機関が実施責任を負うこ とになるため、A県a市が実施責任を負うことになる。 この場合には、居住地保護の 例によるものであるため、法 第73条第1号の適用がないため、A県の費用負担は生じ ないことになる。 <参考図> 法 第84条の3 ①入院 ②転院 ③入所 A県a市 B県b市 C県c市 D県d市 (居住地) 医療機関 医療機関 障害者支援施設 居住地又は現在地 ④保護申請 (擬制された居住地) 局 第2の1の(2) (3)入院後3か月経過しておらず、かつ、入院を直接の契機として居住地が消滅したと き 局長通知 第2の1の(3)により、入院後3か月以内に入院を原因として居住地を 失った者については、入院前の居住地を所管する保護の実施機関が実施責任を負うこ とになるため、A県a市が保護の実施責任を負うことになる。 また、現在地保護の例 により、法 第73条第1号の規定が適用されるため、A県に費用負担が生じることにな る。 <参考図> 法 第84条の3 ③3か月以内 居住地消滅 ①入院 ②転院 ④入所 A県a市 B県b市 C県c市 D県d市 (消滅) 医療機関 医療機関 障害者支援施設 居住地又は現在地 ⑤保護申請 (擬制された居住地) 局 第2の1の(3)(問2-14)〔施設長に対して行う葬祭扶助〕 B市内の保護施設にA市の実施機関が入所を委託した者が死亡し、施設長がその葬 祭を行う場合、施設長に対して行う葬祭扶助の実施責任の所在はB市の実施機関か、 A市の実施機関か。
〔参照〕法 第18条第2項第1号 局 第2-11 (答)法 第18条第2項第1号の規定に基づく、死亡した被保護者の葬祭を行う者に対して 行う葬祭扶助の実施責任は、死亡した被保護者に対してこれまで保護を実施していた保護 の実施機関が負うこととされている。 これは、保護金品が交付されるのは葬祭を行う者で あるが、実質的には死亡した者に効果が帰属することを考慮し、これまでの保護の実施機 関に責任を負わせたものである。 費用負担区分についても、死亡前と同様に取り扱うのが 適当である。 したがって、設問では実施責任はA市の実施機関にある。
(問2-15)〔養護老人ホーム入所者からの保護申請〕 養護老人ホーム入所者に対する保護の実施責任はどのように定められるのか。
〔参照〕法 第19条第3項
〔例 A市に居住していた単身者甲あるいはA市に居住する孫夫婦の世帯にあった乙が、 老人福祉法の措置によりB市所在の養護老人ホームに入所している〕 (1)甲又は乙が通院による医療扶助を要するとき。 生活保護法 第84条の3(老人福祉法 制定の際に加えられた条項)の規定により法 第19条第3項が適用されるので、保護の 実施責任は「その者の収容入所前の居住地又は現在地によって定め」られ、A市が負 うこととなる。
(2)甲又は乙が入院による医療扶助を要するとき。 この場合も(1)と全く同様である。
ただ、入院中に甲又は乙に対する老人福祉法による措置が廃止された場合は、生活保 護法 第84条の3が「その者がこれらの施設に引き続き入所している間」についての規 定であるところから、法文上当然にA市が実施責任を負うものとはいえなくなる。 し かしながら、このような場合、新たに実施機関を定めることは、かえって保護の実施 の円滑を欠き、保護の実施の不当な回避を来すおそれがあるので、引き続きA市が実 施責任を負うものと定められている。 保護施設についても同様の趣意による定めがあ る。
(3)(1)又は(2)のいずれかによる保護の実施中に乙の出身世帯がC市へ移転したと き。 乙に対する保護の実施責任はあくまで「入所前の居住地」によって定められてい るわけであるから、いずれもA市の実施責任にかわりはない。 したがって、乙の出身 世帯員である孫夫婦が保護を受けているような場合には、乙についてはA市が、孫夫 婦についてはC市が保護の実施責任を負うことも生じる。
(4)甲又は乙が他法による医療費負担を受けて入院したとき。 入院と同時に入院患者日 用品等の支給申請があったような場合は、引き続きA市が実施責任を負うこととなる が、入院後日時を経て保護を要するに至ったときは、その時点での居住地又は現在地 により実施責任が定められる。
(問2-16)〔テントや段ボールハウス等で生活する者〕 テントや段ボールハウス等で起居している者から生活保護の申請があった場合、そ れら起居している場所を居住地として保護することは認められるか。
〔参照〕平成15年7月31日社援保 第0731001号保護課長通知 (答)テントや段ボールハウス等で起居している者に対し、住所がないことを理由に申請 を拒むことはできない。 しかし、テントや段ボールハウス等は、仮に将来における起居の 期待性がある等その居住関係が相当程度安定している場合であっても、居住地とすること はできない。 また、テントや段ボールハウス等で起居している状態のまま現在地保護を行 うことも適当ではない。
このような場合においては、保護の申請を受けた実施機関は、通常のホームレスに対す る保護の適用の例に従い、保護を要する状態にあれば、居宅生活が可能か否かの判断を行 い、保護施設等又は居宅において保護を行うこととなる。 また、就労意欲と能力はあるも のの失業状態にあって、各種就労対策を実施しても就労が困難と判断された者については、 自立支援センターへの入所を検討することとなる。
(問2-17)〔飯場を転々とする者〕 単身の労務者がいわゆる飯場を転々としている場合は、居住地がないものとすべき と考えられるが、長期間滞在する場合もそのように理解してよいか。
〔参照〕次 第2 (答)いわゆる飯場は、事業が完了するまでの間の仮設の宿であるから、原則として、こ れを居住地と認定するのは不適当である。 ただし、土木工事等でかなり長期間にわたるも のも考えられるので、工事期間、就労の安定性等を考慮した場合に居住地と認めるのを適 当する事例があるかもしれないが、あってもそれは例外であろう。
(問2-18)〔現在地の認定〕 工事期間中A市の飯場で寝泊まりしている居住地のない単身者の労務者が、B市の 工場現場で働いている最中に発病しB市の病院に入院した場合、実施責任はA市とB 市のどちらにあるか。
〔参照〕局 第2-1-(1) (答)居住地がない者の実施責任は、現在地により定められる。 ところで設問の場合につ いてみると、問2-17の(答)の本文に従って飯場は事業を完了するまでの間の仮設の宿 であるから、原則としてこれを居住地と認定するのは不適当であるとしても、寝泊まりの 場所となっていることから、A市が現在地と解される余地があるようにも思われる。 しか しそのような解釈をとった場合、どこまでを現在地としてとらえるかということについて 極めて複雑多様になり、結果として具体的判断をすることが不可能になるもとのと思われ る。
よって、居住地がない者については、あくまでも保護を開始する場合の瞬間的事象の場所 を現在地としてとらえざるを得ず、設問の場合は、A市の飯場が居住地として認定されな い以上、現に本人の身柄が存在するB市を所管する実施機関が実施責任を負うと解するの が適当である。
なお、B市以外の病院に入院した場合であっても、B市の実施機間に対し申請又は連絡 を行うことができない事情にあったことが立証され、かつ入院後直ちにB市の実施機関に 申請又は連絡があった場合には、発病地であるB市を所管する実施機関が実施責任を負う こととなるので念のため。
(問2-19)〔簡易宿泊所に滞在する者〕 一定の簡易宿泊所(いわゆるドヤ)に引き続き滞在している単身者は、何日間滞在 すれば当該宿泊所に居住地を有するといえるか。
〔参照〕次 第2 (答)一定の宿泊所に引き続き滞在している者であっても、滞在日数により一律に居住地 の有無を決めることは適当でなく、事例ごとに判断するほかない。 一般に、相当期間引き 続き居住した事実があり、かつ将来における居住の期待性が認められる場合は居住地とし て取り扱うべきである。
なお、それ以外の場合は居住地として取り扱うことは適当ではないが、このことは簡易 宿泊所を住所として保護を行うことを妨げるものではない。 例えばホームレスの者から保 護申請があった場合であって他に入所できる適当な施設がない場合には、一時的に簡易宿 泊所に入居させ保護を実施することも想定されるが、この場合の簡易宿泊所は現在地とし て取り扱うこととなるので留意されたい。
(問2-20)〔更生保護施設の宿泊所にいる者〕 更生保護施設は、刑の執行を終えた者等に対し、宿泊所を供与し、社会生活に適応 させるために必要な生活指導を行う等、その者に必要な更生保護を行っているが、委 託保護の期間(6か月)が終了し、更生保護法による更生緊急保護の対象とはならな くなっても、引き続いて同施設の宿泊所に滞在していて用務の手伝い、日雇労働等に 従事している者は、当該宿泊所に居住地があると解してよいか。 また、基準生活費の 計上はいかにしたらよいか。
〔参照〕次 第2 (答)前段については、6か月の更生保護の期間(委託可能期間の限度)を満了し引き続 き更生保護施設に在所する者の居住関係が、一般の居宅におけるのとほとんど変らない程 度に安定していれば、お見込みのとおりである。
また、6か月を待たずして委託保護を終了し引き続き更生保護施設に滞在する者につい ては、一般的には生活保護を必要とすることにはならないと考えられるが、そのような者 でも更生保護法の目的は達成されたものの引き続き更生保護施設に滞在させることが適当 であり、その居住関係も一般の居宅におけるのとほとんど変らない程度に安定し、かつ生 活保護の要件を満たす例外的な場合は、更生保護施設等と十分連絡をとり、更生保護施設 の宿泊所を居住地として保護しても差し支えない。
後段については、居宅基準の例により行われたい。
なお、委託保護中の者については、更生保護法により必要な生活需要は満たされること となるので、医療扶助を除き基準生活費の計上の必要はないので念のため。
(問2-21)〔住み込み就労している者〕 A村の中学校を卒業してB市の商店に住み込んで就労している者の居住地は、その 者が年に何回か、郷里へ帰ることがあっても、B市にあると解してよいか。
〔参照〕次 第2 (答)この場合は、社会通念からみて、出かせぎとは事情が異なり、本人が従来の親元に おける生活関係から離れて就労先に居住場所を落ち着けたものと考えられるから、B市に 居住地が移転したと解される。
(問2-22)〔災害による避難〕 A市に居住していた世帯が火災のため家屋を焼失しやむなくB市の親族のもとに一 時身をよせていたが、生活困窮の理由でB市の実施機関に保護の開始を申請した。 こ の時点において、実施責任はA、Bいずれの市の実施機関にあるか。
〔参照〕次 第2(なお書) (答)その世帯のB市における滞在が災害に起因する一時的な現象であってA市における これまでの居住関係、職業等を考慮すればA市において将来も居住を継続するであろうと 認められる場合は、A市に居住地があると認定し、A市の実施機関が保護を行う。 これに 反し、災害による避難を契機として以後B市に居住することが明らかである場合は、B市 に居住地があると認定し、B市の実施機関が実施責任を負う。 もしA、Bいずれの市にも 居住地があるとは認められない場合であれば、現在地を所管するB市の実施機関が保護を 行うこととなる。
なお、一般に、現にその場所で起居していなくても、他の場所で起居していることがま ったく一時的な便宜のためであって一定期限(不確定でもよい)の到来とともに、必ずそ の場所に復帰して起居を継続していくことが確実であるときは、その場所が居住地となる。
(問2-23)〔出かせぎとは認められない場合〕 甲は、中学校卒業後しばらくX県A村の両親のもとで農業に従事したが、その後労 働者として各地の飯場を転々として生活し、その間年に数回程度両親のもとに帰省し そのつど収入の一部を両親に渡していた。 たまたまB市内の土木工事に就労中負傷し 保護を要する状態となったが、その場合甲に対する保護の実施責任はどうなるか。 な お、甲は退院後両親のもとへ帰りたいとの希望をもっているが、X県の両親は、甲の 医療費を負担することができない。
〔参照〕局 第1-1-(1) 局 第2-1-(1) (答)甲が1年に数回程度両親のもとに帰り、そのつど収入の一部を渡しているという事 実があっても、これをもって、甲の就労が出かせぎであると断定することはできない。 む しろ、甲と両親は生活保持義務関係にないこと、甲は生計中心者でないこと等から判断す れば甲の就労は将来出身世帯へもどることが予定されている一時的な出かせぎではなく、 親元をはなれて独立の生計を営むに至ったものであって、甲と両親は別世帯と認められる。
したがって、甲は単身者としてB市において現在地保護すべきである。
(問2-24)〔世帯と実施責任の不一致〕 同一世帯について2以上の実施機関が保護を行う場合はあるか。 もしあるとすれば どういう場合か。
〔参照〕法 第30条第1項ただし書 局 第2-1 課 第7-89 問2-34 (答)居住を一にしていないが同一世帯と認定される場合は出身世帯の居住する地に居住 地があるものとされているので、同一世帯につき2以上の実施機関が保護を行う場合は少 ない。 しかしながら、法による保護の実施責任は、一人一人の要保護者について定められ るものであるから、事例によっては、世帯と実施責任が、一致しない場合も生じてくるの はやむを得ない。 次の場合はその例である。
(1)世帯員のいずれにも居住地がない場合 例 夫婦2人だけの世帯で、夫はA市、妻はB市の病院へ入院していたが、生活に困窮 して保護を申請した場合 (2) 夫婦の双方がそれぞれ別々に認知症対応型共同生活介護等に入居した場合 (3)保護施設に入所している者の出身世帯が移転した場合 (4)急迫保護の場合
(問2-25)〔世帯と実施責任が一致しない場合の取扱い〕 同一世帯につき保護の実施責任が分かれる場合、実施機関としてはどのように取り 扱ったらよいか。
(答)同一世帯につき保護の実施責任が分かれる場合には次の2種があるから、取扱いを 区別する必要がある。 説明の便宜上実施責任がA市及びB市の両方に分れる場合とする。
なお、3以上の実施機関に分散することはほとんどないものと考えられるが、もしあっ た場合は、以下の取扱いを応用すればよい。
(1)別個に取り扱うとすれば両方の個人又はグループが保護を要するとき 問2-24の答(1)の例はこれにあたるであろう。
(2)別個に取り扱うとすれば、一方が保護を要するとき 例 夫と妻2人だけの世帯で夫はA市の病院に入院中であり、妻は家政婦としてB 市内の家庭を転々として働いているため居住地がない。
(1)については、A市及びB市がそれぞれ別個に、実施責任を負う者だけを保護する。
(2)については、保護を要する個人又はグループの現在地を所管する実施機関だけが、 保護を行う。 この場合、あくまで同一世帯として認定しているものであるため保護を要し ない者の収入のうち、必要経費とその者の最低生活費の合計額を上まわる部分を、収入と して認定すべきである。 ただ、収入を得ている者が遠くにいるなど認定が困難な事例もあ ると思われるが、このような場合であっても、漫然と保護を行うことは適当ではなく、で きる限りの努力をしなければならない。
なお、(1)又は(2)のいずれについても、世帯員のひとりに居住地が生じたときは、 実施責任及び費用の負担区分が変動するし(1)、(2)相互間の移動によって保護の要否、 程度が変わるので、実施機関の間において密接な連絡を行う必要がある。
(問2-26)〔帰来の期待性〕 夫がA市の病院に入院し、妻がB市の飲食店に住み込んで働いている世帯から、保 護の開始の申請があった。 妻の就労形態から考えて妻の住み込み先が夫の退院後の落 着き先となることはほとんど期待できないが、この場合の保護の実施責任はどうなる か。
〔参照〕局 第2-1-(2) 局 第2-12-(1) 問2-25 (答)B市における居住関係は、妻の住み込み就労に基づくものであるから、夫とは無関 係であるという考え方も成り立つのであるが、居住を一にしていないが同一世帯と認定さ れた者については出身世帯の居住する地に居住地があるものとして認定することとされて いる。 したがって、妻が収入の一部を夫に仕送りする等同一世帯として認定すべき場合で あって、妻の居住関係が相当安定していれば夫及び妻の居住地はB市にあることとなり、 それ以外の場合には、夫、妻のそれぞれにつき、現在地保護をすべきこととなる。
(問2-27)〔他管内に確実な帰来先がある場合〕 A市に居住地を有していた単身者が、法による医療扶助が行われるものとして、B 市所在の医療機関に入院した。 この者のA市における居住地はなくなったが、C市に おいて、新たに確実な帰来先が生じたものと認められる場合、実施責任はC市にある としてよいか。
〔参照〕局 第2-1(本文) 局 第2-1-(3) (答)設問においては、入院と同時に又は入院後3か月以内に入院を直接の契機として居 住地がなくなった場合はA市が、それ以外の場合はB市が、それぞれ現在地保護を行うこ ととなり、C市には実施責任はない。 また、その者が、入院後3か月を経過した後におい て保護申請をした場合は原則にもどり医療機関の所在地の実施機関が責任を負うこととな るので、他法又は自費によって入院し、入院後3か月以内に入院を直接の契機として居住 地を失ったものであっても入院後例えば半年経過して要保護状態となり保護の申請があっ たときは、B市が現在地保護の実施責任を負うことになる。
(問2-28)〔帰来の意思はあるが、住民登録を他市にしている場合〕 甲は妻とともにA市において農業に従事しているが、冬期は積雪がひどいので、妻 はB市に出かせぎに行くのが常である。 ところが某年6月、甲は白内障のためB市に 所在する病院に入院したので、妻もB市へ行って就労しながら、甲の世話をしている 農業の方は親戚が面倒をみており、甲は退院後帰来するつもりであるので家もそのま まにしてある(現在は誰も住んでいない)が、住民登録はB市で行っている。 甲は医 療費を支払うことができないのでB市に保護の申請をしてきたが、この場合甲に対す る保護の実施責任はB市にあるか、それともA市にあるか。
〔参照〕次 第2 (答)まず甲の妻の居住地がいずれにあるかを検討してみるに、妻が現在B市に在住して いるのは、あくまでも甲の入院に伴う一時的な目的のためであり、その居住地がA市から B市に移転したと解されない。 したがって、妻の居住地は依然としてA市にあり、また甲 も退院後A市に帰来する意思を有しており、A市における入院前の居住地が甲の居住地と 認定されるべきである。 なお、住民登録などは、居住地認定のための有力な参考資料では あるが、必ずしも絶対的なものではない。 以上のことから甲に対する保護の実施責任はA 市であることが明らかである。
(問2-29)〔家族全員の入院〕 家族全員が同一の病院に入院している場合であっても、当該病院に居住地があると は認められないか。
〔参照〕局 第2-1-(3) (答)病院は、医療という限定された特別の目的のために存在するものであり、入院は傷 病の治療のための手段又は傷病の治療に伴う付随的な現象にすぎず、傷病が治癒すれば病 院内における生活関係が終了することはあらかじめ予定されている。 その意味において、 入院は一時的な居住に似た関係を形づくるにとどまるのであって、これは家族全員が同一 の病院に入院していても同様であるから、設問の場合当該病院に居住地があるとは認めら れない。
(問2-30)〔出身世帯員の付添い〕 夫婦のみの世帯で夫が入院し、妻はその付添看護のため病室に宿泊していたが、最 近訪問したところ、妻は一週間ほど前にこれまで居住していた借間を引き払って病院 内に居を移していることが判明した。 この場合妻の居住地は病院内に移転したと考え てよいか。
〔参照〕局 第2-1-(3) 問2-32 (答)設問において妻は病院内で日常の起居を行っており、しかもこれは入院治療のため ではない。 このことから、妻の居住地は病院にあるとの議論も生ずるかもしれないが、こ の説は、やや形式に流れるもので適当とはいえない。 妻が病院にあるのは、たまたま夫が 当該病院に入院中であって、その介護に従事する等の理由に基づき病院内で生活する必要 を生じたからであり、夫の退院に伴い当然現在の生活状態は終了するであろうことが予定 されているのである。 したがって、入院患者である夫と妻の病院内の居住関係はほぼ同様 であると認められるから、妻の居住地は病院内にはなく、病院を現在地として保護を行う べきである。
(問2-31)〔外国から帰国した者〕 外国から帰国し直ちに保護を必要とする者の保護の実施責任はどこにあるか。
〔参照〕昭44.4.11社保 第95号社会局長、児童家庭局長、援護局長連名通知 (答)帰住地がある場合であって帰住先が出身世帯であるときはその帰住地を居住地とし、 そうでないときはその帰住地を現在地とみなして、それぞれ保護の実施責任を定められた い。
また、帰住地がないか、明らかでない場合は、上陸地又は着陸地を現在地とみなして保 護の実施責任を定められたい。
(問2-32)〔出身世帯の移転-その1〕 夫甲、妻乙及び子丙の3人によりなる世帯で甲が入院し生活の維持が困難となった ので、居住地であるA市において保護を受けた。 某年某月乙は丙をB市に居住する姉 のもとに預け、B市内の病院に看護師として住み込み就労したが、1か月後乙はA市 におもむき実施機関に対しB市に転居する旨の申立てを行い、同月末日甲は乙の就労 する病院に転院した。 しかし、甲の転院後も約50日間家財道具は前の住居にあり、乙 が家賃を払っている事実がある。 この場合において居住地はB市に移転したといえる か。 また、移転したとすればいつ移転したと判断すべきか。
〔参照〕局 第2-1-(3) 問2-30 (答)設問において、甲、乙及び丙が同一世帯に属すること、並びに乙が出身世帯の生計 中心者であることは異論がないから問題は乙の居住地がA、Bいずれの市にあるかである。
乙はB市内の病院に寄宿し、看護師として就労していたのであるが、かかる場合において も、その状態が相当安定したものであれば、病院の寄宿舎を居住地として認定すべきであ る。 設問については、乙の転居するとの申立て、甲の転院の事実等より判断するに、甲の 転院時をもってA市における居住関係は希薄となり、前の住居の家質を払っているとして もそれは家財道具の当座の保管のためと認められ、反面、B市における居住関係は相当安 定性を持つに至ったことが認められるから、甲の転院日の翌日以降はB市に世帯の居住地 があると認めるのが妥当である。
<参考図> A市 B市 甲 乙 丙をB市の姉に預け B市の病院に住み込む 丙 就労1月後市に転居申立て同月 末甲も乙の勤務する病院に転院(問2-33)〔出身世帯の移転-その2〕 甲は妹乙とともにA町に居住していたが乙がB町所在の病院に入院したため、借家 を引き払いC市所在の病院に住み込み就職した。 甲は、乙の退院後は引き取る旨を申 し出ている。 この事例において保護の実施機関はC市の実施機関と解してよいか。
〔参照〕局 第2-12-(1) 問2-25 (答)甲乙間の生計関係等からみて、将来、引取りの意思が相当確実であって、かつ、甲 の移転が単に就労のためであり世帯の分解を意味するものでない限り、甲及び乙は同一世 帯に属すると解するのが適当である。 したがって甲のC市における居住関係が相当安定し ている場合は、C市の実施機関がこの世帯の保護の実施責任を負い、甲の居住関係が不安 定である場合には、乙の入院している病院所在地のB町を所管する実施機関が乙の保護を 行うべきこととなる。
<参考図> C市 A町 B町 居住 病院に住み込み就職 ← 甲 乙→入院(問2-34)〔出身世帯の移転-その3〕 A市に居住する被保護世帯のうち、1人が保護施設に入所したが、その後出身世帯 員がB市へ移転した。 この場合施設入所者及び出身世帯の実施責任はどうなるか。 も しも実施責任が分散するとすれば、世帯の認定と実施責任の関係はどうか。
〔参照〕法 第30条第1項ただし書 局 第2-12-(1) 問2-25 (答)法 第30条第1項ただし書の規定により保護施設に入所した者に対する保護の実施責 任は、法 第19条第3項の規定においてその者の入所前の居住地又は現在地によって定める こととされているから、仮にその者に出身世帯があり、管外に移転したとしても、当該施 設入所者の保護の実施責任は変動しない。 一般にこのような事例においては施設入所者と 出身世帯との間に生計同一関係が存在することは少ないので、出身世帯の移転時に別世帯 と認定する場合が多いと推測されるが、この場合は別として、なお同一世帯と認定される 事例については、同一世帯に対し二つの保護の実施機関が保護を行う(実施機関の分散) こととなる。 実務上は、設問のごとく施設入所者と出身世帯員がともに保護を要する場合 は、世帯が同一であるか否かにかかわりなく、それぞれの保護の実施機関において別個に 取り扱うべきである。 また、局 第2の12は法第19条第1項及び第2項の規定に基づく居住 地又は現在地の認定に係る具体的取扱いの指針であるから、同条 第3項の規定に関する上 記の解釈と矛盾しない。
(問2-35)〔出身世帯の移転-その4〕 A市に居住地を有する夫婦及び子からなる世帯につき保護が行われていたが、夫が 入院した。 A市は、引き続き保護していたところ、最近妻が住み込みによって収入を 得るために子とともにB市に居住の場所を変えた。 この場合の実施責任は、いずれの 市の実施機関にあるか。
〔参照〕局 第1-1 局 第2-12-(1) (答)居住を一にしていないが同一世帯に属していると判断すべき場合、入院患者の出身 世帯が移転した場合にはその移転先を入院患者の居住地と認定することとされている。 し たがって、夫と妻とを同一世帯として認定すべき場合であって、妻の居住関係が相当安定 したものであれば、妻子の居住するB市に世帯員全体の居住地があるものと認めるのが妥 当である。
(問2-36)〔出身世帯の分散-その1〕 夫婦と子1人からなる世帯において、夫甲がA市内の病院に入院したため、妻乙は 子丙をB村の親戚に預け、自分はC市の旅館に住み込んで働き甲及び丙に仕送りをし ている。 このことから乙は生計中心者と考えられる一方、甲の入院は相当長期にわた ると見込まれる。 この世帯に居住地はあるか、もしあるとすればB村か、それともC 市か。
〔参照〕局 第2-12-(2) 問2-37 (答)丙が親戚に預けられたのが一時的なものでないとすれば、丙の居住地はB村にある と認められる。 次に、乙については、たとえ住み込みという形であっても、その居住関係 が安定しているならば、居住地はC市にあるといえる。 このように出身世帯員が分散して いることにより、居住地が明らかでない場合は、生活の本拠として最も安定性のある地を 居住地とし、これによりがたいときは生計中心者のいる地を居住地とすべきこととされて いる。 設問において乙の住み込み先が生活の本拠となるかどうかは問題があろうが、妻で ある乙は本世帯の生計中心者であることは異論のないところから、いずれにせよ、C市が この世帯の居住地となる。
(問2-37)〔出身世帯の分散-その2〕 甲は、妻がB市の病院に入院したため子の養育をA市に居住する姉に依頼し、自分 は漁船に乗り組んで遠洋漁業に従事しているが、数か月に1回、帰るたびに姉のもと に滞在し、その際子の生活費を渡している。 この世帯の保護の実施責任についてはど う考えたらよいか。
〔参照〕局 第2-12-(2) (答)前問と同様出身世帯員が分散している例であるが甲は漁船に乗り組んで遠洋漁業に 従事し、数か月に1回帰港するのみであり、居住地がないかのように見える。 しかしなが ら甲の子はA市に居住する甲の姉のもとにあり、甲自身も帰港するたびに姉の住居に立ち 寄り、その際の生活費を渡している事実があるから、当該世帯の生活の本拠は子の居住す るA市にあると考えられる。 したがって、A市を居住地として、甲、妻及び子の3名から なる世帯の保護の実施責任を定めるのが適当である。
(問2-38)〔子を預けて入院している場合〕 甲は3年前夫と協議離婚し、子乙及び丙を引き取ってA市のアパートで養育してき たところ、結核を発病した。 そこで、乙及び丙をB市に居住する妹の家庭に預け、A 市のアパートを引き払った上でC市の病院に入院したが、医療費の支払いに困窮し保 護の申請をした。 主治医の話によれば、甲は治癒までに相当長期の療養を必要とする とのことである。 この場合の保護の実施責任の所在はA市、B市、C市いずれの実施 機関にあるか。
なお、甲から乙及び丙への仕送りはなく、乙及び丙は甲の妹の居住地から中学校に 通学している。
〔参照〕局 第1 局 第2-1-(3) (答)この場合、まず甲と乙及び丙を同一世帯として取り扱うか否かが問題となる。 甲と 乙及び丙が生活保持義務関係にあること、甲の入院前同一世帯にあったこと並びに乙及び 丙が甲の妹の家庭において養育されているのは甲の入院に基づくものでその意味では暫定 的なものであることを理由に、甲と乙及び丙を同一世帯として取り扱うという考え方もあ りうる。 しかし、乙及び丙について考察すれば、甲との間の生計同一関係は甲の妹との間 のそれと比較してきわめてうすく、甲が短期間で退院し再び乙及び丙と生計を一にする見 込みがない以上、乙及び丙は甲の妹に引き取られてその世帯員となったものと解される。
したがって、甲は単身者として取り扱うことが適当であり、その場合の実施責任につい ては局 第2の1の(3)の定めるところにより、入院後3か月以内に保護の申請があれば A市が、入院後3か月を経過した後に保護の申請があればC市が現在地保護の例により保 護の実施責任を負うものである。
(問2-39)〔出身世帯員が引き取られた場合〕 A市内の病院に入院している甲にはA市に居住する弟乙及び祖母丙からなる出身世 帯があったが、乙は中学校卒業と同時にB市に居住する伯母丁(丙の娘)の世話でB 市内の商店に住み込み就職した。 その後丙の老衰がひどくなったため、丙は丁のもと に引き取られた。 この事例において甲の実施責任はB市に移るか。
〔参照〕局 第2-1(本文) 課 第2-1 (答)丁が丙を引き取ったのが、甲が退院するまでの間の暫定的なものというよりはむし ろ丙の老衰に基づき将来の生活のめんどうをみるためであれば、丙の生計同一関係は甲と の間より丁との間の方が強いと判断されるから、甲と乙とをなお同一世帯と認定すべき確 実な根拠がない以上、丙が丁に引き取られた時点において甲と丙とからなる世帯は分解し 甲は単身者となったと見るのが適当である。 この場合、甲の保護の実施責任はB市には移 らず、A市内の家屋を引き払って居住関係が消滅しているときは現在地保護を、依然とし て家屋があるときは居住地保護をA市が行うこととなる。
しかしながら、甲の退院が近い将来において見込まれており、それまでの間の暫定的な 引き取りであれば、通常A市内の家屋を引き払うことはないので、出身世帯員丙及び甲の 居住地はなおA市にあると解される。
(問2-40)〔全世帯員が別の病院に入院している場合〕 兄弟2人の世帯において2人とも発病し、それぞれ別の病院に入院したが、3か月 以上たって居住地は消滅した。 この場合保護の実施責任はどこにあるか。
〔参照〕局 第2-1 問2-24 (答)兄弟がなお生計同一の状態にあると認められる場合は同一世帯とすべきであるが、 すでに入院後3か月以上経過して居住地が消滅したのであるから、同一世帯であるかどう かにかかわりなく、両人を別々に取扱い、病院所在地を所管する保護の実施機関が現在地 保護を行うこととなる。
(問2-41)〔世帯分離後の世帯の分解〕 A市に住む甲とその子乙の2人の世帯で甲が数年前からA市内の病院に入院し保護 を受けてきたが、乙が中学校を卒業し稼働するようになったので世帯分離をした。 最 近乙はB市の会社に就職し、A市のアパートを引き払いB市に所在する会社の寄宿舎 に入居したので、甲の保護の実施責任は、課 第2の2の答によりB市に移ったと考え られるかどうか。
〔参照〕課 第2-2 (答)課 第2の2の答の取扱いは、入院患者に世帯分離を行わないとすれば同一世帯員と 認定される者があり、局 第2の12の(1)及び(2)に準ずる状態にある場合に限定される ものである。 設問において、乙は既に移転し、就職し現在は独身寮に居住している事実が あるので、乙に将来甲を引き取る意思がある等、出身世帯として認定すべき場合は、B市 が実施責任を負うが、これ以外の場合は乙の転出により世帯が分解し、甲は単身者となっ たと解される。 このように解するならば保護の実施責任はB市には移らず、A市が現在地 保護を行うこととなる。
(問2-42)〔仮釈放された場合の帰住地〕 刑務所から仮釈放を許可されるにあたって更生保護施設を帰住地として指定された 場合は、その地を局長通知にいう帰住地として取り扱ってよいか。
〔参照〕局 第2-12-(3) (答)地方更生保護委員会の行う仮釈放の許可にあたって帰住地が指定された者について は、その指定された地を局 第2の12の(3)にいう帰住地と解するのが妥当である。
(問2-43)〔実施責任をめぐる見解の対立〕 実施責任について実施機関の間に見解の対立がある場合の取扱いはどうしたらよい か。
(答)実施責任の所在について、実施機関の間で見解の相違が生じた場合は、保護の実施 に空白を生じせしめないよう、双方の実施機関が協議し適切な保護の実施を行うことが必 要である。 協議の結果、解決が得られなかった場合は、詳細を都道府県(指定都市)本庁 に報告し協議することが必要であり、それでもなお解決が得られなかった場合は、厚生労 働省本省に判定を求めることが適当である。
なお、都道府県(指定都市)本庁は、実施責任の所在について協議があった場合はすみ やかに判定することが必要であるが、一方のみの見解に基づき態度を決定すると事実把握 が不完全となり、かえって事態が混乱する恐れもあるので、関係するすべての実施機関の 報告及び見解を徴した上で判定することが望ましい。
(問2-44)〔実施責任の取扱いが誤っていた場合の取扱い〕 相当期間保護を実施していた被保護者について、法の規定及び実施要領の規定に照 らし実施責任の取扱いが誤っていたことが明らかとなった場合はどのように取り扱う べきか。
(答)実施責任の判断が誤っていたことが事後になって判明する事例としてはさまざまの 場合が考えられるが、原則として本来の実施機関と十分連絡協議の上移管等の措置を考慮 するものとしてよいであろう。 十分な連絡協議をしないまま移管(廃止)の措置を強行し、 保護実施の空白をきたすようなことは厳に慎しむべきことはいうまでもない。
(問2-45)〔実施責任と繰替支弁〕 実施責任があるものと判断して保護を実施していた被保護者の居住地が他の管内に あることが明らかとなった場合、すでに実施した保護に要した費用を、本来の実施責 任を負う公共団体に請求してよいか。
〔参照〕法 第19条第1項、第2項 法 第72条 (答)法 第19条第2項に基づき「居住地が明らかである要保護者であっても、その者が急 迫した状況にあるとき」は現在地所管の実施機関が保護を実施することとなっており、そ の費用は法 第72条第2項に基づき繰替支弁した上、本来の実施責任を負う公共団体へ請求 することとなっているが、設問のようにいったん法 第19条第1項に基づく実施責任がある と判断した期間の保護については、直ちに法 第19条第2項を適用すべきでない。
(もし、こうした場合に、法 第19条第2項の適用を当然のことと解すると、法第19条第1 項 第2号が「居住地が明らかでない」要保護者についての実施責任を規定し、法第73条第 1号が「居住地が明らかでない」被保護者の保護費の負担について規定している意味が失 われるからである。 ) しかしながら、保護の開始当初又は継続中に「居住地」の判断について実施機関相互に 見解の対立があり、とりあえず一方の実施機関が保護を実施したような場合で、後になっ て他方の実施機関に実施責任があるとする結論が得られたような場合は、当該見解の対立 が生じた時点以後の保護は、法 第19条第2項により実施されたものとして費用の請求をす ることができるものと解すべきである。
(問2-46)〔実施責任と費用負担〕 法 第19条第3項の規定は施設入所者の保護の実施責任についてのみ特例を設けたも のであり、他方、保護に要する費用についての法 第73条第1号(現在地保護の場合の 都道府県の負担)の適用にあたっては一般の原則によるから結局施設入所者の保護費 等に対する法 第73条第1号による都道府県の負担はないと解してよいか。
〔参照〕法 第19条第3項 法 第73条第1号 (答)施設入所の場合においては、実際上は居住地を移転し(入所前に居住地があったと き)又は新たな居住地が設けられた(入所前に居住地がなかったとき)のではあるが、こ れらの新しい居住地は居住地とみず、入所前の居住地又は現在地はそのままであると擬制 しているのであるから、設問のように解するのは適当でない。 さらに、法律論をはなれて も、住所不定者が施設に入所した場合直ちに市町村の負担となると解するのは市町村に過 重の負担を課する結果となるであろう。 居住地がないか、又は明らかでない者が施設に入 所した場合は、その者が施設に入所している期間は、居住地がないか、又は明らかでない 状態が継続するものとして取り扱い、したがって保護費等の地方負担分は都道府県が負担 すべきである。
(問2-47)〔帰郷旅費を必要とする場合〕 国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律により送還さ れた者に出迎える人がなく、かつ資力がないため上陸地において帰郷旅費を支給した が、この費用は繰替支弁と解釈してよいか。
〔参照〕問2-31 (答)お見込みのとおりである。
個々の世帯の生活内容は千差万別であることから、実施要領においては、いわゆる相対 的例示方法によって取扱いの指針を示している。
所有又は利用を容認するに適さない資産は、売却等により処分することで最低生活の維 持のために活用することを原則としているが、一定の場合においては当該資産の保有を認 めてその本来用途に従って活用させることとしている。 すなわち、当該資産が最低限度の 生活の維持のために現実に活用されているか又は現在は活用されていないが、近い将来に おいてほぼ確実に活用され、かつ処分するよりも所有している方が生活維持及び自立の助 長に効果が上がっていると認められるものについては、保有が認められることとなってい る。
保有が認められる資産の範囲は次表のようになっているが、これを超える資産であって も処分することができないか、又は著しく困難なもの等次 第3の3、4及び5に規定する ものについては保有が認められることとされている。 また、「要保護世帯向け長期生活支 援資金(いわゆるリバースモゲージ制度)」の利用が可能なものについては、当該貸付資 金の利用によってこれを活用させることとしている。
なお、当該世帯の居住の用に供される家屋に付属した土地及び当該世帯の居住の用に供 される家屋であって、処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められるか否かの判 断が困難な場合は、原則として各実施機関が設置するケース診断会議において、総合的に 検討を行うこととしている。
資産の保有の容認の範囲 資産の種類 保有容認の要件 備 考 土 地 宅 地 (1) 当該世帯の居住に用いる家屋に付属した土地で 処分価値が利 建築基準法 第52条・53条に規定する必要な面積 用価値に比し (2) 農業その他の事業の用に供される土地で、事業 て著しく大き 遂行上必要最少限度の面積 いと認められ 田 畑 ア 当該地域の農家の平均耕作面積、当該世帯の稼 るものは保有 動人員等から判断して適当と認められるもの が認められな イ 世帯員が現に耕作しているか、おおむね3年以 い。
内に耕作することにより世帯の収入増加に著しく ア、イについ 貢献するようなもの ては、この要 山 林 ア 事業用(植林事業を除く)、薪炭の自給用、採 件をいずれも 原 野 草地用として必要なものであって当該地域の低所 満たすことが 得世帯との均衡を失しないもの 必要である。
イ 世帯員が現に利用しているか、おおむね3年以 内に利用することにより世帯の収入増加に著しく 貢献するようなもの 家 屋 居住用家屋 当該世帯の居住の用に供される家屋(保有を認めら れるものであっても部屋数に余裕があると認められ るときは間貸しにより活用させること) その他の家屋 (1) 事業用家屋で、営業種別・地理的条件等から判 断して当該地域の低所得世帯との均衡を失するこ とにならないと認められる規模のもの (2) 貸家で、当該世帯の要保護推定期間(おおむね 3年以内)における家賃の合計が売却代金よりも、 多いと認められるもの 事 業 用 品 ア 事業用設備、事業用機械器具、商品、家畜であ って、営業種別・地理的条件等から判断して当該 地域の低所得世帯との均衡を失することにならな いもの イ 世帯員が現に利用しているか、又はおおむね1 年以内(事業用設備については3年以内)に利用 することにより、世帯の収入増加に著しく貢献す るようなもの 生活用品 家具什器及び衣 当該世帯の人員、構成等から判断して利用の必要が 類寝具 あると認められる品目及び数量 趣味装飾品 処分価値の小さいもの 貴金属及び債券 (保有は認められない) その他の物品 (1) 処分価値の小さいもの (2) (1)以外の物品で、当該世帯の人員、構成等か ら判断して利用の必要があり、かつその保有を認 めても当該地域の一般世帯との均衝を失すること にならないと認められるもの 1 資産の活用
(問3-1)〔不動産取得による生活困窮〕 不動産を購入すれば生活困窮に陥いることを知りながら居住用の土地、家屋を購入 し、手持金を費消したとした保護申請があった場合、どのように取り扱えばよいか。
なお、当該土地・家屋は、処分価値が著しく大きいとは認められないものである。
(答)社会通念上から考えてみると、不動産を購入すればその後の生活が維持できなくな るおそれがあるのであれば、たとえ居住用とはいえ購入を断念し、先ず現在の生活の維持 ・確保を図るべきである。
したがって、居住用の土地・家屋といえども、それを購入したことを直接の原因として 生活困窮に陥ったのであれば、その原因となった当該不動産を売却するよう指導する必要 がある。
(問3-2)〔処分価値が著しく大きな田畑の処分〕 当市において、最近工場が市周辺に多く建設されるようになり、その近辺の地価が 相当上昇している。 そうした地域に田畑50アールを有する要保護世帯から保護の申請 があったが、この場合その田畑の所有を認めて差し支えないか。 なお、同世帯は純農 家で、50アールの土地は当市の平均耕作面積からすればそのまま保有を認められるも のであり、世帯主は、農家にとって田畑は生命にもかえがたいものだと申し立ててい る。
〔参照〕局 第3-1-(2) (答)保護の実施要領によれば、田畑のみならず、宅地や家屋についても、処分価値が利 用価値に比して著しく大きいと認められる場合にはこれを処分させることとされている。
著しく高額で売却できる田畑等を所有し、それを売却すれば保護を受けることなく長期間 安定した生活ができる場合のあることを考慮しての措置である。
ただ、どの程度の高額で売却できる場合に処分させるべきかは、程度の問題であって一 概にいうことはできない。 そのケースに応じて個々に判断して決定するよりほかはない。
設問のような場合でも、著しく高価に売却でき、近隣の在来の農家でも農地を手離す傾向 が相当強いときは売却するよう指導する必要があろうと思われるが、その世帯の営農状況、 現在の環境、将来の生活状況の予測、周囲の状態等を勘案して個々に判断されたい。
(問3-3)〔処分することができない資産〕 次 第3の3に示された「処分することができないか、又は著しく困難なもの」には どのようなものがあるか。 また、このような資産を有している者に対する措置はどの ようにすべきか。
〔参照〕次 第3-3 (答)次 第3の3に該当する資産としては、土地収用法に基づく使用地、自己の所有であ って私道に供されている土地、入会権等があげられる。 これらの資産で保有の限界を超え るものは、ただちに処分することが困難であっても、一定期限の到来により処分可能とな るときは、法 第63条による費用返還義務を文書により明らかにした上で保護を開始するこ ととなる。
(問3-4)〔処分困難な農地の取扱い〕 相当の田畑を所有しているが、現実に生活に困窮しているため、保護の申請があっ たケースについて、福祉事務所はその田畑について処分を指示したが、その田畑の耕 作者(賃貸借契約に基づき耕作している。 )がその売却に反対しているため(耕作者 は耕作地を購入する能力がないのみならず、その土地を返還することにより直ちに生 活困窮する。 )、現実にはこの資産処分は不可能である(売却自体は可能であるが、現 在の耕作者が田畑の賃借権を有しているため、購入者は耕作することができないので、 その土地相応額での売却は不可能である。 )。 このような場合の資産の活用はいかに考 えるべきか。
〔参照〕次 第3 (答)本法において保護の要件として要求される資産の活用は、その資産の上に既存する 他者の権利を違法に排除して活用することを含まないことは当然であり、現実に活用でき、 かつその活用が要保護世帯の自立を妨げない範囲で行われるものである。
なお、設問のような場合、活用できると認められる田畑があり、その売却代金が耕作者 がいないと仮定したときの売買価格と比較し僅少の差であれば、これは当然売却させるべ きであり、また、その差が僅少ではなくとも、その代金が耕作者から得られる賃料の数年 分にも相当するような場合は、その土地の具体的条件も考慮し、売却等の処分を考えるべ きである。
(問3-5)〔利用能力のない者の所有する農地の処分〕 都市近郊で畑10アールを所有している高齢者夫婦が、最近夫婦とも老衰し稼働でき ないため保護の申請に及んだ。 畑は土地柄野菜類を栽培しても相当の収益を期待でき るし、また売却してもかなり大きい売買価値のあるところである。 この場合畑を所有 させたまま保護を開始してもよいか。
〔参照〕局 第3-1-(2) (答)高齢者夫婦の力では将来においても畑を十分に活用することは不可能のように思わ れ、現に耕作していない以上、賃貸や売却により活用を図るよう指導すべきである。
(問3-6)〔田畑の保有限度〕 田畑の保有限度についての「当該地域の農家の平均耕作面積」は、概ね何アール程 度を基準とすべきか。 また、小作地を含むか。
〔参照〕局 第3-1-(2)-ア (答)「当該地域」は、通常の場合、保護の実施機関の所管区域又は市町村の行政区城を 原則とするが、実情に応じて、市の町内会、町村の集落等の区域を単位として取り扱うこ とも差し支えない。 したがって、全国一律に何アール程度という基準を設定できるもので はない。
なお、この平均耕作面積及び保有限度は、自作、小作を含め判断するものであるが、専 業であるか、兼業であるかなども勘案して判断することとされたい。
(問3-7)〔家屋の遺贈を受けた場合の取扱い〕 被保護世帯の世帯主の伯父が死亡し、家屋を1戸遺贈された。 同世帯の現在居住し ている家屋は借家であり、月々家賃を支払っている。 しかも現在の住家は相当破損し ており、早急には補修を要する程ではないが遺贈された家屋とは比べると老朽化して いる。 遺贈の家屋は同世帯の家族構成からしても適当なものであり、世帯主の通勤に も便利な土地にあるので、移転したい旨申出があったが、この場合これをそのまま認 めて差し支えないか。
〔参照〕局 第3-2 (答)設問の場合は新しい家屋が著しく高額に売却できるとか、世帯の家族構成からみて 余裕があると認められる場合には、保護の実施要領にあるとおり、これの活用を図るよう 指導する必要があるが、処分価値が著しく大きいとは認められないような場合には本人の 申出をそのまま認めて差し支えないものと思われる。
なお、一般的に資産の贈与を受けた場合には直ちに保護の実施機関に届け出るよう被保 護世帯に徹底しておき、かつこれを励行せしめるよう不断の積極的な指導が肝要である。
(問3-8)〔公営住宅の有価譲渡〕 公営住宅の入居者に対し、当該公営住宅の建物及び敷地の優先的な有償譲渡が行わ れることがあるが、入居者が被保護者である場合の生活保護上の取扱いはどうなるか。
〔参照〕次 第3 問3-7 (答)一般国民においても容易に住宅を確保できないのが我が国の現状であることからす れば、現在においては、譲渡対価の高低にかかわらず保護受給中新たに家屋等の資産を購 入し取得することは認められないものである。
(問3-9)〔ローン付き住宅の取扱い〕 ローンの支払いの繰り延べをしている等の場合には、ローン付き住宅の保有を認め 保護を適用して差し支えないか。
〔参照〕課 第3-14 (答)一般の不動産の場合と同様の基準により判断して保有が認められる程度のものであ って、ローンの支払いの繰り延べが行われている場合、又は、ローン返済期間も短期間で あり、かつローン支払額も少額である場合には、お見込みのとおり取り扱って差し支えな い。
(問3-10)〔事業用資産保有の判断基準〕 事業用資産の保有について、「当該地域の低所得世帯との均衡を失することになら ないと認められる規模」の判断基準はなにか。
〔参照〕局 第3-2-(2)-ア 局 第3-3-(1) 課 第3-6 (答)生活用品については当該地域の普及率という判断基準が示されているが、事業用品 等については、生産財としての機能があり、当該資産が被保護世帯の自立の源泉として果 たしている意味合いを含めてその利用価値を判断する場合、単なる普及率のようなもので 基準を示すことは不適当であり困難である。 むしろ、その判断に当たっては、当該事業用 資産、取引高等について地域の低所得世帯の経済活動の実態を比較検討し、実施機関が個 々に判断していくことが最も地域の実態に即した取扱いであるといえる。
(問3-11)〔船舶、自動車の項目分類〕 船舶及び自動車は事業用機械、事業用設備のいずれの取扱いによるべきか。
〔参照〕局 第3-3 (答)事業用機械として取り扱うものである。
(問3-12)〔他法からの貸付金による事業用資産の購入〕 自立更生を目的とする他法他施策の貸付金によって機械等を購入する場合、それに よって資産の保有の限度が当該地域の平均的な経営規模の範囲内であれば、資産の新 たな形成であっても購入を認めることとして差し支えないか。
〔参照〕局 第8-4-(5) (答)経営の規模が当該地域の低所得世帯との均衡を失することにならないと認められる 程度のものであれば、お見込みのとおり認めて差し支えない。
(問3-13)〔処分価値の小さいものの判晰〕 生活用品のなかで、処分価値が小さいものは保有を認めることとされているが、処 分価値が小さいか否かの判断基準を示されたい。
〔参照〕局 第3-4-(4) (答)処分価値の小さなもので保有を認めるべきか否かの判断基準については、全国統一 して決められる性格のものではなく、地域の実情等を勘案した上、社会通念で判断するこ とが最も妥当な方法である。
したがって、保護の実施機関は、地域の実情、世帯の状況を的確に把握した上、その保 有の可否を判断されたい。
(問3-14)〔自動車の保有〕 課 第3の9及び12以外に被保護者が自動車を保有することが認められる場合はどの ような場合か。
〔参照〕課 第3-9 課 第3-12 (答)生活用品としての自動車は、単に日常生活の便利に用いられるのみであるならば、 地域の普及率の如何にかかわらず、自動車の保有を認める段階には至っていない。 事業用 品としての自動車は当該事業が事業の種別、地理的条件等から判断して当該地域の低所得 世帯との均衡を失することにならないと認められる場合には、保有を認めて差し支えない。
なお、生活用品としての自動車については原則的に保有は認められないが、なかには、 保有を容認しなければならない事情がある場合もあると思われる。 かかる場合は、実施機 関は、県本庁及び厚生労働省に情報提供の上判断していく必要がある。
(問3-15)〔自動車による以外の方法で通勤することがきわめて困難な身体障害の程 度〕 通勤用自動車の保有が認められる身体障害者の範囲を示されたい。
〔参照〕課 第3-9 (答)自動車による以外の方法で通勤することがきわめて困難な身体障害者の判断は、そ の身体障害者のおかれた身体機能(特に歩行機能)の程度によるので一概に等級をもって 決めることはできないが、自動車税等が減免される障害者(下肢・体幹の機能障害者又は 内部障害者で身体障害者手帳を所持する者については、自動車税、取得税が減免される。 ) を標準とし、障害の程度、種類及び地域の交通事情、世帯構成等を総合的に検討して、個 別に判断することとされたい。
(問3-16)〔公共交通機関の利用が著しく困難な地域〕 課 第3の9中の2及び3にいう「公共交通機関の利用が著しく困難な地域」とは、 具体的にはどのような地域か。
〔参照〕課 第3-9 (答)「公共交通機関の利用が著しく困難」であるか否かについては一律の基準を示すこ とは困難であるが、例えば、駅やバス停までの所要時間や、公共交通機関の1日あたりの 運行本数、さらには当該地域の低所得者世帯の通勤実態等を勘案したうえで、自動車によ らずに通勤することが現実に可能かどうかという観点から実施機関で総合的に判断された い。
(問3-17)〔保育所等の送迎のための通勤用自動車の保有〕 自宅から勤務先までは公共交通機関等での通勤が可能であるが、子の託児のために 保育所等を利用しており、保育所等へ送迎して勤務するためには自動車による以外に 通勤する方法が全くないか、又は通勤することがきわめて困難である場合には、課第 3の9中の3に該当するものとして、通勤用自動車の保有を認めて差し支えないか。
〔参照〕課 第3-9 (答)自宅から勤務先までの交通手段が確保されている場合には、まず公共交通機関等の 利用が可能な保育所等への転入所や、転職による方法を検討すべきである。
しかしながら、課 第3の9の答に示された要件に加え、次の要件のいずれをも満たす場 合においてはお見込みのとおり取り扱って差し支えない。
1 当該自治体の状況等により公共交通機関の利用が可能な保育所等が全くないか、あ っても転入所がきわめて困難であること。
2 転職するよりも現在の仕事を継続することが自立助長の観点から有効であると認め られること。
(問3-18)〔公共交通機関の利用が著しく困難な障害の程度〕 課 第3の12にいう「障害の状況により、利用し得る公共交通機関が全くないか又は 公共交通機関を利用することが著しく困難」とは、具体的にどのような者が対象とな るのか。
〔参照〕課 第3-12 (答)例えば、身体障害にあっては下肢、体幹の機能障害、内部障害等により歩行に著し い障害を有する場合、知的障害にあっては多動、精神障害にあってはてんかんが該当する と考えられる。
なお、身体障害の場合に限り、現時点では障害の程度の判定がされていないが、近い将 来、身体障害者手帳等により障害の程度の判定を受けることが確実に見込まれる者につい て保有を認めて差し支えない。 ただし、障害認定を受けることができなかった場合には、 速やかに処分指導を行うこと。
(問3-19)〔障害者の通院等の用途の自動車の維持費〕 障害者の通院等の用途の自動車保有に際し、維持費について援助が可能な扶養義務 者等がいない場合、障害者加算の範囲で維持費を賄うことは認められるか。
〔参照〕課 第3-12 (答)維持費について確認のうえ、障害者加算(他人介護料を除く)の範囲で賄われる場 合については、課 第3の12の(4)の他法他施策の活用等の等に含まれるものとして、お 見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問3-20)〔他人名義の自動車利用〕 資産の保有とは、所有のみをいうものか。 例えば、自動車の保有を認められていな い者が、他人名義の自動車を一時借用を理由に遊興等のために使用している場合は、 どのようにすべきか。
〔参照〕次 第3 問3-14 (答)生活保護における資産の保有とは、次 第3に示してあるとおり、最低生活の内容と してその保有又は利用をいうものであって、その資産について所有権を有する場合だけで なく、所有権が他の者にあっても、その資産を現に占有し、利用することによってそれに よる利益を享受する場合も含まれるものである。
したがって自動車の使用は、所有及び借用を問わず原則として認められないものであり、 設問の場合には、特段の緊急かつ妥当な理由が無いにもかかわらず、遊興等単なる利便の ため度々使用することは、法 第60条の趣旨からも法第27条による指導指示の対象となるも のである。 これは、最低生活を保障する生活保護制度の運用として国民一般の生活水準、 生活感情を考慮すれば、勤労の努力を怠り、遊興のため度々自動車を使用するという生活 態度を容認することもまたなお不適当と判断されることによるものである。
(問3-21)〔特定中国残留邦人等世帯と同居している場合の自動車の使用〕 被保護者が、自動車を保有している特定中国残留邦人等と同居している場合、その 自動車を使用することは認められるか。
(答)特定中国残留邦人等世帯に対する支援給付制度においては、生活用品としての自動 車保有を認めているところであるが、これは「自動車が当該特定中国残留邦人等及びその 者の配偶者の生活維持のために使われているものであること」等を要件としている。 した がって、特定中国残留邦人等名義の自動車を同居の被保護者が自己のために使用すること は認められない。
しかしながら、この趣旨は生活保護を受給中の同居の2世等が自動車を運転することを 全面的に禁じるものではない。 例えば、やむを得ない事情により特定中国残留邦人等又は その者の配偶者の通院時の送迎に2世等が運転する場合など、特定中国残留邦人等の生活 維持のために限定的に使用することは認めて差し支えないものである。 この場合、残留邦 人支援給付の担当者とも十分連携を図り、被保護者への保険の適用など必要な指導援助を 行うことが必要である。
(問3-22)〔テレビの維持費の取扱い〕 テレビ受信に要する電気料、修理費を扶助の対象とできないか。
〔参照〕局 第3-4-(4) 日本放送協会受信料免除基準(昭45・4・1日本放送協会公告)1-(3) (答)テレビの購入費や受信に要する電気料、修理費等の維持費は一般生活費のやりくり のなかで賄うべきものであり、その費用を支給することはできない。
なお、テレビの受信料は、日本放送協会受信料免除基準により免除されることになって いる。
(問3-23)〔オートバイ及び原動機付自転車の保有〕 生活用品としてオートバイ及び原動機付自転車の保有は認められるか。
(答)総排気量125ccを超えるオートバイについては、生活用品としての必要性は低く、 自動車の取扱いに準じて取り扱うべきものである。 したがって生活用品としての保有は認 められない。
総排気量125㏄以下のオートバイ及び原動機付自転車については、その処分価値及び主 な使途等を確認したうえで、次のすべての要件を満たすものについては保有を認めて差し 支えない。
1 当該オートバイ等が現実に最低生活維持のために活用されており、処分するよりも 保有している方が生活維持及び自立助長に実効があがっていると認められること。
2 保有を認めても当該地域の一般世帯との均衡を失することにならないと認められる こと。
3 自動車損害賠償責任保険及び任意保険に加入していること。
4 保険料を含む維持費についての捻出が可能であると判断されること。
(問3-24)〔保護開始申請時の保険解約の取扱い〕 保護開始の際、保険解約を要しない場合の取扱いについて、次の点を具体的に教示 されたい。
(1)解約を要しない保険の種類 (2)返戻金が少額であり、かつ、保険料額が当該地域の一般世帯との均衡を失しな い場合とは、どういう場合か。
(3)解約を要しない場合は、法 第63条を適用することを条件にしているが、解約返 戻金を受領した時点での費用返還の対象となる資産はどれか。
〔参照〕課 第3-11 (答)(1)保険は解約返戻金がでるのであれば、これを解約し「利用し得る資産」として、 直ちに最低生活の維持のために活用させることが原則である(ここにいう保険は解約すれ ば返戻金の出る保険をいう。 解約返戻金の出ない損害保険の場合には、この活用の問題は 生じない。 )。 しかし、解約返戻金が生じる保険であっても、保護の開始にあたって解約さ せて返戻金を活用させることが社会通念上適当でないものもある。 すなわち、生命保険は 被保険者の生死を保険事故とし、その事故が発生したときに保険者が一定の保険金を支払 うことを約し、保険契約者が保険料を支払うことを約する保険であるが、このように保険 には「万一の場合に備える」という保障的性格に意味があり、日常の生活費の不足を補う ために保険を中途で解約することは、むしろ例外とされている。 したがって、保険解約返 戻金は「資産」とはいっても、払いもどしを当然に予定している貯金とはかなり性質を異 にしているので、少額の解約返戻金まで活用を求めるのは社会通念上適当ではなくなって きている。 また、解約はかえって保護廃止後の世帯の自立更生に支障を生じるおそれもあ る。
以上の事情を考慮し、解約返戻金が少額であり、かつ保険料額が当該地域の一般世帯と の均衡を失しない場合には保護開始に当たっても、直ちに解約して活用することを要しな いという取扱いをすることができることとされている。 しかし解約返戻金はあくまで「利 用し得る資産」であることには疑問の余地はないから、保険金等を受領した時点で所定の 額を返還すべきものとしている。
以上の趣旨から、解約を要しない保険の種類は、危険対策を目的とするものに限り認め られるものであり、貯蓄的性格が強いと思われる養老保険等の保有は認められない。 (貯 蓄的性格が強くなくとも、下記に示す程度の保険料及び解約返戻金を超えるものについて は保有は認められない。 )また要保護世帯に保険による保障の効果が及ばないもの及び世 帯員の危険を保障するものでないものは解約させるべきである。 (なお、学資保険には別 途定めがある。 ) この場合、単身世帯であっても、傷病による入院、後遺障害等に対する給付など保障の 効果が単身世帯自体に及ぶ場合もあるので留意すること。
なお、以上の要件を満たすものであれば、民間会社による一般の生命保険、郵便局の簡 易保険あるいは農協等の生命共済などの種類を問わない。
(2)解約返戻金が少額であるかの判断については、医療扶助を除く最低生活費の概ね3 か月程度以下を目安とされたい。 また、保険料額の当該地域の一般世帯との均衡の判断に ついては、家計調査(総務省)等による保険料の消費支出に占める割合及び生命保険に関 する全国実態調査(生命保険文化センター)による保険掛け金の対年収比率の実態に照ら して、医療扶助を除く最低生活費の1割程度以下を目安とされたい。
(3)申請時点における解約返戻金の額に相当する部分については、資力がありながら保 護を受けていたものとして整理されることから、法 第63条により返還の対象となるが、申 請時点における解約返戻金の額に相当する部分を超える部分(保護開始後において保護費 を原資とする部分)については、保護費のやり繰りにより生じた金銭と同様に、その使途 が保護の趣旨目的に反しない場合については、保有を容認することとして差しつかえない。
なお、保険の解約を要しないものとして保護を開始する場合は、法 第63条による返還義 務を文書により明らかにした上で保護を開始すること。
(問3-25)〔保護受給中に受領した生命保険の解約返戻金、保険金等の取扱い〕 保護開始時に保有の認められた生命保険について、保護受給中に解約返戻金や死亡 保険金、入院給付金等を受領した場合の取扱いを示されたい。
〔参照〕課 第3-20 次 第8-3-(2)-エ-(イ) 次 第8-3-(3)-キ 中国残留邦人支援給付実施要領 課長通知問14 (答)次のとおり取り扱われたい。
(1)満期保険金及び中途解約の場合の解約返戻金 保護開始時の解約返戻金相当額については法 第63条により返還させることとなる。
また、開始時の解約返戻金相当額以外の額については、課 第3の20に従い、その使用目 的が生活保護の趣旨目的に反しない限り収入認定の除外対象として取扱う。
(2)配当金、割戻金等の一時金 (1)とは異なり、保険契約は継続されており未だ資産としての保険を保有している状 態にあることから、解約返戻金相当額について考慮する必要はない。
また、配当金等は支払った保険料の還付の性格を有していることから(1)の後段同様、 その使用目的が生活保護の趣旨目的に反しない限り収入認定除外対象として取り扱って差 し支えないものである。 ただし、保護開始直後に配当金等が入った場合など保護開始後に 支払った保険料の額を超える配当金等が入った場合には、その超える額について次 第8の 3の(2)のエの(イ)により、8,000円を超える額を収入認定することとされたい。
(3)入院給付金等の保険給付金 (2)と同様、保険契約は継続されており未だ資産としての保険を保有している状態に あることから、解約返戻金相当額について考慮する必要はない。
しかしながら、保険事故に対する給付は「保護費のやりくりによって生じた預貯金等」 にはあたらないものである。 よって、次 第8の3の(2)のエの(イ)により、8,000円 を超える額について収入認定を行うこととなる。 なお、入院給付金は通常契約者ではなく、 被保険者に対して支払われるので留意が必要である。
(4)死亡保険金(同居している世帯員に支払われた場合) 保護開始時の解約返戻金相当額については法 第63条により返還させることとなる。
一方で、保険事故に対する給付は「保護費のやりくりによって生じた預貯金等」にはあ てはまらないため、開始時の解約返戻金相当額以外の額については、次 第8の3の(3) のキに該当するものを除き、次 第8の3の(2)のエの(イ)により、8,000円を超える 額について収入認定を行うこととなる。
2 学資保険
(問3-26)〔学資保険の解約返戻金が高額な場合〕 学資保険の開始時の解約返戻金の額が50万円を超える場合の取扱い如何。
(答)開始時の解約返戻金の額が50万円を超える場合については、保有したまま保護を 受けることは認められないことから、解約した上で、解約返戻金を最低生活の維持に活用 するよう指導すること。
なお、解約を指導をした後、解約返戻金をもとに新たな契約を行った上で、再度、保護 の申請があった場合については、新たな契約内容、現時点の解約返戻金額により保有の可 否を判断することとして差しつかえない。
(問3-27)〔申請時の学資目的の預貯金〕 申請時に預貯金を保有していた場合、当該預貯金が学資に当てることを目的とした ものであっても、現行どおり、手持ち金として要否判定を行うこととしてよいか。
(答)お見込みのとおり。
学資保険については、預貯金とは異なる性質をもつものであり、少額の解約返戻金まで 活用を求めることは社会通念上適当ではない場合もあることから、一定の考え方のもと保 有を容認することとしたものであり、預貯金については、使途の如何を問わず、手持ち金 として要否判定に用いるものである。
(問3-28)〔学資保険と生命保険との両方に加入していた場合〕 開始時における解約返戻金の額は1世帯あたりの額として判断されることとされて いるが、学資保険の他に、生命保険に加入していた場合、それぞれの判断基準により 個別に保有の可否を判断すべきか (答)生命保険と学資保険は、その目的を異にするものであることから、それぞれ個別の 判断基準により保有の可否を判断することとされたい。
(問3-29)〔学資保険の保険料額及び満期保険金額〕 学資保険の保有の可否を判断する場合、解約返戻金の額が50万円以下であれば、 月々の保険料額や満期保険金額については、保有要件として考慮しなくてよいか。
(答)保護費のやりくりについては自ずと限度があることから、解約返戻金の額が50万 円以下であれば、月々の保険料額について特段の基準を定めないこととし、満期保険金額 についても、保険料額に自ずと限度があるために、通常それほど多額なものとなることは 想定されないことから、解約返戻金の額が50万円以下であれば、保有を容認して差し支 えない。
ただし、保険料額が最低生活の維持に支障があるほど高額であり、満期保険金も学資に 必要な額を大きく上回ると考えられる場合については、生活保護費により高校就学費用の 給付が可能であることや、満期保険金のうち自立更生に当てられるもの以外の額について は収入認定されることなどを十分説明した上で、解約や契約変更など必要な助言指導を行 われたい。
(問3-30)〔学資保険の満期保険金の受取時期と保有の可否〕 学資保険の満期保険金を受領する年齢が18歳を超える場合は、一律に保有を認めな いこととしてよいか。
(答)学資保険については、子の学資に当てられることが客観的に推定されることから、 一定の条件のもと保有を容認するものであり、学資に当てられることが推定されないもの については、通常の資産と同様に取り扱うこととなる。
したがって、満期の時期が18歳を超える場合については、保有は認められない。 例えば、 20歳満期ではあるが、15歳時点で一時金を受け取る契約を行っている場合にも保有は認め られない。
(問3-31)〔別世帯の子の学資保険〕 世帯員が別世帯の子(前配偶者に引き取られた子など)を被保険者とする学資保険 に加入していた場合の取扱い如何。
(答)学資保険については、あくまでも当該世帯員の自立に資するものとして保有を容認 するものであり、保障の効果が別世帯の者に及ぶものについては、保有は認められない。
(問3-32)〔別世帯の者が契約した学資保険〕 別世帯の者(祖父母など)が要保護世帯の子を被保険者とする学資保険に加入して いた場合の取扱い如何。
〔参照〕課 第8-21 (答)別世帯の者が契約している保険については、当該要保護世帯の資産には当たらない。
ただし、別途、扶養義務の履行について必要な助言指導を行われたい。
また、満期保険金の支給があった時点等において、当該世帯に対して仕送りがなされた ときは、当然ながら収入認定の対象となる。 なお、別世帯の者が生活保持義務関係にある 者でなければ、当該仕送りのうち教育費にあてられる部分については、収入認定除外する ことが可能である。
(問3-33)〔保護受給中に学資保険の保有が判明した場合〕 保護受給中に学資保険を保有していたことが判明した場合の取扱い如何。
(答)保護受給中に学資保険の保有が確認された場合には、保護開始時において保有して いたものかを確認し、当該契約が保護開始以前にされていたことが判明した場合について は、開始時点における解約返戻金相当額を確認した上で、保有の要否を判断することとな る。
その結果、保有が認められない場合や、保有していることを故意に隠匿していたことが 明らかに認められた場合については、解約を指導し保護費の返還等について検討されたい。
また、保護開始後に契約を行っていたものについては、その目的を確認したうえで、保 有を容認して差し支えないが、生活保護費により高等学校等就学費が給付されることや、 満期保険金を高校就学費にあてる場合は保護費による高等学校等就学費が給付されない場 合があること、及び満期保険金のうち保護の趣旨目的に応じた使途にあてられない額につ いては収入認定されることなどを十分に説明されたい。
しかしながら、稼働能力を活用しているか否かについては、単に本人が能力を有してい るか否かのみで判断されるものではなく、その具体的な稼働能力を前提として本人が稼働 能力を活用する意思があるか否か、実際に稼働能力を活用する就労の場を得ることができ るか否かにより、総合的に判断する必要がある。 この判断の基準は、資産保有のように客 観的な基準として定められるものではなく、被保護者本人の状況や地域における求人状況 等の情報も参考にして慎重な検討が行われるべきものである。 その点、各実施機関におい ては雇用情勢等の変化については常に敏感となる必要があるといえよう。
なお、稼働能力の有無や適職の判断を行うための場として、稼働能力判定会議等を設置 することが有効である。
(問4-1)〔稼働能力判定会議の構成と会議での検討事項〕 稼働能力判定会議は、どのようなメンバーで実施するべきなのか。 また、会議では何 を検討したらよいのか。
(答)稼働能力判定会議については、実施機関の判断により設置・運用することが認めら れているものであるが、その構成員については、内科医、整形外科医、精神科医などの医 師、社会福祉士、精神保健福祉士、キャリアカウンセラー、臨床心理士、福祉事務所嘱託 医、就労支援専門員、査察指導員、ケースワーカー等から、実施機関が必要と認める者に より構成することが考えられる。
また、検討内容については、稼働能力の活用状況についての具体的な判定のほか、対象 者の稼働能力にあった就労支援プログラムの策定や就労支援プログラムにおける対象者の 取組状況及び実施機関の支援内容の点検、見直しの際に活用することなどが考えられる。
(問4-2)〔定時制高校や通信制高校に就学している者の稼働能力の活用〕 定時制高校や通信制高校に就学している者についても、世帯内就学が認められかつ 高等学校就学費の支給対象となっていることから、全日制課程において進学している 者と同様に稼働能力の活用を求めないものとしてよいか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-ク (答)定時制高校や通信制高校のカリキュラムは多様であるため、当該高校の教育課程や 実際の就学時間等を確認したうえで、稼働能力の活用を求めるべきか否かについて個別に 判断されたい。
なお、仮に稼働能力の活用を求める必要があると判断した場合においても、高等学校等 就学費が、子どもを自立・就労させていくためには高校就学が有効な手段となっているこ とに鑑み創設された趣旨を踏まえ、学業に支障のない範囲でのアルバイト就労等にとどめ るよう留意する必要がある。
また、これらの者が働いて得た収入については、高等学校等就学費の支給対象とならな い経費及び高等学校等就学費の基準額で賄いきれない経費であって、その者の就学のため に必要な最小限の額について認定除外の取扱いとしているので、あわせて留意されたい。
「扶養請求権」は、それが利用し得るものである限りにおいて 第1項にいう「その他あ らゆるもの」に含まれると解することができるのではないかとの疑問が生じるが、ここで いう「その他あらゆるもの」とは、例えば年金受給権のように、「現実には資産となって いないが、要保護者本人が努力(手続き等)することによって容易に資産となり得るもの」 を指している。
これを扶養にあてはめて考えてみると、「扶養義務者による扶養」が資産(金銭)とな り得るためには、要保護世帯以外の 第三者である扶養義務者が扶養の能力と扶養する意思 を有していることが必要となる。 すなわち、要保護者本人の努力のみで資産となり得るも のではなく、それが単なる期待可能性にすぎない状態においては、 第1項の「その他あら ゆるもの」に含むことはできない。
一方で、例えば、扶養義務者が月々の金銭援助を申し出ている場合など、扶養義務者に 扶養能力があり、かつ扶養をする意思があることが明らかである場合においては、扶養義 務者の扶養は、要保護者本人の扶養請求権の行使(努力)によって、資産(金銭)となり 得ることになる。 したがって、このような場合には、扶養請求権の行使は保護の要件とし て位置づけられることになる。
なお、私的扶養の果たす社会的機能や国民の扶養に対する意識は時代とともに変化する ものであり、扶養の問題を考えるにあたっては、常にこのような時代の変化をふまえて判 断していかなくてはならないものである。
〈生活保護制度における扶養義務〉 民法における扶養義務の規定は、その人的範囲として、夫婦のほかに、直系血族及び兄 弟姉妹(絶対的扶養義務者)とこれら以外の三親等内の親族(相対的扶養義務者)で家庭 裁判所の審判を受けた者とを定めるのみで、具体的な扶養の順位、程度、方法については 当事者の協議及び家庭裁判所の審判に委ねている。 これに対し、生活保護制度では民法の 解釈上通説とされている「生活保持義務関係」と「生活扶助義務関係」の概念を採用し、 生活保護制度における扶養義務の取扱いの目安としている。 これらの関係を表で示せば次 のとおりである。
民法上の
なお、相対的扶養義務者については、実際に家庭裁判所において扶養義務創設の審判が なされる蓋然性が高い、次のような状況にある者に限って保護制度との調整の対象となる 扶養義務者としてとらえることとしている。
(1)現に扶養を実行している者 (2)過去に当該要保護者から扶養を受けたことがある場合等扶養の履行を期待できる特 別の事情があり、かつ、扶養能力があると推測される者 〈扶養義務者の存否の確認と扶養能力の調査〉 保護の実施機関が行う扶養に関する調査については、まず上記の扶養義務者の存否の確 認から行わなくてはならない。 この作業は、要保護者からの申告を基本としつつ、必要に 応じて戸籍謄本等によって行うこととなる。 (局 第5の1の(1)) 以上の作業で確認された扶養義務者については、要保護者その他からの聞き取り等の方 法により扶養の可能性の調査を行うこととなる。 なお、調査にあたっては、金銭的な扶養 の可能性のほか、要保護世帯の日常生活・社会生活自立の観点から、定期的な訪問や連絡、 一時的な子どもの預かり等、精神的な支援についても確認することとしている。 (局 第5 の2の(1)) その結果、「扶養義務履行が期待できない」と判断された場合は、扶養義務者が生活保 持義務関係にある者であれば、まず関係機関等に対して照会を行い、なお扶養能力が明ら かにならないときはその者の居住地を所管する保護の実施機関に文書で調査を依頼する か、又はその居住地の市町村に照会することとなっている。 また、生活保持義務関係にあ る者以外の者の場合は、個別に慎重な検討を行い扶養の可能性がないものとして取り扱っ て差し支えないものとしている。 なお、いずれの場合も保護台帳、ケース記録等に当該検 討経過及び判定について明記する必要がある。 (課 第5の2) したがって、局 第5の2の(2)に定める、文書による扶養義務者への照会等の扶養能 力調査は、以上の作業の結果「扶養義務の履行が期待できる」と判断される者に対して行 うものであることに注意する必要がある。
以上の手順をフローチャートで示すと以下のとおりとなる。
扶養義務履行が 扶養義務者に対して扶養 期待できる 照会 要保護者その 他より聴取 生活保持義務関係にある扶養義務者 (夫婦及び未成熟の子に対する親) 扶養義務履行が 期待できない 関係機関等に対して照会 その他の扶養義務者 判断の指標(「扶養義務履 扶養照会不要 行が期待できないと判断す (扶養能力がないものと る場合の例」課 第5の2) して取り扱う) なお、扶養能力調査については、社会常識及び実効性の観点から、①生活保持義務関係 者、②生活保持義務関係以外の親子関係にある者のうち扶養の可能性が期待される者、③ その他当該要保護世帯と特別な事情があり、かつ扶養能力があると推定される者を「重点 的扶養能力調査対象者」として重点的に調査を実施することとし、それ以外の扶養義務者 については、必要最小限度の調査をすることとしている。
(問5-1)〔扶養義務履行が期待できない者の判断基準〕 課 第5の2の答にある「実施機関がこれらと同様と認める者」及び「要保護者の生 活歴等から特別な事情があり明らかに扶養ができない者」というのは、具体的にどの ような者を指すのか。
(答)前者については、例えば長期入院患者、主たる生計維持者ではない非稼働者、未成 年者、概ね70歳以上の高齢者などが想定される。 後者については、例えば20年間音信不通 である等が想定される。
(問5-2)〔生活保持義務関係者の居所の確認〕 生活保持義務関係にある扶養義務者の居所が不明な場合には、どのような方法によ って居所の確認をすればよいか。
(答)住民基本台帳又は戸籍の附票により確認する方法や扶養義務者の両親等の親族に照 会する等の方法により確認することとなる。
(問5-3)〔死別した妻の実家と弟の妻の実家〕 A市に居住する単身者から、同市内の病院に入院したが、今後長期間入院を要し収 入も途絶したということで、医療扶助及び入院患者日用品費の支給について申請があ った。 調査したところ、同人は最近妻と死別したが、妻の父が同市内にあって相当豊 かな生活を営んでいる現状であるので、医療費については医療扶助を適用するとして も、入院患者日用品費については亡妻の実家から扶養を仰ぐよう指導して差し支えな いか。
また、申請書によると同人に同市に居住する弟が1人いるが、これは最近結婚した ばかりで生活に余裕はなく、兄を扶養する能力はない。 けれどもその妻の実家が近隣 にあり豊かな生活をしているので、弟の妻の実家に対しても扶養を仰ぐよう指導でき るか。
〔参照〕次 第5 局 第5-1 民法 第728条第2項、第877条第2項 戸籍法 第96条 (答)前段の場合、申請者がすでに亡妻の実家と姻族関係を終了させる意思表示をしてい るときは、亡妻の実家とは姻族関係にないから、扶養を求めるよう指導することはできな い。 しかし、被保護者に子供がいる場合であれば、その子供と亡妻の実家の祖父母との間 には扶養義務関係があるので、保護の実施機関は、申請者に対して亡妻の実家から子供に 対する相当の扶養を仰ぐよう指導することはできる 扶養の程度については、入院患者日用品費相当額にこだわる必要はない。 なお、扶養義 務に関する実施機関の指導は、関係者の親族関係に関する意思表示(例えば、この設問に おける姻族関係終了の意思表示)を左右するようなものであれば行き過ぎであるから留意 を要する。
後段の場合は、弟の妻の実家は民法 第877条第2項にいう三親等内の親族ではないから、 そこから扶養を求めるよう指導することはできない。
しかしながら、以上は法律上の問題としてみた場合の取扱いであって、亡妻の実家又は 弟の妻の実家から進んで援助を申し出ている場合にはこれを受けるよう指導する必要があ る。
(問5-4)〔相対的扶養義務者に対する調査の意義〕 被保護者が家庭裁判所の審判のない一定の相対的扶養義務者に対して生活保護法上 扶養義務の履行を求むべき場合の法律的根拠を教示されたい。
〔参照〕民法 第877条第2項 局 第5-1-(1)-イ (答)具体的な法律上の根拠はない。 局 第5の1の(1)のイの取扱いは、家庭裁判所にお いても、同様の事情によって判断されるから扶養義務の確認審判を求める場合における関 係者の時間、費用等の負担を省き、また、当事者間の感情的摩擦を避けるという意味合い から、かかる取扱いによることとしたものである。 従って、局 第5の1の(1)のイに該当 する場合には、相手方たる相対的扶養義務者に対し、かかる取扱いを行う趣旨について十 分説明し、納得を得るよう努めるべきである。 なお、当該相対的扶養義務者があくまでか かる方法による扶養の履行を拒んだ場合には家庭裁判所に審判を求める必要がある。
(問5-5)〔事業所得者の扶養能力の判断基準〕 生活扶助義務関係にある者の扶養能力の判断にあたり、給与所得者については特別 の事情がない限り所得税が課せられない程度を基準にすることとされているが、他の 事業所碍者についても所得税の賦課状況を判断基準とすることはできないか。
〔参照〕課 第5-3 (答)給与所得者以外の事業所得者については、各業種によって課税最低限の所得額に差 がある等、所得税の賦課状況だけで扶養能力を判断することは適当でない。 これらの者に ついては個別に扶養能力を判断することになるが、給与所得者の課税最低限の所得額、市 町村民税の所得割の賦課状況等が参考となろう。
(問5-6)〔扶養の程度の判断基準〕 扶養義務者の扶養程度についての判断の基準を明確にされたい。 「社会通念上それ らの者にふさわしいと認められる程度の生活を損なわない限度」というのみでは、認 定の実際に当たって判断がきわめて困難である。
〔参照〕局 第5-2-(5)-イ (答)扶養義務の程度については、学問上、設問にあるような抽象的な尺度があるが、こ の具体的な基準は家庭裁判所の審判例によって形成していくほかないと思われる。
(問5-7)〔扶養義務関係と世帯〕 扶養義務者の範囲は、局 第5の1の(2)の表により示されているが、血族、姻族 の別及び親等の計算は、当該世帯の世帯主からの関係においてとらえるべきか、それ とも当該世帯に属する世帯員それぞれの関係からとらえるべきか。
〔参照〕局 第5-1-(2) (答)当該世帯に属する世帯員それぞれの立場からとらえるものである。
(問5-8)〔扶養義務調査の頻度〕 局 第5の3の(3)で重点的扶養能力調査対象者に係る扶養能力及び扶養の履行状 況の調査は年1回程度は行うこととされているが、例えば扶養能力調査の結果、子供 の就学費用のため、扶養の可能性が期待できない等の実情が明らかとなったときは、 当該世帯の実情に対応して適宜調査することとして差し支えないか。
〔参照〕局 第5-3-(3) (答)お見込みのとおりである。
(問5-9)〔扶養義務における感情問題〕 保護申請中の要保護者が、扶養義務者が十分に扶養能力があり、かつ扶養する意思 があるにもかかわらず、次のような事情で扶養を受けることを拒んでいる場合、本人 の意思を尊重し、直ちに保護してよいか。
(1)相当長期間にわたって扶養されていたが、これ以上扶養を継続してもらうこと は扶養義務者に対して道義上できないと申し立てている場合 (2)過去に交流があったが、最近になって感情的な対立があり、扶養義務者の扶養 を受けるくらいなら死んだ方がよいと申し立てる場合 (3)扶養義務者の側は、近隣に居住していることもあり、本人が毎月直接お金を取 りに来れば扶養すると申し立てているが、本人は、「金をもらいに行けばいろい ろと説教されるので絶対に嫌だ」と拒否している場合 〔参照〕次 第5 局 第5-2-(3) 局 第5-3 (答)設問の場合は、いずれも権利者と義務者の間の感情問題のために権利者が義務者の 義務の履行を欲しない場合と思われる。 このように扶養の問題はきわめてデリケートな側 面があり、しばしば感情的な問題を発生しやすいので慎重な対応が求められるところであ るが、一方で単に感情的な理由のみによって受けられる扶養の履行を受けないということ では、保護の補足性の原理にもとることとなる。 したがって、直ちに保護を行うことは適 当ではない。
(1)の場合については、過去において長期にわたり扶養が行われていたのであれば、扶 養義務者の側にこれを中断すべき事情が発生しない限り、本人に生活保護制度の趣旨 を懇切ていねいに説明し、継続して扶養を受けるよう理解させるべきである。
(2)の場合については、過去において交流が続いていた関係上、その感情的な対立は一 時的なものである場合が多いと思われる。 少なくとも扶養義務者の側には扶養をしよ うという意思は見られるわけであるから、まずこの対立を解消させるよう必要に応じ て仲介するなど、円満な扶養義務の履行を図ることが望まれる。
(3)の場合については、扶養義務者の側が扶養の履行と引き替えに要保護者に対してか なりの努力を必要とするような行為を要求している場合であれば別として、設問のよ うな場合は申請者の感情によってこれを拒否しているものと認められるので、さらに 申請者を説得するように努める必要がある。 ただし、申請者が病弱のために歩行が困 難であるなどの事情がある場合には、扶養義務者の側に金銭を郵送するよう依頼する ことなども必要である。
以上、いずれの場合も扶養義務者の側に扶養の意思がある以上、これを拒むことは認め られるものではなく、これらの説明・説得を十分に行っても、なお要保護者本人が扶養を 受けることを拒むようであれば、法 第4条第1項の要件を欠くものとして保護申請を却下 すべきである。
(問5-10)〔扶養能力の程度と扶養義務不履行の申立て〕 被保護世帯甲は、母と子3人からなる母子世帯であり、母は内職をし、長女は中学 校卒業後某町工場に勤務している。 母には某会社の部長をしている兄があり、その兄 の子2人はそれぞれ大学に通っている。 しかし、母の結婚がその兄の反対を無視して 行われたという経緯から、その兄は甲世帯に対しなんら援助をしてくれない。 このよ うな場合、扶養義務の履行に関して家庭裁判所に申立てを行わせるべきか。
〔参照〕局 第5-2-(5)-イ (答)扶養義務に関する審判又は調停の申立ては、扶養義務が履行されないという事実が あることのみをもって行ってよいものではなく、扶養義務の円滑な履行について保護の実 施機関として誠心誠意の努力をつくしたにもかかわらず、相手がこれに応ぜず、しかも、 要保護者との親近関係、従来の交際状況、収入、資産等の諸事情を検討した結果、十分扶 養能力があると判断される場合に、はじめて問題とすべきものである。 したがって、設問 の場合も、兄の世帯の生活状況等を勘案し、かつ、過去の経緯等も考慮した上で判断すべ きである。
(問5-11)〔現に行われている扶養の生活保護法上の取扱い〕 課 第5の3において、生活扶助義務関係にある者の扶養能力の判断基準が示されて いるが、判断基準以下の扶養義務者から現に仕送り援助が行われている場合には、こ れは行う必要がないものと考えて取り扱うべきか。 また、扶養能力の判断基準により 直ちに扶養の程度を定めて差し支えないか。
〔参照〕局 第5-2-(5)-イ 課 第5-3 (答)前段については扶養義務の履行としてとらえるべきである。 後段については、扶養 能力の判断基準は扶養能力の有無を判断するに際して用いられるものであるから、これに よって扶養能力があると判断された者については、さらにその資力、生活実態等について 調査した上、局 第5の2の(5)のイにより、具体的な扶養の程度を定めるべきである。
(問5-12)〔重点的扶養能力調査対象者以外の扶養義務者への扶養能力調査〕 局 第5の2の(3)によれば、重点的扶養能力調査対象者以外の扶養義務者への扶養 能力調査については、実地につき調査を行わないこととして差し支えないか。 また、 原則として書面により回答期限を付して行うこととされているが、期限までに回答が ない場合にはどのようにすればよいか。
〔参照〕局 第5-2-(3) (答)前段については、お見込みのとおりであり、後段については再度期限を付して照会 するまでもなく、扶養の可能性がないものとして取り扱って差し支えない。
なお、いずれの場合であっても、実施機関の判断により重点的扶養能力調査対象者に対 する調査方法を援用しても差し支えないこととしている。
(問6-1)〔健康保険組合における附加給付の取扱い〕 某健康保険組合加入の世帯主から、その被扶養者の疾病の医療費につき、医療扶助 適用の申請があったので、同組合におもむき調査したところ、医療費総額の2割相当 額の附加給付を行っていることが判明した。 この場合、医療扶助としては本人負担の 1割相当分につき要否を判定し、かつその分だけ負担することとして差し支えないか。
〔参照〕健康保険法 第70条 保険医療機関及び保険医療養担当規則 第5条 (答)健康保険組合における附加給付は、組合員に対して支払われるものであるから、保 護適用の要否判定についてはお見込みのとおりである。 しかしながら、これは組合から直 接医療機関に支払われるものではなく、原則として、保険医療機関は被扶養者について医 療を行った場合は、その附加給付の有無にかかわらず3割相当額の支払を本人から受ける ものとされている。 したがって、要否を判定した結果、医療扶助適用の必要があると認定 された場合には、本人が保険医療機関に対して支払を要する3割相当分を医療扶助として 医療機関に支払うこととし、組合から支給される附加給付分については法 第63条に基づき 費用返還せしめることとなる。
(問6-2)〔国民健康保険の被保険者資格との関係〕 医療扶助適用の申請があったので調査したところ、本人は6か月程前から当地に移 転してきており、当然国民健康保険の被保険者となるべきであるにもかかわらず、そ の手続をしていないためにまだ当市の国民健康保険の被保険者になっていないことが 判明した。 本人及びその家族は、内職に従事しており、国民健康保険の被保険者とな っていれば、その一部負担金相当額は最低生活を維持してなおかつ負担できる収入を 得ている。 治療中も家族の内職従事により、多少減収はするが、それでもこれを負担 することができなくなるという程のものではない見込みである。 この場合、どのよう に措置すべきか。
〔参照〕国民健康保険法 第5条、第6条 (答)市町村当局に連絡して、国民健康保険の被保険者とし、国民健康保険から給付を行 うよう措置すべきであって、医療費の全額を負担し得ないからといってただちに医療扶助 を適用することはできない。
一般に、このような例は決して少なくないものと思われるが、特に低所得階層の場合に は国民健康保険税や保険料の負担回避のために転入のとき等の国民健康保険の被保険者と なる手続を怠る傾向が多いものと思われるので、このようなことのないよう住民の被保険 者資格に関し、遺漏のないよう積極的な対策措置について、市町村当局に対し、保護の実 施機関としても常時要請する必要がある。
なお、この場合、要否判定については、国民健康保険法による給付があるものとし、一 部負担金を医療費として計上し、保護の要否を判定することとされたい。 その結果におい てもなお保護を要する場合は、医療扶助を適用することになるので、国民健康保険の被保 険者になることはできない。
(問6-3)〔健康保険の被保険者資格との関係〕 医療扶助適用の申請があったので、本人の給与額を確認するため事業所におもむい て調査したところ、その際、同事業所では常時7人の常用者を雇用していることを聞 いた。 したがって、同事業所は健康保険が適用されて当然であるのにまだ適用を受け ていない。 この場合、本人に対し10割の医療扶助を直ちに適用して差し支えないか。
(答)事業所について健康保険の適用を決定するのは社会保険事務所が行っているから、 直ちにその事業所の所在地を管轄する社会保険事務所に連絡し、健康保険適用につきその 見解を求める必要がある。 ただ、健康保険の適用につき申請を行うのは事業主であって、 被保険者となるべき者にはその責任はない。 したがって、社会保険事務所における健康保 険適用の決定に相当期間を要するようであれば、本人に対して10割の医療扶助を適用して も差し支えない。 けれども、健康保険では、その事業所が健康保険の適用事業所であると 認定された場合には、その事実の発生した時点に遡って適用することを原則とし、その事 業所に雇用されている者もまたその時点に遡って被保険者資格を得るものとされている。
この場合には、過去において本人が疾病にかかり医療費を要したものであれば、本人は療 養費の支給について請求権をもつことになる。 事業所に対する健康保険遡及適用の時点に ついても社会保険事務所が決定することとなっているので、これと連絡をとり、遡及適用 が行われた場合は、保護の実施機関は、本人に対し療養費支給申請を行うよう指導し、そ の結果支給された療養費全額について法 第63条の規定に基づき費用返還せしめることとな る。
なお、健康保険の被保険者とすることを社会保険事務所が決定した日以後は、通常の場 合は生活保護とは無関係になることはいうまでもない。
(問6-4)〔健康保険の被扶養者の範囲〕 社会保険特に健康保険及び日雇労働者健康保険の被扶養者の範囲はどこまでか。
(答)健康保険法 第3条第7項には、「被扶養者」について次のように規定されている。
一 被保険者(日雇特例被保険者であった者を含む。 以下この項において同じ。 )の直 系尊属、配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。
以下この項において同じ。 )、子、孫及び弟妹であって、主としてその被保険者により 生計を維持するもの 二 被保険者の三親等内の親族で前号に掲げる者以外のものであって、その被保険者と 同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの 三 被保険者の配偶者で届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるものの 父母及び子であって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者によ り生計を維持するもの 四 前号の配偶者の死亡後におけるその父母及び子であって、引き続きその被保険者と 同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの。
したがって、直系尊属、配偶者、子、孫、弟妹及びその他の世帯員は一応被扶養者の範囲 に入り得るが、「主としてその被保険者により生計を維持するもの」に該当するか否かの 認定は、次の要領を参考として行われる。
○ 収入がある者についての被扶養者の認定について 昭52・4・6 保発 第9号・庁保発第9号 最終改正平5・3・5保発 第15号 庁保発 第4号 健康保険法 第1条第2項各号に規定する被扶養者の認定要件のうち「主トシテ其ノ被保 険者二依リ生計ヲ維持スルモノ」に該当するか否かの判定は、専らその者の収入及び被保 険者との関連における生活の実態を勘案して、保険者が行う取扱いとしてきたところであ るが、保険者により、場合によっては、その判定に差異が見受けられるという問題も生じ ているので、今後、左記要領を参考として被扶養者の認定を行われたい。
なお、貴管下健康保険組合に対しては、この取扱要領の周知方につき、ご配慮願いたい。
記 1 被扶養者としての届出に係る者(以下「認定対象者」という。 )が被保険者と同一世 帯に属している場合 (1)認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上の者である場合又は 概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場 合にあっては180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満で ある場合は、原則として被扶養者に該当するものとすること。
(2)前記(1)の条件に該当しない場合であっても、当該認定対象者の年間収入が130万 円未満(認定対象者が60歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障害厚 生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては180万円未満)であ って、かつ、被保険者の年間収入を上廻らない場合には、当該世帯の生計の状況を総 合的に勘案して、当該被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると 認められるときは、被扶養者に該当するものとして差し支えないこと。
2 認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合 認定対象者の年間収入が、130万円未満(認定対象者が60歳以上の者である場合又は 概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合 にあっては180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助に依る収入額より少な い場合には、原則として被扶養者に該当するものとすること。
3 前記1及び2により被扶養者の認定を行うことが実態と著しくかけ離れたものとな り、かつ、社会通念上妥当性を欠くこととなると認められる場合には、その具体的事情 に照らし最も妥当と認められる認定を行うものとすること。
4 前記取扱いによる被扶養者の認定は、今後の被扶養者の認定について行うものとする こと。
5 被扶養者の認定をめぐって、関係者間に問題が生じている場合には、被保険者又は関 係保険者の申し立てにより、被保険者の勤務する事業所の所在地の都道府県保険課長が 関係者の意見を聴き適宜必要な指導を行うものとすること。
6 この取扱いは、健康保険法に基づく被扶養者の認定について行うものであるが、この 他に船員保険法 第1条第3項各号に規定する被扶養者の認定についてもこれに準じて取 り扱うものとすること。
(問6-5)〔社会保険適用の確認〕 健康保険、厚生年金保険等の適用関係、給付の有無、標準報酬等について、確認す るためにはどういう行政庁と連絡をとればよいか。
(答)政府管掌の健康保険、日雇労働者健康保険、厚生年金保険及び船員保険については、 その者の最後の適用事業所(最後に勤務していた会社、工場、船舶所有者等)の所在地を 管轄する都道府県の保険課又は社会保険事務所が現業事務を取り扱っているから、その管 轄区域ごとの保険課又は社会保険事務所に連絡すればよい。
健康保険組合の組合員については、保険者たる健康保険組合が健康保険の事務を取り扱 っているから、組合員証によるか又は直接本人に尋ねるかしてその健康保険組合を知り、 その組合に照会することとなる。
(問6-6)〔遭難者の救助費用〕 本県では、その地形上、四季を問わず、登山者が多く、また遭難者も決して少なく ない。 遭難者について身元が判明した場合は問題はないが、身元がわからず引取人も 現われない重傷者で治療を要するものに対して医療扶助を適用して差し支えないか。
また身元の判明しない死亡者に対しては地元市町村で葬祭を行っているが、その費用 についてはどのように取り扱ったらよいか。
〔参照〕法 第19条第1項第2号 法 第72条第1項 墓地、埋葬等に関する法律 第9条 (答)設問の場合、負傷者に対する医療については遭難者の現在地である実施機関におい て医療扶助を適用し、その都道府県、市町村が一時繰替支弁して差し支えない。 ただし、 後でその者の家族又は扶養の義務を負う者が判明したときは、それらの者と負傷者を保護 すべき実施機関が費用支弁につき調整を行い、保護費を負担した実施機関に属する都道府 県又は市町村が法 第63条に基づき保護を受けた者に対して費用返還を請求することにな る。 なお、この場合生活保護でみるべき費用は、生活保護法に定める扶助の種類及び範囲 内のものに限られ、例えば捜索隊の費用等は対象とならないから留意を要する。
死亡者に対する措置は、墓地、埋葬等に関する法律に従って処理される。
生活保護制度によって保障される最低限度の生活というものが個々の世帯についてどの 程度の水準のものであるかは、最低生活費の認定によって具体化される。
すなわち、その世帯の収入(正確には収入充当額)がこの最低生活費に満たない場合に、 その差額が扶助されるものであるから、この最低生活費の額が、保護金品と当該世帯の収 入とによって満たされることになるわけである。 換言すれば、最低生活費の認定は本制度 により保障される生活水準の認定であるといえよう。
なお、生活扶助基準は、非稼働世帯を前提として定められており、稼働に伴う生活需要 の増大分は収入との関連で勤労控除の方式で対応することになっている。 勤労控除の中に は自立助長を主たる目的とするものも含まれているが、基礎控除は、勤労に伴って生じる 最低生活需要に対応するものであるから、稼働世帯の保障水準という場合には、これを加 味して考える必要がある。 また、本制度において実質的に保障され又は容認される生活水 準という意味ではこのほか自立助長の観点から適用される各種控除や収入として認定され ない収入をも加えたものが、当該世帯において現実に消費し得る水準となるわけである。
(2)最低生活費の認定は、保護の基準に基づく最低生活需要の測定である。
最低生活費の認定は、本制度が保障しようとする健康で文化的な最低限度の生活を営む のにどの程度の費用を要するか、すなわち、その最低生活需要の測定を意味するものであ る。 この需要の測定方法は、保護の基準によって定められており、これに被保護者からの 申請、申告及び福祉事務所の訪問調査等によって確認された事実関係(世帯の実態)をあ てはめることにより、個々の世帯の最低生活費が、測定されることになる。
事実関係の評価、程度の測定等については、法 第9条の必要即応の原則を踏まえ、当該 世帯の実際の必要に即した認定に留意することが必要である。
(3)生活保護基準は、保護の要否の判定基準と程度の判定基準とに区分される。
最低生活費(保護の基準)は、保護の要否の判定基準であるとともに扶助費の支給の程 度を決める判定基準としても用いられる。 保護の要否については、能力活用、資産活用等 の要件を確認した上、最低生活費と収入との対比により、保護の要否が判断され、最低生 活費から収入を控除したものが扶助費支給額となるわけである。
保護開始時における要否の判定基準たる最低生活費と程度の判定基準たる最低生活費と を比較すると、その性格の相違から後者については一時扶助、移送費等臨時的最低生活費 について前者の基準よりもその範囲、程度が広く決められているが、この点については、 収入の分も含めて局 第10保護の決定の項で解説する。
〈参照図〉 最 一 基準生活費 住 家賃・間代・地代 教 基 準 額 介 居宅介護費 医 診 察 費 出 基 準 額 生 生 業 費 葬 基 準 額 低 般 加 算 住宅維持費 教 材 代 福祉用具費 薬剤治療材料費 技能習得費(含む交通費) 火 災 料 生 = 生 入院患者日用品費 + 宅 敷 金 等 + 育 学校教育費 + 護 住宅改修費 + 療 施 術 費 + 産 入 院 料 + 業 高等学校等就学費 +祭 自 動 車 料 活 活 臨時的最低生活費 宿所提供施設事務費 通学交通費 施設介護費 移 送 費 就職支度費 そ の 他 費 費 移 送 費 費 費 費 移 送 費 費 費 衛生材料費 費 授産施設事務費 費 一 般 生 活 費 基準生活費又はこれに代わる生活費 加 算 臨 時 的 最 低 生 活 費 移 送 費 居 宅 1 類 費 の 費 用 2 類 費 の 費 用 被 布 団 要保護者 浮浪者、引揚者の引取等遠遠隔地施設への (個人別経費の世帯合算額) (人員別世帯当たり額) 妊・産婦加算 新 生 児 等 被 服 収容 服 災 害 時 被 服 類 障害者加算 入 院 時 被 服 等 被保護者 他法給付、求職、施設入所手続のための交 救 護 保護施設入所者の基準生活費 費 新 生 児 等 お む つ 通費 施設等 在宅患者加算 家 具 什 器 費 他法の施設等入・通所 放射線障害者加算 入院等 入 院 患 者 日 用 品 費 入 学 準 備 金 施設入所者の一時帰省 (1ヶ月以上の入院患者・他法施設入所者) 児童養育加算 そ 配 電 設 備 の 新 設 入院患者との最小限度の連絡 介護保険料加算 の 上、下水道、井戸の新設 介 護 介護施設入所者基準生活費 他 入院患者等特別介護費 近親者の遺体遺骨の引取り 施 設 近親者の危篤又は争議参列転居 出産のための通院等 〈最低生活費の種類等〉 最低生活費は、生活、住宅、教育、介護、医療、出産、生業、葬祭の8つの扶助につい てその算定方法が保護の基準で定められている。
個々の世帯についての最低生活費は、この8つの扶助にかかる最低生活費を合算したも のである。
その概要を示すと前掲の参照図のとおりである。
1 一般生活費 (1)基準生活費 基準生活費は、生活扶助基準の基礎をなすものであり、個人単位の費用である 第1類の 経費と世帯単位の費用である 第2類の経費とによって構成され、それぞれ年間の需要をな らして平均月額で表示されている。
生活扶助基準が、 第1類と第2類の組合せ方式をとっているのは、世帯構成によって異 なる個々の世帯について極力合理的、科学的な最低生活需要が測定されるよう仕組まれて いるものである。 したがって、年齢によって生じる需要の差は、個人単位の費用である第 1類の費用において配慮されている。 保護の基準がマーケットバスケット方式によってい た時代には、 第1類及び第2類の費用についてそれぞれ前述のような費用を費目別に積み 上げて基準額を設定することとされていたが、格差縮小方式(現在は水準均衡方式)にな ってからは、一般国民の消費水準の向上の度合いを勘案して改定されることとなったため、 かかる積算基礎としての費目別の内訳は、全くなくなった。
基準生活費は、障害、母子等の特殊事情を考慮せず、年齢、世帯人員、所在地域(級地) 別に定められており、これ以外の個別的特殊需要は、加算等により対応することとなって いる。
(問7-1)〔出かせぎ者の級地基準〕 船舶に乗り込み、出かせぎ中の夫の最低生活費の級地基準は如何に取り扱うか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-ア 局 第7-2-(1)-キ 局 第8-4-(1) 問8-85 (答)この場合の一般生活費については、通常船舶がその業務を終了したとき、又は業務 を休止しているときに主として停泊しているところの級地基準を適用することとなるが、 主として停泊しているところがないか、又は明らかでない場合においては、主たる寄港地 の級地基準を適用することとなる。 しかしながら、ケースによっては主たる寄港地すら明 らかでないときも考えられるので、いわゆる出かせぎ必要経費控除をも考慮し、場合によ っては世帯員と同一の級地基準を適用することとしても差し支えない。
(問7-2)〔出身世帯を離れて居住する者の級地基準及び基準生活費等の認定方法〕 高等学校及び高等専門学校に就学するため出身世帯を離れて居住する者にかかる基 準生活費の認定に当たっては、当該居住地の級地を適用すべきと解するがどうか。
また、この場合の基準生活費及び住宅費の認定方法について教示されたい。
〔参照〕次 第8-3-(3)-ク 局 第1-3 局 第7-2-(1)-ケ (答)前段については、お見込みのとおりである。
出身世帯を離れて高等学校等へ就学する場合に必要となる住宅費については、貸付金や 自己の収入等によって賄うこととされたい。
なお、基準生活費については、出かせぎ等の場合と同じく他の世帯員と別に計上するこ ととなり、 第1類費は当該就学者のみの基準額、第2類費は単身世帯の基準額を計上する ことになる。
(問7-3)〔若者自立塾入塾者の基準生活費〕 「若者自立塾創出推進事業」の対象となる若者自立塾の入塾者に対する最低生活費 の計上は如何にすべきか。
〔参照〕局 第1-1-(6) 局 第7-2-(1)-エ 局 第7-4-(1)-エ-(ア) 局 第7-8-(2)-ア-(ア) 局 第7-2-(7)-ア-(オ) (答)「若者自立塾創出推進事業」は、様々な要因により、働く自信をなくした若者に対 して、合宿形式による集団生活の中での労働体験等を通じて、働くことについての自信と 意欲を付与することにより、就労等へと導くことを目的とした事業であり、入塾期間は3 か月(最長6か月)を原則としていることから、局 第1の1の(6)により、入塾後も出 身世帯と同一世帯として認定することになる。
この場合、基準生活費については、出かせぎ等の取り扱い同様に、局 第7の2の(1) エにより、他の世帯員とは別に入塾する日から退塾する日までの居宅基準生活費を計上す る(食費、居住費等の利用者負担費用は、生活扶助により対応)。 なお、入塾者の生活扶 助基準は、若者自立塾所在地の級地基準によることに留意されたい。
次に、住宅扶助については、入塾前の居住地に他の世帯員がいる場合は、引き続き入塾 者を含めた世帯の人数に応じて、住宅扶助を支給して差し支えない。 また、単身者の場合 であって入塾前の居住地に引き続き住居を確保する必要がある場合は、入塾期間中(最大 6か月)も従前の住宅扶助を支給して差し支えない。 なお、若者自立塾にかかる住宅費用 として、別途住宅扶助費を認定することはできない。
また、入塾中のプログラムに参加するために、資格取得のための経費などが別途必要な 場合は、局 第7の8の(2)のアの(ア)に基づき技能修得費として基準額の範囲内にお ける最小限度の額を計上して差し支えない。
なお、若者自立塾入退塾時に交通費を要する場合は、局 第7の2の(7)のアの(オ) により移送費を認定して差し支えない。
(問7-4)〔児童福祉施設入所者の基準生活費〕 同一世帯員のうち児童福祉施設に入所している児童がある場合の基準生活費はどの ように算定するのか。
〔参照〕告別表 第1第1章-3 課 第7-27 (答)児童の入所を目的とする児童福祉施設については、入所中当該児童の最低生活を満 たすだけの処遇が行われているものであるから、当該児童を除いた世帯員について基準生 活費を算定すれば足りるものである。 なお、身体障害者更生援護施設等告別表 第1第1章 の3に掲げられる施設入所者については入院患者日用品費を計上することとなる。
なお現在のところ、肢体不自由児施設及び重症心身障害児施設は、最低生活維持の見地 からは医療機関としての給付を行うものであるので、入院患者日用品費の計上を要するも のである。
(問7-5)〔養護老人ホーム入所者の加算の取扱い〕 養護老人ホーム等の入所者に医療扶助を適用する場合、障害者加算の認定要件を満 たすものについては最低生活費としてこれを認定することとなっているが、その者の 収入が加算認定額に満たないときは、不足分に相応する扶助費の支給を行うものと解 してよいか。
〔参照〕昭38.8.1社発 第525号社会局長通知 昭38.11.29社保 第85号保護課長通知-問4 (答)設問の場合、要否判定及び本人支払額の決定を行う上では加算額を計上するが、こ のことは、その者の収入が加算額に満たない場合に、その不足分を更に支給するものでは ない。 これらの加算の内容に相当する生活需要は、すべて老人福祉法の措置を受けている 限り、これによる施設入所の処遇のうちに含まれているものである。
したがって、たまたまその者の収入が加算の額に満たなくてもその不足分を生活扶助費 として支給する必要はないものである。
(問7-6)〔養護老人ホーム入所者の入院中の生活費〕 養護老人ホーム等の入所者から医療扶助の申請があった場合で、入院に伴い老人福 祉法による措置費のうち生活費が支弁されなくなるときはどう取り扱うか。
〔参照〕平18.3.31老発 第0331028号老健局長通知 (答)老人福祉法による措置を廃止された者のほか、老人福祉法の被措置者であっても生 活費の支弁がなされなくなった場合は、一般の入院患者の例によって保護の要否を判断す べきである。
なお、養護老人ホーム等の入所者が入院した場合でも、老人福祉法による措置費のうち 生活費はただちに支弁されなくなるものでなく、入院後、おおむね3か月間は老人日用品 費(本法における入院患者日用品費相当額)を支給することとなっているので留意するこ と。
(問7-7)〔義務教育中の者が寄宿舎等に入所している場合〕 義務教育を受けている者が、寄宿舎等に入所している場合の最低生活費の認定は如 何に取り扱うべきか。
〔参照〕局 第7-2-(1)-オ (答)遠距離又は積雪等により通学が不可能であって、当該地域の学童、生徒が全部寄宿 舎に入所して義務教育を受けている場合は、国の補助事業として、食費及び日用品費(個 人的経費を除く。 )の給与並びに寝具の現物貸与の措置がとられることになっている。
したがって、当該措置のとられている者についての最低生活費は基準生活費の 第1類の その他の経費相当分の額( 第1類の経費に25パーセントを乗じて得た額)のみを計上する こととなる。
なお、市町村において前記措置が採られていない場合には、一般の例により居宅におけ る最低生活費を計上することになる。
(問7-8)〔在院中の新生児の生活費〕 医療扶助により入院し分べんした場合の新生児に対する基準生活費は、入院患者日 用品費、居宅の基準生活費のいずれを計上すべきか。
〔参照〕告別表 第1第1章-1 (答)新生児に異常がなく医療扶助適用の必要がない場合には、居宅の基準生活費を計上 するものである。
(問7-9)〔医療扶助単給世帯に一時扶助を支給する場合〕 問7-123によれば、医療扶助単給世帯に家屋補修の必要がある場合には本人支払額 を変更することなく家屋補修費を支給してよいこととされているが、被服費、入学準 備金等臨時的な需要に係る一時扶助費についても同様の取扱いによることとして差し 支えないか。
〔参照〕問7-123 (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問7-10)〔付添いに当たる世帯員の適用級地〕 最低生活費の認定に当たり、出かせぎ等の場合は1か月を超える期間他の世帯員と 所在を異にするときに、他の世帯員と別に一般生活費を計上することとされているが、 付添いを行う世帯員の基準生活費の計上に際しても出かせぎ者の場合と同様に1か月 を超える期間他の世帯員と所在を異にする場合でなければ、病院等の所在地の級地基 準を適用できないか。
〔参照〕局 第7-2-(1)-エ 課 第7-1 (答)付添いを行う期間が1か月を超える場合は、入院患者の付添いに当る世帯員の基準 生活費の認定及び級地基準の適用は出かせぎ者の場合と同様である。 ただし、付添者に対 する病院給食費又は寝具の特別基準の適用がある場合は、期間にかかわりなく付添いにつ いた日から病院等の所在地の級地基準を適用して差し支えない。
(問7-11)〔特別支援学校への進学者の基準生活費〕 「特別支援学校への就学奨励に関する法律」(以下「就学奨励法」という。 )の適用 を受けて、特別支援学校に進学する者で寄宿舎を利用する場合の基準生活費の計上は 如何にすべきか。
〔参照〕告別表 第1第1章-3 局 第1-3 問7-14 問7-83 (答)小学部、中学部、高等部本科在学者については就学奨励法により食費及び日用品費 等が賄われているので、基準生活費の計上は要しない。
なお、高等部別科の在学者であって寄宿舎に入所しているときは、本法による入院患者 日用品費の基準額から就学奨励法による日用品費の額を控除した額を基準生活費として計 上することとなる。
(問7-12)〔短期入所事業の取扱い〕 次の事業を利用する場合の最低生活費の認定方法如何。
1 介護保険法 第8条第9項に基づく短期入所生活介護事業、同条第10項に基づく短 期入所療養介護事業、同法 第8条の2第9項に基づく介護予防短期入所生活介護事 業、同条 第10項に基づく介護予防短期入所療養介護事業及び老人福祉法第10条の4
(2)居宅から1か月を越えて利用する場合 課 第7の66により、利用開始日の属する月の翌月(利用開始日が月の初日である ときは当該月)から介護施設入所者基本生活費及び加算に当該施設に食費として支 払うべき額を加えた額を算定すること。
(3)医療機関から退院し、そのまま短期入所を利用する場合 課 第7の66により、入所日から介護施設入所者基本生活費及び加算に当該施設に 食費として支払うべき額を加えた額を算定すること。
(4)短期入所利用と同時又は利用中に困窮して保護申請した場合 保護開始日から介護施設入所者基本生活費及び加算に当該施設に食費として支払 うべき額を加えた額を算定すること。
2 障害者自立支援法に基づく短期入所事業、難病特別対策推進事業について(平成10年 4月9日健医発 第635号保健医療局長通知)に基づく難病患者等短期入所事業及び地方公 共団体が行う生活管理指導短期宿泊事業 (1)居宅から利用する場合(利用期間が1か月以内の場合) 当該事業による利用期間は、短期間であることがあらかじめ予定されていること から、局 第7の2の(3)のウに定める短期の入院患者の取扱いと同様に、保護の変 更決定を要しない。
(2)居宅から1か月を越えて利用する場合 利用開始日の属する月の翌月(利用開始日が月の初日であるときは当該月)から 入院患者日用品費及び加算に当該施設に食費として支払うべき額を加えた額を算定 すること。
(3)医療機関から退院し、そのまま短期入所を利用する場合 入所日から入院患者日用品費及び加算に当該施設に食費として支払うべき額を加 えた額を算定すること。
(4)短期入所利用と同時又は利用中に困窮して保護申請した場合 保護開始日から入院患者日用品費及び加算に当該施設に食費として支払うべき額 を加えた額を算定すること。
3 セーフティネット支援対策等事業の実施について(平成17年3月31日社援発 第033102 1号社会・援護局長通知)に基づく救護施設居宅生活者ショートステイ事業 (1)居宅から利用する場合(利用期間が1か月以内の場合) 居宅基準生活費は、局 第7の2の(1)のイにより、入所する初日を含めた日数に 応じて計上し、救護施設等基準生活費は、局 第7の2の(1)のウにより、入所した 日を含めた日数に応じて計上すること。
(2)居宅から1か月を越えて利用する場合 救護施設等基準生活費を算定すること。
(3)医療機関から退院し、そのまま短期入所を利用する場合 入院患者日用品費は、局 第7の2の(3)のキにより、退院する日を含めた日数に 応じて計上し、救護施設等基準生活費は、局 第7の2の(1)のウにより、入所した 日を含めた日数に応じて計上すること。
(参考) ○短期入所生○障害者自立○難病患者等○生活管理指○救護施設居 活(療養)介支援法に基づ短期入所事業導短期宿泊事宅生活者ショ 護事業 く短期入所事 業 ートステイ事 ○介護予防短業 業 期入所生活 (療養)介護 事業 居宅→入所 居宅基準 居宅基準 居宅基準 居宅基準 居宅基準 ※1ヶ月未満 保護の変更 保護の変更 保護の変更 保護の変更 入所日ま を要しない を要しない を要しない を要しない での日割 +救護施設等 基準生活費 入所日か らの日割 ※入居期間が介護施設入所入院患者日用入院患者日用入院患者日用救護施設等基 1ヶ月を超 者基本生活費品費 品費 品費 準生活費 えた場合 +加算+食費+加算+食費+加算+食費+加算+食費 入院→入所 介護施設入所入院患者日用入院患者日用入院患者日用入院患者日用 者基本生活費品費 品費 品費 品費 +加算+食費+加算+食費+加算+食費+加算+食費 退院日ま での日割 +救護施設等 基準生活費 入所日か らの日割 入所後困窮 介護施設入所入院患者日用入院患者日用入院患者日用 ※入所前の居者基本生活費品費 品費 品費 住地消滅し+加算+食費+加算+食費+加算+食費+加算+食費 ている場合
(問7-13)〔最低生活費の日割計算〕 月の途中での保護の開始や保護の変更にあたって、基準生活費その他月額で示され ている最低生活費の認定は、すべて日割計算しなければならないか。
〔参照〕局 第7-2-(2) 局 第7-2-(3)-エ 局 第7-2-(4)-イ 局 第7-3-(1) 局 第7-4-(1)-イ、ウ、エ (答)実施要領に特別の定めがない限り日割計算により認定すべきである。
実施要領の特別の定めとしては次のようなものがある。
(1)各種加算の計上又は認定変更が、翌月から算定されることになっている場合 (2)保護受給中の者が月の中途で入院した場合の入院患者日用品費の算定取扱い (3)保護受給中の者が月の中途で介護施設に入所した場合の介護施設入所者基本生活費 (4)教育扶助費 (5) 住宅扶助費(日割計算による家賃、間代の額を超えて家賃、間代を必要とするとき)
(問7-14)〔知的障害者通勤寮等に入寮している者の食費として施設に支払うべき額〕 知的障害者通勤寮等に入寮している者が勤務先等で給食を受け、又は、外食する場 合における告別表 第1第1章の3の表の「食費として施設に支払うべき額」は、当該 寮において毎日3回給食を受けたものとして計算した1か月分の総給食費の額を計上 してよいか。
〔参照〕告別表 第1第1章-3 (答)お見込みのとおりである。
(問7-15)〔警察官署に留置された場合〕 被保護者が被疑者等として警察署に留置、拘束された場合は刑事行政の一環として 措置されるべきものであることから最低生活費の計上は必要ないと思うがどうか。
〔参照〕昭25.7.26社発 第972号社会局長通知 (答)お見込みのとおりである。
(問7-16)〔12月中途に入院入所した者等への期末一時扶助〕 次のように12月の中途で入院入所又は退院退所した場合の期末一時扶助の取扱いは どうなるか。
(1)居宅において保護を受けていた者が12月中途に級地の異なる医療機関に入院し 1月以降も引き続き入院を要する場合 (2)医療機関に入院していた者が12月中途に退院し、引き続き居宅又は保護施設に おいて保護を要する場合 (3)保護施設に入所していた者が年末から年始にかけて入院した場合 (4)12月の中途で保護施設を退所し、居宅において年末年始になお保護を要する場 合 〔参照〕課 第7-37 (答)期末一時扶助の適用は、12月31日から1月1日における一般生活費(期末一時扶助 を除く。 以下同じ。 )の認定と同様に行うものである。
従って設問の場合にはそれぞれ次のように適用されることとなる。
(1)の場合は、12月においては一般生活費の認定の変更を要しないことから期末一時 扶助についても入院前の居住地の級地による基準がそのまま適用されることとなる。
(2)の場合は、直ちに一般生活費の変更が行われることから期末一時扶助についても 居住地又は保護施設所在地の級地による基準が適用されることとなる。
(3)及び(4)の場合は、入院日又は退院日から一般生活費の変更が行われることとな るから、既に決定してある保護施設における期末一時扶助費に代えて入院地又は居住地の 居宅基準による期末一時扶助を支給することとなる。
なお、保護施設における入所措置が廃止されないまま一時的に帰宅する場合は入所の期 末一時扶助が計上されることとなる。
(2)加 算 生活保護法による加算制度は、基準生活費において配慮されていない個別的な特別需要 を補てんすることを目的として設定されたものである。
個別的特殊事情といっても、人間には趣味嗜好の相違等何がしかの個人差があり、これ に伴って生活需要に差異を生じることもまったく否定することはできないが、基準生活費 は、この程度の個人差を吸収した平均的なものとして設定されている。
しかしながら、障害により最低生活を営むのに健常者に比してより多くの費用を必要と する障害者や、通常以上の栄養補給を必要とする在宅患者や、自分自身の分のほかに胎児 のための栄養補給を必要とする妊婦のように、多額の特別需要を有する者については、基 準生活費のほかにその分を補てんしないと最低生活が維持できないこととなる。
加算制度は、このような特別の需要に着目して基準生活費に、上積みをする制度であり、 したがって、加算対象者についてより高い生活水準を保障しようとするものではなく、加 算によってはじめて加算がない者と実質的な同水準の生活が保障されることになるのであ る。
(問7-17)〔加算についての届出〕 妊産婦加算は届出によって計上することとなっているが、その他の加算はどうか。
〔参照〕法 第7条 局 第7-2-(2) (答)加算の認定に限らず、最低生活費の認定は、一般に本人の申告、届出が中心となっ て行われるべきものである。 しかし、実施機関の側においても対象者の需要発見について 積極的に確認の努力をすべきであることはいうまでもない。 したがって、現業員が加算の 要件に該当すると思われる者を発見したときは、ただちに実施機関として認定に必要な手 続をはじめるとともに本人に対して適当な方法で申告届出を求めるべきであろう。
なお、妊産婦加算を含めて、月の中途で、加算の要件に該当する者からの申告届出があ り、これらの者を発見した場合は、翌月の初日から加算を計上すれば足りるものである。
(問7-18)〔月の中途で死亡した場合〕 加算を適用中の者が、月の中途で死亡した場合、加算は当該月の翌月から削除する こととしてよいか。
〔参照〕課 第7-19 (答)死亡した場合はその翌日から保護の廃止又は加算も含めた最低生活費の変更を行な わなければならないことから、死亡した日の翌日から加算も削除されることとなる。
(問7-19)〔妊婦についての認定〕 妊婦であることの認定及び妊娠月数の認定は、保健師の診断によっても差し支えな いか。
〔参照〕局 第7-2-(2)-ア-(ア) 保健師助産師看護師法 第37条 (答)妊婦であることの認定及び妊娠月数の認定にかかる診断は、保健師の業務とは認め られていないので、すみやかに母子手帳の交付を受けるよう指導し、実施機関の指定する 医師または助産師の診断を受けさせるようにされたい。 この場合必要に応じて検診命令を 適用することも考えられる。
(問7-20)〔妊産婦加算の認定における妊娠期間の換算〕 妊産婦加算を認定するにあたって、母子健康手帳等によって妊娠期間を確認する際、 週数表記されているものを月数表記に読み替える必要があるが、その換算はどのよう に行えばよいか。
(答)妊娠期間の週数から月数への換算については次のように取り扱われたい。
妊娠(最終月経開始日)から 0週 ~ 3週 →
(問7-21)〔介護人が認められる場合〕 告別表 第1第2章の4の(5)により介護人をつける場合は、居宅の場合に限られ るものなのか。
〔参照〕告別表 第1第2章-4 (答)設問の介護料の認定は病院その他介護設備を有する施設にある者については認めら れないものであり、居宅の場合に限られるものである。
(問7-22)〔障害者加算額の範囲で介護人が得られない場合〕 社会的条件を理由として入院していた単身者が、今回知人宅に引き取られ退院する ことになったが、居宅においてなお疾病のため日常起居動作に著しい障害があり、介 護人を必要とする場合であって、基準額の範囲内では適当な介護人を得られないとき は如何に取り扱うか。
〔参照〕告別表 第1第2章-4-(5) 告 第2 局 第7-10-(4) (答)その地域における慣行料金など総合的に勘案した最低限度必要な介護料金について、 厚生労働大臣あてに、生活扶助(障害者加算)の特別基準の設定のための情報提供を行わ れたい。
(問7-23)〔家族介護料の認定〕 いわゆる家族介護料の対象となっている障害者が入院した場合であって、世帯員が 引き続き介護にあたっている場合は、この介護料を認定して差し支えないか。
〔参照〕告別表 第1第2章-4-(4) (答)重度障害者が入院した場合であっても、一般の入院患者と同様、医療機関における 看護によって対応すべきものであるので、この介護料は認定できない。
(問7-24)〔家族介護料又は他人介護料の適用〕 重度身体障害者が、家族の介護も他からの介護も期待できる場合は、家族介護料、 他人介護料のいずれを適用すべきか。
〔参照〕告別表 第1第2章-4-(4)、(5) (答)保護の実施機関において、重度身体障害者の状況や経済効果等を総合的に勘案して 判断することとされたい。
なお、重度身体障害者がいる世帯の世帯員が就労しているため、その就労している時間 内は近隣の者が介護料を貰わずにその障害者を介護し、それ以外の時間については世帯員 が介護している場合、告別表 第1第2章の4の(4)を適用して差し支えない。
(問7-25)〔扶養義務者が介護する場合〕 在宅の重度障害者で介護を必要とするものについて、民法上の扶養義務者が介護を 行う次のような場合に家族介護料及び他人介護料の認定如何。
(1)被保護者である重度障害者が近隣に住む扶養義務者の介護を受けている場合 (2)局 第1の2の(4)により世帯分離されて保護を受けている重度障害者が保護 を受けていない家族から介護を受けている場合 〔参照〕告別表 第1第2章-4-(4)、(5) 局 第1-2-(4) 局 第5 (答)(1)の場合は、扶養義務者の介護という現物による扶養としてとらえるべきであり 他人介護料の支給は認められない。
(2)の場合、家族は保護を受けていないことから家族介護料を支給することはできな いものである。
(問7-26)〔在宅患者加算の適用〕 在宅患者加算は、栄養補給の必要について、保護の実施機関の指定する医師の診断 があれば、必ず認定しなければならないか。
〔参照〕告別表 第1第2章-6 局 第7-2-(2)-カ 昭55.4.1社保 第48号保護課長通知 (答)在宅患者加算の認定については、「栄養の補給を必要とすると認められる」場合で あり、かつ、「現に療養に専念しているもの」であるから現に医療を必要とする患者でな ければならない。 したがって、当該患者の病状、療養態度及び日常生活状況等を総合的に 勘案して判断すべきものであり、保護の実施機関の指定する医師の診断を重視すべきこと はもちろんであるが、福祉事務所嘱託医の検討も踏まえ、保護の実施機関としての判断に より認定すべきものである。
なお、認定に当たっての判断指針は昭和55年4月1日社保 第48号保護課長通知により示 されているが、それに照らしてもなお要否に疑義があるときは、都道府県本庁医系職員等 の意見を仰ぐ必要があろう。
また、当該加算が認定された患者については、病状や生活実態等について継続した観察 を行う必要がある。
(問7-27)〔在宅患者加算の認定更新期間〕 在宅患者加算の認定に当たって、局 第7の2の(2)のカの(イ)の結核患者であ るときは、加算認定更新は、最長6か月ごととなっているが、結核以外の患者につい ては、どのように認定すべきか。
〔参照〕告別表 第1第2章-6 局 第7-2-(2)-カ-(イ) 昭55.4.1社保 第48号保護課長通知 (答)少なくとも3か月を超えない期間ごとに加算の要否を認定すべきである。
(問7-28)〔在宅患者加算の認定月〕 局 第7の2の(2)のカの(ウ)中「認定すべき事由が生じた月」とは、医師の診 断のあった月をいうのか、それとも医師の診断に基づいて実施機関がその必要性を確 認した月をいうものであるか。
〔参照〕局 第7-2-(2)-カ (答)医師の診断に基づいて実施機関がその必要性を確認した月をいうものである。 また 「認定すべき事由」とは栄養補給の必要があるか、ないかという内容実態をさしているも のである。 したがって、結核入院患者が退院した場合で、退院前から栄養補給を明らかに 必要と認められる場合には、保護開始時における取扱いと同様、退院月から在宅患者加算 を計上して差し支えないものである。
(3)入院患者の基準生活費
(問7-29)〔入院患者の基準生活費の算定〕 入院した被保護患者に係る基準生活費の算定の仕方について示されたい。
〔参照〕局 第7-2-(1)-ア 局 第7-2-(3)-エ (答)入院患者の基準生活費の算定について算定上疑義のある事例について取扱いを示し てみよう。
(1)見込入院期間が1か月以上で居宅から入院した被保護患者が死亡等のため、結果的 に入院期間が1か月未満になった場合 月の中途(月の2日以降)で入院した者である場合は、局 第7の2の(3)のエによれ ば、入院患者日用品費は、入院日の属する月の翌月の初日から計上されることになっ ている。 したがって、死亡等の日が入院日の属する月であれば、当該月は、居宅基準 生活費の額が引き続き計上されるが、死亡等の日が入院日の属する月の翌月になった 場合は、入院月は居宅基準生活費の額が計上され、入院月の翌月の初日から死亡等の 日までの期間については日割計算によって、日用品費の額が計上されることになる。
結果的に入院期間が1か月未満になるにしても、これは、当初入院期間が1か月以上 になることが見込まれていた場合は一旦認定した日用品費の額の計上を取り消すこと なく、日用品費を認定するという考え方によるものである。
(2)見込入院期間は1か月末満であったが、併発疾病等のため、入院期間が1か月以上 となった場合 入院日の属する月は居宅基準生活費の額が計上される。 入院日の属する月内に併発 疾病のため、入院期間が1か月以上になることが明らかとなった場合はもとより、入 院月の翌月において入院期間が1か月以上になることが判明した場合も、「入院日の 属する月の翌月の初日」から、日用品費が計上されることになる。 この場合、入院月 の翌月分の扶助費が支給済みのときは遡及して保護の変更決定を行い、扶助費の返納 措置をとることとなるが、返納額(居宅基準生活費の額と日用品費の額との差額に相 当する額)を局 第10の2の(7)の規定により、処理することも考えられる。
(3)保護の開始日に入院している患者で、見込入院期間が1か月以上の場合 局 第7の2の(3)のオにより保護の開始日から日用品費の額が計上されることに なる。
(4)保護の開始日に入院している患者で、開始日以後の見込入院期間が1か月未満の場 合 入院期間が見込みよりも長くなるといった例も考えられるので、むしろ(3)の事 例と同様、局 第7の2の(3)のオの規定に基づいて、保護の開始日に入院している のだから、その日から日用品費を計上すること。
(問7-30)〔入院患者日用品費の支給方法〕 入院患者日用品費をその他の一般扶助費とあわせて世帯主に一括支給された場合、 実際に入院患者の手に渡らないという事例もあるが、このようなときは入院患者日用 品費のみについて福祉事務所から当該入院患者の口座に振り込む等をして当該者の手 に渡るようにして差し支えないか。
〔参照〕法 第31条第3項ただし書 (答)お見込みのとおり取り扱うこととして差し支えない。
(問7-31)〔入院患者日用品費の病院長に対する一括支払〕 入院患者日用品費(数名分)を病院長に対して一括支払することとしてよいか。
(答)入院患者日用品費の受給権はあくまでも入院患者本人にあり、その受給を確保する 趣旨からも、病院長等に対して支払をすることは原則的には認めがたいものであるが、入 院患者が重症であること等のため保護金品の受領が事実上困難な場合に、病院長等が被保 護者である入院患者の委任を受けて代理人として受領することはやむを得ないものと考え られ、この結果当該病院長等が数名分の保護金品を受領することはありうる。 この場合、 実施機関が行う交付手続についても病院長等の名義で一括して行うことを認める趣旨のも のではなく、事務処理上は入院患者個々の名義によりそれぞれ代理人に交付しなければな らない。
(問7-32)〔精神科病院入院中の単身者の入院患者日用品費の交付〕 精神科病院に入院中の単身患者(保護者が市町村長である場合)に対する入院患者 日用品費の支給について当該病院長又は保護者のいずれに交付することが適当である か。
〔参照〕問7-31 (答)単身の入院患者に対する入院患者日用品費の支給については、当該患者本人に支給 するのが法の建前であるが、本人が扶助費の受領、保管及び受領委任の行為もできない精 神病患者の場合は、当該病院長等介護の任に当たる者を通じて交付することもやむを得な いと思われる。
生活扶助費の支給方法については法 第31条第3項(居宅保護の場合)、同条第4項(介 護施設等での保護の場合)、及び同条 第5項(保護施設等での保護の場合)に規定されて いるが、 第4項、第5項に単身入院患者が含まれないことは条文上明らかであり、第3項 による居宅保護の延長として入院患者日用品費の支給を考えるほかない。
そこで保護義務者が市町村長の場合(精神保健福祉法 第21条参照)は、この市町村長と 病院長のいずれが扶助費の交付対象になるかという設問に戻るが、保護義務者は患者の監 督、入院の同意、退院の際の引取義務等精神保健福祉法に規定する限られた権利義務を有 するに止まり、扶助費受領の法定代理権をもつものではなく、また、精神保健福祉法 第22 条の「精神障害者の財産上の利益の保護」には扶助費の受領を含まないと解されているか ら、市町村長が受領者になることは一般的に予想されないところである。
結局、常に患者の身の回りの世話をする者に扶助費を手渡して、患者本人のために必要 な生活物質を購入してもらうよう依頼するほかなく、患者の親せき、知人等の者がたまた ま病院内で介護の任に当たっている等特殊な場合の他は病院長がこれに該当するものとし たものである。
(問7-33)〔入院患者が外泊した場合の飲食物費の支給〕 医療扶助による入院患者が外泊した場合の取扱い如何。 〔参照〕局 第7-2-(3)-イ (答)外泊期間中の生活費は、局 第7-2-(3)-イの規定に基づき、入院患者日用品費 とは別に、居宅基準生活費の飲食費相当分の額( 第1類の経費に75パーセントを乗じて得 た額)のほか、居宅基準生活費の燃料費相当分の額( 第2類の表に定める基準額に20パー セントを乗じて得た額)を外泊日数に応じ日割で生活扶助として支給すること。
(問7-34)〔入院・入所中の者が体験入所した場合の取扱い〕 入院・入所中の被保護者が施設やグループホーム等に体験入所(試験入所)する場 合の取扱い如何。
〔参照〕局 第7-2-(1)-シ 局 第7-2-(3)-イ (答)局 第7の2の(3)のイの規定に基づき、入院患者日用品費とは別に、居宅基準生 活費の飲食費相当分の額( 第1類の経費に75パーセントを乗じて得た額)のほか、居宅基 準生活費の燃料費相当分の額( 第2類の表に定める基準額に20パーセントを乗じて得た額) を外泊日数に応じ日割で生活扶助として支給して差し支えない。
また、体験入所の際に、利用料(室料と同等の内容のものに限る。 )をグループホーム 等(住宅扶助の対象となる住居に限る。 )に支払う必要がある場合には、住宅補助限度額 を外泊日数に応じて日割りした額の範囲内で必要な額を計上して差し支えない。
なお、局 第7の2の(1)のシに規定する施設へ体験入所する際に利用料を支払う必要が ある場合には、月額25,000円を外泊日数に応じて日割した額の範囲内で必要な額を計上す ることとなる。
(問7-35)〔児童養護施設入所中の児童が入院した場合の入院患者日用品費〕 児童養護施設に入所中の児童が、1か月以上入院する場合に入院患者日用品費の適 用は認められないか。
(答)児童養護施設に入所中の者については、児童福祉法に基づき入所中の飲食物費のほ か、生活扶助基準 第1類に掲げる居宅基準生活費のその他の経費相当分の経費(日常諸費) も賄われることになっている。 設問は、日常諸費によっては、入院中の生活需要を満たし 得ないし、また一般の児童が入院した場合に支給される生活保護法による入院患者日用品 費と比較して、低額であるから、不均衡を生ずるという趣旨と思われる。 しかし、当該入 院患者に対しては、児童福祉法による措置が継続する限り、児童養護施設の長がその児童 の生活需要を満たすこととなるため、これと重複して、入院患者日用品費を計上すること はできない。
(4)一時扶助 被服や家具什器の更新その他通常予測される生活需要については、経常的最低生活費(基 準生活費、加算等)の範囲内で賄われるべきものであり、逆にまたこのような生活需要が カバーし得る保護の基準でなければならないわけである。 もちろんこのことは1か月分の 保護費の中ですべての家具什器や被服の購入が可能であるという意味ではない。 一般家庭 においても高額な家具什器や被服の更新等の臨時的な出費がある場合には、当月分の家計 支出は過大となるが、その財源はあらかじめ準備された預金、あるいは、月賦による翌月 以降への繰越し等により一定期間を通じて、月々の実質的負担は給与等の収入との関連も あってほぼ一定するのが通常である。 基準生活費や加算等の経常的最低生活費もこのよう に月々これを完全に消費すべきものということではなく、ある程度の期間を通じてのやり くりを考慮したいわば平均月額的な意味での基準として設定されているわけである。
経常的最低生活費を以上のように考えた場合、被服や家具什器の更新等については、通 常これにより賄われるのが原則となる。
しかしながら被保護者の家計規模は一般国民のそれより小さく、やりくりの範囲にも自 ら限度があり、予想外の事由により臨時多額の需要が生じた場合には特別の対応が必要と なる。 例えば、火災により家財道具を焼失した場合とか単身の長期入院患者が退院して新 たに居を構える場合等予想外の事故や生活の場の転換に際し最低生活の基盤の物質の確保 に多額の費用を必要とする場合には、経常的最低生活費の範囲内でのやりくりは困難とな る場合が考えられる。
一時扶助は、かかる特定条件下における臨時特別の需要に対応するものである。
ア 被服費
(問7-36)〔被服の自然消耗と一時扶助〕 次 第7の2の臨時的最低生活費の基本的認定指針において一時扶助を認定すべき場 合の考え方が明確に規定されているが、経常的最低生活費の対象たる布団、被服類が 自然消耗した場合は、一時扶助の支給の対象とならないものと解してよいか。
〔参照〕次 第7-2 局 第7-2-(5) (答)被服等の日常的生活用品は本来、経常的最低生活費の中で月々計画的に賄っていく べきものであり、またそのように指導又は指示に心がけるべきである。
したがって、設問のような場合は、一時扶助の対象とすべきものではない。
しかしながら、正常な日常生活を営む能力に欠けている等特別な事情があり現に最低生 活の維持に必要不可欠な被服等を欠いている場合は、一時扶助の対象となりうるものであ る。
(問7-37)〔小規模罹災の場合の被服費〕 小規模の火災罹災世帯で公私の援助がない場合は、局 第7の2の(5)のアの(ア) 及び(イ)による寝具、被服を支給して差し支えないか。
〔参照〕局 第7-2-(5)-ア-(ア) 局 第7-2-(5)-ア-(イ) (答)いずれも支給して差し支えない。
(問7-38)〔被服(平常着)の支給〕 被服(平常着)を支給する場合には肌着類をあわせて支給してよいか。
〔参照〕局 第7-2-(5)-ア-(イ) (答)特に必要な場合には限度額の範囲内で肌着類を含めて支給して差し支えない。
(問7-39)〔収入のない非稼働世帯の保育所入所支度費の支給〕 収入のある世帯については保育所入所の支度費を就労収入より控除することが認め られているが、就労収入のない世帯の場合で保育所入所に伴い支度に要する費用を必 要とする場合は、当該費用を一時扶助として支給することはできるか。
〔参照〕局 第7-2-(5)-ア-(イ) 課 第7-61 問8-91 (答) 被保護者が求職活動中等の理由により児童を保育することが困難で、かつ他に子を 保育する者がなく、保育所入所に伴い支度に要する費用を必要とする場合であって、真に やむを得ない場合は、局 第7の2の(5)のアの(イ)を準用し、一時扶助として支給して差 し支えない。
なお、本来ならば、一般生活費で賄わなければならない費用であるから、機械的に支給 することのないよう、慎重に取り扱うこと。
(問7-40)〔被服費の現物給付と金銭給付〕 被服費の一時扶助の場合局 第7の2の(5)のアの各項のうち(ア)から(ウ)ま での場合においては、現物給付を原則とすることとなっているが、それ以外の各項に ついては金銭給付を原則とするものと解すべきか。
〔参照〕法 第31条第1項 局 第7-2-(5)-ア-(エ)~(カ) (答)原則として、金銭給付とするが、保護の目的を達するために必要がある場合は、保 護の実施機関の判断によって現物給付をすることとされたい。
(問7-41)〔出産準備の被服費〕 出産を控えて新生児のための寝具、産着、おむつ等を用意する必要がある場合の被 服費の支給に当たっては、保護変更申請書を徴することなく、職権変更により支給す ることとして差し支えないか。
〔参照〕法 第25条第2項 局 第7-2-(5)-ア-(エ) (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問7-42)〔紙おむつ等の範囲〕 紙おむつ等の「等」とはどんなものを指すのか。
〔参照〕局 第7-2-(5)-ア-(エ) 局 第7-2-(5)-ア-(カ) (答)布おむつ、貸しおむつ、おむつの洗濯代のほか、おむつカバーや油紙等失禁防除の ために必要な物をいうものである。
イ 家具什器費
(問7-43)〔家具什器費における実施機関限りの特別基準設定について〕 局 第7の2の(6)のなお書にいう「真にやむを得ない事情」とは、どのような事 情が考えられるか。
〔参照〕局 第7-2-(6) (答)例えば、災害にあい家具の大部分を失った場合や、長期間入院していた単身者が、 退院して新たに自活するに際し全く家具什器を所持していない場合などが考えられる。 家 具什器費の認定に当たっては地域における低所得世帯の生活実態、当該世帯人員の状況等 からみて、最低生活に必要な最少限度の家具什器の程度を的確にとらえるとともに、例え ば、罹災世帯であれば消失の程度、他からの援助の有無等を十分調査検討の上取り扱う必 要がある。
(問7-44)〔長期入院患者が退院した場合等の暖房器具〕 長期入院患者が冬期間に退院した場合等で、暖房器具がなく、かつ、必要不可欠で あると認められるときは、家具什器費の基準額の範囲内で、暖房器具を支給してよい か。
〔参照〕局 第7-2-(6) (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問7-45)〔家具什器費の支給対象品目〕 保護開始時、長期入院・入所後の退院・退所時等において、冷蔵庫、電子レンジ等 の保護受給中に保有が容認される物品を保有していない場合、これらの物品を家具什 器費の支給対象としてよいか。
〔参照〕局 第7-2-(6) (答)日常生活に必要な物品については、本来経常的な生活費の範囲内で、計画的に購入 すべきである。
冷蔵庫、電子レンジ等の保護受給中に保有が容認される物品を保護開始時に保有してい なければ、一時扶助の支給基準である「最低生活に必要な物品を欠いていると認められる 場合であって、それらの物資を支給しなければならない緊急やむを得ない場合」に該当す るか否かを個々の世帯の状況に応じて判断し、その結果、必要性および緊急性が認められ る場合には家具什器費を認定して差し支えない。
なお、必要性及び緊急性が認められない場合には経常的な生活費の中から順次購入して いけば足りるものであり、家具什器費を認定することは適当でない。
ウ 移送費
(問7-46)〔外国へ帰還する場合の取扱い〕 局 第7の2の(7)のアの(ア)に示される「野外において生活している者、外国 からの帰還者等」の「等」には、どのような例があるか。
〔参照〕局 第7-2-(7)-ア-(ア) 昭29.5.8社発 第382号社会局長通知 (答)外国人の被保護者等が外国へ帰還する場合で、出港地までの経費について他からの 援助が不可能な場合が例としてあげられる。
(問7-47)〔施設見学や体験入所の際の移送費〕 被保護者が実施機関の指導を受けて施設見学や体験入所を行う際に、移送費を支給 してよいか。
〔参照〕局 第7-2-(7)-ア-(ウ) (答) 施設入所手続きの一環として、お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問7-48)〔老人ホームの移送費〕 老人ホームに措置入所するための移送費又は老人ホーム入所者が通院又は入院する ための移送費はすべて老人福祉法で措置されるものと解してよいか。
〔参照〕昭39.1.7社施 第1号施設課長通知 昭和46.9.22社老 第111号老人福祉課長通知 (答)老人ホームに入所する場合の移送に要する費用は、当該老人が被保護者であるなし にかかわらず老人福祉法によって支給されるものである。
ただし、老人ホームに入所している者が生活保護法による通、入院する場合又は入院し ている被保護者が老人ホームに入所する場合は、老人福祉法では支給されず、生活保護法 で支給することとなる。
(問7-49)〔公共職業能力開発施設等の「等」の範囲〕 局 第7の2の(7)のアの(オ)にいう「公共職業能力開発施設等」の「等」はど のような施設が例示されるか。
〔参照〕 次 第7-2-(7)-ア-(オ) 問7-50 問7-83 (答)入退所施設としては、児童福祉施設(乳児院、児童養護施設、知的障害児施設等)、 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園、婦人保護施設及び特別支援学校寄 宿舎等があげられる。 また通所施設としては、児童福祉施設(知的障害児通園施設、肢体 不自由児通園施設、保育所等)及び幼稚園等があげられる。
なお、稼働収入のある世帯における保育所等に通所する場合の交通費については、問7 -50によること。
(問7-50)〔公共職業能力開発施設等の通所交通費〕 公共職業能力開発施設等に通所して技能修得する場合の交通費及び稼働収入のある 世帯の保育に欠ける児童が保育所又は幼稚園に通所(園)する場合の交通費について 移送費を支給してよいか。
〔参照〕次 第8-3-(1)-ア-(イ) 局 第7-2-(7)-ア-(オ) (答)当該交通費は、それぞれ技能修得費又は、収入を得るための必要経費により対応す べきであり、移送費の対象とはならないものである。
(問7-51)〔転居時のルームエアコンの移設費用〕 局 第7の2の(7)のアの(サ)にいう荷造費及び運搬費には、保有の容認されたルー ムエアコンの取り外し及び設置に係る費用も含まれると解してよいか。
〔参照〕局7-2-(7)-ア-(サ) (答)お見込みのとおりである。
(問7-52)〔就職地へ赴くための費用〕 就職の確定した者が就職地に赴くために交通費、荷物の荷造費及び運賃を必要とす る場合には「就職することにより、生計の本拠を構える場合に限り」生活扶助の移送 費を計上して差し支えないとされているが、飯場に寄宿する場合や未成年者が就職先 で寮に寄宿する場合なども移送費の対象としてよいか。
〔参照〕局 第7-2-(7)-ア-(サ) 課 第7-18 (答)就職のために現在地をはなれ他地で生活するものであれば移送費を支給して差し支 えない。 遠隔地に就職する場合には通常雇用主から、赴任旅費、支度費が支給される場合 が多いと思われるので、実際に移送費を必要とする場合は極く稀であろう。
(問7-53)〔葬儀等の移送費の対象〕 遺体・遺骨の引取り、危篤、葬儀、納骨の際の移送費の認定に当たって、支給対象 等は、どのような判断によって認定すればよいか。
〔参照〕局 第7-2-(7)-ア-(ケ) 局 第7-2-(7)-ア-(コ) (答)設問の移送費の支給を行うか否かは、実施機関において個別的に判断すべきもので あるが、その際には、当該被保護者と病人又は死者との関係すなわち、血縁の探さ、付合 いの疎密等を勘案し、また、支給対象となる人数については、近隣の低所得者世帯との均 衡を失しないよう、必要最少限度の人数(通常は1人)にとどめる取扱いとすべきである。
(問7-54)〔遺体遺骨を引取りに行く場合の代理人の範囲〕 出かせぎ中の世帯主が事故で死亡し、遺体を引取りに行くことが必要になったが、 妻は、乳児をかかえており引取りに行けないため、世帯主の親族が代って赴くことと なった。
このような場合この親族を代理人と認め、当該被保護世帯に移送費を認定して差し 支えないか。
〔参照〕局 第7-2-(7)-ア-(ケ) (答)親族関係にある者が赴く場合は、その者が費用を負担するのが社会通念上当然のこ とである。
したがって、近親者すなわち当該被保護世帯員のいずれかに対し、三親等以内の血族又 は二親等以内の姻族である者が赴く場合は、原則として移送費は認められない。
ただし、当該親族が移送費相当額を負担し得ない生活状態にあると認められる場合には、 例外的に移送費を認定することとして差し支えない。
(問7-55)〔刑務所長等の要請〕 局 第7の2の(7)のアの(ス)にいう「当該施設の長の要請」は、公文書によら なければならないか。
〔参照〕局 第7-2-(7)-ア-(ス) (答)公文書でなくても、何らかの方法で実施機関が確認できるものであれば差し支えな い。
(問7-56)〔断酒会に参加する際の移送費〕 アルコール依存症者が断酒会に参加する場合、入会費用等を移送費から支給するこ とはできないか。
〔参照〕局 第7-2-(7)-ア-(セ) (答)断酒会の例会に参加する場合に支給し得る費用は、移送費としての参加交通費に限 られるものである。
また、宿泊研修会に参加する場合は参加交通費、宿泊費及び飲食物費について支給し得 るものである。
なお、断酒会の入会費用及び例会又は宿泊研修会以外のための総会、大会等への出席費 用については移送費支給の対象とならないので念のため申し添える。
(問7-57)〔入院患者が断酒会に参加する場合の移送費〕 入院中のアルコール依存症者が断酒会に参加する場合、移送費の支給は認められる か。
(答)アルコール依存症者が退院後断酒を継続できるようにするため断酒会を活用させる 必要があると主治医が認めるときは、当該入院患者に対し、断酒会の例会に参加するため の交通費を支給して差し支えない。
なお、病気がアルコールに起因するため主治医が断酒会の参加を認めたときも同様に取 り扱って差し支えない。
(問7-58)〔精神障害者等の社会復帰対策事業への参加〕 局 第7の2の(7)のアの(セ)にいう「精神保健福祉センター、保健所等におい て精神保健福祉業務として行われる社会復帰相談指導事業等」とはどのようなものが あるか。 また、薬物依存・中毒者がいわゆる民間リハビリテーション施設に通う場合 は含まれるか。
〔参照〕局 第7-2-(7)-ア-(セ) (答)精神保健福祉センター、保健所及び市町村が行う精神保健福祉相談事業及びデイ・ ケア事業のほか、薬物依存・中毒者に対する事業も含め民間活動として行われるものであ っても、国若しくは地方公共団体から当該事業に対し補助が行われている場合、又は、保 健所もしくは精神保健福祉センター等が後援する場合で、いずれも社会復帰に効果が期待 できると認められるときは対象として差し支えない。
(問7-59)〔福祉事務所職員の付添い〕 移送費の対象となる要保護者に付添いを必要とする場合で、身寄りがないため福祉 事務所の職員が付き添うときはその付添いの費用について移送費を適用してよいか。
〔参照〕局 第7-2-(7)-ア-(ア) 局 第7-2-(7)-ア-(イ) (答)移送費は適用できない。 福祉事務所の職員が公務として同行する場合は、職員とし ての旅費支弁によるべきものである。
エ 入学準備金
(問7-60)〔入学準備金の一括支給〕 小・中学校に入学する児童、生徒に対する入学準備金の支給に当たっては、保護変 更申請書を徴することなく職権変更により支給することとして差し支えないか。
〔参照〕法 第25条第2項 局 第7-2-(8) (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問7-61)〔外国から帰国した児童等に係る入学準備金の取扱い〕 次の場合は、それが学年中途又は 第2学年以上への編入であっても、転入の準備の ために費用が必要な場合は、入学準備金を支給して差し支えないか。
(1) 外国から帰国した児童が初めて小学校又は中学校に就学する場合 (2) 民族学校に就学していた児童が公立の小学校又は中学校に転入する場合 〔参照〕局 第7-2-(8) (答)いずれの場合も支給して差し支えない。
オ ひとり親世帯就労促進費 (問7-62)〔ひとり親世帯就労促進費の認定方法〕 収入認定額を3か月の平均額により算出している場合、その収入認定額に応じて、 ひとり親世帯就労促進費を認定してよいか。
〔参照〕局 第7-2-(9) (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
例えば、就労収入が2月;28,000円、3月;35,000円、4月;33,000円で、その3か月 平均月額が32,000円の場合には、当該収入認定額に応じてひとり親世帯就労促進費10,000 円を認定することとなる。
(問7-63)〔ひとり親世帯就労促進費の日割り計上〕 月途中で就労を開始した場合や、月途中で保護廃止となった場合、ひとり親世帯就 労促進費を日割りして計上するのか。
〔参照〕局 第7-2-(9) 課 第7-85 (答)ひとり親世帯就労促進費は、要件を満たしている場合に、定額で給付するものであ り、日割りの計上は行わない。 収入認定月にあわせて実施するものである。
(問7-64)〔ひとり親世帯就労促進費の支給要件〕 ひとり親世帯就労促進費は、1回のみの開催(例えば、就労意欲の喚起を目的とし たセミナー等)で終了する職業訓練に参加した場合も支給して差し支えないか。
また、職業訓練等に参加しているため、ひとり親世帯就労促進費を支給していた被 保護者が、その後の参加状況が著しく低調となった場合、保護の実施機関の判断によ り就労促進費を支給しないこととして差し支えないか。
〔参照〕局 第7-2-(9) (答)前段については、1回のみ開催されるセミナー等への参加であっても、保護の実施 機関が、当該世帯の自立助長に効果的として認める場合には、支給の対象として差し支え ない。
後段については、職業訓練等に参加している場合、当該世帯の自立助長に効果的である と保護の実施機関が認めた場合を支給の要件としており、保護の実施機関が要件を満たさ ないと判断した場合には、支給しないこととして差し支えない。
(問7-65)〔ひとり親世帯就労促進費の遡及支給〕 やむを得ない理由により、就労していた事実が事後になって判明した場合、ひとり 親世帯就労促進費は遡及して支給することができるのか。 あるいは、生活保護法 第63 条を適用する際に、その返還額から就労促進費を控除する取扱いとなるのか。
また、就労収入の申告を故意に怠り、生活保護法 第78条を適用する場合はどうか。
〔参照〕局 第7-2-(9) 問13-2 (答)生活保護費の遡及変更は2か月程度(発見月及びその前月分まで)と考えるべきで あり、原則として前2か月分までの追加支給をすることとされたい。 なお、法 第63条を適 用をする際に、その返還額から就労促進費を控除する取扱いは認められない。
また、法 第78条を適用する事例の場合には、不正受給していた期間の就労促進費を給付 する必要はないものである。
(問7-66)〔ひとり親世帯就労促進費の職権認定〕 ひとり親世帯就労促進費の認定に当たっては、保護変更申請書を徴することなく職 権により認定する取扱いとして差し支えないか。
〔参照〕法 第25条第2項 局 第7-2-(9) (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問7-67)〔ひとり親世帯就労促進費と技能修得手当〕 課 第8の50によると、技能習得手当を受給しながら技能習得している者については あわせて支給される基本手当等に対して基礎控除を適用してよいこととなっている が、基本手当の額が30,000円以上の場合、就労収入が30,000円以上であるとみなし、 10,000円の就労促進費を支給してよいか。
〔参照〕局 第7-2-(9) 課 第8-50 (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
カ その他
(問7-68)〔2世帯以上で共同水道を設置する場合〕 水道(井戸)設備費の取扱いに当たり、隣接する2世帯以上が共同水道(井戸)を 設置しようとする場合、その設備費は共同水道(井戸)1基につき 第7の2の(10) のイの(ア)に定める額の範囲内で特別基準の設定が認められるものであると解すべ きか。
〔参照〕局 第7-2-(10)-イ (答)共同水道を新設する場合であって、当該水道を利用する被保護世帯が水道の設備費 を負担しなければならないときは、その世帯につき局 第7の2の(10)のイの(ア)に定 める額の範囲内で特別基準の設定をしても差し支えないものである。 したがって、2以上 の被保護世帯が同一共同水道を利用する場合であってもそれぞれの世帯について局 第7の 2の(10)のイの(ア)に定める額の範囲内で特別基準の設定は認められるものである。
(問7-69)〔配電設備外線工事費〕 農山漁村電気導入促進法等により電気を導入するに当たって、被保護者が負担すべ き外線工事費は、配電設備費として計上して差し支えないか。
〔参照〕局 第7-2-(10)-ア (答)新たに配電設備を設ける場合は、屋内配線の費用に限らず、外線(屋外)工事に要 する費用で他からの援助負担がないため被保護者が義務的に負担しなければならない額を 計上して差し支えない。
なお、配電設備、水道設備等を認定する場合は工事施工の事前に承認を受けるべきこと はいうまでもない。
(問7-70)〔水源地変更に伴う利用者負担金〕 保護開始前に水道が設備されていたが、干ばつにより水道の水源が枯渇したため水 源地が変更された。
これに要する費用を利用者が負担することとなった。 この場合、被保護者が義務的 に負担しなければならない経費について、水道設備費の特別基準額を認定して差し支 えないか。
〔参照〕局 第7-2-(10)-イ (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問7-71)〔水道設備費の範囲〕 湧水又は谷川の水を引水し自家給水するために遠距離からビニールパイプ、ゴムホ ース等を使用する必要がある場合、これに要する費用を水道設備費として認定してよ いか。
また、同様に自然水を利用しているケースで水質検査の結果滅菌の必要がある場合 滅菌装置の設置費を水道設備費により支給してよいか。
〔参照〕局 第7-2-(10)-イ (答)いずれの場合においても、その地域で同じ状況のもとにある世帯のほとんどが同様 の設備を設置している場合には、それらの設備が最低生活維持のために必須の飲料水の供 給源の機能を果たすものと解されるので、お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問7-72)〔液化石油ガス設備費の範囲〕 液化石油ガス設備費を認める場合、どのような費用を対象とすべきか。
〔参照〕局 第7-2-(10)-ウ (答)充てん容器の固定等の経費、充てん容器から台所等のコックに至るまでの配管工事 費及び材料購入費である。 したがって、ガスバーナー、ゴムホース等の購入費用は対象と ならない。
(問7-73)〔家財処分料と家財保管料の併給〕 借家等に居住する単身の被保護者が医療機関、介護老人保健施設、職業能力開発校 社会福祉施設等に入院又は入所する際、局 第7の2の(10)のオにより家財処分料の支 給を認める場合であっても、必要最小限度の家財を処分せずに保管することで退院又 は退所後速やかに居宅生活へ移行することが見込まれる等、真にやむを得ない事情が あると認められるときは、家財処分料と併せて局 第7の2の(10)のエにより家財保管 料を支給して差し支えないか。
〔参照〕局 第7-2-(10)-オ 局 第7-2-(10)-エ (答)お見込みのとおりである。
(問7-74)〔妊婦定期検診料の支給回数〕 妊婦定期検診料(一時扶助費)を支給するに当たって、支給回数に制限はあるのか。
〔参照〕局 第7-2-(10)-カ (答)妊婦定期検診料は、妊娠した被保護者が保健所において行われる妊婦の健康診査事 業を利用することができず、医療機関において定期検診を受ける場合に限って支給される ものであるが、その回数については、母子健康手帳に明記された受診回数を標準として、 必要な回数分を支給することとして差し支えない。
なお、受診回数については、あらかじめ医療機関と連携を図り、被保護者に対して教示 しておくことが望ましい。
(問7-75)〔不動産鑑定費用等の「その他必要となる費用」〕 局 第7の2の(10)のキの不動産鑑定費用等の「その他必要となる費用」とはどの ような費用か。
〔参照〕局 第7-2-(10)-キ (答)本人への名義変更に要する費用、相続の際に必要となる所有権移転登記や所有権保 存登記に要する費用等があげられる。
また、要保護世帯向け長期生活支援資金の利用のため、成年後見制度の利用が必要とな る場合には、他法他施策である成年後見制度利用支援事業が利用できない等、真にやむを 得ない場合に限り、当該制度の利用のために要する費用を認定して差し支えない。 ただし、 経常的経費である成年後見人への報酬については、支給対象とならない。
2 教育費 〈教育扶助の範囲〉 教育扶助の対象となるのは、義務教育である小学校、中学校に限定される。 憲法 第26条
〈教育扶助の内容〉 教育扶助は、法 第13条により「義務教育に伴って必要な教科書その他の学用品」、「義務 教育に伴って必要な通学用品」及び「学校給食その他義務教育に伴って必要なもの」とさ れている。 このうち教科書については「義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律」 により無償給与されるので本制度の扶助は要しない。
教育扶助の内容については、保護の基準において「基準額」「教材代」「学校給食費」「通 学交通費」に分けて示されている。 このうち、「基準額」以外はすべて実費支給となって いる。 「基準額」は、学用品その他全ての学校、生徒において共通的、平均的に必要とな る費用を定めたものであり、学校差、個人差の多いワークブック和洋辞書、副読本的図書 等の書籍類については、個別の需要に即応すべく教材代として実費支給で対応することと している。
なお、基準額は、年間所要額を算定し、これを月割に示しているものであるが、学用品 等の実際の需要は各月に平均して生じるというよりも学期の始め等に集中することが多い ので、その支給については、こうした実態に対応して一括支給もできるようになっており、 実情にあった運用が必要とされる。
教育扶助については、その支給方法について、本人(児童・生徒)・親権者等のほか学 校長に対して交付することができることとされている。 教育扶助費を学校長に対して交付 することができることとしたのは、学校長に交付した方が効率的であるとか、教育扶助費 がその目的とする費用に直接あてるよう確保することが必要な場合に対応したものであ り、学校給食費について適用されることが多い。 しかしながらその運用に当たっては、生 活保護受給世帯のプライバシーの配慮について十分留意されたい。
(問7-76)〔学級費等の認定〕 局 第7の3の(2)の学級費等の特別基準の認定に当たっては保護変更申請書を徴 することなく、職権変更により特別基準額の全額認定する取扱いとして差し支えない か。
〔参照〕局 第7-3-(2) (答)お見込みのとおりである。
(問7-77)〔学校給食費の認定方法〕 学校給食費の具体的な認定方法を説明されたい。
〔参照〕局 第10-2-(8) 課 第7-13 課 第10-11 (答)学校給食費は、実費の額を計上すべきものであるから、当該月の給食費として支給 した額と実際に徴収された額とに差を生じた場合は、翌月の支給額の決定に際して調整す べきである。
(問7-78)〔欠席がある場合の学校給食費〕 学校給食費を概算額で前渡した場合は、毎学年2回程度精算を行うこととされてい るが、給食費についてはほとんどの学校が月決めによる定額料を定めており、その者 が各月において若干の欠席があっても日割等による返還はしないこととなっている。
また、各月においては給食日数等の相違による徴収額と実額との間に若干の差があっ ても年度末においては給食日数、給食内容を変更することにより、返納、追徴等をせ ず概算額による徴収額で賄うこととされている。
この場合、被保護者が学校に対して納付しなければならない額(各月一定額を徴収 される)を計上し、精算は行わないこととしてよいか。
なお、月の中途で廃止されるときは、その月分については精算を行うこととしてい る。
〔参照〕課 第7-13 (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問7-79)〔正規の教材として格技等の用具〕 格技の用具及びスキー、スケートの用具は、正規の教材として当該学級の全児童が 必ず購入することになっていれば、その購入費を教材代として支給してよいか。 また 支給できる場合、用具の範囲を示されたい。
〔参照〕局 第7-3-(3) (答)支給して差し支えない。 その範囲は次のとおりとされたい。
(1)格技の用具………柔道着、相撲のまわし及び剣道用具(面、胴、垂、小手、竹刀、 剣道着及び用具袋) (2)スキーの用具……板、金具、ストック、靴及び手袋 (3)スケートの用具…スケート靴
(問7-80)〔課外クラブ活動に要する経費について〕 課外クラブ活動に要する経費について教材代から支給してよいか。
〔参照〕局 第7-3-(3) (答)生徒の自主活動として同好の生徒が組織している課外のクラブ活動において用いら れる用具類を教材代の対象とすることは認められない。
なお、各教科等に必要な教材については、副読本的図書、ワークブック、和洋辞書並び に格技及びスキー(スケート)の用具を除き、全て教育扶助基準額に含まれているもので ある。
(問7-81)〔通学交通費の支給要件〕 通学のための交通費を認めるに当たって、「身体的条件、地理的条件又は交通事情 とはどのようなものをさすか。
(参照〕局 第7-3-(4) (答)「身体的条件」とは、障害や疾病のため歩行困難な場合等、交通機関を利用するこ となしには、通学する方法が全くないかあるいは通学がきわめて困難な場合をさし、「地 理的条件」とは、へき地、離島等交通機関を利用せざるをえない場合をさすものである。
(問7-82)〔通学に伴う付添交通費〕 小学校又は中学校に通学する児童又は生徒が負傷、疾病、障害、精神的理由等によ り付添を要する場合の付添交通費の支給に当たっては、被保護者からの申立てのみで 取り扱ってよいか。
〔参照〕課 第7-45 (答)被保護者からの申立てのみによることなく、傷病、障害、精神上の理由等により当 該児童又は生徒の通学に付添が必要であることについての事実関係、学校当局の要請等を 確認した上で取り扱われたい。
(問7-83)〔特別支援学校の寄宿舎利用者の帰省旅費〕 義務教育中の児童(生徒)であって、「特別支援学校への就学奨励に関する法律」(以 下「就学奨励法」という。 )の対象となり、かつ、生活保護受給中の者が寄宿舎を利 用した場合であって、休日に家に帰るときは、どう取り扱ったらよいか。
〔参照〕課 第7-24 課 第7-45 問7-11 (答)就学奨励法においては、同法 第2条第1項で、これら学校を設置する市町村を管轄 する都道府県は保護者の経済的な負担を軽減するため、その負担能力の程度に応じてこれ らの学校に就学するための経費の全部又は一部を支弁することとなっておりその対象は、 下図のごとくである。
(1)教科用図書の購入費 高 等 (2)学校給食費 小 部 学 (3)通学又は帰省に要する交通費及び 部 専 付添人の付添に要する交通費 攻 及 科 (4)学校附設の寄宿舎居住に伴う経費 び を 除 (5)修学旅行費 中 く 学 (6)学用品の購入費 部 設問のごとく、寄宿舎を利用している場合においては、(2)~(6)に掲げたものにつ いては当然奨励法で全額支弁されるものである。 帰省の場合の交通費については、年間39 往復以内、最も経済的な通常の経路及び方法により帰省する場合の往復交通費の額が奨励 法により支給されるので、休日ごとに帰省するための交通費は当該児童生徒が寄宿生活を なし得る前提に立っているため、生活保護法において交通費を支給することは出来ない。
(問7-84)〔夏季施設参加費の範囲〕 夏季施設参加費として認められる費用の範囲はどこまでか明示されたい。
〔参照〕局 第7-3-(5) (答)交通費、宿泊費、施設利用料、保健衛生費、施設見学料等参加する児童又は生徒全 員が共通に負担する費用、つまり学校又は教育委員会が一律に徴するものに限られるもの であり、トレーニングパンツ、靴等個人的に用意するものは含まれないものである。
(問7-85)〔学用品費の再支給と扶助費の再支給〕 災害等により学用品を消失した場合、局 第10の4により扶助費の再支給を行って もよいか。
〔参照〕局 第7-3-(6) 局 第10-4 (答)学用品を消失した場合には、局 第7の3の(6)によることとなる。
なお、扶助費受領の帰途に盗難により、教育扶助費を含む保護金品を失った等の場合に は、局 第10の4によることとなる。
(問7-86)〔学用品費再支給の災害時等〕 局 第7の3の(6)の「災害」とは、風水害、地震等自然災害のほか、火災も含ま れるものと思うが、「その他不可抗力」としてはどのような場合か。
〔参照〕局 第7-3-(6) (答)前段については、お見込みのとおりである。 後段については、具体的には盗難、強 奪が考えられる。
(問7-87)〔学校で徴収する暖房費〕 寒冷地における児童生徒が学校納入金として暖房費を徴収される場合に、この費用 を本法による扶助費として支給することはできないか。
(答)学校の設置者は、その設置する学校を管理し、その学校の経費を負担する(学校教 育法 第5条)こととされており、設問の暖房費は、本来設置者が負担すべきものと解され るが、設問のように暖房費を徴収される場合であっても、生活扶助基準において冬季加算 が計上されることとなっていることにかんがみ、特別の需要として暖房費を計上すること はできない。
(問7-88)〔通学用オーバーの取扱い〕 寒冷地において、学童の通学のためにオーバーが必要である場合、これに要する経 費は、教育扶助の通学用品に含まれると考えるべきか。 特別基準は、認められるか。
または生活扶助の「被服費」によるべきか。
〔参照〕次 第7 (答)設問の寒冷地における学童のオーバーは日常生活に通常必要とされる一般的需要で あり、本来、毎月の一般生活費のなかから補てんされていくべき性質のものであり、教育 扶助基準や生活扶助の一時扶助費の被服費では認められない。
(問7-89)〔長期欠席児童に対する教育扶助の支給〕 疾病のため1か月以上の長期にわたり、学校を欠席している児童に対して自宅にお いて学習していると認められる場合は、教育扶助を支給して差し支えないか。
(答)個々の児童の実情に応じて、自宅における学習に必要と考えられる場合のみ認めて 差し支えない。
(問7-90)〔外国人の民族学校に就学する者〕 学齢期にある外国人を主たる対象として教育するいわゆる民族学校(学級)で受け る教育は、義務教育に準ずる教育として教育扶助を行ってよいか。
〔参照〕法 第13条 (答)本法による教育扶助は、教育基本法に定める義務教育に必要な経費に限られること は、法 第13条の規定からして明らかであり、民族学校(学級)に就学する者に対して本法 の教育扶助費を認定することはできない。 しかし、民族学佼(学級)に通学する者が、別 に教育基本法に定める義務教育を受ける学校に通学している場合の経費は、本法の教育扶 助の対象となることはいうまでもない。
(問7-91)〔国立学校等への就学の可否及び教育扶助の範囲〕 次に掲げる学校への就学は認められるか。
1 国立の小・中学校 2 私立の小・中学校 3 公立の中等教育学校の前期課程 (答)1 国立学校については、就学することが将来の自立に有効であると認められる場合 は就学を認めて差しつかえない。
なお、教育扶助の範囲は、教育扶助基準額、学校給食費、教材代(学校給食費及び教 材代にあっては児童の属する世帯の居住地を校区とする公立小中学校の基準を限度とす る)及び通学のための交通費とする。
2 私立学校については、原則として就学は認められない。 したがって、現に私立学 校に就学している児童が属する世帯から保護の申請があった場合は、公立学校への転校 を指導されたい。
ただし、次のいずれかに該当する場合は引き続き就学を認めて差しつかえない。
(1) 特待生制度(同様の制度であって名称の異なるものを含む)や経済的な理由による 減免措置を講じている学校において、これらの制度を活用することにより授業料等が 全額免除される場合であって、引き続き就学することが将来の自立に有効であると認 められる場合。
(2) 年度途中等で転校が困難な場合(当該年度中に限る)。
なお、この場合の教育扶助の範囲は、教育扶助基準額、学校給食費及び教材代(学校 給食費及び教材代にあっては児童の属する世帯の居住地を校区とする公立小中学校の基 準を限度とする)である。
3 公立の中等教育学校の前期課程については、1の国立学校の場合と同様に、就学 を認めて差し支えない。
3 住宅費 住宅扶助は、困窮のために最低限度の生活を維持することのできない者に対して「住ま いの確保」及び「補修その他住宅の維持のために必要なもの」の範囲内において行われる (法 第14条)。
具体的には、日々の生活の場としての家屋の家賃、間代、地代等(告別表 第3)のほか、 破損等により住居としての機能に障害が生じた場合の小規模な補修費を保障するものであ る。
なお、最低生活保障の趣旨から、家屋等の購入費を給付し、これを被保護者の所有に帰 属せしめたり、改善、拡張、改造等を内容とする大修理を目的とするものでないことはい うまでもない。
(1)家賃・間代・地代等
(問7-92)〔単身入院患者の住宅費〕 局 第7の4の(1)のエの(ア)によれば入院後6か月以内に退院できる場合に限 り6か月を限度として、単身入院患者に係る住宅費を認定して差し支えないこととさ れているが、期間計算は入院の翌日から起算すべきか、又は入院日の属する月の翌月 から起算すべきか。
〔参照〕局 第7-4-(1)-エ-(ア) (答)入院月の翌月から起算して差し支えない。
なお、入院後における病状の変化等により6か月を超えて入院することが明らかとなっ た場合であっても、その時から3か月以内に確実に退院できる見込みがあるときは、6か 月を超えて入院することが明らかとなった日の翌月から起算して3か月を限度として、住 宅費を認定して差し支えない。
ただし、その取扱いは、当初から入院見込期間が6か月を超える場合まで認める趣旨の ものではない。
(問7-93)〔単身の入院患者、施設入所者等に係る住宅費の取扱いの特例〕 局 第7の4の(1)のエの(ア)なお書きにより3か月間延長して住宅費の認定を 行う場合、どのような資料に基づき認定すればよいか。
(答)次に掲げる資料に基づき認定されたい。
なお、結核、精神疾患等一般に長期入院を要する疾病については、慎重に審査すること。
1 3か月以内に確実に退院できる見込みがある旨の医師の証明書(医療要否意見書で代 替できる場合は、当該意見書によっても差し支えない。 ) また、施設入所者については、更生相談所等の意見書によること。
2 当初の入院等の見込期間に変更が生じた事情及び引き続き住宅費の支払を必要とする 事情 3 その他 (1)当該入院患者等の生活歴(保護の開始時期、過去の入院歴、職業歴等) (2)当該住居の事情(住居の広さ、家賃額、家賃の支払状況、周囲の環境、住み始めた 時期) (3)家財道具の状況
(問7-94)〔世帯員全員が入院した場合の住宅費〕 単身者が入院した場合で、入院後6か月以内に退院できる見込みがあるときは住宅 費を認定してよいこととされているが、複数の世帯員がいる場合で全員が入院したと きはどのように取り扱ったらよいか。
〔参照〕局 第7-4-(1)-エ-(ア) 問7-92 (答)全員が入院した状態になった時点から6か月以内に、当該世帯員のいずれかひとり が退院できる場合に限り、住宅費を認定して差し支えない。
なお、入院中に当初の退院予定時期が遅れる場合は、単身者の取扱いと同様、当初の退 院予定時期が変更された時点から3か月以内に退院が見込まれる場合に限り、更に3か月 を限度として住宅費を認定して差し支えない。
(問7-95)〔単身者の退院等に伴う住宅費の認定〕 局 第7の4の(1)のエの(イ)のなお書きによる退院又は退所日以前の住宅費の 認定は、当該患者の入院又は入所中における保護の実施機関において行うこととして よいか。
〔参照〕局 第7-4-(1)-エ-(イ) (答)お見込みのとおりである。
なお、局 第7の4の(1)のエの(イ)の本文による退院又は退所の当該月に係る住宅 費の認定は、当該被保護者の退院又は退所後における保護の実施機関が行うものであるこ と。
(問7-96)〔7人以上世帯の住宅費の認定〕 家賃、間代等限度額について、局 第7の4の(1)のオにより、7人以上世帯の特 別基準限度額が示されているが、この場合、世帯分離されている者も、現に同居して いれば、世帯人員に含めてよいか。
〔参照〕局 第1 局 第7-4-(l)-オ (答)この特例は、同一世帯員として現に同居し、保護を受けている場合の措置であり、 設問のように、世帯分離により保護を受けていない者は、同居している場合であっても世 帯人員には含めないものである。
(問7-97)〔単身者が転居指導に応じない場合の取扱い〕 単身者が告別表 第3の2の限度額より高いアパートに入居しており、しかも地域の 単身者のアパート等と比較しても著しく均衡を欠いていることから転居指導を行った がこれに応じない場合、どのように取り扱ったらよいか。
〔参照〕課 第7-56 (答)設問のような場合は、告別表 第3の2の限度額の範囲内で住宅扶助の認定を行うこ ととなるが、更に限度額を相当に上回る家賃のアパートに入居しており明らかに最低生活 の維持に支障があると認められる場合は、法 第27条に基づく指導として転居を指導するこ とも考えられる。
なお、2人以上世帯についても当該地域の他の同様な世帯との均衡を著しく失している 場合は、同様の指導を行うべきである。
(問7-98)〔明渡請求に応じない場合の住宅扶助〕 借家借間に住んでいる被保護者が賃貸借契約の期間満了等を理由に明渡請求を受け たが賃貸借契約は終了していないなどとして応じないため訴訟を提起された場合、住 宅扶助の取扱いはどうしたらよいか。
〔参照〕告別表 第3 昭47.8.14社保 第136号保護課長通知 (答)法による保護は、要保護世帯について現実の生活困窮状態に対処して行われるもの であり、設問の場合、住宅扶助の必要は認められるが、その賃貸借契約関係の存否につい て争いがある事例である。 家賃、間代等の額を家主に支払っていないが、法令に定める正 規の手続により供託している場合であれば、現に需要が存するものとして当該供託額につ いて住宅扶助を決定して差し支えない。
裁判確定により被保護者が敗訴した場合には、当該被保護者は、賃貸契約の終了時以後、 当該借家借間に不法に又は法律上の原因なくして居住していたこととなり、不法行為又は 不当利得に係る家賃、間代相当額について生活保護費により支給したこととなるが、借家 借間のような継続的契約関係については違法性が高いものとは考えられない場合であり、 かつ、当該借家借間の賃借権を主張したことについて相当な理由があると認められる場合 には、住宅扶助を行ったとして取り扱って差し支えない。
なお、家賃、間代の増額請求に係る紛争が訴訟となり、後に被保護者が敗訴又は和解し たため遡及して増額分を支払わねばならなくなった場合は、増額後の家賃が住居の構造等 から妥当であり、かつ、住宅扶助基準の範囲内であれば、家賃等が増額された時点から新 家賃等による住宅扶助を行って差し支えない。
(問7-99)〔借家の一部を転貸している場合〕 借家に入居し、余剰の部屋を転貸しており、その転貸料が実際家賃に満たない場合 の住宅費の認定はどうすべきか。
〔参照〕次 第8-3-(1)-ウ-(イ) 次 第8-3-(2)-ウ-(イ) 局 第7-4-(1)-オ (答)設問のように、例えば、10,000円の家賃で借家をしており、その一室を5, 000円で間貸している場合は、その世帯の住宅費は、10,000円-5,000円= 5,000円と認定する。 この額が一般基準額を超えている場合には、局 第7の4の(1) のオによる特別基準額の範囲内で認定することとなり、この取扱いにおいては、実際家賃 の額を住宅費として認定するものではないから、実際家賃が一般基準を超える場合であっ ても、直ちに特別基準の適用を考慮する必要はなく、実際家賃と間貸料との差が一般基準 により難いか否かを問題とすれば足りる。
この場合の間貸料収入は収入充当額に計上することを要しないものである。
(問7-100)〔間貸収入が実際家賃を超える場合〕 前問の例で間貸料が実際家賃額を超える場合は、どのように取り扱うべきか。
〔参照〕次 第8-3-(1)-ウ-(イ) 次 第8-3-(2)-ウ-(イ) (答)間貸料が収入として認定されるわけであるが、実際家賃は必要経費として控除され ることとなる。
(問7-101)〔借家の破損がひどい場合の転居〕 現に居住している借家は破損がひどくて生活に著しく支障があるため、やむを得ず 現在よりも高家賃の公営住宅に転居するに際し敷金を必要とする場合、課 第7の30の 答9に該当するものと解してよいか。
〔参照〕課 第7-30 (答)お見込みのとおりである。
なお、被保護世帯については公営住宅に転居するに際し敷金等の減免措置がとられるよ う国土交通省から各都道府県住宅担当部局に対し指導がなされているので、関係部局とも 折衝の上、減免措置の適用について考慮することとされたい。
(問7-102)〔敷金の限度額〕 敷金の限度額については、局 第7の4の(1)のカに定められているが、これは実 際に支払っている家賃、間代の額が局 第7の4の(1)のオに定める額を下回ってい る場合でも局 第7の4の(1)のオの額に3を乗じた額の範囲内で認定できるものと 解してよいか。
〔参照〕局 第7-4-(1)-オ 局 第6-4-(1)-カ (答)お見込みのとおりである。
(問7-103)〔他県へ転出する場合の敷金及び家賃の限度額の認定〕 被保護者が転居するに際し敷金を必要とする場合であって、告別表 第3の2に定め る額の異なる他県へ転出するときの家賃及び敷金の認定額は、転出先の県における限 度額によるべきか、又は転出前の県における限度額によるべきか。
〔参照〕局 第7-4-(1)-カ 課 第7-30 (答)真にやむを得ない事情が認められ他県へ転出させる必要があるときは、家賃、敷金 とも転出先の県における限度額の範囲内で必要な額を認定して差し支えない。
(問7-104)〔社会福祉施設等の範囲〕 課 第7の30の答5により敷金等が認定される場合の施設にはどのようなものがある のか。
〔参照〕局 第7-4-(1)-カ 課 第7-30 (答)次のような施設から退所する場合が考えられる。
(1)社会福祉法に規定する社会福祉施設 (2)精神障害者社会復帰施設 (3)売春防止法による婦人相談所が行う一時保護の施設 (4)「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」による婦人相談所が自 ら行う又は委託して行う一時保護の施設 (5)ホームレス自立支援センター (6)職業能力開発促進法による職業能力開発校、障害者職業能力開発校又はこれらに準 ずる施設 (7)更生保護事業法による更生保護施設 (8)アルコール依存症や薬物依存症の治療を目的とした施設 (9)若者自立塾創出推進事業の対象となる若者自立塾
(問7-105)〔新規就労地への転居と敷金〕 就労条件に恵まれない地域に居住している者が、実施機関の指導により当該地域を 離れて新規に就労することとなったが、課 第7の30の答7の要件に該当するものとし て敷金を認定して差し支えないか。
〔参照〕問7-103 (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問7-106)〔敷金の返還金の取扱い〕 敷金の給付については、局 第7の4の(1)のカにより同(1)のオに定める限度額 以内の家賃間代の住居へ転居する場合に限られているが、課 第7の31の規定の適用に ついても、当該限定額以内の家賃間代の住居へ転居する場合に限られるか。
〔参照〕局 第7-4-(1)-カ 課 第7-31 (答)課 第7の31の規定については、当該限度額を若干上回る家賃間代の住居へ転居する 場合についても適用して差し支えない。
(問7-107)〔居宅生活ができると認められる場合の判断の視点〕 局 第7の4の(1)のキの「居宅生活ができると認められる者」の判断の視点を示 されたい。
〔参照〕局 第7-4-(1)-キ (答)以下のような点について判断することとなると考えるが、これは判断の視点であっ て、以下の全ての点を満たすことを要件に居宅生活ができると判断すべきものではないの で留意すること。
なお、当該視点については、施設退所時においても同様に判断の視点となるものである。
1 面接相談時の細やかなヒアリングによって得られる要保護者の生活歴、職歴、病歴、 居住歴及び現在の生活状況 2 基本的項目 (1)金銭管理 ア 計画的な金銭の消費ができるか (2)健康管理 ア 病気に対し、きちんと療養することができるか イ 服薬管理ができるか ウ 規則正しい生活を送る習慣が身についているか エ 栄養バランスを考慮した食事を採ることができるか オ 病気療養のために断酒することができるか (3)家事、家庭管理 ア 食事の支度ができるか イ 部屋を掃除、整理整頓できるか ウ 洗濯ができるか (4)安全管理 ア 火の元の管理ができるか イ 戸締まりができるか (5)身だしなみ ア 外出時等きちんとした身なりをしているか イ 定期的に入浴する習慣が身についているか (6)対人関係 ア 人とのコミュニケーションが図れるか イ 人に迷惑をかける行為をすることがないか
(問7-108)〔契約更新時と異なる時期に火災保険料や保証料が必要となった場合〕 賃貸借契約の契約更新時期と火災保険料等の契約時期が異なる場合、その異なる時 期に火災保険料等に要する費用を認定して差し支えないか。
また、賃貸借契約に期間の定めがない場合、火災保険料や保証料のみを定期的に支 給してよいか。
(答)前者については、直近の契約更新時に、契約更新料等を支給した場合については、 その費用を含め、局 第7の4の(1)のクに定める額の範囲内に限り認定して差し支えな い。
後者については、賃貸借契約が一般に2年を単位として契約されていることにかんがみ、 2年間の契約更新料等として支給した額の合計額が当該基準額を超えない範囲内に限り認 定して差し支えない。
(問7-109)〔地代の一括支給後における保護廃止の場合の取扱い〕 地代については、12か月の範囲内に限り必要な月分の地代を地代支払の時期に支給 してよいこととされているが、地代の一括支給を行った後に保護が停廃止となった場 合は、精算手続を要しないものとして取り扱ってよいか。
〔参照〕課 第7-55 (答)地代については、数か月分の地代を一括して支払う実態があることから、12か月を 超えない範囲において、必要な額の一括支給を認めているところであるが、本来的には毎 月の需要としてとらえるべき性格のものであるので、地代を支払ってある年の途中におい て保護の停廃止がなされた場合には、翌月以降の地代については、一般の例により精算手 続をしなればならないものである。
(2)住宅維持費
(問7-110)〔家屋内に入った土砂の除去〕 水害等で家屋内に入った土砂を除去する費用を住宅維持費として認定してよいか。
〔参照〕局 第7-4-(2)-ウ (答)災害救助法その他の他法他施策による措置が行われない場合で、次に掲げる条件を 満たしているときは、住宅維持費を認定して差し支えない。
1 家屋内への土砂の浸入により、日常の起居に障害があること。
2 世帯員中に、土砂を除去する能力のある者がいないこと。
3 近隣又は親類知己の援助が期待できないこと。
(問7-111)〔風呂釜の取替え〕 風呂桶の修理に釜の取替えも含まれると解してよいか。
〔参照〕課 第7-14 (答)差し支えない。 ただし、近隣に公衆浴場がない場合に限る。
(問7-112)〔井戸さらいの費用〕 井戸さらいの費用は、住宅維持費の支給対象として取り扱ってよいか。
〔参照〕局 第7-4-(2) (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問7-113)〔風呂設備費の範囲〕 風呂設備の敷設に要する経費の範囲如何。
〔参照〕局 第7-4-(2) 課 第7-14 (答)浴槽の購入費、給排水のための簡易な工事費、外部からの透視をさけるための簡単 な囲いに要する費用等、入浴のための必要最少限度の額を住宅維持費として認定すること とされたい。
(問7-114)〔入浴設備の敷設が必要な者〕 課 第7の14にいう「重度の心身障害者、歩行困難な高齢者等」の「等」とは具体的 にどのような者をいうか。
〔参照〕課 第7-14 (答)火傷等のため全身に皮膚の炎症があり、それが半永久的に治癒しない等のため公衆 浴場を利用できない者等が想定される。
(問7-115)〔近隣に公衆浴場がない場合の取扱い〕 入浴設備の敷設が認められる場合については、課 第7の14に示されているが、答の 「他に適当な入浴の方法がない」とは、どのように判断すべきか。
〔参照〕課 第7-14 (答)具体的には、最寄りの公衆浴場までの距離、所要時間、当該世帯の世帯員の年齢、 健康状態及び当該地域の生活実態等を総合的に勘案して判断されたい。
(問7-116)〔住宅用火災警報器の設置に係る費用の取扱い〕 地方自治体の条例により設置を義務づけられている住宅用火災警報器(以下「住警 器」という。 )の購入費用を住宅維持費の支給対象として取り扱って差し支えないか。
〔参照〕局 第7-4-(2)-ア (答)以下の場合に限り、必要最小限度の範囲で支給して差し支えない。
(1) 持ち家に居住する場合 (2) 民間の借家・アパート等に居住する場合で、かつ、家主と入居者の協議の結果、すべ ての入居者が自己負担で住警器を設置することに同意している場合(原則として設置す る住警器の種類・メーカー等について個々の入居者が選択できる場合に限る。 ) ただし、保護の実施機関の事前の承認を得ること原則とする。
また、支給の対象となる住警器は、条例で定める設置箇所に設置するものであって、消 防法令に定める煙感知機能を有するもののうち、可能な限り安価なものであることを要す る。
一度住警器の支給を受けた者が転居する場合は、住警器は取り外すことで転居先でも利 用ができることから、転居先の地域において設置基準が異なること等により必要となる住 警器の個数が増える場合を除き、新たに支給することはできない。
なお、公営住宅、都市再生機構が管理する住宅、雇用促進住宅及び日本勤労者住宅協会 が管理する住宅に居住する世帯については、国土交通省において、住宅設置者である自治 体、都市再生機構等に対し、必要な費用を補助していることから、住警器に要する費用は 支給しない。
(問7-117)〔賃貸家屋からの転出にあたり原状回復費用の請求を受けた場合〕 アパート等賃貸家屋に入居していた被保護者が転出に当たり、賃貸借契約に基づき 賃貸人から原状回復費用の請求を受けた場合、その費用を住宅維持費をもって支弁す ることができるか。
〔参照〕局 第7-4-(2)-ア 局 第7-4-(1)-カ (答)アパート等賃貸家屋の原状回復については、民法 第606条の規定により賃貸人がそ の義務を負うこととされている。 また、賃貸借契約の特約により、賃借人に原状回復費用 が求められる場合があるが、その費用は契約時に支払った敷金(名称の異なる同様の趣旨 のものを含む。 )で賄うべきものである。 すなわち、住宅維持費として対応が必要な需要 について、あらかじめ敷金として支払っていると解することができる。 このため、改めて 住宅維持費を適用することはできない。
ただし、契約時において敷金を支払っておらず(入居時に局 第7の4の(1)のカによ り礼金・手数料等は支給しているが敷金を支給していない場合を含む。 )、転出時に原状回 復費用を請求された場合については、次のいずれにも該当する場合に限り、必要最小限度 の額を住宅維持費として認定して差し支えない。
認定額については、局 第7の4の(2)のアに定める額の範囲内であり、かつ、局第7 の4の(1)のカに定める額(入居時に局 第7の4の(1)のカにより礼金・手数料等を 支給している場合は、すでに支弁した礼金・手数料等の額を除いた額)を上回らない額と する。
(1) 原状回復につき特約があること (2) 原状回復の範囲が、社会通念上、真にやむを得ないと認められる範囲であること (3) 故意・重過失により毀損した部分の修繕ではないこと
(問7-118)〔住宅維持費の年額の承認方法) 住宅維持費について、一般基準額によりがたい場合の特別基準額が局 第7の4の (2)のイに「年額」で示されているが、この承認方法等について説明されたい。
〔参照〕局 第7-4-(2) 問7-120 (答)「年額」は、はじめて住宅維持費を認定されたときから将来に向かって1か年以内 をいうものである。
したがって、この期間内に再度住宅維持費を認定する必要がある場合、すでに認定され た住宅維持費の額を合算して一般基準の額を超え、やむを得ない事情が認められるときは、 局 第7の4の(2)のイにより特別基準の設定があったものとして必要な額を認定して差 し支えない。
なお、災害等に伴う住宅維持費を認定する場合には、局 第7の4の(2)のウ及びエに より取り扱うこととなっているので念のため。
(問7-119)〔災害による家屋の補修-その1〕 局 第7の4の(2)のウの「災害」には、台風、暴風、豪雨、豪雪、高潮、地震、 津波等の自然災害のほか、火災も含まれると解してよいか。
〔参照〕局 第7-4-(2)-ウ (答)お見込みのとおりである。
(問7-120)〔災害による家屋の補修-その2〕 局 第7の4の(2)のウの規定の適用後1年以内に再度災害を受け、それにより家 屋の補修が必要となった場合にはその時点において新たにこの規定を適用してよい か。
〔参照〕局 第7-4-(2)-ウ 問7-119 (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問7-121)〔雪下ろし等の費用と一般の住宅維持費との関係〕 局 第7の4の(2)のエにより適用される雪下ろし等に要する費用と、一般の住宅 維持費との関係につき、いずれか一方に基準額の残額がある場合、これを他方に加え て計上する取扱いは認められないか。
〔参照〕局 第7-4-(2)-イ、エ (答)豪雪地帯における雪下ろし等の費用は、一般住宅維持費のほかに特別に必要とする ものであるという趣旨から、局 第7の4の(2)のエの規定を設けたものである。 したが って、この費用と一般住宅維持費とはそれぞれ別枠として取り扱うべきものであり、一方 に残額があるからといって、これを他方に加えて計上することは認められない。
なお、局 第7の4の(2)のエを適用する場合、基準額につき同(2)のイの適用は認め られないので念のため。
(問7-122)〔白ありの駆除のために要する費用の取扱い〕 白ありの食害により家屋の損傷が進み、その駆除を住宅維持費で認定する場合、直 接白ありの被害を受けていない部分で措置を必要とする部分があるときも、当該措置 に要する費用を住宅維持費の支給対象としてよいか。
〔参照〕課 第7-48 (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問7-123)〔医療扶助単給世帯に住宅維持費を支給する場合の収入充当順位) 医療扶助単給世帯から家屋補修の申請があった場合には収入充当順位に従って本人 支払額を変更し本人の収入によって家屋補修を行うこととなるのか。
〔参照〕次 第10 問7-9 (答)保護の決定に当たっての収入充当順位は、 第1に生活費、第2に住宅費、第3に教 育費、以下介護、医療、出産、生業、葬祭費の順となっているが、これは通常の諸経費に かかる事務処理上の取扱いでの原則である。 臨時的な需要にかかる特別基準の一時扶助費 の場合においても同じく取り扱うとすると結果は同じでありながら極めて事務が煩雑とな るので、本人支払額の変更を行うことなく、別途支給することとして差し支えないもので ある。
(3)代理納付 (問7-124)〔代理納付の対象-その1〕 住宅扶助費の代理納付の対象には、家賃以外の敷金等も含まれるのか。
(答)法 第33条第4項の規定により交付する保護金品は、住宅扶助費のことであること から、住宅扶助費として被保護者に支払う保護金品については、全て代理納付の対象とな るものである。 よって、家賃以外の間代・地代、敷金及び礼金、また住宅維持費等につい ても代理納付の対象となるものである。
(問7-125)〔代理納付の対象-その2〕 家賃以外の共益費については、代理納付の対象となるのか。
(答)代理納付の対象は、生活保護法施行令 第3条において、法第33条第4項の規定に より交付する保護金品、つまり住宅扶助費として支給されるものと規定されていることか ら、共益費のように、住宅扶助費の給付対象とされていないものについては、代理納付の 対象とならないものである。
(問7-126)〔代理納付の対象者〕 代理納付を行う対象者については、家賃滞納者に限定されないのか。
(答)住宅扶助費を代理納付の対象とした趣旨は、住宅扶助として使途を限定された住宅 扶助費を一般生活費に充当することは生活保護法の趣旨に反するものであり、住宅扶助費 が家賃等の支払いに的確に充てられる必要があるということであるが、これは家賃滞納者 に限らず、住宅扶助を受給する全ての被保護者に求められることであるので、代理納付の 対象者についても家賃滞納者に限定されない。
4 出産費
(問7-127)〔施設内分べんに係る出産扶助と医療扶助との関係〕 病院、助産所等で分べんした場合において、異常分べん関係部分については、医療 扶助が適用されることとされているが、実際のケースを取り扱うに当たり、出産扶助、 医療扶助いずれを適用すべきか等の疑問が生じるので、次の事例についての取扱いを 具体的に教示されたい。
1異常分べんという予見に基づき入院し、結果も異常分べんであった場合 2異常分べんという予見に基づき入院したが、結果は正常分べんであった場合 3正常分べんという予見に基づき入院したが、結果は異常分べんであった場合 4正常分べんという予見に基づき入院し、結果も正常分べんであった場合 〔参照〕法 第52条 告別表 第6 (答)施設分べんについて、出産扶助と医療扶助とが競合する場合には、まず医療扶助を 適用し、医療扶助の適用されない部分について出産扶助を適用するのが原則である。 この 場合出産扶助のうち医療扶助と競合する可能性があるのは告別表 第6の2に定める入院に 要する費用のみであり、出産扶助基準額(告別表 第6の1)及び衛生材料費(同6の3) については、医療扶助の対象となり得ない需要を対象とするものであるから競合関係は生 じない。
つぎに、医療保険との関係についてみると、健康保険法では、分べん一般については現 金給付による分べん費を支給することとし、異常分べんについては、当該異常分べんに係 る処置、手術、入院料等について療養の給付の対象とされているし、生活保護の医療扶助 は、医療保険の例によっていることから、出産についても療養の給付の対象となる部分に ついては医療扶助が適用され、その他の部分については出産扶助が適用されることとなる。
これを設問の事例に従って示すと次のとおりである。
なお、この取扱いについては、分べんの結果が生産であったか死産であったかによって、 差異は生じないものである。
また、児童福祉法と競合する場合は、本法の補足性の原理に従い、児童福祉法による措 置が優先するものであることはいうまでもない。
〈設問1の場合の取扱い〉 本法の医療扶助は、医療保険の診療方針及び診療報酬の例によっているので、医師の手 当を要する異常分べんに伴い保険医の行った処置、手術等はすべて療養の給付として認め られている医療保険の場合と同様、異常分べんに伴う入院料及び医師が行った処置、手術 等についてはすべて医療扶助の適用が認められる。
この場合、健康保険の取扱いとしては、同時に助産の手当を行ったものとはみなされず、 したがって、分べん介助の費用は、療養の給付外であるので、別に患者負担となるが、本 法においては、出産扶助の基準額(告別表 第6の1)の範囲内で必要な額について出産扶 助を適用することとしている。 また、衛生材料費も必要に応じ認定される。
〈設問2の場合の取扱い〉 健康保険では、異常分べんとして入院したが、正常分べんをした場合、正常分べんのあ った日まで、保険による入院の取扱いとし、翌日からの分は患者負担とすることとされて いる。
本制度においてもこれと同様正常分べんのあった日までは医療扶助を、翌日以後は出産 扶助を適用することになる。 この場合医療扶助において、分べん監視料(異常分べんのお それがあると認められたが、結局手術を必要としなかった場合及び流産の監視をした場合 に認められるもので妊婦に付添った介補料に相当する。 )及び初診料等が入院料とは別に 請求できる。
また、出産扶助としては告別表 第6の1(分べん介助料等)及び同6の3(衛生材料費) が適用されるほか、分べんの日の翌日以降の入院費用について告別表 第6の2が適用され ることになる。
なお、かつては出産扶助について居宅分べんを原則としていたことから設例のようなケ ースについて、正常分べん後も必要最少限度の入院日数に応じた入院料について医療扶助 を適用する取扱いが認められていたところであるが、施設分べんを出産扶助の対象とし、 かつ、入院費用について医療扶助と同様の額が出産扶助で支給されることとなっている現 在、かかる例外的取扱いはその必要がなくなったものである。
〈設問3の場合の取扱い〉 健康保険においては、分べんの目的で自費入院したがその結果が異常分べんであった場 合には、正常な経過をたどった間の入院料等は療養の給付の対象外とされ、患者負担とな るが、異常であるために医師が行った処置、手術及び異常に対して必要な限度での分べん 後の治療は分べん日以降の入院料を含め、療養の給付の対象として取り扱われている。
本制度においても上記療養の給付の対象となる部分については医療扶助を、その他の部 分については出産扶助を適用するものである。
〈設問4の場合の取扱い〉 健康保険においては分べんの目的で入院した結果正常分べんであった場合には分べんの 前後とも一切療養の給付の対象外として取り扱われるところであり、本制度においても医 療扶助は適用されず、すべて出産扶助の対象となるものである。
異常→異常 異常→正常 正常→異常 正常→正常 ① ② ③ ④ 生保 健保 生保 健保 生保 健保 生保 健保 入院料 ○ ○ ▽→▲ ▽ ▼→△ △ ● × 分べん介助料 ● × ● × ● × ● × 衛生材料費等 分べん監視料 ◇ ◇ ◇ ◇ (分べん(分べん のあったのあった 日まで) 日まで) 手術・措置料 ◇ ◇ ◇ ◇ △ △ 等 (分べん(分べん のあったのあった 日まで) 日まで) (注) ○・・・・・医療扶助又は健保の療養の給付 ●・・・・・出産扶助 △・・・・・分べんのあった日から医療扶助又は健保の療養の給付 ▽・・・・・分べんのあった日まで医療扶助又は健保の療養の給付 ▲・・・・・分べんのあった日から出産扶助 ▼・・・・・分べんのあった日まで出産扶助 ×・・・・・給付対象外 ◇・・・・・分べん監視料は手術を必要としなかった場合に認められるものであ るから、分べん監視料と手術とが同時に認定されることはなく、いずれ か一方が認定されることになる。
(1)健康保険において、異常分べん後の入院については、正常分べん後に比して著しく 衰弱している等の異常状態があって、そのために入院診療を要する場合は給付の対象 とするが、正常分べんと異ならない状態の入院は給付の対象とならない。
(2)健康保険では、出産に関し、療養の給付のほかに現金給付として分べん費及び出産 手当金(出産前後の休業補償)等の支給制度がある。
(3)他の傷病により、入院中に出産した場合には、入院料が医療扶助、健康保険の対象 となるほかは、本文に述べたところによる。
(問7-128)〔妊娠4か月以上の妊婦が人工妊娠中絶した場合〕 妊娠4か月以上の妊婦が人工妊娠中絶をした場合、健康保険法においては分べん費 の支給があるが、これとの関連において出産扶助を適用してよいと思うがどうか。
〔参照〕局 第7-2-(2)-ア-(オ) 局 第7-9-(5) 昭27.3.28保文発 第2427号保険局健康保険課長通知 (答)人工妊娠中絶に必要な費用は通常医療扶助によって一切の給付を行っており、出産 扶助を適用すべき余地はない。 ただし、妊娠4か月以上の場合の人工妊娠中絶においては、 正常分べんにおけると同様に助産師による分べん介助その他の世話が行われる場合があ り、その場合には、必要な範囲内において出産扶助を適用すべきである。
ちなみに、当該被保護者の飲食物費については、産婦加算の栄養費を認めており、子の 葬祭を行う必要があるときは葬祭扶助の適用も差し支えないこととなっている。
(問7-129)〔助産師と産婦人科医との両者で分べんの介助を受けた場合〕 助産師により分べんの介助を受けていた妊婦が、身体に異常が現われたため産婦人 科医に託され、そこで正常に出産した場合において告別表 第6の1の適用に当たり産 婦人科医に支払う費用として基準額を認定し、さらに次の要件を満たす限りにおいて 助産師に支払う費用を認定してよいか。
(1)当該妊婦が当該助産師の介助によって出産する予定であって、かつ、当該助産 師が当該妊婦に対して現に分べんの介助(陣痛開始以後の措置)に当たっていた こと。
(2)妊婦の身体の異常が産婦人科医に託さなければならない程度のものであったこ と。
(3)その地域の慣行等からして、助産師に費用を支払う必要があること。
なお、認められるとした場合、その費用については、少なくとも分べん後の処置に かかる費用は要しないものであるから、これらを考慮して基準額の8割相当額の範囲 内において必要な額を認定して差し支えないか。
〔参照〕告別表 第6 局 第7-7-(1) (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
5 生業費 生業扶助は、要保護者の稼働能力を引き出し、それを助長することによって、その者の 自立を図ることを目的としているものであり、一面において社会福祉制度的な性格を有し ている点で他の扶助と異なる。 したがって、「困窮のため最低限度の生活を維持すること のできない者」のほかに「そのおそれのある者」をもその対象としている(法 第17条)。
具体例としては、授産施設利用者の生業扶助の決定におけるみなし保護(局 第10の2の(6) のウの(イ))のように、一般生活費をある程度上回る収入がある者について、その対象 としている。
(1) 生業費
(問7-130)〔生業費を支給できる業種〕 生業費は、「専ら生計の維持を目的として営まれることを建前とする小規模の事業 を営むために必要な資金又は生業を行うために必要な器具若しくは資料を必要とする 被保護者」に対して行われることとされているが、どのような業種が考えられるか。
〔参照〕局 第7-8-(1) (答)生業費は、利潤の獲得のみを目的として行われる企業に対して適用するものではな く、生計維持を目的とする小規模事業に対して適用されるものであり、例えば、食料品店 (個人商店、八百屋、個人製菓店等)、文化品店(書店、古本屋、文房具店、印章店、玩 具店、生花店等)、飲食店(中華ソバ店、大衆食堂、喫茶店等)、自由業(大工、左官等) その他製造加工修理業、サービス業等多岐にわたる種類があげられ、これら小規模事業を 営むに必要な設備資金、運転資金を対象とするものである。
(問7-131)〔かんがい用水の引水工事と生業費〕 開拓地で、かんがい用水の引水工事を行う場合に被保護世帯もこのかんがい用水敷 設に要する経費を分担しなければならないが、農産物の生産の増加が期待でき、当該 世帯の自立助長に役立つことが明白な実情にある。 この負担金を生業費の対象として 認定してよいか。
〔参照〕次 第6 局 第8-4-(5)-カ、ク (答)設問のような資金については、農業近代化資金融通法に基づく貸付資金等の貸付を 受けることが考えられ、その場合は償還金を必要経費として認定する途も開かれているの で、これを生業費として支給することは適当でない。
(2)技能修得費(高等学校等就学費を除く)
(問7-132)〔内部障害者更生施設入所者の自動車学校への入学〕 内部障害者更生施設に入所中の要保護者から、退所後の就職が有利であるという理 由をもって自動車運転免許を取得するため自動車学校の入学金、授業料、交通費等に ついて支給の申請があったが、これを申請どおり認めてよいか。
〔参照〕局 第7-8-(2) 昭42.8.1社更 第244号社会局長通知 (答)内部障害者更生施設は、結核回復者等内部障害者が一定期間入所し、適切な医学的 管理の下に必要な生活指導と職業訓練を行うことを目的として設置運営するものであり、 その入所者が、いわゆる課外時間を利用して行う技能修得については原則として生活保護 法を適用することは適当とは解されない。 とくに設問のように単に退所後の求職にあたっ て有利な条件となる技能を修得しようとするような者に対して生活保護法による技能修得 費を適用することは認められない。
しかしながら、入所者の中には、健康状態が健康者と同程度に回復した者もいるので、 これらの者で間もなく退所することが明らかであるものに対しては、自動車運転業務に従 事することが可能である旨の医師の診断書と運転免許取得後雇用するという雇用主の証明 がある場合に限り、その者の自立助長を図るために自動車運転免許取得に必要な経費につ いて生活保護法による技能修得費を適用して差し支えない。
なお、技能修得費の適用に当たり、生活福祉資金等他法他施策の活用を図るべきことは 勿論である。
(問7-133)〔通信教育における美容師の資格取得〕 夫婦と子供3人の世帯において妻が就労のかたわら美容師の資格を取得するため美 容師養成所の通信教育による技能修得をしたい旨申出があったが、国家試験を受ける まで実地習練の1年間を含めて3年を要するので他の適当な技能修得をあっ旋すべき かと思うが、この場合、1年間の実地習練期間はある程度の手当収入があり、生業扶 助費の支給の必要はないのであるから技能修得期間を2年と認定して、1年目、2年 目は必要とする経費をそれぞれ基準額の範囲内で必要な時期に支給するという取扱い は認められるか。
〔参照〕告別表 第7-2 局 第7-8-(2) (答)技能修得費の認定はお見込みのとおり取り扱って差し支えない。 すなわち各種学校 における就学は、生業扶助(技能修得)の対象となり得るものであり、技能修得を適用す る場合に就学期間が1年を超えるものであっても、その就学が世帯の自立更生上効果的と 認められるものについては、告別表 第7の2ただし書の取扱いによって2年を限度として 生業扶助を適用して差し支えない。 また、この場合理容師、美容師等のごとく、その資格 を取得するために、一定期間の実地習練を経なければならない職種に関しては、実地習練 を行う理容所、美容所等から相当額の報酬を受け、これによって技能修得のための必要な 費用が賄われるときは、その実地習練の期間は技能修得のための2年の年限に含まれない ものとして取り扱って差し支えない。
(問7-134)〔公共職業能力開発施設在校者の作業衣〕 公共職業能力開発施設に在校する者が訓練を受けるに際して作業衣が必要となる が、これを技能修得費として認定してよいか、それとも就職支度費として認定すべき か。
〔参照〕局 第7-8-(2)-ア-(ウ) 局 第7-8-(3) (答)技能修得のために直接必要なものであり、かつ、当該技能修得を受ける者全員が義 務的に課せられるものであれば、技能修得費として認定して差し支えない。
ちなみに、就職支度費はすでに就職が確定した者に対して認定できるものであり、職業 訓練校に在校中の者は認定の対象とはならないものである。
(問7-135)〔雇用対策法等に基づき支給される技能修得手当〕 局 第7の8の(2)のアの(オ)のaの「雇用対策法等」の「等」にはどのような ものが該当するか。
〔参照〕局 第7-8-(2)-ア-(オ)-a (答)雇用対策法のほかに、駐留軍関係離職者等臨時措置法、沖縄振興特別措置法、国際 協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法、雇用保険法等である。
(問7-136)〔職業訓練手当受給者の取扱い〕 職業訓練手当を毎月受給すれば保護を要しない者についても、訓練終了後の当該手 当の一括受給を認め、訓練期間中保護を継続してよいか。
〔参照〕局 第7-8-(2)-ア-(オ) 昭39.8.19社発 第409号社会局通知 (答)職業訓練開始前において被保護者である者については、局 第7の8の(2)のア- (オ)に該当する場合にかぎり、お見込みのとおり保護を継続して差し支えない。
したがって、訓練開始と同時に保護の申請があった世帯についてはこのような取扱いは 認められないものである。
(問7-137)〔特別支援学校高等部別科の技能修得費〕 被保護者が特別支援学校高等部の別科に入学する場合「特別支援学校への就学奨励 に関する法律」(以下「就学奨励法」という。 )により援助で満たされない学用品の購 入費を技能修得費の対象として支給してよいか。
〔参照〕局 第7-8-(2)-ア-(ウ) (答)特別支援学校高等部の別科の教育内容は高等教育そのものではなく技能教育を目的 としたものであるから、別科に就学する者は技能修得を目的とする各種学校に就学する場 合と同様に取り扱うこととなる。 したがって、就学奨励法により支給されない学用品の購 入は、技能修得費の対象として差し支えないものである。
ただし、この場合の学用品は、学校長の指定証明のある必要最少限度のものに限るべき である。
(問7-138)〔技能修得費の再支給〕 一度技能修得費の支給を受けた者について、再度技能修得費を支給することは認め られないか。
〔参照〕局 第7-8-(2) (答)例えば事故により障害を負った場合等で著しい状況の変化によって新たな技能を身 につけなければ自立が不可能なケースについては、再度技能修得費を支給して差し支えな い。
また、自立支援プログラムに基づく場合については複数回の支給が認められているとこ ろである。
(問7-139)〔自動車運転免許の更新等に要する費用〕 自動車運転免許の更新等、資格の更新の際に受講する講習等に要する費用について、 技能修得費として支給できるか。
〔参照〕課 第8-2 (答)技能修得のために必要な場合に限り、局 第7の8の(2)のアの(ウ)の資格検定 等に要する費用としてお見込みのとおり支給して差しつかえない。
なお、通勤用・事業用自動車の保有を認められた者については、勤労・事業収入から必 要最小限度の額を必要経費として控除することができるものである。
(3) 高等学校等就学費 現在、一般世帯における高校進学率は97.3%(平成15年度)に達している状況であり、 また、平成16年3月の福岡市学資保険訴訟最高裁判決においては、「近時においては、ほ とんどの者が高等学校に進学する状況であり、高等学校に進学することが自立のために有 用であるとも考えられる(後略)」との判断がなされた。
さらに、社会保障審議会福祉部会生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書(平 成16年12月)においても、「高校進学率の一般的な高まり、「貧困の再生産」の防止の観点 から見れば、子どもを自立・就労させていくためには高校就学が有効な手段となっている ものと考えられる。 」としたうえで、「生活保護を受給する有子世帯の自立を支援する観点 から、高等学校への就学費用について、生活保護制度において対応することを検討すべき である。 」とされた。
こうしたことを総合的に勘案した上で、被保護世帯の自立支援という観点から、高校就 学費用を生活保護制度において制度化したところであり、具体的には、高校就学に伴い必 要となる学用品費、交通費、授業料等を給付内容とし、その給付水準は公立高校における 所要額を目安に設定することとしている。
なお、義務教育である小・中学校の就学費用が教育扶助によって給付されるのとは異な り、高校就学費用は自立支援の観点から給付されるものであるため、生業扶助によって行 うこととしている。 また、授業料、入学金等に関しては、各自治体において実施される減 免措置が講じられている場合、生活保護による給付は行わない取扱いとされている。
(問7-140)〔高等学校等就学費の対象範囲〕 高等学校等就学費の給付対象となる学校の範囲を示されたい。
〔参照〕局 第1-3 課 第1-7 (答)高等学校等就学費の給付対象となる学校は、世帯内就学が認められている以下の学 校とする。
1 高等学校(全日制・定時制・通信制) 2 中等教育学校の後期課程 3 高等専門学校 4 特別支援学校の高等部(別科を除く) 5 高等学校等での就学に準ずるものと認められる専修学校及び各種学校 ただし、5については、当該学校の修業年限が3年以上であり、かつ普通教育科目を含 む就業時数がおおむね年800時間以上である教育課程に就学する場合に限るものである。
また、5に該当する外国人学校についても同様に取り扱われたい。
なお、専修学校及び各種学校については、技能修得費の支給対象となるものもあるので 留意されたい。
(問7-141)〔高等専門学校の給付期間〕 高等専門学校の給付期間は5年間としてよろしいか。
〔参照〕局 第7-8-(2)-イ-(ア) (答)お見込みのとおりである。
高等学校等就学費の給付期間については、原則としてその学校における正規の就学年月 数とする。 したがって、4年制の定時制高校の場合の給付期間は4年間となる。
(問7-142)〔高等学校等就学費基本額〕 高等学校等就学費基本額について、次のものはどのように扱うのか。
1 基本額及び学級費にはどのような経費が含まれているのか。
2 基本額の計上にあたって、日割計算は不要か。 また、通常休暇となる8月分につ いても給付を行うのか。
3 学用品、通学用品等を購入するために一時に経費を必要とする場合、数箇月分を 一括給付して差し支えないか。
〔参照〕局 第7-8-(2)-イ-(イ) 課 第7-81 (答)1 基本額は、学用品費や通学用品費のほか社会見学等の教科外活動費、芸術や体 育で使用する教材費等も含めて算定されているものである。
なお、学級費の積算や内容は、教育扶助における学級費と同様であるが、他の生業扶 助が「必要最小限度の額の計上」と規定し、職権による計上を認めていないことからも、 高等学校等就学費における学級費についても必要額を挙証した上で計上されるべきもの である。
2 基本額については、保護開始月等基本額が認定される期間が1か月に満たない場合で あっても、日割計算せずに月額全額を計上すること。
また、その基準額は年間所要額を月平均額で均等に配分するという考え方で設定され ているため、原則として基準額を毎月定額で給付することとなる。 よって、8月分につ いても給付することとされたい。
3 お見込みのとおりである。 教育扶助費と同様の取扱いとされたい。
(問7-143)〔高等学校等に通学するための交通費〕 高等学校等に通学するための交通費について、次の場合どのように扱うのか。
1 通学用自転車の購入費用の中に防犯登録料を含めて差し支えないか。 また、通学 に伴って必要となる駅等の駐輪場使用料、個人賠償責任保険料、自転車の修理代も 給付対象としてよいか。
2 学校長の許可を得て、原動機付自転車(バイク)で通学する場合におけるバイク の購入費及び維持費は交通費の給付対象となるのか。
3 定期券等を紛失した場合の取扱如何。
〔参照〕局 第10-4 課 第7-82 (答)1 いずれもお見込みのとおりである。
2 一般低所得世帯との均衡を考慮すると、就学用の原動機付自転車の購入費や維持費を 高等学校等就学費の給付対象とすることは適当ではない。
3 実施要領に定める扶助費の再支給の取扱いによられたい。
なお、教科書等を紛失した場合についても同様の取扱いとされたい。
(問7-144)〔高等学校等就学費の教材代〕 高等学校等就学費の教材代について、次のものはどのように扱うのか。
1 教材代の給付範囲を示されたい。
2 クラブ活動等の課外活動に要するものは給付範囲に含まれるのか。
〔参照〕局 第7-8-(2)-イ-(エ) (答)1 教材代の給付範囲は、学校における正規の授業で使用され、当該授業を受ける 全生徒が必ず購入することとなっている教科書、副読本的図書、ワークブック及び和洋 辞典である。
なお、各教科の授業において必要なこれ以外の教材(芸術や体育で使用する教材等) に要する経費については、基本額の中に含まれているものである。
2 教材代の給付範囲は①に示したとおりであり、クラブ活動等の課外活動に要するもの は、教材代の支給対象外である。
(問7-145)〔高等学校等就学費の授業料、入学料、入学考査料(受験料)〕 高等学校等就学費の授業料等について、次のものはどのように扱われるのか。
1 基準額である「公立高校相当額」は何をもって定めることになるのか。
2 私立高校の場合、授業料、入学料、入学考査料の給付額はどうなるのか。
3 授業料は支払時期に合わせて数箇月分を一括給付してよろしいか。
4 公立・私立併願の場合において、先に合格した私立高校へ入学料の一部を納付す る必要が生じた場合の一部納付額は給付対象となるのか。
5 入学考査料を受験高校数に応じて複数回給付することは可能か。
〔参照〕告別表 第7 (答)1 授業料、入学料、入学考査料の基準額である「公立高校相当額」については、 当該被保護者が通学している高校がある都道府県の条例に定める額によって設定するこ ととされたい。
なお、定時制高校又は通信制高校の場合は、条例において定時制、通信制の区分ごと に設定されている額とされたい。
2 私立高校の場合であっても、1に定める「公立高校相当額」を上限として給付するこ ととされたい。
3 一定期間分の授業料を一括して納入する必要がある場合は、その期間に相当する額を 納入が必要な時期に一括給付して差し支えない。
4 高等学校等就学費の給付範囲は必要最低限のものにとどめているところであり、入学 料については、実際に当該高校へ入学することに伴い必要となる入学料を対象とするた め、当該高校へ入学することが確定していない段階で、入学の権利を留保する目的で支 払う入学料の一部納付金については、生活保護における給付対象とすることはできない ものである。
なお、この取扱いはあくまでも入学料の給付内容に関するものであり、被保護者が公 立と私立を併願することを妨げるものではないことを念のため申し添える。
5 入学考査料の給付回数については1回限りとするものである。 よって、原則として、 当該被保護者が最初に受験する高等学校のみを給付対象とすることとなる。
なお、この取扱いはあくまでも入学考査料の給付回数に関するものであり、被保護者 が実際に受験する高校の数を制限するものではないことを念のため申し添える。
(問7-146)〔高等学校等就学費の入学準備金の対象品目〕 高等学校等就学費の入学準備金の対象品目を示されたい。
〔参照〕局 第7-8-(2)-イ-(オ) (答)入学準備金については、学生服、通学用カバン及び靴など入学時に用意する必要が あり、当該学校の生徒が入学時に購入する学校指定用品(教材代の給付対象となるものを 除く)等の購入経費に対応するものである。
(問7-147)〔修学旅行費について〕 修学旅行費については、給付対象となるのか。
(答)高等学校等就学費の給付については、一般低所得世帯との均衡を考慮して、公立高 校における所要額を目安として必要最小限の基準額を設定しており、支給範囲についても 必要最低限の範囲にとどめていることから、修学旅行費用については給付対象とはしてい ない。
修学旅行費については、生活福祉資金等による貸付金や修学旅行のために充てることを 目的とした親戚等からの恵与金、もしくは高校生本人のアルバイト収入等によって賄うこ ととされたい。
(問7-148)〔高等学校等就学費に係る保護開始前の需要の補填〕 保護開始前に、制服等の購入や授業料及び入学料の前納を行っているなど、既に高 等学校等就学費の給付対象となる需要が満たされている場合どのように取り扱ったら よいか。
(答)保護開始後に当該需要に対して保護費を給付することは認められない。
(問7-149)〔高等学校等就学費の給付手続等〕 交通費、教材代、授業料、入学料、入学考査料及び入学準備金の給付手続きは、領 収書等による精算給付なのか、もしくは事前給付とするのか。
また、高等学校等就学費の学校長払いは可能なのか。
〔参照〕局 第7-8-(2)-イ 課 第7の82 法 第36条第3項 (答)前段については、当該費用の性格上、原則として事前給付とすることとされたいが、 事前に所要額の把握が困難である場合においては、精算払いとしても差し支えない。
いずれにしても、給付にあたっては、その必要額を確認のうえ、基準額の範囲内におけ る必要最小限度の額を給付することとされたい。
なお、教材代の給付にあたっては、必要に応じて教材の購入リスト等の提出を求めるな ど、必要とする実費の額の確認を行うこととされたい。 また、交通費については、定期券 の提示を求めるなどの方法で購入の事実確認を行うようにされたい。
後段については、生業扶助のための保護金品については、被保護者もしくは授産施設の 長に対して交付するものとされており、高校就学費用を学校長に支払うことはできない。
(問7-150)〔高等学校等就学費の要否判定上の取扱い〕 高等学校等就学費については、保護開始時の要否判定の費目に含まれないものとし てよろしいか。
〔参照〕課 第10の4 課 第10の6 (答)高等学校等就学費については、義務教育である小・中学校の就学費用が「最低限度 の生活の需要」として教育扶助によって給付されるものとは異なり、生活保護を受給する 有子世帯の自立を助長する観点から行われるものであり、生業扶助によって給付を行うこ ととしているところである。
自立助長を主眼として行われる給付については、現に保護を受けている被保護者を対象 にし、その自立を助長するため、最低生活需要に上乗せされて行われるものであることか ら、従来より、生活困窮であるか否かの判断である開始時の要否判定には用いないことと している。
したがって、高等学校等就学費については、保護開始時の要否判定の費目には含まれな いこととなる。
なお、保護廃止の際の要否判定については、保護開始時とは異なり、当該時点において 現に生じている需要に基づいて行うこととしているため、高等学校等就学費についても、 要否判定の費目に含むこととなるので留意されたい。
(問7-151)〔高等学校等へ就学している者が被保護者となったときの取扱い〕 現に高等学校等へ就学している者がいる世帯が被保護世帯となった場合の高等学校 等就学費の取扱如何。
〔参照〕課 第8の59 (答)現に高等学校等へ就学している者がいる世帯が被保護世帯となった場合の高等学校 等就学費については、保護開始月から高等学校等就学費の給付の対象となるものである。
したがって、既に生活福祉資金等を借り入れて就学している場合においては、課 第8の 59に従い、実際に就学費用として必要な経費と生活保護による高等学校等就学費の給付内 容を勘案のうえ、借入を行う必要性が認められない場合や借入額の減額が可能である場合 については、必要に応じて借入内容の見直しを指導されたい。
(問7-152)〔留年、中退、休学、転校時における高等学校等就学費の取扱い〕 留年、中退、休学、転校時における高等学校等就学費の取扱如何。
〔参照〕局 第7-8-(2)-イ-(ア) (答)高校就学中の者が留年した場合については、高等学校等就学費の給付期間が原則と してその学校における正規の就学年月数とされていることから、留年中の期間については、 原則として給付対象外とするものである。
また、一度中退した者が再度高等学校等へ入学する場合においても、高等学校等就学費 の給付は原則として行わないこととされたい。
休学した場合については、休学期間中の給付は行わないが、休学期間が終了し、復学し た場合には引き続き高等学校等就学費の給付を行うこと。
転校の場合については、転校後も引き続き高等学校等就学費を給付することとして差し 支えない。 この場合、転校に伴って、教科書や学生服及び通学用カバン等を新たに購入す る必要が生じた場合においては、必要な範囲内でこれらの購入に充てるための教材代や入 学準備金も給付して差し支えない。 (親の看護等真にやむを得ない事情により中退した者 が、高等学校等へ再度入学した場合についても、同様の取扱いとされたい。 ) なお、中退や休学の場合において、基本額等が数箇月単位で一括給付されている場合、 中退した翌月以降に係る保護費を月割で返還させることとなるが、既に給付された保護費 がやむを得ない事由によって消費されている場合については、返還は要しないこととして 差し支えない。
(問7-153)〔高等学校等の進学先の選択について〕 進学先の選択については、被保護者本人の自由意志とするのか、実施機関による指 導対象とするのか。
(答)被保護者が進学先を公立高校にするか、私立高校にするか等といった選択について は、基本的には被保護者本人の意志を尊重することとされたい。
なお、高校就学費用の給付については、一般低所得者世帯との均衡を考慮して、公立高 校における所要額を目安として必要最小限の基準額としているが、これは、給付水準のバ ランスを考慮したためであって、被保護者の私立高校への進学を妨げるものではないこと を念のため申し添える。
(問7-154)〔高等学校等就学費を給付する年齢の範囲〕 中学卒業者であれば、何歳であっても高校に進学することは可能であるが、年齢に 関係なく高等学校等就学費を給付することとなるのか。
(答)通常、中学校を卒業して数年以上経過しているような場合においては、就労等によ って稼働能力を活用すべき状況にあるものと思われるため、高等学校等就学費の給付対象 とはならないものと考えられる。
ただし、当該被保護者がやむを得ない事情によって現に就労していない場合等において、 ただちに稼働能力の活用を求めるよりも高等学校等へ就学することが確実に世帯の自立助 長に資すると見込まれる場合に限り、高等学校等就学費の給付を認めることとして差し支 えないものとするが、その適用にあたっては慎重に判断するようにされたい。
なお、社会人等の場合で、余暇利用の一態様として高等学校等に就学している場合にお いては、高等学校等就学費の給付対象とすることはできないので留意されたい。
(問7-155)〔高等学校等就学中の者が資格検定費用を要する場合〕 高等学校等就学中の被保護者が、資格検定試験を受ける場合、局 第7の8の(2) のアの(ウ)により支給してよいか。
〔参照〕局 第7-8-(2)-ア-(ウ) (答)就学中の高等学校等での授業に関連のある資格試験を受ける場合において、当該資 格を取得することが、世帯の自立助長に効果があると認められる場合に限り、支給して差 し支えない。
なお、技能修得費のうち、高等学校等就学費との併給が認められるものは、資格検定等 に要する費用のみであることに留意されたい。
6 葬祭費
(問7-156)〔救護施設入所者の葬祭〕 生活扶助を行うことを目的とする施設に入所中の者が死亡した場合であって、次の ようなときの葬祭を行うべき者又は葬祭扶助を受けるべき者を示されたい。
(1)扶養義務者がまったくないとき ア 遺留金品がないか又は遺留金品をもって葬祭に要する費用を満たし得ないと き イ 遺留金品をもって葬祭に要する費用を満たし得るとき (2)扶養義務者があるとき ア 遺留金品がないか又は遺留金品をもって葬祭に要する費用を満たし得ないと き イ 遺留金品をもって葬祭に要する費用を満たし得るとき 〔参照〕法 第18条 局 第7-9-(6) (答)法においては、死者に対する葬祭義務を何人かに課した規定は存しないので、設問 のどの場合についても、法により葬祭義務を有する者はない。
次に葬祭扶助を受けるべき者については、法 第18条第1項又は同条第2項のいずれかに 該当することを要する。 (1)の場合、同条 第1項の規定が適用されることは考えられない が、葬祭を行う者(施設の長でもよい)があれば、同条 第2項の規定によりその者に対し 葬祭扶助を行うことができる。 (2)の場合のうち法 第18条第1項に該当する場合は、その 者に対し葬祭扶助を行うことができるが、施設入所者の死亡については、例は多くないで あろう。 この場合で、葬祭を行う扶養義務者がなく、その葬祭を行う者があれば、その者 に対して法 第18条第2項の規定による葬祭扶助を行うことができる。
なお、上に述べたのは被保護者の死亡の場合であって、被保護者以外の者の死亡の場合 は、遺留金品をもって葬祭に要する費用を満たし得るとき((1)のイ及び(2)のイ)には 葬祭扶助を行うことができない。 また、法 第18条第2項の適用に当たっては、民法による 扶養義務の中にその被扶養者の葬祭をすることが含まれるというのが、判例の示す結論で あることに注意する必要があろう。
(問7-157)〔三親等以内の血族等の葬祭を行う場合の葬祭扶助〕 三親等以内の血族等であって他に引取人のない遺体、遺骨を引取りに行く場合は移 送費が適用できるが、この場合において葬祭を行う必要があるときは葬祭扶助の支給 が認められるか。
〔参照〕法 第18条第1項 局 第7-2-(7)-ア-(ケ) (答)葬祭扶助を適用して差し支えない。
(問7-158)〔土葬の場合の特別基準〕 土葬の費用につき、火葬と同様、告別表 第8の2を適用してよいか。
(答)告別表 第8の2は火葬料の特例であり、土葬については適用されない。
(問7-159)〔小人の葬祭費〕 火葬料について、大人と小人の費用に差があっても、その他の葬祭費用については ほとんど差がなく、全体としてほぼ、同様と認められる実態にある場合、局 第7の9 の(1)の規定を適用してよいか。
〔参照〕局 第7-9-(1) 課 第7-15 (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
この場合において、告別表 第8の2による火葬料の加算については、市町村条例に定め る小人の火葬料の額から、同2の表の大人の額を控除した額を計上することとされたい。
(問7-160)〔自殺者等の葬祭〕 局 第7の9の(6)では、身元が判明しない自殺者等に対して市町村長が葬祭を行 った場合には、葬祭扶助は適用できないとされているが、居住地を有し、保護を受け ていた者が死亡したが、他に葬祭を行う者がいないため、福祉事務所は町長に依頼し て葬祭を行ってもらった。 この場合、町長は法 第18条第2項に規定する「葬祭を行う 者」となりうるか。
〔参照〕墓地、埋葬等に関する法律 第9条 課 第7-16 (答)他に全く埋葬又は火葬を行う者がなく、町長が行った場合は、「墓地、埋葬等に関 する法律」 第9条にいう葬祭であって、設問の場合でも生活保護法による葬祭扶助を行う ことはできない。
(問7-161)〔慣行料金のない場合の死体検案〕 死体検案に要する費用は、慣行料金がない場合には無制限に認めてよいものか。
また、その費用に交通費は含まれると解してよいか。
〔参照〕局 第7-9-(3) (答)慣行料金について当該地域の医師会等の意見を聴取し、決定することとされたい。
交通費については、お見込みのとおりである。 ただし、検案料と別に請求される交通費 についてはこの限りでない。
(問7-162)〔老人福祉施設入所者が入院後死亡した場合〕 老人福祉施設入所中の者が、医療扶助により入院した後死亡した場合において、そ の者の葬祭を行う扶養義務者がなく、入院前の老人福祉施設において、葬祭を行う場 合は、葬祭扶助の取扱いとして、局 第7の9の(2)による特別基準を適用して差し 支えないか。
〔参照〕法 第18条第2項第1号 局 第7-9-(2) (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問7-163)〔死体を保存するために特別の費用を必要とする事情〕 「死体を保存するために特別の費用を必要とする事情がある場合」とはどんな場合 か。 また特別の費用として認められる範囲を示されたい。
〔参照〕局 第7-9-(4) (答)病院内での死亡等の場合で、搬入先がない等のため直ちに死体を運搬できない事情 があり、死体の保存を病院に委託する場合、又は死亡者が単身者等で身寄りの者が遠隔地 にいる等のため、直ちに火葬することができない事情があり、死体の保存を寺院又は火葬 場に委託する場合等をいうものである。
また、特別の費用として認められるのは、死体保存委託の実費(私人に対する謝礼等は 含めない。 )及びドライアイス料の実費のみであり、焼香料、通夜料、読経料は含まれな い。
(問7-164)〔医療保険制度の埋葬料等の支給が遅れる場合の取扱い〕 医療保険制度の埋葬料等の支給が遅れ葬祭に間に合わない場合であって、埋葬料等 として支給される額の範囲内で、かつ、葬祭扶助の基準額を超えた額を葬祭費用に当 てることを容認すべき実態にあることが、あらかじめ実施機関において確認された場 合には、とりあえず一般の例による葬祭扶助費を支給し、埋葬料等が支給された時点 で、埋葬料等のうち、あらかじめ認めた葬祭に当てる額以外の額とすでに支給した葬 祭扶助の額を収入として認定することとしてよいか。
〔参照〕課 第7-49 (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
この調査によって認定された収入と最低生活費との対比により保護の要否、程度が算定 されることになるわけである。 このように収入の認定は最低生活費の認定とならんで保護 の決定の基礎となるものであり、これらが適正に行われてはじめて最低生活保障水準の同 一性が確保されることになるわけである。 このうち最低生活費は、保護基準に基づいて世 帯構成等比較的客観的に把握されやすい事実関係から、ある程度機械的に認定し得るが、 収入の認定はその基礎となる事実関係が稼働状況や仕送りの状況等を前提とするため把握 し難い要素があることから、申告を基に調査の過程で正しく把握するには、不断の努力と 熟練を要する事務である。
〈収入の認定〉 収入の認定には、調査による収入の実態の把握と、これを基にして収入充当額を算定す る過程とがある。 このうち実務上収入実態の把握が大きな比重を占めている。
この収入の把握については、運用上の原則として収入申告制度を採用し、まず被保護者 に収入に関する申告を行わせた上でこれを基に収入に関する調査を行うこととしている。
(1)収入に関する申告 収入に関する申告は、次のような場合に行わせることになっている。
ア 要保護者から保護の開始又は変更の申請があったとき イ 保護の実施機関において収入に関する定期又は随時の認定を行おうとするとき ウ 収入に変動があったことが推定され、又は変動があることが予想されるとき 収入に変動があった場合の届出については、法 第61条により法的に義務づけられており、 生活保護の収入認定に当たっては広く収入申告制度が採用されている。
この収入申告制度は、収入の内容、程度については、当然のことながら要保護者自身が 最もよく承知していること、また、生活保護法に規定されている権利義務の実現のために は、その前提に要保護者と保護の実施機関の相互の信頼関係が保持されるべきであるとい うことから採用されているものである。 換言すれば、要保護者自らその収入の内容を明ら かにし、保護の適格性を自己の責任において立証することが期待されているわけである。
(2)収入に関する調査 収入申告制度は、要保護者と実施機関との相互信頼関係を基調としているが、このこと は、全く被保護者からの申告のみによって収入認定を行えば足りることを意味するもので はない。
実施機関においては、要保護者から提出された収入申告書の内容について、客観的に妥 当性を有するものかどうかを十分検討する必要がある。 特に、生活保護制度は、その給付 財源が国民の税金で賄われており、また、収入の認定は扶助費の決定額即ちそれによって 保障されるべき最低生活そのものを実質的に左右することとなる重要な意味をもっている だけに、客観性をもった裏付けが必要とされる。
そのためには、その者が雇用者であれば収入申告書に事業主等が発行する給与証明書等 を添付させることが必要であり、更に勤労収入以外の収入の有無や就労状況等の把握につ いては訪問調査活動等によって実態を把握しなければならない。
これは、申告を尊重しつつ、申告を通じてその世帯から多くの事実を学びとり、極力申 告者に事実の立証を期待するということである。
しかし、収入申告の内容について疑問が生じる場合等には行政機関としてその事実関係 について内容審査はもちろんのこと、関係先への照会等を通じて妥当性を明らかにするこ とが保護の適正な実施を確保する上で不可欠なものである。
仮に、収入申告書に当該世帯の実際の収入が過少に計上されている場合には結果として その差額分が扶助費の増となり、公金の不当、不正な受給となるほか、ひいては当該世帯 は最低生活を上回る生活を営むことになる。
また、稼働収入の低下等が把握されていないため、収入が過大に計上された場合には、 当該世帯は最低生活を割る生活を余儀なくされる。
いずれの場合も、最低生活保障水準の実質的平等が確保できないこととなり、法 第2条 に反するばかりか、法 第8条等にも反し、ひいては、法第1条の目的をも達成できないこ ととなる重大な問題を生ずるものである。
なお、当然のことながら、収入申告に不正又は不当なものが認められた場合は、被保護 者に対する所要の指導指示が必要となるほか、すでに不正不当な扶助費が支給されている のであれば、被保護者に対し返還を命ずることや法 第85条の適用の検討が必要となる。
(3)収入の認定と保護の決定 収入調査は、事実たる収入をありのままに把握することが主たる目的となるが、生活保 護の決定に使われるべき収入は将来の収入である。
換言すれば、保護の要否は将来に向って最低生活費を賄うに足る収入を得る見込みがあ るか否かを判断するものであり、保護の程度の決定もまた保護の基本となる生活扶助費が 月を単位として前渡されるものであることから通常翌月1か月分についてどの程度の扶助 を要するかを判断することになるわけである。
このように収入の認定は、基本的に将来に向かっての推定認定となるわけであるが、そ の認定資料として過去の実績を重視する必要があるわけである。 年金収入のように今後の 支給額が明確にされている場合はもちろん、稼働収入等についても就労日数や賃金日(月) 額等に変動がない限り、月々の収入は多少の変動はあってもほぼ一定額となるのが一般的 であることから、過去の実績を基に収入認定額を算定することとしているわけである。 つ まり収入の調査、認定指針において過去の実績を重視しているのは、それが今後の収入予 測の重要な資料となるからである。 したがって、調査に当たっては、過去の実績にあわせ て就労日数、賃金日額等についての今後の変動の可能性をも十分に調査し、それらも加味 した認定が求められているわけである。
なお、保護の要否を判定する場合と保護の程度を決定する場合とでは、収入の認定方法、 控除の適用方法に若干の相違があるが、この点については、 第10保護の決定の項でふれ る。
1 就労に伴う収入 (l)勤労収入
(問8-1)〔収入の実態がつかめない場合の取扱い〕 本人は収入がないと申し立てているが、何らかの就労に従事していると思われる場 合、又は、年齢、稼働能力等からして社会通念上相当の収入があると認められるにも かかわらず、これを立証する根拠を容易にとらえられないような場合の取扱いについ て承知したい。
〔参照〕次 第8-1-(3) 課 第8-25 問13-35 (答)この取扱いは、現に保護を受けている者の場合と、保護を申請している者の場合と で異なる。
なお、いずれの場合でも、生活保護制度の趣旨を十分説明し、適正な収入申告を行うよ う説得努力すべきことはいうまでもないが、このようにしてもなお設例のような問題が残 る場合には、次の方法をとることが考えられる。
1 現に保護を受けている者の場合は、書面による申告を関係資料を添えて行うよう法第 27条に基づき文書で指示することとなる。 この場合、当該被保護者がどうしてもこれに 従わないときは、保護の停廃止の措置を考慮し、これに従ったが申告内容に不審がある ときは課 第8の25によることとなる。
なお、事後的に申告内容に虚偽のあることが判明したときは、法 第78条、第85条、刑 法 第246条等の適用があるので念のため。
2 保護を申請している者の場合は、法 第27条の適用がないので、1で述べたような取扱 いはできない。
この場合の取扱いについては問13-35によることとされたい。
(問8-2)〔時間外手当の認定〕 月給が今回昇給したが、固定給の他に毎月額の異なる時間外手当が支給されるよう な場合は、固定給については昇給後の額を、また時間外手当は前3か月間の平均収入 を認定してよいか。
〔参照〕次 第8-2 (答)固定給については昇給月以後は確実にその額が支給されるものであるからその額を、 また月により変動のある手当について今後の見通しが立たない場合は前3か月程度の平均 月額を認定し、固定給と併せて収入を認定するものである。
(問8-3)〔入院患者が作業療法により工賃収入を得ている場合〕 精神科病院に入院中の者が作業療法により工賃収入を得ている場合に、収入認定を 行って差し支えないか。 また、基礎控除も行って差し支えないか。
〔参照〕次 第8-3-(1)-ア 次 第8-3-(4) 局 第8-1-(1) 局 第8-3 (答)作業療法は、精神科医療の一環として行われるものであるが、当該療法に伴って生 じた収益のなかから病院が、入院患者個々人に金銭を支給した場合には、就労に伴う収入 として認定されたい。 したがって、支給額に応じた基礎控除を行って差し支えない。
(問8-4)〔通勤用自転車等の維持修理費〕 自転車等で通勤する被保護者に対して、自転車等の維持修理費として他の者の交通 費平均額程度を実費控除してよいか。
〔参照〕次 第8-3-(1)-ア-(イ) 課 第8-2 (答)交通費の実費控除は、個々人によって異なる現実の必要最少限度額を控除するもの であるから、自転車等の通勤者の場合も、現に修理代を要したときはその実費を控除して よいが、定額を一律に控除するといったことは認められない。
(問8-5)〔社内規程による退職金積立金の取扱い〕 中小企業の会社で社内規程により積み立てている退職金を実費控除として認定して 差し支えないか。
〔参照〕次 第8-3-(1)-ア-(イ) (答)設問の場合は、一種の貯蓄であると解されるので実費控除は認められない。
(問8-6)〔JRの特別割引制度を利用しない場合〕 特定者に対するJR通勤定期乗車券の特別割引制度については、該当者には当然活 用について指導することとしているが、もし活用しなかった場合は、通勤費の実費控 除をすることとしてよいか。
〔参照〕次 第8-3-(1)-ア-(イ) 昭43.3.30社保 第84号・児発第172号社会局長・児童家庭局長連名通知 (答)特別割引制度を活用させるよう努力されたい。 それでもなお利用しない場合は、割 引料金を調査し(一般定期運賃の3割引きとされている。 )、その額を控除することとされ たい。
(問8-7)〔賞与の分割認定とひとり親世帯就労促進費〕 賞与の認定にあたり、局 第8の1の(1)のアの(力)にいう「これによることが 適当でない場合」とはどのような場合か。 また、これにより賞与を分割認定した場合、 ひとり親世帯就労促進費は月々の就労収入額に分割認定された賞与額を加えた額に対 して行うのか。
〔参照〕局 第8-1-(1)-アー(力) (答)前段については、たとえば賞与等の受給により、一時的に扶助費支給額が生じなく なるが、これを費消した後はただちに要保護状態に陥ることが明らかな場合などが考えら れる。 後段については、お見込みのとおりである。
(問8-8)〔賞与等の分割認定期間〕 賞与等の分割認定は継続した期間でなければならないか。 それとも、途中2か月程 度の間をおいてもよいか。
〔参照〕局 第8-1-(1)-ア-(カ) (答)「支給月から引続く6か月以内の期間にわたって」とあるから、とびとびの分割認 定は認められない。 必ず継続した期間について行われたい。
(2)農業収入
(問8-9)〔納屋と住居とを同時に補修する場合〕 同一棟となっている納屋(店舗)と住居を同時に補修する場合であって、それぞれ の部分を区別することが困難である場合は、それぞれの部分の補修割合で総補修費を 案分し、住居の補修相当分については住宅維持費として、納屋(店舗)の補修相当分 については農業収入(自営収入)の必要経費としてそれぞれ取り扱ってよいか。
また、この場合、納屋(店舗)の補修相当分として認められる額は、費用の性格か らいって、生業費の額を限度として取り扱ってよいか。
〔参照〕次 第8-3-(1)-イ-(イ) 次 第8-3-(1)-ウ-(イ) 課 第8-6 (答)いずれもお見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問8-10)〔農業収入で収穫皆無の場合の諸控除の取扱い〕 母子世帯の母が農業を営んでいるが2年続きの干害により収穫が皆無の状態であっ たが本年も農業に従事している。 この場合、遺族基礎年金、贈与された主食の金銭収 入から農業の生産必要経費、基礎控除を認定してよいか。
なお、本年の作況は良好で収穫は期待可能である。
〔参照〕次 第8-3-(1)-イー(イ) 次 第8-3-(4) 課 第8-3 問8-64 (答)当該収入と因果関係のない経費の控除は認められない。 設問の場合は、通常、農業 災害補償法による共済金が支給されるので、その場合の取扱いを適切に行うこととされた い。
なお、保護受給中の場合に限り、前年分の必要経費については、その者の本年の農業収 入から控除を認めて差し支えない。 前々年分までは認められないものである。
(問8-11)〔野菜の収入認定に伴う必要経費の算定〕 野菜の収入認定に際し、必要経費率をもって算定することとされている肥料代等は 個々の生産物毎に算定すべきか、又は収穫量を換価した総収穫高に平均必要経費率を 乗じて算定すべきか。
〔参照〕局 第8-1-(2)-ウ (答)収穫野菜の作付面積の規模により取扱いを異にする。
(l)小規模の作付面積に多種類の野菜を作付している場合 この場合は個々の野菜ごとに必要経費を認定することは事務的に煩さであるので、実施 要領の「農業収入」の項に認める必要経費率20%に準拠して福祉事務所が定めた率を全収 穫高に乗じて算定するものである。
(2)相当規模の作付面積に主要生産物を作付している場合 その生産物固有の必要経費率を農林水産省統計等の客観的な資料に基づいて認定し、こ れに準拠して福祉事務所が定めた率を全収穫高に乗じて算定するものである。
(問8-12)〔野菜の自給割合〕 野菜の自給割合の認定方針を教示されたい。
〔参照〕局 第8-1-(2)-エ-(イ) (答)自給割合の認定は、当該世帯及びその地域の実情に即して実施機関が判断すること としている。
したがって、この認定は、農業協同組合、民生委員、農業改良普及指導員等の意見を聴 取するなどして、当該地域の食生活及び自給の実態等を十分把握し、それを総合的に勘案 して、適宜判断することとされたい。 その際、農業経営統計調査、家計調査、その他当該 地域の関連指標などを補助的な参考資料として、活用することとされたい。
(問8-13)〔一毛作地帯の収入の認定〕 一毛作地帯についても収入は平均月割によるべきものであるか。
〔参照〕局 第8-1-(2)-キ (答)農業経営は1年間を周期として経営されており、各月における経済上の凸凹は平均 化されるよう作付されるのが農家の生活設計の建前であることと、また実態もこれに即し ている実情にかんがみ、一毛作地帯であっても平均月割の認定方法を原則とするものであ る。
(問8-14)〔農業収入が少額な場合と分割認定〕 農業収入がきわめて少額であり、かつ、次のような場合でも12分の1分割認定すべ きか。
(1)辺地等で3か月しか農耕できない場合 (2)老夫婦できわめて小規模な農作業の場合 (3)仕送り贈与のみの場合 (4)農閑期に出かせぎの習慣もなく、農業収入以外の収入も期待できない場合 〔参照〕次 第8-1-(2)-キ (答)設問のような場合は12分の1分割認定はすべきではないであろう。 認定方法は実施 機関において適宜認定することとして差し支えないが、例えば、実際の稼働月数によって 除す方法等が考えられよう。
(3)自営収入
(問8-15)〔土地改良法に基づく土地改良区の分担金の取扱い〕 土地改良法に基づく土地改良区の分担金(耕地整理費)については、法律の根拠に 基づいて必要とされるものであるため、収入を得るための必要経費として認定して差 し支えないか。
〔参照〕次 第8-3-(1)-イ-(イ) 次 第8-3-(1)-ウ-(イ) 問8-93 (答)法律の根拠に基づいて必要とされる経費のうちにも強制的な性格を有するものとそ うでないものとがあるので、一概に法律に基づくという理由のみでは、その全部を必要経 費として認めることはできないが、今後の収入の維持に必要不可欠であると認められる場 合にはその経費の控除を認めて差し支えないものである。
土地改良法に基づく土地改良区の分担金については、なるべく賦課の免除(金銭の場合) 又は労役の提供等の申出をし、なおその分担金を直ちに支払わなければならない真に必要 やむを得ない事情にあるならば、必要経費として認めて差し支えない。
(問8-16)〔原価償却に要する経費〕 適正事業規模の範囲内での原価償却に要する経費(買替費用)は必要経費として控 除できるか。 必要経費に関する基本的な考え方と併せておたずねする。
〔参照〕次 第8-3-(1)-ウ-(イ) (答)保護の実施要領においては機械器具の修理費については控除を認めているが、生産 機材の減価償却費の控除は認められていない。 これは、必要経費は当該専業収入を得るた めに直接必要な実費を控除するという考えに基づくものである。
また、被保護世帯の営む適正規模の事業の範囲で生産機材を買わなければ事業を継続で きない場合には、生業のための各種貸付資金の活用(償還金の控除が認められている。 ) 又は生業扶助の適用について考慮すべきである。
(問8-17)〔事業拡張に伴う仕入代の認定〕 現在の売上品の補てんを超えて事業を拡張するために従来より多い商品の購入をす る場合、その購入費を事業収入を得るための必要経費として認定してよいか。
〔参照〕次 第8-3-(1)-ウ-(イ) (答)事業の規模が被保護者の行う事業として適正な規模であれば差し支えない。
なお、自営業は、経営そのものがその時々の事情によって極端に左右されやすいので、 その収入も勤労収入等と異なり必ずしも一定しないのが例である。 特に被保護者の営む自 営業は比較的規模も小さく、はっきりした収支の計算が十分に行われていない場合も少な くないと予想されるから、単に申告のみに基づいて機械的に認定することを厳にさけるべ きであり、世帯の日常生活の状況などから客観的根拠に基づいて、適正な認定を行うこと が必要である。 設問のような場合には特にこの点に留意して取り扱うこととされたい。
(問8-18)〔収入を得るための必要経費の判断〕 次の費用を収入を得るための必要経費として認めてよいか。
(1)外交員の手みやげ (2)商店の歳暮 (3)保育児送迎のための交通費 〔参照)次 第8-3-(1)-ウ-(イ) 次 第8-3-(5) (答)(1)及び(2)については、外交又は営業成績をあげ、ひいては収入の増加をもた らす手段として真に必要とする場合も考えられるが、それらの費用を認める限度及び効果 等について測定し難いので、現在のところ一般的には認められない。
ただし、生命保険の外交員の場合の卓上カレンダー等については、その者の就労状況等 からみて、それが当該就労に必要と認められるものであり、かつ、他の外交員との均衝を 失しないものであるときに限り、必要最少限度の実費を認めて差し支えない。
(3)については、就労のため子を保育所へ預ける必要があり、かつ、そのための交通 費を必要とする真にやむを得ない事情にあるときに限り、勤労に伴う必要経費として(別 に就労先への交通費を必要とするときは、その実費と併せて)最少限度の実費を認めて差 し支えない。
(問8-19)〔魚介を自給している場合の必要経費〕 魚介を自給している場合には、どんな必要経費が認められるか。
〔参照〕局 第8-1-(3)-イ (答)魚介を自給している場合の必要経費としては、えさ代、船の燃料費、漁具の修理代、 組合費等が考えられる。 したがって、それらの経費が必要な場合は、その実費を控除して 差し支えない。 しかし、魚介を自給している世帯は概ね漁業収入のある世帯と考えられ、 そのような場合は漁業収入に伴う必要経費に含めて措置されるし、また、自給程度の魚介 しか得ていない世帯については、特別に必要経費が必要であるとは考えられないので、魚 介を自給している場合の必要経費の認定に当たっては、慎重に取り扱われたい。
(問8-20)〔自動車の維持費〕 必要経費として控除が認められる「燃料費」「修理費」「自動車損害賠償保障法に基 づく保険料及び任意保険料」の範囲を示されたい。
〔参照〕課 第8-2 (答)次に示すところによられたい。
(1)燃料費通勤用については自宅から勤務先までの最短距離で算定したガソリン代等、 事業用についてはその事業に要する必要最小限のガソリン代等とすること。
(2)修理費小破修理に限ること。 保有が認められた用途以外の日常生活に使用中の故障 は、この修理費の対象とはならないものである。
(3)自動車損害賠償保障法に基づく保険料及び任意保険料の対人・対物賠償分、軽自動 車税及び自動車税は実費とすること。
また、保険金が被保護者本人に支払われた場合には収入認定等の問題が生じるので 留意されたい。
(4)不安定な就労収入
(問8-21)〔不安定な就労による収入と臨時又は不特定就労収入との相違〕 次 第8の3の(1)のエに規定されている「その他の不安定な就労による収入」と、 勤労収入のうち局 第8の1の(1)のウに規定されている「臨時又は不特定就労収入」 とはどう違うのか。
〔参照〕次 第8-3-(1)-エ 局 第8-1-(1)-ウ (答)次 第8の3の(1)のエの「その他の不安定な就労による収入」(この項で以下「不 安定就労収入」という。 )は知己、近隣等縁故による文字どおり臨時の就労状況がときた ま生ずるものを対象とするものであり、局 第8の1の(1)のウの「臨時又は不特定就労 収入」(この項で以下「臨時就労収入」という。 )は、いわゆる拾い仕事をしている就労状 況を対象とするものである。
また、不安定就労収入は、通常、毎月この収入が期待できるものではないので、基礎控 除は適用されず、就労者ごとに次 第8の3の(1)のエに定める額までは控除され、この 額を超える分だけが収入認定の対象となるのである。 これに対して、臨時就労収入は、雇 用先が不特定で、就労の可能性が同一の事業所で継続しない場合でもそのような就労状況 そのものは毎月引き続いていることから、基礎控除が適用される。
2 就労に伴う収入以外の収入
(問8-22)〔定期的に支給される公の給付〕 収入認定の対象となる公の給付であって、地方公共団体又はその長が条例又は予算 措置により定期的に支給する金銭とは、どういうものをいうのか。
〔参照〕次 第8-3-(2)-ア-(ア) (答)地方公共団体等が条例等により定めているものであって、受給者について当該支給 事由が存続する期間継続して定期に支給される年金、手当制度等による給付をいう。 した がって年1回しか支給されないものであっても、条例等によって支給事由が消滅しないか ぎり、当該受給資格を有する者に毎年きまって支給されるものは定期金である。
また、地方公共団体の単年度の予算措置等によって臨時に支給される金銭で、支給時の 都度、受給資格を失うものは臨時金として取り扱うこととなるが、同一人に対して、同一 の趣旨で年3回以上支給される場合は、定期的に支給されるものとして取り扱うべきであ る。
(問8-23)〔求職者給付及び就職促進給付〕 雇用保険法に基づいて支給される求職者給付及び就職促進給付は収入認定すべき か。
〔参照〕次 第8-3-(2)-ア 局 第7-8-(2)-ア-(オ) 課 第8-50 (答)これらの給付金は、求職者の求職活動の促進、生活の安定を図るために給付される ものであり、次 第8の3の(2)のアの(ア)に該当するものであるから、当然収入認定 すべきである。 なお、求職者給付のうち技能習得手当として支給される額については、局
(問8-24)〔借金の担保となっている恩給受給権〕 保護申請者甲は、恩給の受給権を持っているが、1年前にこの恩給受給権を担保と して借金しており、現在恩給証書は金融業者乙の手元にあって乙は甲の恩給を上の借 金の返済にあてている。 このような場合には、他に甲の収入がなければ、甲は収入が 全くないものとして取り扱ってよいか。
〔参照〕次 第8-3-(2)-ア-(ア) (答)恩給法 第11条第1項によれば「恩給ヲ受クルノ権利ハ之ヲ譲渡シ又ハ担保二供スル コトヲ得ス但シ株式会社日本政策金融公庫及別ニ法律ヲ以テ定ムル金融機関二担保ニ供ス ルハ此ノ限ニ在ラズ」と規定され、現在のところ恩給の受給権を担保として借金できるの は株式会社日本政策金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫に対してだけであり、それ以外の 場合には恩給の受給権を担保とすることは許されていないものである。 したがって、甲と 乙との契約は違法なものであって、無効の契約ということになる。 そこで収入の認定に際 しては、 まず、 第1に、甲乙間の契約の内容が違法かつ無効であることを説明して乙が甲に恩給 証書を返還するよう指導し、甲が従来どおり恩給を受領することができるようにしてこれ を収入として認定すること。
なお、厚生年金保険法 第41条、国家公務員共済組合法第49条等にも恩給法第11条と同趣 旨の規定がある。
(問8-25)〔自立支援教育訓練給付金の取扱い〕 教育訓練講座を受講した母子家庭の母に、「自立支援教育訓練給付金」が支給され たが、収入認定することとしてよいか。
〔参照〕局 第7-8-(2)-ア-(キ) 次 第8-3-(2)-ア-(ア) (答)「自立支援教育訓練給付金」については、事業実施主体である都道府県、市及び福祉 事務所設置町村が指定した教育訓練講座を受講した母子家庭の母に対して、その受講料の 4割相当額を受講後に支給するものである。
生活保護の取扱いとしては、母子家庭の母が「自立支援教育訓練給付金」の対象講座の うち、課 第7の70の技能修得費の対象となる教育訓練講座を受講する場合には、380,000 円を上限に技能修得費を計上することとし、受講後に得られる「自立支援教育給付金」に ついては次 第8の3の(2)のアの(ア)により収入認定することとなる。
(問8-26)〔親族里親の里親委託費の収入認定〕 母親の服役により、その子が被保護世帯である祖母世帯に転入し、祖母は児童福祉 法の親族里親として認定された場合、同法により支給される里親委託費について、ど のように取り扱えばよいか。
〔参照〕次 第8-3-(2)-アー(ア) (答) 親族里親については、児童の日常生活に必要な一般生活費、教育費等が支給され ることになるが、当該費用については、次 第8の3の(2)のアの(ア)の「その他の公 の給付」として収入認定することとなる。
(問8-27)〔年金受給のための診断書の費用〕 障害基礎年金受給のため、その申請書に添付する診断書を被保護者が自費で診断を 受けて作成した場合、その費用はどのように取り扱うか。 年金から控除するか、検診 命令を事後承認したこととして費用を措置すべきか。
〔参照〕次 第8-3-(2)-ア-(イ) 局 第13-3 問11-22 (答)設問のように自費で診断書を作成した場合は局 第13の3により取扱いが定められて いるが、次 第8の3の(2)のアの(イ)に示す「受給資格の証明のために必要とした費 用」として、当該障害基礎年金を初めて受給した際における収入認定に当たって、その診 断書作成に要した費用を控除すべきである。
なお、障害者加算等の認定に関しては次 第11の4の(1)のイにより検診命令を行って 差し支えないものである。
(問8-28)〔高齢者世帯に対する電話設置費の贈与〕 高齢者世帯に対して扶養義務者等から仕送り贈与された電話設置のための費用につ いては、収入の認定上どのように取り扱ったらよいか。
(答)電話設置のための費用については、次 第8の3の(2)のイの(ア)の「他からの 仕送り、贈与等による金銭であって社会通念上収入として認定することを適当としないも の」として取り扱って差し支えない。 ただし、扶養義務者から仕送りされた場合は、通常 期待すべき扶養の程度を超えて電話設置費用に相当する額を一時的に援助される場合であ って、被保護者が電話を設置するときに限られる。
(問8-29)〔主食、野菜、魚介以外の現物援助〕 主食、野菜又は魚介について現物で贈与を受けた場合は、農業収入又は農業収入以 外の事業収入の認定の例により金銭換算した額を認定することとなっているが、嗜好 品、被服、衛生用品、家具什器費、燃料などの贈与を受けた場合はどのように取り扱 ったらよいか。
〔参照〕次 第8-3-(2)-イ-(イ) (答)現物による贈与を受けた場合に、収入として認定するのは、主食、野菜又は魚介に 限られているので、設例のような品目の贈与を受けている場合は、収入認定しないことと して差し支えない。
しかし、贈与者と当該被保護者との関係等を考慮した上、一般の扶養義務の取扱いとし て現物の贈与に代えて現金による援助を受けるよう奨励する余地はあろう。 しかしながら、 この場合にあっても、扶養義務関係がないか、あっても現状以上の能力がないと認められ る場合で、現状の贈与が贈与者の厚意によるものであるときは、せっかくの意思を阻害し ないよう留意すべきである。
なお、贈与品の内容等によって資産の活用の問題について検討する必要のあることはい うまでもない。
(問8-30)〔臨時的に支給される公の給付〕 次 第8の3の(2)のエの(ア)に示す「地方公共団体又はその長が年末等の時期 に支給する金銭」は、次 第8の3の(2)のアの(ア)に該当するものを除くもので あるから、年2回以内の支給であればこれに該当すると思われるが、この場合県から 2回、市から2回計4回であっても年2回と解してよいか。
〔参照〕次 第8-3-(2)-エ-(ア) (答)お見込みのとおり年3回以上であれば定期的支給、年2回以内であれば臨時的収入 として差し支えない。
またこの回数は、支給主体ごとに認定するものであるから、県と市とそれぞれ2回ずつ という点もお見込みのとおりである。
なお、地方公共団体又はその長が年末等の時期に支給する金銭については、世帯合算額 が次 第8の3の(2)のエの(ア)に定める額を超えるときはその超える額を認定するこ ととなるので、同一月に県と市が支給する場合は留意を要する。
(問8-31)〔不動産の処分等による臨時的収入の取扱い〕 次の場合どのように収入として認定すべきか、それとも収入として認定しないで法
(1)保有を認められない土地を所有していたため、法 第63条による返還義務を明示 した上で保護を開始すべきであったが、当該指示をせずに保護を開始した。 2年 後に処分して、収入があった場合 (2)水田40aの保有を認めて保護をしていた農家世帯が耕地整理の関係上そのうち1 0a売却し、収入があった場合(当該地域の平均耕作面積は70~80aである。 ) (3)被保護世帯に宝くじが当せんした場合のようにまったく予期しない臨時収入が あった場合 〔参照〕次 第8-3-(2)-エ-(イ) 法 第63条 (答)(1)の場合、法 第63条の「資力があるにもかかわらず、保護を受けたとき」に該当 するので、法 第63条の適用により返還措置をとるべきである。 ただし、この場合の返還額 については保護の実施機関が、当該世帯の実情を勘案して決定することと処分による収入 から法 第63条による返還額を控除した後なお残額が生じる場合は、その残額を翌月以降の 生活維持のための収入として認定し、保護の変更、停止又は廃止を行うこととなる。 なお、 本来保有を認められない資産については、費用返還が円滑に行われるよう予め法 第63条に よる返還義務が生じることを文書により明らかにした上で保護を開始することに留意する 必要がある。
(2)の場合、事業用としての保有を容認された資産は、法 第63条による資力に該当せ ず、売却の時点でその対価を収入として認定すれば足りるものである。
この場合、その収入充当額が1か月分の扶助額を上回るときは各月にわたって分割認定 をした上で保護が不要となる期間を計算し、それが6か月を超えるかどうかにより保護の 停止又は廃止の措置を検討すべきである。
なお、土地収用法等の適用により補償金の支給を受けた場合又は実施機関の指導により 売却した場合には、自立更生のために当てられる額について収入として認定しない取扱い を考慮すべきである。
(3)の場合も、法 第63条を適用することはできず、収入として認定すべきである。 こ の場合、その収入認定額が1か月分の扶助費を上回るときの取扱いについては、(2)と同 様である。
なお、いずれの場合でもこのような予期しない収入がまとまって入ったときは、保護の 停止又は廃止を考えるだけでなく、稼働能力、世帯の現況等に応じて生活福祉資金の活用 等についても併せて検討し、積極的な自立助長策を講じるよう指導することが望ましい。
(問8-32)〔債務整理にかかる必要経費の認定について〕 A社、B社、C社の3社に債務がある被保護者が弁護士に依頼して債務整理を行っ たところ、A社には30万円、B社には25万円の債務が残ったが、C社の債務には過払 いが発生した。 この過払い金について返還請求した結果、C社から和解金100万円を 得ることになった。 弁護士は、この和解金100万円からA社及びB社の債務を返済し、 報酬として弁護士費用15万円を差し引いた30万円を被保護者の口座に振り込んだ。 こ の場合、収入認定にあたり、A社、B社へ支払った返済額及び弁護士費用については どのような取扱いとなるのか。
(答)多重債務を抱える被保護者が複数の債務を弁護士に依頼して一括して整理する場合 には、債務整理の結果得られた残額を次 第8の3の(2)のエの(イ)の臨時的収入として 収入認定することになる。 また、債務整理のための弁護士費用については、必要経費とし て控除して差し支えない したがって、この事例では、和解金100万円からA社及びB社の債務の弁済に充てた30 万円と25万円を差し引いた残額45万円から8千円を引いた額が収入となり、さらに弁護士 費用15万円を必要経費として控除した29万2千円を収入認定することになる。
(問8-33)〔少額な臨時収入の分割認定〕 一時に認定しても保護の停止とはならない程度の臨時収入を分割認定することは認 められないか。
〔参照〕局 第8-1-(5) (答)世帯の事情に応じて6か月を上限として分割認定を考慮しても差し支えない。
(問8-34)〔健康保険組合の還付金〕 健康保険による入院患者が退院の際、健康保険組合から還付金を受領したが、当該 還付金は収入認定すべきものか、又は法 第63条による返還とすべきものか。
〔参照〕問6-1 (答)当該還付金が、健康保険組合の附加給付として支給されたものとすれば、法 第63条 により返還とすべきものである。
(問8-35)〔年金の過払いがあった場合の収入認定〕 厚生年金を受給している者について既に受給した年金額に過払いがあったことがわ かり、今後、その過払い分を本来受給すべき額から数回に分割して滅額されることと なった。
この場合、既に支給された年金額は過払い分も含めて毎月収入認定されていたこと から、今後の減額支給分については、その受給実額を収入として認定することとして よいか。
〔参照〕厚生年金保険法 第39条 次 第8-3-(2)-ア-(ア) (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
3 収入として認定しないものの取扱い 収入の認定は、法 第4条において「その利用し得る資産、能力その他あらゆるもの」の 活用が求められていることから、最低生活の維持にあて得る金品は、全て収入として認定 するのが原則である。
しかしながら、この原則を貫徹し、被保護世帯に対する金銭給付の全てを収入として認 定したのでは、法の目的である自立助長の観点から、あるいは社会通念上の観点から適当 でない場合も出て来る。
こうした観点から特定の金銭については、それが収入であるにしても最低生活の維持の ために活用することを求めない、すなわち収入として認定しないこととしており、このよ うな取扱いを実務上収入認定除外と称している。
これらは、当該金銭の性格(支給の趣旨等)、支給方法(臨時的か継続的か)、使われ方 (自立更生等)を判断して総合的に決定されるわけであるが、これをその主たる趣旨に沿 って分類してみると、概ね次のようになる。
1 冠婚葬祭の祝儀香典、慈善的金銭等 結婚の祝儀や葬祭の香典、歳末たすけあい等社会事業団体の慈善的金銭については、い かに公的扶助制度とはいえ補足性の原理の名のもとに全て生活費にあてるべきものとして 収入認定するのは、社会通念にも合致しないと考えられる。 また収入認定除外の限度につ いても、何円以内といった形式的な限度を設けず社会通念により地域の慣習等をも考慮し 個別的に判断することとしている。
なお、このほか、地方公共団体又はその長が年末等の時期に臨時的に支給する金銭とか、 本来的に稼働しない者が臨時に働いて得た不安定就労収入については、一定額を超える部 分を収入として認定することとしているが、これについても類似の趣旨によるものといえ よう。
(次 第8-3-(3)-ア、イ、サ、シ) 2 弔慰金等 戦没者に対する追悼慰霊等国家的弔慰として支給される金銭については、生活保護制度 において保障しようとする生活需要とは別のものであり、その趣旨に沿って使われること が期待されるものであるから、これを尊重し、収入認定除外することとしている。
(次 第8-3-(3)-ス、セ、タ及びソの一部) 3 特定の者に対しその障害等に着目し、精神的な慰謝激励等の目的で支給されるもの 地方公共団体のいわゆる福祉的給付金、原爆被爆者に係る原子爆弾小頭症手当、健康管 理手当、保健手当及び公害関係諸給付については、それぞれの制度によって趣旨目的に微 妙な相違はあるが、大筋において特定の障害等(福祉的給付金については、老齢、障害、 母子、遺児等の社会的ハンディキャップ)を負っている者を対象にそれに基づく諸々の不 安の解消、慰謝あるいはその障害を克服して社会生活に適応するよう慰謝激励することを 目的とするものである点に着目して収入認定除外とされているものである。
なお、福祉的給付金については、当該地域住民の総意として条例等に定められたものに 限られるが、その対象、趣旨等については、多岐にわたっている。 このため収入として認 定しない額について一定の限度を設けているが、障害が重複しているため2以上の手当を 受給する場合とか、極めて重度の障害者を対象とする場合等で、この額を超えて収入とし て認定しない取扱いを必要とする場合には個別的に厚生労働省に情報提供の上判断するこ ととしている。
(次 第8-3-(3)-ケ、コ、ソの一部及びチ) 4 自立更生のために使われるもの 生活保護は最低生活の保障と自立の助長を目的とするものであるが、このうち最低生活 保障部分については、保護の基準によって示される水準を厳格なものとし、これ以上の水 準を保障することのないようになっているが(法 第8条第2項)、自立助長に関する措置 については、保護基準により保障される水準のほかに他法他施策の活用その他特定の金銭 をもってあてる場合には、これを容認する意味で収入として認定しない取扱いとしている。
すなわち当該金銭の支給の趣旨、当該世帯の自立の可能性を考えるとき、これを収入とし て認定するよりも自立更生計画にあてさせるべく収入認定除外した方がより法の目的にか なうものと考えられるからである。
自立更生のために使われることにより収入として認定しない取扱いとするものは、さら に次の三つに分けることができる。
(次 第8-3-(3)-ウ、エ) 恵与金、貸付金については、恵与又は貸付の趣旨が「自立更生を目的とする」ものであ ることが要件となっている。 とくに貸付金については、その償還の問題も含め、あらかじ め実施機関の承認を要するほか、自立更生計画についても範囲が限定されており、更に公 的制度と私的なものでは取扱いを異にしている。
(次 第8-3-(3)-オ、カ及びキ) 災害に係る補償金等について収入認定除外を認めるのは、加害者等による直接的な損害 の補てんとしての原状回復及び自立更生一般の用途にあてられる場合である。
災害によらない死亡に係る保険金や、保護の実施機関の指導又は指示により動産又は不 動産を売却した場合の代価についても災害による補償金等と同様の取扱いがなされてい る。 なお、補償金等が長期にわたり毎月あるいは年数回に分割されて定期的に支給される 場合は、その目的、形態ともに当然生活費にあてるのが一般的であると考えられることか ら、収入認定除外の対象としないこととしている。
(次 第8-3-(3)-ク)
(問8-36)〔慈善的恵与物の取扱い〕 社会事業団体等からの慈善的給付が現物で支給されたときの取扱いはどうするか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-ア 局 第8-2-(2) (答)現物の恵与については、被贈与資産として取り扱われたい。 したがって、最低生活 の内容として保有を認められるものは収入として認定することなく、また、その限度を超 えるものは、原則として処分させるべきである。
(問8-37)〔収入として認定しない社会通念上の程度〕 社会事業団体等からの慈善的恵与金として社会通念上収入として認定することが適 当でないものというのは、どの程度のものを標準として判断すべきか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-ア (答)社会通念そのものは、全国に通用する概念もあれば、その地域ごとのものもあるの で、必ずしも一定の線を示すことは困難である。 一応、次 第8の3の(2)のエ(就労に 伴う収入以外の収入のうちのその他の収入)において示している収入として認定しない額 が考えられるが、要はその地域において住民の一般が良識をもって承諾できるものであれ ば、保護の実施機関において判断して差し支えない。 この判断に当たって考慮すべきこと は、社会福祉法との関連においても明らかなように、社会保障制度の基盤をなす生活保護 制度としては、社会福祉事業の伸長と積極的活動を当然期待し、助長すべきであり、かつ、 慈善的恵与は社会的弱者に対する一般社会からの好ましい共助のあらわれでもあるので、 それが臨時的なものであり、かつ妥当な額である限り、できるだけその意図が活かされる ように措置することは、法の原理原則からも認めてしかるべきであるというのがこの取扱 いの趣旨である。
(問8-38)〔祝金等の取扱い〕 出産、就職、結婚、葬祭等に際して贈与される金銭について収入認定しない取扱い について、次の場合どのように考えればよいか。
(1)贈与する者は地方公共団体であっても差し支えないか。
(2)出産、結婚、就職、葬祭等の「等」にはどのようなものが含まれるか。
(3)収入として認定することが適当か否かの判断はどうすればよいか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-イ (答)(1)贈与の主体が公私にかかわらず慶弔意の表現として贈与されるものである限り この取扱いによって差し支えない。 ただし、例えば健康保険による傷病手当金、埋葬料、 分べん費、出産手当金等各種の社会保険給付は公的な制度による費用補てん又は所得保障 であるので、このような取扱いはできないので注意すること。
(2)入院や入学、卒業などいわゆる人生の転機に際しての贈与金及び亡父母の法事に 際しての香典等が対象となり、進級祝、誕生祝などはこの取扱いは適用できない。 後者に ついては、次 第8の3の(2)のエの(ア)に定める額の範囲内で処理されることとなる。
(3)社会通念上収入として認定すべきか否かは、福祉事務所において個別的に判断を 行うべきものであるが、その際には、その慶弔事の種類、当該地域の慣行等を勘案するほ か、近隣の低所得世帯との均衡を失しない程度の額について、収入認定しない取扱いとす るのが妥当である。
(問8-39)〔貸付金の事前承認の取扱い〕 貸付金であって収入認定の対象とならないものの要件として、保護の実施機関の事 前の承認が定められているがこれは担当職員が了承し、ケース記録に明記することで たりるか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-ウ 局 第8-2-(3) (答)この承認は保護の実施機関としての福祉事務所長の承認でなければならず、単に担 当職員の了承では要件を満たしたことにならないものである。
なお、この場合、通常は文書による承認が必要とされる。
(問8-40)〔一般法人又は私人からの貸付金〕 自営業を営んでいる被保護者が、事業の継続に必要な資金を公共団体以外の法人又 は私人から貸付けを受けたときにおいても貸付資金のうち当該被保護世帯の自立更生 のために当てられるものとして収入として認定しないでよいか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-ウ 局 第8-2-(3)-ア 局 第8-4-(3) (答)自立更生を目的とするものであって、事前に福祉事務所長の承認があり、かつ、現 実に当該貸付けの趣旨に即し使用されているものであれば公共的なものに限らず一般の法 人、私人からの貸付金であっても収入として認定しなくても差し支えない。
(問8-41)〔就学資金の範囲〕 貸付資金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられることにより収入とし て認定しない就学資金にはクラブ活動等の課外活動や修学旅行費にあてるための貸付 金も含まれるか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-ウ 局 第8-2-(3)-イ (答)お見込みのとおり、クラブ活動等の課外活動や修学旅行費にあてるため等の高等学 校等就学費の支給対象とならない経費及び高等学校等就学費の基準額でまかないきれない 経費であって、その者の就学のために必要な最小限度の額にあてられる場合に限り含まれ るものである。
(問8-42)〔医療に伴って通常必要とする間接経費の例〕 貸付資金、恵与金等のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられることによ り収入として認定しないこととされている「医療を受けることに伴って通常必要と認 められる経費」には、例えば、次のものは含まれるか。
(1)入院料の他に病室の差額料金を要する場合の料金(他の入院患者との均衡を失 しない場合に限る。 ) (2)健康保険によって認められていない高価薬に要する費用 (3)見舞のための家族の交通費 (4)嗜好品費 (5)図書、読書台費 (6)子供の病床における遊ぎ道具の費用 (7)謝礼 〔参照〕次 第8-3-(3)-ウ 次 第8-3-(3)-エ 次 第8-3-(3)-オ 局 第8-2-(3) 局 第8-2-(4) 課 第8-40 (答)医療扶助の対象とならないいわゆる間接医療費を含むものである。 したがって、(1) から(6)までについては、認められるが、(7)については社会通念上必要と認められる 常識的な範囲での贈答品費を除き、一般的には認められない。
なお、(4)については、果物、菓子等の患者の嗜好品に要する費用である。 (5)、(6) については、病気療養中の精神的安定と病気療養中の余暇を利用しての社会復帰への準備 として、認められるものであるが、他の療養者等との均衡を失することにならない程度の ものであることを要する。
(問8-43)〔扶養義務者からの指定つき援助〕 5人世帯で6畳のバラックに住んでいる被保護世帯に対して扶養義務者から家屋の 拡張工事を指定して援助があった。 検討したところ、これは扶養義務者の扶養の程度 を超えている援助金であると認められたので収入として認定せず、家屋の拡張工事を 認めたいがよいか。
また拡張しない既存の部分で修理を要する箇所がある場合、この部分の修理には家 屋補修費を支給することとしてよいか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-エ 局 第8-2-(4) (答)世帯構成等からみて現住居での生活が最低限度の生活を著しく損なうものであると 認められ、緊急に増設する必要があり、かつ当該世帯にとってこれが最も効果的な自立助 長措置であると判断された場合には、認めて差し支えない。
また、拡張工事と直接関係なく補修を要する箇所がある場合は家屋補修費を支給して差 し支えない。
(問8-44)〔恵与金による保育所への入所〕 課 第8の40の答の(2)のオの(ア)では幼稚園等での就園にあてられる経費のう ち収入として認定しない額の基準が示されているが、この「幼稚園等」の「等」には 保育所が含まれていると解してよいか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-エ 局 第8-2-(4) 課 第8-40-(2)-オ-(ア) (答)お見込みのとおりである。
(問8-45)〔恵与金による幼稚園への就園〕 恵与金等によって児童が幼稚園に就園する場合、その恵与金等を収入として認定し ない取扱いは、保育に欠けるというような事情がなければ認められないか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-エ 局 第8-2-(4) 課 第8-40 (答)幼稚園への就園が一般的である実態にかんがみ、著しく地域社会の均衡を失する等 特別な事情がない限り、保育に欠けるというようなことがなくても認めて差し支えない。
(問8-46)〔扶養義務者からの恵与金〕 扶養義務者からの援助金は、その援助が当該扶養義務者について期待すべき扶養の 程度を超えて行われる場合には、恵与される金銭として、取り扱ってよいとされてい るが、この場合、恵与される金銭に該当するものは次のいずれであるか。
毎月2万円の仕送りをしている扶養義務者に相当の臨時収入があり、被保護世帯の 子どもの修学旅行に充てる費用を含めて5万円の仕送りをした場合 (1)毎月の仕送り分2万円は収入として認定し、3万円については期待すべき扶養 の程度を超えたものとして修学旅行に要する費用としての自立計画を立てさせ る。
(2)扶養義務者に臨時収入があったのであるから期待すべき扶養の程度を超えてい るとは認められず、その援助金の全てを収入として認定する。
〔参照〕次 第8-3-(3)-エ 課 第8-40 課 第8-41 (答)(1)により取り扱って差し支えない。 なお、祝金についても、これと同様に考えら れる。
(問8-47)〔災害見舞に贈与された主食〕 災害等に際して主食が贈与された場合、これを恵与金と同様に取り扱って差し支え ないか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-エ 局 第8-2-(4) 課 第8-40 (答)通常、買置きの食料品が流された場合等が考えられるが、生活基盤の回復にあてら れるものを限度(概ね1か月分の食料費相当分)として収入として認定しないこととされ たい。 これを超えるものについては金銭換算の上、贈与による収入として取り扱うことに なる。
(問8-48)〔恵与金、補償金等の取扱いと被保護者の自立更生計画との関係〕 恵与された金銭又は補償金等は自立更生のための用途に供されるものとして収入と して認定しない場合、これがあてられる経費については保護費支給又は就労に伴う必 要経費控除の必要がないとされているが、このことと、被保護者の希望する自立更生 計画との関係で、次の点をお尋ねする。
(1)災害による補償金、保険金及び災害見舞金を当該災害に係る原状回復に要する 経費にあてないで、被保護者の選択によってそれ以外の生業、就学等の費用にあ てるものとして自立更生計画を立てさせることとして差し支えないか。
(2)災害見舞金以外の恵与金等で特に指定のないものについては、課 第8の40の答 (2)に掲げる費用の範囲内で被保護者の選択によって自立更生計画を立てさせ ることとして差し支えないか。
(3)前記(1)、(2)の場合において、当該補償金、保険金又は恵与金をもってし ても自立更生計画の遂行に要する費用に満たない場合、その不足分につき一時扶 助等の保護費を支給することとして差し支えないか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-エ 次 第8-3-(3)-オ 局 第8-2-(4) 課 第8-40 (答)(1)については、被保護世帯の自立更生計画は、まず 第一に災害等によって失った 生活基盤の回復に要する経費又は災害等による負傷若しくは疾病の治療に要する経費にあ てさせることとし、なお残余があれば当該世帯に最も必要性があり適当と思われるものに ついて自立更生計画を立てるよう指導することとされたい。
(2)については、現在当該被保護世帯にとって最も必要性があり、かつ効果的な自立 更生計画を立てさせることとされたい。
(3)については、補償金、恵与金等の受給の有無とは関係なく、実施機関において従 来より一時扶助等の支給の必要性があると認めていたものであって、補償金、恵与金等を それら一時扶助等の需要にあてさせることが最も実効があると認められ、実施機関の指導 により行われる場合には、その不足分について保護費を支給することとして差し支えない。
ただし、それ以外の場合にあっては、受給した補償金、保険金又は恵与金の範囲内で完 成するような自立更生計画を立てさせるべきである。
また、実施機関において一時扶助の必要性を認めていなかったものについてまでも、補 償金、保険金、恵与金等の受給があったことを機会に、この際一時扶助を適用するといっ た取扱いは認められないものである。
(問8-49)〔恵与金等の預託の期間〕 恵与金等が直ちに自立更生の用途にあてられない場合は、社会福祉協議会等の団体 に預託することが認められているが、将来の自立更生計画としてどのくらいの期間、 預託を認めてよいか。
(参照〕次 第8-3-(3)-エ 次 第8-3-(3)-オ 局 第8-2-(4) 課 第8-34 (答)自立更生計画は将来においてある計画を遂行する可能性があるという程度の莫然と したものではなく、具体的な計画として固まっている必要があるので、概ね将来5年程度 の範囲で完了するような自立更生計画をたてることとされたい。 ただし、結婚資金に係る 計画については結婚による自立助長のため、世帯分離ができる場合(局 第1の2の(7)) との関連からみても概ね1年以内に結婚する場合に限られるべきである。
(問8-50)〔恵与金等の民生委員への預託〕 恵与金等を預託する場合、社会福祉協議会、新聞社等団体を原則とするが、これら に預託できないときは民生委員に預託することとしてよいか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-エ 次 第8-3-(3)-オ 局 第8-2-(4) 課 第8-34 (答)将来の世帯の自立更生の用途に供することを目的として、一定期間 第三者に預託さ せる制度であることにかんがみ当該金銭を安全かつ確実に管理するものとして、まず社会 福祉協議会、公益法人等が考えられるが、民生委員であっても特に承諾が得られるならば、 民生委員に預託することとして差し支えない。
(問8-51)〔弔慰にあてる場合の使途〕 自立更生のための恵与金等が弔慰にあてられるため収入として認定しない取扱いが 認められる場合とは、具体的にはどのような使途にあてる場合が考えられるか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-エ 次 第8-3-(3)-オ 局 第8-2-(4) 課 第8-40-(2)-キ (答)墓石の購入、仏壇、仏具の購入費、位碑、遺影の製作費等にあてられる場合があろ う。
(問8-52)〔農業災害補償法による共済金〕 農業災害補償法による共済金は、災害等による補償金、保険金等に含まれると解し てよいか。
この場合、作物共済の共済金については一般の農業収入と同様に取扱い、災害等に よる補償金、保険金等として収入認定しない取扱いは家畜共済・建物共済についての みに限定して解することはどうか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-オ 局 第8-2-(4) 課 第8-3 (答)前段はお見込みのとおりである。 後段については、災害等による補償金、保険金等 として収入認定しない取扱いは家畜共済・建物共済の共済金に限るものではなく、作物共 済の共済金についても 第一義的にはこれと同様に取り扱うこととし、自立更生の用途に供 せられるもの以外のものについては一般の農業収入と同様に取り扱うこととされたい。
ただし、作物共済については、本来農業収入の代替として給付されるものであり、一般 的には生活費に充当される場合が多いので慎重に取り扱うこととされたい。
(問8-53)(土地収用法に基づく補償金〕 土地収用法に基づいて家屋の立退きを強制され(ただし宅地は借地)、その補償金 で郊外に宅地を購入し家屋を新築しようとする場合、宅地購入費、家屋新築費とも補 償金の額の範囲内であれば当該生活基盤の回復に要する経費として収入として認定し ない取扱いとして差し支えないか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-オ 局 第8-2-(4) 課 第8-40 (答)家屋の立退き等の場合に認められる生活基盤の回復は、立退き以前の家屋等の状態 を全く同様の状態で再現しようとする意味のものではなく、最低生活が維持できる生活状 態を回復させようという趣旨のものである。 したがって、立退き前の状態と比較して建物 の規模、構造も異なるであろうし、土地の状況も当然異なることが予想される。
それではどの程度までが生活基盤の回復といえるかという問題になるのであるが、これ は、その地域の実情(地域の土地家屋の需給関係、近隣の低所得世帯との均衡等)、ケー スの実態(家族構成、世帯人員、病人の有無等)によりあくまでも個々に判断せざるを得 ない。
設問のように、従前の敷地が借地であった場合には一般的には借地に家屋を建設するの が通常であろうが、近隣に借地がなくどうしても家屋を建設するためには土地を取得する 以外に方法がない場合もあり得ようし、また、自分の土地を手離して借地することもあり 得る。 さらには自己所有の家屋を手離して借家を得ることもあり得るのである。
その際に補償金等に残余が生ずるときは、当該世帯の自立更生の用途にあてるべく途が 開かれているところである。
したがって、設問の場合は地域の実情、ケースの実態等からみて、土地を購入し家屋を 新築することが生活の基盤の回復として必要であると判断されるときは、お見込みのとお り取り扱って差し支えない。
なお、補償金等により被保護者が新たに資産を取得する場合は、資産の保有基準がその 限度となるので念のため。
(問8-54)〔公営住宅の改善移転補償金〕 公営住宅の立て替えに伴い、入居者が転居する際に、それに要する費用が支給され る場合があるが、どう取り扱ったらよいか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-オ 課 第8-40 (答)次 第8の3の(3)のオに該当するものとして、転居に伴って必要な移送費、敷金 等、新旧住宅設備の相違により必要な家具什器費、等の実費について収入認定しない取扱 いとして差し支えない。
(問8-55)〔保護開始前の災害等に対する補償金等〕 災害死亡等に係る損害賠償請求権、保険金請求権等を有する者に保護を適用した後、 当該損害賠償請求権等に係る補償金等が支給された場合の法 第63条の適用に当たって は、当該災害等又は死亡によって世帯員が受けた精神的不安をやわらげ、世帯の自立 助長を配慮するという観点から返還額を決定することとしてよいか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-オ 次 第8-3-(3)-キ 課 第8-53 (答)保護開始前の災害等に係る補償金等が保護開始後に支給されるような場合には、保 護申請時において有する補償金等の損害賠償請求権はあくまでも保護開始時の資産である ので、法 第63条による費用返還の対象とすべきであるが、その返還額の決定に当たっては 当該世帯の自立助長等を考慮した上で返還額を決定し、返還させないこととした額のうち 世帯の自立更生計画のために当てられる額については収入として認定しない取扱いができ るのであり、こうした取扱いの後にさらに残額があれば収入として認定し、保護の停止又 は廃止を検討することになる。
(問8-56)〔保護開始前に受けた補償金等〕 課 第8の53の答の「保護開始後でなければ実現し得ない」自立更生の用途には、ど のようなものがあるか。
〔参照〕課 第8-53 (答)就学費用等直ちにその用途にあてることが困難なものをいうものである。
なお、就学費のほかには、災害による死亡者等の法事、墓石費等弔慰にあてる場合、打 切補償の場合の傷病に係る間接医療費、住宅関係の補償金で契約、工事等に時間を要する もの等が考えられる。
(問8-57)〔保護開始前の災害に起因する後遺症等が開始後に生じた場合〕 保護開始前に災害等を受け、災害に起因する後遺症等の損害が開始後に生じた場合 で、その請求権に基づいて新たに支払われることになった補償金の取扱い如何。
〔参照〕次 第8-3-(3)-オ 局 第8-2-(4) (答)災害が開始前にあった場合であっても保護開始当時、要保護者が通常の注意を払っ ても予想できなかった損害にかかる債権に対しては、法 第63条による費用返還義務は生じ ない。 当該補償金のうち、世帯の自立更生計画のためにあてられる額については収入とし て認定しない取扱いができるものであり、それ以外の額については収入として認定するこ とになる。
(問8-58)〔自立支度金の取扱い〕 中国及び旧ソ連からの引揚者に対して支給される自立支度金についてはどのように 取り扱ったらよいか。
〔参照〕昭和28年2月27日引揚援護庁援護局長通知 昭和62年5月29日庶務対 第93号援護局庶務課長通知 次 第8-3-(3)-オ 課 第8-53 問8-55 問8-56 (答)設問の引揚者の場合一般的には、上陸地で支払を受けた自立支度金を使い果たした 後に生活保護を申請するので、生活保護上の収入の認定の問題は生じないが、一時帰国(6 か月)していた者が、永住を希望した場合で、既に生活保護を受けているケースのように、 保護開始後に自立支度金が支給される場合があり、また自立支度金を費消せずに所持した まま保護申請した場合等がある。
ところで、自立支度金の性格は、外地残留による永年の労苦を慰謝する見舞金的なもの であり、引揚に伴う精神的打撃・苦痛・損害に対する補てん及び慰謝的なものであること、 また引揚者の場合着のみ着のままで帰還している実態であり、手当を支給されてもすぐに 鍋や釜の購入等の生活基盤の回復に当てられ、自立更生のためにも効果的であることから、 次 第8の3の(3)のオによって取り扱うこととされたい。
また自立支度金を費消せずに保護申請を行った場合についても、課 第8の53の取扱いに 準じて取り扱って差し支えない。
(問8-59)〔保護の実施機関の指導、指示による動産、不動産の売却〕 保護の実施機関の指導又は指示により、動産又は不動産を売却して得た金銭のうち 自立更生に当てられる額を収入として認定しない場合とは、どんな場合か。
また、活用すべき動産、不動産を所有しながら急迫等で保護を開始し、その後それ らの売却を指導し、又は指示した場合にも、収入として認定しない取扱いが認められ るか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-カ 課 第8-40 (答)前段については、次のような場合が考えられる。
(1)世帯構成の変動等のため、保有している動産又は不動産の保有条件が消滅したこと により売却を指導し、又は指示した場合 (2)保有している不動産が土地収用法の適用を受けることになった場合等に強制収用に よることなく、私的な契約によって売却するよう指導する場合 なお、被保護者が保有を認められている資産を任意に処分した場合は、この取扱い が認められないことは当然である。
後段については、当初から保有を認められず売却処分が前提となっている資産を保有し ているものである。 その売却収入は、法 第63条により費用返還させることが原則であり、 なお残余があれば収入として認定することになるものである。
ただし、この場合であっても当該世帯の援助方針等から判断して、自立更生の目的を達 成するために収入として認定しないことが特に必要となる例外的な場合には、当該世帯の 自立助長等を考慮した上で返還額を決定し、残余収入のうち世帯の自立更生計画のために あてられる額については、収入として認定しない取扱いをして差し支えない。
(問8-60)〔年1回の福祉的給付金〕 いわゆる福祉的給付金が年に1回支給される場合は、その全額を支給月の月額とし て扱うのか、それとも年額を12等分した額をもって月額とするものであるか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-ケ (答)12等分した額をもって月額とする。
(問8-61)〔在宅の高齢者を現に介護している家族に対して支給される金品の取扱い〕 地域支援事業の任意事業として実施される、在宅の高齢者を現に介護している家族 に対して、介護を行っていることの慰労として贈呈される金品の取扱いはどうするか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-ケ (答)その支給の趣旨に鑑み、次 第8の3の(3)のケによることとし、月額8,000円(年 額を12等分した額をもって月額として認定する。 )まで収入として認定しないこととして 差し支えない。
(問8-62)〔国民年金保険料のための貸付金の取扱い〕 年金受給権を得るために国民年金に任意加入する場合、保険料の前納や保険料の未 納分の納付を行うための貸付金は収入認定除外としてよいか。
〔参照〕局 第8-2-(3)-オ-(エ) (答)お見込みのとおりである。
なお、前納や未納分の納付が認められるのはあくまでも年金受給権を得るためのものに 限って認められるものであり、将来の年金額を増やすためのものは認められない。
4 勤労に伴う必要経費 生活保護法において、勤労収入は本来生活費にあてるべき資力であるが、収入認定の過 程においてその収入から交通費その他の収入を得るための必要経費を控除することとして いる。
控除の種類としては、通勤交通費、社会保険料、事業収入に係る原材料購入費、仕入代 や農業収入に係る種苗代等の実費控除、勤労に伴う増加需要に対応する基礎控除、特別控 除、未成年者控除、新規就労控除及びその他の控除とがある。
このうち、いわゆる、実費控除は、稼働収入に限らず収入一般に共通のものであり、収 入の種類に応じて当該収入を得るのに直接必要な経費を実費控除することになっている。
これに対し、勤労に伴う必要経費いわゆる勤労控除は、生活扶助基準が非稼働世帯を基 礎としていることから稼働に伴う生活需要の増加分を補てんするための必要経費として位 置づけられるものであるが、同時に勤労意欲の助長、自立助長という性格を併せ有してい る。
(1)基礎控除 基礎控除は、勤労に伴って増加する生活需要を補填することにより労働力の再生産を図 るとともに勤労意欲の助長を図ろうとするものであり、従来業種別基礎控除と収入金額別 基礎控除とによって構成されていた。 しかしながら、昭和60年12月の中央社会福祉審議会 の「稼働者と非稼働者の食費の支出の差がなくなっているとともに、家計に占める食費割 合の相対的減少傾向に伴い、勤労による追加栄養量の補填分は、ほぼ生活扶助基準で満た されている。 また、消費支出における職種間の職業的必要経費は、総体的に差がなくなっ ている。 」との意見具申を踏まえ、従来の職種区分を撤廃し、より勤労意欲増進のための 経費としての性格を強めるため、業種別と収入金額別の基礎控除を一元化するとともに、 控除額は収入金額に比例して増加する、いわゆる収入金額比例方式を採用することとした。
これは、一般低所得勤労者世帯の就労関連経費の支出状況を収入階級別にみると、収入 に比例して伸びており、特に、被服費等の必然的に必要となる経費よりも知識、教養の向 上等のための経費の伸びが顕著となっているため、控除額は収入金額に比例して増加させ、 その程度については、一般低所得勤労者世帯の就労関連経費の支出実態及び生活水準との 均衡を考慮して設定したものである。
また、同じ中央社会福祉審議会の「控除額の程度については一般世帯との均衡及び被保 護世帯全体の自立を促進するという観点に立ち、従来の個人単位から、世帯単位の収入合 算額に着目する方向で検討すべきである」との意見を踏まえ、同一世帯に複数の就労者が いる場合、これまでの個人単位から就労者間共通経費相当分を調整して算定する方式が導 入された。
(問8-63)〔不就労期間中の農業収入と基礎控除〕 農業収入が認定される月は基礎控除が適用されることになるが、当該適用を受ける 者が疾病等のため1か月以上の入院をした場合においても基礎控除は適用されるか。
〔参照〕次 第8-3-(4) 局 第8-1-(2)-キ 局 第8-3-(1) (答)適用できない。 農業収入を将来に向けて分割認定するのは、将来も同様の稼働状態 が継続することを前提として定められたものであり、基礎控除は控除を行う時点の就労状 態に対応して認定すべきである。 その後の事情に変更があればその変化に応じ、たとえば 入院に際しては医療費が支給され、在宅療養の場合では在宅患者加算が支給される等、そ の時点で必要に応じ適切な保護が行われることになる。
(問8-64)〔主業による収入のない期間の基礎控除〕 養蚕業に従事しているがまだその養蚕による収入は得ていない場合、他の年金等非 稼働収入から従事期間中毎月基礎控除を行って差し支えないか。
〔参照〕次 第8-3-(4) 局 第8-1-(2)-キ 問8-10 (答)収入を得るための必要経費の認定は、収入が現実にあってから事後的にその収入か ら控除することとされているので、単に養蚕業に従事しているというだけでは、たとえ他 に年金収入があってもその収入からの控除は認められず、その必要経費がなければ、その 収入が得られなかったであろうという収入と必要経費との間に密接不離の因果関係がある 場合にのみ認められるものである。
なお、農業収入、養蚕収入等の季節的事業収入が平均月割額によって認定される理由も、 一括認定すると月々認められている基礎控除が認定できない不都合があるので、平均月割 額による収入充当額から基礎控除を認定することによって結局これが次の再生産のための 必要経費としての役割を果たすという周期関係が考慮されているものである。
(問8-65)〔現金収入の伴わない就労の場合〕 例えば、家賃不要の代償として月間10日程度農業手伝いをする場合等、現金収入の 伴わない労働に従事する者の基礎控除は如何に取り扱ったらよいか。
〔参照〕次 第8-3-(4) 局 第8-3-(1) (答)金銭収入がまったくない場合は、基礎控除の認定ができないので認められない。
また、他の世帯員に現金収入があっても、その収入から農業手伝者の基礎控除を行うこ とも、収入と控除との間に必要とされる因果関係がないので認められないものである。
(問8-66)〔一日一食程度以下の給食付稼働の場合の基礎控除〕 一日一食程度以下の給食を受けて稼働している場合の基礎控除の取扱い如何。
また、給与から給食費の負担分を控除されている場合の収入充当額の認定方法如何。
〔参照〕局 第8-3-(1)-イ 課 第8-46 (答)一日一食程度以下の給食付稼働の場合の給食は、収入として取り扱わないこととさ れているので、稼働収入そのものに対応して基礎控除額を計上することとされたい。
ただし、給与から給食費を控除されている場合は、その控除された給食費相当額を収入 に含めて認定することとされたい。
(問8-67)〔賞与支給月における基礎控除の算定方法及び賞与の分割認定月数〕 賞与等の臨時収入のあった月における基礎控除額の算定において、定期収入に、局
〔参照〕局 第8-3-(1)-ア (答)いずれもお見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問8-68)〔基礎控除に対応する収入額〕 局 第8の3の(1)のイによると、基礎控除に対応する収入金額別区分は、通勤費 等の実費を控除する前の収入額をもって認定することとされているが、次 第8の3の (1)のアの(イ)によると、必要経費として社会保険料、所得税、労働組合費、通 勤費等は控除し得ることになっている。 この場合の収入額は、これら源泉徴収される 諸経費の全てを控除する前の給与総額をさすものであるか。 又は、いわゆる手取収入 から通勤費等のみを控除する前の収入をさすのか。
〔参照〕次別表 局 第8-3-(1)-イ (答)源泉徴収される諸経費の全てを控除する前の給与総収入額によることとされたい。
(問8-69)〔高校就学者の稼働収入と基礎控除〕 高等学校等で就学しながら保護を受けることができるものとされた者の就労収入に 係る基礎控除の適用は、就労収入の総額について適用するものか、それとも就労収入 からその者の高等学校等就学費の支給対象とならない経費及び高等学校等就学費の基 準額で賄いきれない経費であって、その者の就学のために必要な最小限の額に相当す る額を除外した額に対して適用するものであるか。
〔参照〕次 第8-3-(3)-ク 局 第8-3-(1)-ア 局 第8-3-(1)-イ (答)就労収入総額について適用することとされたい。
(問8-70)〔出かせぎ者等のいる世帯の基礎控除の認定〕 世帯員が2人以上就労している世帯で、1か月を超える期間出かせぎをする者がい る場合、基礎控除の認定はどのように行うのか。
〔参照〕局 第7-2-(1)-エ 問1-14 問7-1 問8-85 (答)世帯員が2人以上就労している場合の2人目以降の基礎控除額は、勤労に伴う必要 経費のうち共通経費相当分を調整したものである。
設問のように、出かせぎ等により1か月を超える期間他の世帯員と所在(居住)を異に する就労者については、仮ではあるが独立した生活を営んでいるものであり、勤労に伴う 必要経費も就労人員1人の場合と同様に必要となることから、当該者の基礎控除の認定に 当たっては、基礎控除額表の1人目の欄を適用することとなる。 また、当該世帯のその他 の就労者については、世帯に残った世帯員の数に応じて基礎控除を適用するものである。
なお、特別控除の適用についても同様である。
(2)特別控除 基礎控除が経常的職業経費を対象とするのに対し、特別控除は、臨時的職業経費に対応 するものである。
職業経費の中にも月々生ずる経常的なものと作業衣等の被服や雨具あるいは臨時組合費 のように毎月は必要としないが年に1、2回必要とするものがある。
特別控除は、このような臨時的需要に対応するものである。 特別控除の額は、収入が多 くなるにつれて職業的必要経費の需要も多くなるという考え方から年間収入に比例させる こととし、その1割額を限度として必要な額を認定することとしている。 しかし、最低生 活の保障という制度の基本的な制約から次官通達に示す額を限度としているが、年収の1 割額がこの限度額を超える者について就労の状況が良好であると認められる場合には、そ の就労意欲を助長するという観点から限度額の1.3倍まで認定できることになっている。
特別控除は、一般勤労世帯においてこのような臨時的需要の充足が賞与等の臨時収入の ある時期に行われる実態にあることから、原則として臨時収入のあった時期等年1回ない し数回に分けて行うこととしているが、収入の形態、臨時的需要の充足方法等からして毎 月控除することが適当な場合には、各月に分割して控除することもできることになってい る
(問8-71)〔自営業者の特別控除〕 自営業を営んでいる被保護者であって、臨時的経費の実際の所要額が、特別控除の 限度額以下であると認められるときは、現に必要と認めた額を特別控除するにとどめ てよいか。
〔参照〕次 第8-3-(4) 局 第8-3-(2) (答)特別控除は年間を通じて定める額の範囲内で行うべきものであるから、就労収入を 得ている被保護者の臨時的職業必要経費が特別控除の限度額以内で賄われることが明らか である場合、その限度で特別控除を行うことが、保護の目的達成上妥当であって、勤労意 欲を阻害しないかぎり、お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
すなわち自営業を営んでいる場合の職業経費は、当該事業収入からの必要経費としてそ の実費が控除されることとなっているので、特別控除の適用は、個々のケースの実態に応 じて、取り扱わなければならない。
(問8-72)〔内職をしている者の特別控除〕 内職等の収入が少額の場合で、その者が努力して就労している場合には、収入の1 割を特別控除として認定してよいか。
〔参照〕局 第8-3-(2)-ア (答)安定した内職であれば基礎控除、特別控除とも認められる。
ただし、収入額の1割を機械的に適用することは、特別控除本来の趣旨に反するもので あるので、就労状態をよく観察し、他の者との均衡を考慮して認定することとされたい。
(問8-73)〔被用者の場合の特別控除〕 被用者の特別控除の認定において、年間収入の1割又は特別控除限度額の1.3倍の 適用に当たっては、就労の指示に従わないとか、特に問題のあるケースを除き、統一 的に取り扱うこととしてよろしいか。
〔参照〕局 第8-3-(2)-ア (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問8-74)〔特別控除の認定限度額〕 年収の1割の額が、特別控除の限度額を超えるときは、限度額の1.3倍まで控除で きることとされているが、その場合でも、年収の1割を超えることはできないものと 解してよいか。
〔参照〕局 第8-3-(2)-ア (答)年収の1割相当額が特別控除限度額を超える場合であって就労状態が良好であると 認められるときは、年収の1割を超えても、限度額の1.3倍まで認定して差し支えない
(問8-75)〔特別控除対象となる収入年額と保護停止期間中の収入〕 特別控除の対象となる収入年額は、毎年1月から12月までの間における保護受給期 間について収入認定上の基礎となった就労による収入総額をいうものとされている が、これは保護停止期間の就労収入についても算入できるものとされてよいか。
〔参照〕局 第8-3-(2)-ア 課 第8-28 (答)お見込みのとおりである。
(問8-76)〔臨時収入のない者の特別控除〕 特別控除は、臨時的収入が期待できない者については、何を標準として適用すべき か、それとも一律に毎月控除しなければならないのか。
〔参照〕局 第8-3-(2)-ウ 課 第8-15 課 第8-44 (答)特別控除は、臨時収入のあった場合等適宜の時期に年間控除額を1回ないし数回に 行うことを原則とすることとなっているが、臨時的収入のない者については、収入の実態 に応じて特別控除を考慮して差し支えない。 ただし、一律に毎月控除することは必ずしも 本来の趣旨に合致するものではないので、その点については、特に留意し取り扱われたい。
(問8-77)〔特別控除の夏冬の配分〕 特別控除を盆及び歳末の2回に措置する場合に、ほぼ同額ずつとすることは認めら れないか。
〔参照〕課 第8-16 (答)課長問答通知では、この場合「おおむね、1対2の比率によることが一応の基準と して考えられる」といっているが、実施機関がほぼ同額ずつとすることが適当であると判 断する場合にはそのように取り扱って差し支えない。
(3)新規就労控除 中学、高校卒業後新たに就職する場合には、就職時の臨時的な需要に対しては就職支度 費をもって対応することになるが、就職後においても当該職場に適応するまでの間身の回 り品の確保等特別の需要があることから、これに対応するとともに、卒業後も世帯に残っ て家計を助けて働いている者の勤労意欲を助長し、その自立助長を図ろうとするものであ る。
なお、入院その他やむを得ない事情のため長期間就労できなかったものが、就職する場 合にも同様の事情があるので、この控除が適用される。
(問8-78)〔日雇就労者が常用勤労者になった場合〕 日雇就労者が、工場等に就職した場合、新規就労控除を適用してよいか。
〔参照〕局 第8-3-(3)-ア (答)局 第8の3の(3)のアの(ア)又は(イ)のいずれにも該当しないため、設問の 場合については新規就労控除の適用は認められない。
(問8-79)〔入院前の職場への復職〕 長期入院患者が退院した後において、入院前の職場に復帰した場合、新規就労控除 を適用してよいか。
〔参照〕局 第8-3-(3)-ア-(イ) (答)長期入院患者(おおむね3年ぐらいの入院患者)である限り、新規就労控除を適用 して差し支えない。
(問8-80)〔在宅患者等の就職〕 新規就労控除の適用に当たって、3年以上の在宅患者及び3年以上拘禁されていた 者が就職した場合にも認めてよいか。
〔参照〕局 第8-3-(3)-ア-(イ) (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問8-81)〔就労中断後の再適用〕 新規就労控除適用中の者が6か月の控除認定期間中に1か月以上の入院その他やむ を得ない事情により、一旦就労がとだえ結果的に6か月の当該控除がなされなかった 場合で、その後1年以内に再就労し、稼働収入を得たときは、当初の当該控除の未適 用月分(既控除と合わせて6か月)を引き続き控除することとしてよいか。
〔参照〕局 第8-3-(3)-イ (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(4)未成年者控除 未成年者は、将来自分の力で社会に適応した生活を営むことができるように、教養その 他健全な生活基盤を確立するための特別の需要を有している。 未成年者控除は、こうした 需要に対応し、あわせて未成年者の勤労意欲を助長するとともに、本人及びその世帯員の 自立意欲を助長することをねらいとして一般の勤労控除に加えて就労収入から控除しよう とするものである。
(問8-82)〔未成年者控除適用者が成年に達した場合〕 未成年者控除の適用を受けていた者が成年に達したため、翌月から認定の変更を行 う場合、未成年者控除を廃止するだけでよいか、それとも基準生活費についても変更 すべきか。
〔参照〕次 第8-3-(4) 局 第8-3-(4)-イ 局 第10-1 (答)設問の場合、未成年者控除を適用しないこととなるが、生活扶助基準額については 年齢の改定は要しない。
(問8-83)〔未成年者だけの世帯〕 未成年者が収入のない弟妹と世帯を構成している場合、未成年者控除を適用してよ いか。
〔参照〕局 第8-3-(4)-ア (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問8-84)〔未成年者が2人以上の場合〕 同一世帯で未成年者控除を受ける者が2人以上いる場合、相当な額が控除されるが、 他の保護世帯との均衡を考慮する必要はないか。
〔参照〕次 第8-3-(4) 局 第8-3-(4) (答)未成年者控除は、就労している未成年者という事情を考慮して、勤労意欲の助長と いう面からも設定されているものであるので、個々の未成年者ごとについてそれぞれ未成 年者控除を適用しなければならないものである。
(5)その他の必要経費 収入を得るための必要経費としては、いわゆる実費控除、勤労控除のほかにもその収入 との因果関係、その世帯の自立を助長するという観点から特別の控除が認められている。
例えば、出かせぎについては、世帯を離れて生活する等一般生活費を超える経費を必要と する場合があることから、その超える部分を収入を得るための必要経費として控除するこ とも認められている。 また、自立更生のための借入金の償還金については、生業資金等当 該借入金による事業の果実としての収入からの控除のほか修学資金、住宅資金等直接収入 の増加につながらないものについても自立助長の観点から一定の要件の下に控除を認めて いる。
なお、償還金の控除を認めることは、その分につき扶助費が結果的に増額することにな り、結果として分割払いで扶助の対象とするのと同様の効果が生じることにもなるので、 その運用に当たっては、特定の公的貸付金制度以外のものについては、借入れについてあ らかじめ実施機関の承認を受けたものであることを原則としている。
(問8-85)〔出かせぎ者がいる世帯の保護の決定と必要経費の認定〕 出かせぎ者の場合、残った世帯員だけについて保護を適用し、出かせぎ者について は、別世帯として取り扱い、仕送り収入の認定を行って、帰ったときに世帯員の変動 として変更決定を行うこととしてよいか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-ア 局 第1-1-(1) 局 第8-4-(1) (答)出かせぎ者については、居住の場所を異にしていても同一世帯として認定すること となっているので、その世帯の保護の決定は、出かせぎ者を含めて基準生活費を算定し、 残存世帯員の収入のほか、出かせぎ者の収入についても、勤労控除その他の各種控除と必 要経費を控除して扶助額を算定するのが原則である。
しかし、出かせぎに要する費用は、一般生活費及び住宅費の実際必要額を認めることと なっているので、出かせぎ者が、出かせぎ先で得た収入からその実際必要額を引いた残額 が仕送りとなると解すれば、上記の原則どおりの方式も設問の方式も同じ結果同じ扶助額 になるわけであるから、実際上、やむを得ない場合は出かせぎ者を別世帯として扱って差 し支えない。 このやむを得ない場合としては、出かせぎ先が不安定で実態がつかみにくい 場合で仕送りの額が他の出かせぎ者の場合に比べて概ね妥当とみられるときなどが例示と してあげられる。
(問8-86)〔帰省に要する交通費の認定〕 同一世帯員と認められている者が、勤務の都合上、他の地域で下宿している場合に 帰省に要する交通費は就労に伴う必要経費とみてよいか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-ア (答)就労に必要な交通費として最低限度必要な実費を当該下宿者の収入から控除して差 し支えない。 しかし、出かせぎ先が遠隔地等のため多額の交通費等を必要とする場合が多 いので、出身世帯との関係からみて帰省の程度等を十分に考慮し、社会通念上からも、真 に必要な最少限度の回数にとどめるべきである。
(問8-87)〔幼児を知人に委託して看護師宿舎に宿泊する者〕 世帯主、妻及び幼児の3人世帯において、世帯主は入院し、妻は看護師であって看 護師宿舎に宿泊しなければならない。 また、そのために幼児の保育を知人に委託して いる。 このような場合の看護師宿舎において支払う経費(食費を含む)及び幼児の託 児費は、必要経費として収入から控除してよいか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-ア 次 第8-3-(5)-イ 局 第8-4-(1) 課 第8-48 (答)設問のように看護師宿舎を利用しなければならない状況においては、居宅における 最低生活費の枠を超える出費も予想されるので、それが収入を得るためにどうしても必要 である場合には次 第8の3の(5)のアにより必要経費として認定して差し支えない。 託 児費については、お見込みのとおりである。
(問8-88)〔隣人への託児〕 就労に伴う子の託児費の必要経費としての控除は、近所の家に依頼していくときの 礼金についても認められないか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-イ 局 第8-4-(2) 課 第8-48 (答)就労に伴う子の託児費の必要経費としての控除は、保育所等乳幼児を保育すること を目的とする施設に託児する場合に限らず、設問のように、知己等に依顔する場合の礼金 についても適用して差し支えない。 その程度は、乳児等手のかかる場合もあるので一概に 定めることはできないが、当該地域の慣行託児料の範囲内で認めて差し支えない。
(問8-89)〔季節保育所への委託〕 季節保育所に幼児を委託する場合、その託児費を必要経費として控除して差し支え ないか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-イ 局 第8-4-(2) 課 第8-48 (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問8-90)〔幼稚園への託児〕 保育所の設置数は少ないが幼稚園が普及しているという地域において、被保護世帯 の子弟にも通園者が増加している実態にある場合、幼稚園に要する費用を「就労に伴 う託児費」として世帯の収入から控除して差し支えないか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-イ 局 第8-4-(2) 課 第8-48 問8-91 (答)設問のように幼稚園教育の普及している地域であって通園することが近隣との均衡 を失しないものであり、保育所の利用ができず、かつ、子供を通園させることが世帯員の 就労等自立助長のために保育所の代替として効果的であることが認められる場合には、お 見込みのとおり取り扱って差し支えない。
なお、この場合、保育所入所支度費の範囲内で、入園支度費を就労に伴う必要経費とし て認定して差し支えない。
(問8-91)〔保育所入所支度費対象品目の範囲〕 保育所入所支度に要する費用を必要経費として認める場合、どのような品目の購入 を認めてよいか。
〔参照〕課 第8-48 問8-92 (答)入所支度のための購入品目は、帽子、スモック、ズック、弁当箱、箸入れ及びカバ ンを認めることとされたい。
なお、昼寝用の布団及び毛布は保育所が用意する建前となっており、控除の対象とする ことは認められないので留意されたい。
(問8-92)〔スモック等が消耗した場合〕 保育所入所の際購入したスモック等が消耗した場合には、その更新に要する費用を 就労のための託児費として認定して差し支えないか。
〔参照〕問8-91 (答)認められない。 入所支度費は、保育所入所による臨時的な特別需要に対応させるも のであり、入所以後におけるスモックの更新等に要する費用は、当然予測すべき、かつ、 経常的な需要であるので一般生活費で賄うべきものである。 したがって、控除の対象とす ることは認められない。
(問8-93)〔土地改良区の分担金〕 土地改良法に基づく農地造成事業のための土地基盤設備資金を土地改良区が借り入 れて農地の構造改善を実施した場合、土地改良区は関係組合員から分担金を徴収する ことになるが、この分担金を貸付資金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当て られる額の償還金と同様に収入から控除する取扱いとしてよいか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-ウ 局 第8-4-(3)-イ 問8-15 (答)設問の分担金は、法人たる土地改良区がその組合員に対して行う賦課金であるが、 その徴収について免除又は猶予が得られないものであって、かつ、土地改良区において実 施する農地の構造改善が、被保護者たる組合員の自立更生のために役立っていることが認 められる場合は、その徴収金をその者の農業収入から控除することとして差し支えない。
(問8-94)〔保護開始前に借り受けた貸付金の償還金控除〕 局 第8の4の(3)のイのただし書きにいう「事前の承認を受けなかったこと」に は保護受給前に貸付けを受けたものも含むと解して差し支えないか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-ウ 局 第8-4-(3)-イ (答)局 第8の4の(3)のイのただし書きの規定は、当該貸付けを受けた時期が保護受 給前であったか、受給中であったかは問わない。 要は、事後において承認することが適当 かどうかである。 仮に、当該要保護者が貸付けを受けるについて事前に実施機関に相談が あったものとした場合、これを実施機関が適当なものとして当然事前の承認を与えたであ ろうと判断されるものについては、事後において承認することが適当なものとして同様に 取り扱って差し支えないのである。
(問8-95)〔保護開始前の借金〕 生活扶助と医療扶助の併給を受けている甲は、保護が開始される前にその子の病気 のための医療費3万円を勤務先の工場主から借りていた。 この金は毎月の給料より2 千円ずつ差し引かれていることが後に判明したが、工場主に話しても説得することが できず、これを争うことは甲の将来の勤務に著しく不利益を与える結果となることが 明白な状態に立ち至った。 この場合の収入認定において借金の分を必要経費として控 除することはできないか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-ウ 局 第8-4-(3) (答)過去の債務に対する弁済金を収入から控除することは認められない。 その理由は、 もしそのような措置を認めるならば、保護を受ける以前における個々人によって異なる程 度に営まれてきた生活までも、本法によって保障することとなり、保護を要する状態に立 ち至ったときから将来に向ってその最低限度の生活の維持を保障せんとする本法の目的か ら著しく逸脱することになるからである。 収入を得るために必要な経費として収入から控 除することができる場合は、定期収入の中の勤労収入については「実施要領」にその範囲 が定められているところであって、たとえこの債務を弁済しないことが収入の維持のため に支障となる場合であっても、そのような理由でこれと同様にみなすことはできないので ある。 ただし、保護の実施機関の事前の承認を受けなかったことについてはやむを得ない 事情があり、かつ、当該貸付金が現にその者の自立助長に役立っていると認められるもの については、控除の途が開かれている。 しかし、設問の医療費について考えてみると、仮 に実施機関に対して貸付けを受けるについて事前の承認を求めていれば、実施機関は、当 然公の貸付制度の利用を指導するはずである。 したがって、医療費に関しては国又は地方 公共団体以外の法人又は私人からの貸付金利用は、一般的に考えられないので「実施機関 が事後において承認することが適当なもの」には当たらないものとして取り扱われたい。
また設問の場合は、労働基準法 第24条の賃金は原則的にその全額を支払うべき旨の規定に 反しているものであって、このような場合にこそ保護の実施機関におけるいわゆるサービ スの要請される分野があるのであるから、十分な理解と協力が得られるよう積極的に努力 すべきことが望まれる。
(問8-96)〔事業を失敗した場合の生業資金の償還金〕 生業資金の貸付を受けた後、その事業に失敗し、日雇労働者として収入をあげるよ うになったものについて償還金の控除を認めてよいか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-ウ 局 第8-4-(6) (答)生業資金の償還金の取扱いについて、事業の失敗等により他の事業を営んでいる場 合において、他の事業に係る資金の全部又は一部が当該貸付金により賄われているときに 限り、変更した事業の収入から控除して差し支えないものとされている。 日雇労働者とし て就労することは、貸付資金により事業の資金を賄っているものとは解されない。 したが って、償還金の控除は認められない。
(問8-97)〔交通事故による罰金の取扱い〕 甲は医療扶助の単給を受けている世帯の世帯主で、タクシーの運転手をしていたが 交通事故のため即決裁判により罰金に処せられた。 罰金は雇主が毎月の給料から差引 くことを条件に立替払をしてくれたので就業を続けることはできた。 この場合立替金 を、収入を得るための必要経費として認定してよいか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-ウ 局 第8-4 (答)設問の論点は、次の2点に要約される。
1 罰金を支払うということは、今後運転手としての生業を維持していくために必要不可 欠であるから必要経費として認定できるのではないか。
2 本法の取扱い上借金の返済は認めないとしても、雇主の支払ってくれた額は甲のため にその急場をしのぐための立替払であって通常の借金と軌を一にして論ずべきではない のではないか。
したがって必要経費として認定することはできないものである。
(問8-98)〔独立行政法人住宅金融支援機構への償還金〕 独立行政法人住宅金融支援機構法による貸付資金を償還する場合であって、当該住 宅の活用により得られる収入の月額が独立行政法人住宅金融支援機構への償還金の月 額より多いとき、自立助長を促進する意味で償還金を繰上げ償還することを認めてよ いか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-エ 局 第8-4-(4) (答)設問の償還金は、決まって償還すべき最少限の額にとどめるべきものであり、繰上 げ償還は認められないものである。
(問8-99)〔固定資産税の取扱い〕 自家保有の保護世帯で、固定資産税が賦課されている場合、住宅扶助費として相当 額を扶助すべきか、収入から控除すべきか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-オ (答)固定資産税は貧困により公私の扶助を受ける者等については市町村の条例の定める ところによりこれを減免することができる(地方税法 第367条)こととされている。 した がって被保護世帯について当該措置がとられていないような場合は関係官署と連絡をとっ て免除を受けるよう指導すべきである。
しかしながら、市町村の条例に所定の定めがない等免除の措置がとられない場合であっ て、被保護世帯が間貸収入等で固定資産税を納付したときは、納付した税額相当額を収入 から控除すべきである。 収入がないような場合に限って住宅扶助費として扶助することと なるが、この場合、納付した事実の確認を怠ることのないよう留意すべきである。
(問8-100)〔開始前に取得した作業場の税金〕 地方税等の公租公課は「その他の必要経費」として収入から控除することが認めら れているが、被保護世帯が保護開始前に取得した非住家(作業場等)に係る不動産取 得税についても、必要経費として認定してよいか。
〔参照〕次 第8-3-(5)-オ (答)その非住家(作業場等)を所有することが近隣の低所得世帯との均衡を失しないも のであり、かつ、その作業場等を活用することによって当該世帯が収入を得ている場合に は、お見込みのとおり取り扱って差し支えない。
(問8-101)〔原動機付自転車等の容認総排気量と必要経費の範囲〕 就労に必要な原動機付自転車等の購入費が就労のための必要経費として認められて いるが、どの程度の総排気量が認められるか。 また保有のための必要な経費として控 除できる範囲を教示されたい。
〔参照〕課 第8-23 (答)ここで認められる原動機付自転車の総排気量は、50cc程度に限られたい。 ただし、 山間部などで特に必要と認められる場合は、90ccまで認めて差し支えない。
また、保有のための必要経費としては、原動機付自転車の場合は、修理代、燃料費、自 動車損害賠償保障法に基づく自動車損害賠償責任保険の保険料、任意保険料の対人・対物 賠償分、軽自動車税及びヘルメット代を、自転車の場合は、修理代、防犯登録料、駐輪場 代、個人賠償責任保険料を認めて差しつかえない。
(問8-102)〔交通災害共済制度の保険料〕 地方公共団体が実施している交通災害共済制度に、被保護者が加入した場合、保険 料(掛金)の取扱いはどうしたらよいか。
〔参照〕次 第8-3-(5) 局 第8-4 (答)生活保護の給付として特別にこれを保障することはもとより、当該被保護者の収入 から控除することも、認められない。 最低生活上のやりくりによって賄うべき性質のもの である。
なお、生活保護の相談窓口に来所する者は、保護の受給要件や生活保護制度の内容につ いて知識を有しない場合が少なくないため、保護の実施機関は面接相談の場でこれら制度 の内容をよく説明し、十分な理解を得ることが必要である。 また、相談者の状況をよく聴 取し、他法他施策の活用が可能な者については他法他施策の担当者に引き継ぐなど、その 活用について必要な助言を行うことも重要である。 このようなことから、保護の申請に先 立ち面接相談を行うことは、保護の申請権の侵害に当たるものではない。 ただし、いかな る場合においても、本人から保護申請の意思が表明された場合には、速やかに申請書を交 付するなどの対応が必要である。
(問9-1)〔口頭による保護の申請〕 生活保護の申請を口頭で行うことは認められるか。
〔参照〕法 第7条 法施行規則 第2条 法 第24条第1項 (答)生活保護の開始申請は、必ず定められた方法により行わなくてはならないというよ うな様式行為ではなく、非様式行為であると解すべきであるとされている。 法施行規則第 2条 第1項においては「保護の開始又は保護の変更の申請は、…(中略)…書面を提出し て行わなければならない」と規定しているものの、当該規定も書面による申請を保護の要 件としているものではないと考えられる。 したがって、申請は必ずしも書面により行わな ければならないとするものではなく、口頭による開始申請も認められる余地があるものと いえる。
一方で、法 第24条第1項は「保護の実施機関は、保護の開始の申請があったときは、保 護の要否、種類、程度及び方法を決定し、申請者に対して書面をもって、これを通知しな ければならない」としているなど、保護の申請は実施機関側に一定の義務を課すものとな っている。
確かに前記のとおり、申請者の提出事態は保護の要件ではなく、一般論としては口頭に よる保護申請を認める余地があるものと考えられるが、保護の決定事務処理関係や、保護 申請の意思や申請の時期を明らかにする必要があることからも、単に申請者が申請する意 思を有していたというのみでは足らず、申請者によって、申請の意思を明確に表示するこ とにより、保護申請が行われたかどうかを客観的に見ても明らかにしておく必要がある。
したがって、口頭による保護申請については、申請を口頭で行うことを特に明示して行 うなど、申請意思が客観的に明確でなければ、申請行為と認めることは困難である。 実施 機関としては、そのような申し出があった場合には、あらためて書面で提出することを求 めたり、申請者の状況から書面での提出が困難な場合等には、実施機関側で必要事項を聴 き取り、書面に記載したうえで、その内容を本人に説明し署名捺印を求めるなど、申請行 為があったことを明らかにするための対応を行う必要がある。
なお、申請にあたって提出された書類に必要事項さえ記載されていれば、たとえそれが 定められた申請書によって行われたものでなくても、有効となるので留意が必要である。
(問9-2)〔代理人による保護の申請〕 代理人による保護の申請は認められるか。
〔参照〕法 第7条 法 第25条 (答)民法における代理とは、代理人が、代理権の範囲で、代理人自身の判断でいかなる 法律行為をするかを決め、意思表示を行うものとされている。 これに対して生活保護の申 請は、本人の意思に基づくものであることを大原則としている。 このことは、仮に要保護 状態にあったとしても生活保護の申請をするか、しないかの判断を行うのはあくまで本人 であるということを意味しており、代理人が判断すべきものではない。 また、要保護者本 人に十分な意思能力がない場合にあって、急迫した状況にあると認められる場合には法第 25条の規定により、実施機関は職権をもって保護の種類、程度及び方法を決定し、保護を 開始しなくてはならないこととなっている。
以上のことから代理人による保護申請はなじまないものと解することができる。
なお、本人が自らの意思で記載した申請書を代理人が持参した場合については、これは 代理ではなく、使者として捉えるべきであり、そこで行われた申請は有効となるので留意 が必要である。
この保護行政処分には、却下、開始、変更、停止及び廃止の5種類がある。 このうち開 始については、法 第7条により本人の自由意思による申請を待って行うのを原則としてい るが開始以後の取扱いについては申請又は職権により生活実態の変化に応じ、必要な処分 が行われることになる。
1保護の要否及び程度の決定 保護の実施に当たっては、まず、保護を要するか否かを判定し、保護を要するとされた 場合には保護の方法、種類、程度等が決定されることになる。 通常この保護を要するか否 かの判定を保護の要否の判定と、月々どの程度の保護を要するのかの決定を保護の程度の 決定と呼んでいる。
保護の要否の判定は、保護の受給要件を満たしているか否かの判断であり、単に生活に 困窮していることのみに止まらず、資産、能力の活用その他法に定める義務の履行も要件 となるが、程度の決定と比較する場合には、生活困窮度の測定の意味で用いられる場合が 多い。
保護の要否の判定及び程度の決定は、ともに最低生活費と収入充当額との対比によって 決定される。 すなわち、収入充当額が最低生活費に満たない場合に保護要と判定され、そ の不足分が扶助されるわけである。
このように要否の判定と程度の決定は、基本的には同様であるが、両者の性格上最低生 活費及び収入充当額の算定方法及びその対比の方法について若干相違がある。 その主なる ものをあげると次のとおりである。
1 常用勤労者の収入については、前3か月間の平均月額を基に算定するのを原則として いるが、開始時の要否判定について、労働協約等により賞与等を含む年間収入が確実に 推定できる場合には、年間収入の平均月額を基に収入充当額を算定することとなってい る。 (局 第10-2-(1)) 収入にしろ最低生活費にしろ月によって臨時的な要素等による変動が予想されるとこ ろである。 程度の決定に当たっては、その月々の最低生活を保障する意味からこうした 月々の変化に対応し、その月の最低生活費と収入との対比により保護の程度を決定する のが原則である。 しかしながら、保護の要否の判定すなわち保護を要する程度に生活が 困窮しているか否かの判断は、こうした月々の変動をある程度の期間を通じて平均化し て判断することが必要となる。
例えば、1年12か月のうちある月だけたまたま収入が少なく最低生活保障水準を下回 るとしても、数か月あるいは年間を通じてみた場合には最低生活保障水準を上回る収入 があるという場合には保護を要しないと判断されるわけである。
このことは、一般国民の消費生活においても、賞与等あらかじめ予定される臨時的収 入がある場合には、これを含めて計画的に営まれているという実情に対応するものであ る。
2 医療予定期間が4か月未満の短期傷病による医療扶助のための保護の申請があった場 合の要否判定においては、当該医療予定期間に2か月を加えた期間の最低生活費と収入 との対比により判定することとされている。 (局 第10-2-(3)) 考え方は、1と同様である。 すなわち、ある月に臨時的な出費(需要)の発生により その月の収入のみでは賄い得ない場合には、ある程度の期間のやりくりによりカバーさ れるのが一般的であるから、このような場合にも、3~6か月間の期間を通算して要否 を判断しようとするものである。
3 恩給年金等受給者に係る開始時の要否判定及び保護継続中の程度の決定は、その平均 月額をもって判定するが、開始月から次回受給月までの程度の決定に当たっては、開始 時において現に残存している恩給年金等の額により算定すること。 (課 第10-10) 恩給や年金は、年額を年数回に分けて2か月分なり4か月分をまとめて支給する仕組 みになっている。 年金生活者等はこれにより月々の生活需要を賄っているわけであるか ら、こうした消費の実意をも考慮し、要否の判定に当たっては受給月のみの収入とせず、 次回受給月の前月までに分割して認定することとしている。
しかしながら保護開始時においては、まとめて支給された2~4か月分の年金を使い 果たしてから保護を申請する場合も多く、このような場合に年金等を収入として認定し たのでは次回受給月までの間における生計の維持に支障をきたすことにもなりかねな い。 そこで、かかる特例を設け開始時における程度の決定に限り現に残存している年金 等の額を収入認定の対象とすることとしたものである。
4 保護開始時の要否判定に係る最低生活費の認定及び収入認定に係る控除の適用に当た り表に掲げる臨時的需要に対応するもの及び主として自立助長を目的とするものは適用 されないとされている。 (局 第10-2-(1)、課第10-4) (1)要否判定に際して臨時的需要を最低生活費に計上しないのは1及び2と趣旨を同じ くするものである。 すなわち、臨時的、突発的需要については、一般国民の消費生活 においても日頃の蓄積あるいは月賦等によりある程度の長期的なやりくりの中で対応 しているのが実態であり、また被保護世帯についても需要により多少異なるが例えば 被服費等の一時扶助は経常的最低生活費のやりくりで賄うことが期待できないような 臨時的特別の状態に着目して現物給付等により支給しようとするもので、生活に困窮 しているか否かの要否の判定基準というよりも被保護者がかかる特別の状態におかれ た場合の支給基準としての意味合いが強い。
なお、臨時的な需要については、そのすべてを要否判定の外におくということはな く、出産、葬祭費については、要否判定に用いることとしている。 (表参照) (2)最低生活費の費用及び収入に係る控除について、その主たる目的により本制度の目 的である最低生活の保障と自立の助長の二つに分けて考えた場合に最低生活の保障に 関する部分は、法 第8条第2項にいう「最低限度の生活の需要」としてすべての要保 護者に等しく保障されなければならないが、自立助長を主眼とするものは、現に保護 を受けている被保護者を対象にし、その自立を助長するため、この最低生活需要に対 し、プラスアルファとして上乗せされたものであるから、生活困窮であるか否かの判 断たる開始時の要否判定には用いないこととしている。
こうした観点から自立助長のための制度である生業扶助については開始時の要否判 定には用いないこととなっているが、一方法 第17条により「生業扶助は、困窮のため 最低限度の生活を維持することのできない者又はそのおそれのある者に対して‥…」 とおそれのある者までも対象とし得ることとなっており、授産施設利用者についてこ の規定を受けた要否判定の特例が設けられている。 (局 第10-2-(6)-ウ) 最低生活の内容需要の形態保護の基準 収入の認定 最低生活の内容日常一般の生活扶助(基準生活費、加算、基礎控除の70%要否判定 からみて狭義の経常的経費 入院患者日用品費) の額 に用いる 需要に属するも 教育扶助(学用品費、教育費、必要経費の実費 の 交通費) 控除 住宅扶助(家賃、間代、地代)出かせぎ者等の 医療扶助 実費控除 子の託児費 公租公課 季節的経費教育扶助(教科書、副読本代) 臨時突発的出産扶助 経費 葬祭扶助 生活扶助(移送費、被服費、 要否判定 家具什器費、配電水道設備 に用いな 費) い 住宅扶助(敷金、住宅維持費) 最低生活の内容日常一般の生活扶助(ひとり親世帯就労基礎控除の30% からみて自立助経常的経費 促進費) の額 長等行政運営上 生業扶助(高等学校等就学費)未成年者控除 の配慮から特に 設けられたもの季節的経費期末一時扶助 特別控除 生業扶助(就職支度費) 新規就労者控除 臨時突発的生業扶助(生業費、技能習得不安定就労控除 経費 費) 現物500円控除 貸付金の償還金 控除
(問10-1)〔交通事故と生活保護〕 交通事故の被害者で傷病のため入院したものから、生活保護法による保護の申請が あった場合、どのように取り扱えばよいか。
〔参照〕昭47.12.5社保 第196号課長通知 問8-55 (答)交通事故の被害者からの保護の申請があった場合の取扱いについても、一般の例と かわりない。 すなわち、当該事故について損害賠償等が得られない場合であっても本人や その世帯員の収入資産等の状況、あるいは扶養義務者からの援助の可能性等からみて、保 護を要しないと判断されれば保護の申請は却下されることになる。 あるいは、収入その他 の資力の点からいえば医療扶助を決定すべき状況であっても、当該事故についての損害賠 償等を受けることができるとき(受けることが容易に期待できる場合を含む。 )当該賠償 収入(期待される賠償収入を含む。 )と本人やその世帯員の資力によって医療扶助に相当 する需要を満たすことができると判断される限り、同じく申請は却下されることとなる。
しかしながら、本人やその世帯員の収入、資力等からみて保護を要すると判断される場 合で、次のような事情にあるときは、生活保護法 第4条第3項の規定を援用して保護を開 始することも考えられる。
ア 加害者が不明であるため、医療費について賠償等を受けることができないとき イ 加害者に資力がないため、医療費を賄うだけの賠償を受けることができないとき ウ 加害者に資力はあるが賠償責任に争いがある等のため訴訟中であるような場合 もちろんこれらの場合でも、保護の申請者が、損害賠償を受けることについて十分な努 力をしていないと認められるときは、保護の要件を欠くものとして取り扱うべきである。
特に、自動車事故については、自動車損害賠償保障法では、加害者が不明の場合であって も、被害者による請求が認められているので留意を要する。
ところで、以上の場合でやむを得ない事情にあるものとして保護(医療扶助)を開始し た者については、次のような場合に生活保護法 第63条に基づく費用の返還義務が生じるこ とになる。
ア 事故当時不明であった加害者が後に明らかとなり賠償を受けることができるに至った 場合 イ 事故当時資力がない等のため事実上賠償をすることができなかった加害者が後に賠償 することができるに至った場合 ウ 賠償責任、程度についての争いが止み、当該事故についての賠償を受けることができ るに至った場合 返還額の決定は同条に基づき保護の実施機関である福祉事務所長が行うわけであるが、 医療扶助に要した費用のほか同時に適用された生活扶助に要した費用も返還の対象とな る。 なお、医療扶助については、生活保護受給者は原則として国保の適用除外となるため、 医療に要した費用の全額を返還することとなるので、保護の開始に際しては、要保護者に 対しこれらのことを十分に説明しておくことが望ましい。
なお、返還額の決定に当たっては、世帯の自立助長等を考慮の上行うべきであり、世帯 の自立更生計画のためにあてられる額については、収入として認定しない取扱いとして差 し支えない。
(問10-2)〔傷害事件による被害者と生活保護〕 中学校の生徒が放課後校庭で上級生に暴行され、負傷を受けたため入院したが、そ の後他病を併発し、相当長期の入院治療を要することが判明した。 加害者の両親は、 医療費を負担する旨言明していたのであるが、負傷は治癒したとの医師の言を根拠と して以後の医療費の支払いを拒否し、このため被害者の世帯は生活に困窮し保護を申 請した。 申請受理後加害者の父に面接し、賠償について話し合うように説得したが、 これを拒否し訴訟に応ずるとの態度をとっている。 一方被害者は、保護を受けられる ならあえて係争したくないとの意向である。
(1)前記のような事例について、保護の実施機関はどのように指導すべきか。
(2)相互の力関係に基づき被害者に不利な示談が成立した場合、保護の実施機関は これに対抗できるか。
(3)保護を受けているという事実が賠償額に影響するか。
(4)調停、民事訴訟には多額の費用を必要とするが、この費用を支払うことが困難 な場合は、どういう取扱いをすればよいか。
(5)保護を開始した後に賠償の履行があった場合の取扱いはどうなるか。
〔参照〕問8-55 (答)(1)不法行為に基づく損害賠償請求権は、生活保護法にいう「資産」にあたるから 保護の適用に当たっては、これを活用させることが要件となる。 ただ、債権の目的の実現 は債務者の履行によるわけであるから、債務者が任意に履行しないときは、民事訴訟手続 によりその実現を図らなければならない。 また、調停又は示談(和解)により解決する方 法は、厳密には損害賠償請求権の実現ではないが、実質的には同一の効果を持つものとし て活用に含まれると考えられる。 これらの活用方法のいずれによるかは、それによって得 られる財産上の利益とそれに要する経済的負担を比較して最も有利な方法によるべきであ り、保護の実施機関はこの線に沿って取り扱うことになる。 もっとも、相手方に資力がな い場合には結局は活用することができないわけで、このような場合にも活用要件とするこ とは当を得ているとはいえない。 しかし、この点については訴訟手続と調停、示談とでは 若干異なり、設問のように加害者が中学生である場合は、通常無資産、無収入であるため 訴訟手続によるときは賠償はほとんど不可能と思われるが、調停、示談によるときは両親 の資産、収入を考慮して実際上ある程度の損害賠償が得られるようである。 なお、設問に ついて特に注意しなければならないのは、併発病をめぐる紛争であるため加害者の暴行と 当該疾病との間に相当と認められる程度の因果関係がない場合には損害賠償の請求ができ ないことである。
(2) 第三者である保護の実施機関は、成立した示談についてその無効又は取消しを主 張することはできないが被害者に不利な示談の成立が予想されるときは、事前に法の原理 原則に基づき十分な助言、援助を行うべきであり、安易に解決を急ぐ態度を排することが 必要である。 ちなみに、当然に得るべき賠償額を得ようとしないことは法 第4条の要件を 欠くことになる。
(3)保護は、実施機関と要保護者との間の公法上の関係に基づいて行われるもので、 民事上の債権債務とは無関係であるから、被害者が保護を受けていることの結果加害者の 責任が軽減されることはないが、責任を保護に転嫁しようとする加害者も全くないとはい えず、被害者が安易な気持でこれに応ずる場合も考えられるので、法の原理原則を十分説 明する必要がある。
(4)調停、訴訟等に必要な費用について、生活保護法上は、賠償の履行の際に収入か ら控除する以外に方法はないが、できるだけ訴訟救助、あるいは法律扶助制度の活用等に より費用負担の軽減を図る必要があり、特に訴訟についてはそういうことがいえる。
(5)一般に、保護開始前に受けた損害に対する賠償請求権は、申請時の資力として認 定されるべきものである。 ただし、(1)のなお書きで述べたとおり、損害賠償請求は加害 者の暴行と当該疾病との間に相当と認める程度の因果関係がない場合にはできないもので あり、設問の場合はこの点について争いがある事例なので、この場合の資力の発生時点は 裁判での判決の確定時又は和解の成立時となると解することができる。
(問10-3)〔廃止した者からの再申請〕 次のような再申請があった場合、保護決定はどのようにしたらよいか。
(1)稼働年令層の者であって、疾病等就労の阻害要因がないにもかかわらず、再三 の指導指示にも従わなかったため、能力不活用により廃止した者から能力活用に ついて特段の努力もなされないまま直ちに再申請があった場合 (2)就労収入の有無等について再三にわたり確認したにもかかわらず、そのことを 否定していた者が、その後、やはり虚偽の申告であることがわかり、悪質に多額 の保護費の不正受給を行っていたことが発覚した。 このため、保護を廃止し、法
なお、真に急迫状態にあることからやむを得ず保護を開始する場合は、生活状況、就労 努力の状況を観察しながら保護を行うこと。
また、必要な指導指示を行い、なお、これに従わない場合は、所定の手続により保護の 停廃止を行うこと。
(2)計画的な消費生活を営む努力をせず、また自らの不正に負うところの返還義務も 履行しようとせず、多額の金品を遊興費に消費したとの申立てを行い短期間で再申請に及 ぶ者に対しては、資産活用の要件を欠くことから、そのような本人の申立てのみで直ちに 保護を適用することは適当でない。
かかる場合、速やかに返還を行うことについて指導するとともに、真に急迫状態にある ことからやむを得ず保護を開始する場合は、保護費を分割支給するなど、生活状況、就労 努力の状況を観察しながら保護を行うこと。 また、必要な指導指示を行い、なお、これに 従わない場合は、所定の手続により保護の停廃止を行うこと。
(問10-4)〔保護の決定以前に申請者等が死亡した場合〕 生活保護法による保護の申請があった後、保護の決定前に申請者等が死亡したよう な場合の取扱いはどうすればよいか。
〔参照〕次 第10 局 第10-2 (答)いくつかの例が考えられるが、次の4つの場合に分けて考えてみる。
(1)世帯主から当該世帯について保護の申請があり、その世帯主が死亡したとき。
(2)世帯員の一人が死亡したとき。
(3)在宅の単身者から保護の申請があり当該単身者が死亡したとき。
(4)入院中の単身者から保護の申請があり当該単身者が死亡したとき。
まず(1)及び(2)の場合いずれも当該世帯単位の最低生活需要に係る保護が申請の対 象であるから、死亡した世帯主又は世帯員の死亡による生活需要の減少(具体的には死亡 日以後月末までの生活費)を見込んで保護の要否、程度を決定すればよいことになる。 も ちろん、事務処理上間に合わなければ、支給後扶助費支給額の変更決定を行って費用を返 還させることになる。 なお、(1)の場合、申請者が死亡しているため、死亡者あてには法
(3)の場合については、実質的に申請の効力が失われたものとして保護の決定を要し ない。 このような場合、申請者の保護を受ける権利が保障されない結果となることもある ので、実施機関として保護の申請があったときは、法 第24条第3項等の規定をまつまでも なく保護の決定実施を急ぐべきことが要請されているわけである。
(4)の場合、一般の要否判定の結果保護要になれば、入院患者の死亡日までの医療費 について医療扶助が適用されることになる。
なお、この場合①死者の名あてで、保護の決定を通知すべきか、また、それをどのよう に施行すべきか、②収入認定の結果本人支払額が生じた場合これをどう取り扱うべきか、 という問題が生じる。 まず①については事実上医療券の発行だけとなり申請者名あての通 知書を実施機関において保存するということになってもやむを得ない。 次に②については、 医療機関において当該本人支払額の徴収が事実上困難となるが、法律的には、死者の相続 人に対する(又は遺留財産についての)医療機関の債権の実行の問題である。 死亡により 最低生活費が減少したものとして、本人支払額を増額するための保護の変更決定や法 第63 条の適用を考慮する必要はない。
(問10-5)〔仕送りを受けている者の期末一時扶助費〕 単身の入院患者(医療扶助単給)で、扶養義務者からの仕送りによって日用品費を 賄っている者について12月における期末一時扶助費を支給してよいか。
〔参照〕次 第10 課 第10-4 (答)扶養義務者による仕送りについては、本人の申立て及び調査に基づき一定の金額(月 額)で認定されるものであるが、本来、その仕送り能力は、必ずしも固定的なものではな く、年末等の時期においては平常月の仕送りに加えた扶養を受けることも考えられるので、 実態を調査の上そのような仕送りが期待できる場合は、最低生活費の算定としては期末一 時扶助費を計上するとともに収入(仕送り)認定の変更を行えば支給額は生じないことと なり、結果的に期末一時扶助費の支給は必要でなくなる。
なお、他法による公費負担患者で日用品費の額を超える収入がある者(平常月において 生活保護の対象となっていない入院患者)から12月において保護の申請があっても、期末 一時扶助費は要否判定には用いないので保護否となり、当然、期末一時扶助は支給されな いこととなる。
(問10-6)〔申請時の要否判定〕 保護の申請時における保護の要否の判定は、必ず申請月まで3か月間の平均収入充 当額に基づいて行わなければならないか。
〔参照〕局 第10-2-(1) (答)生活困窮という状態は、ある程度の時間の経過のうちにあらわれるものであり、収 入の額が変動する世帯については、3か月程度の実績を考慮しなければ保護の要否が判断 されないものと考えられる。
しかし、これは原則的な考え方として示されているものであり、次のような場合には、 申請月まで3か月の平均収入充当額を要否判定の基準とすることは妥当でないということ はいうまでもない。
(1)申請月以後の収入がないか減少することが明らかであるような事情(稼働者の傷病、 死亡等)に基づき保護の申請があった場合で、扶養義務者の扶養、資産等の活用によ ってこれを充たすことが不可能であると認められるとき (2)申請月以前3か月の収入充当額として算定される額よりも申請月以後に期待できる 収入(仕送り等を含む)に基づき算定される収入充当額の方が高いことが明らかな場 合 (3)過去3か月間に平常期待できないような収入があった等のため平均額を用いること が不適当な場合 (4)常用勤労者であって労働協約等の実態から賞与等を含む年間収入が確実に推定でき る場合
(問10-7)〔定期的就労収入と程度の決定〕 恩給や年金等の受給者が保護を申請した場合の要否判定に当たっては、6か月以内 の期間ごとに支給される恩給や年金等については、実際の受給額を原則として受給月 から次回の受給月の前月までの各月に分割して収入認定することとされ、また、保護 の程度の決定に際して収入充当額として認定すべき恩給や年金等の額は保護の開始時 に現に所有する当該恩給年金等の残額によることとされている。 定期的な就労収入に ついても同様に取り扱って差し支えないものであるか。
〔参照〕次 第10 局 第10-2 課 第10-10 (答)恩給や年金等の受給者は多くの場合、非稼働者であり、それらの者が困窮したとき には社会的にも柔軟に対応する手段を持たないことが予想されるので特にこの取扱いを示 したものである。
したがって、定期的就労収入のある稼働者については、この取扱いによることはできな い。
ただし、急迫の場合等法律に基づいて必要な保護を行うべき場合をも否定するものでは ない。
(問10-8)〔医療扶助単給世帯で月の途中において治癒した場合〕 月の途中において医療扶助の単給を開始する場合、その開始月の一部自己負担額は 開始日からその月の末日までの日数に応じて、日割計算をすることとされているが、 月の途中において治癒した場合の取扱いはどうか。
〔参照〕局 第10-2-(3) 課 第7-19 (答)設例は、疾病等により医療費が賄えないことによって医療扶助の単給により保護を 開始した例であり、疾病の治癒によって保護の開始原因は消滅したものであり、保護の停 止又は廃止を検討すべきである。
なお、疾病等により入院していた医療扶助単給者が、退院して居宅生活を開始するに当 たって、なお最低生活が維持できない場合の取扱いは、次のとおりである。
入院患者日用品費(局 第7-2-(3)-キ)及び退院日後月末までの期間に応じて日 割計算した患者の基準生活費(局 第7-2-(1)-ア)と当該月分の医療費と合算した 費用をその月におけるその世帯の最低生活費として認定し、これと当該世帯の収入充当額 とを対比して、収入充当額を超える最低生活費(医療費を除く。 )の部分について生活扶 助等を決定し、保護の変更決定を行うこととなる。
(問10-9)〔居宅から保護施設へ月の中途で入所した場合〕 居宅において保護を受けていた者が、月の中途において保護施設に入所した場合、 居宅基準生活費及び救護施設等基準生活費はそれぞれ日割計算により算定して給付す ることになるが、すでに居宅における1か月分の扶助費が前渡されている場合、どの ように取り扱えばよいか。
〔参照〕局 第7-2-(1) (答)この取扱いには、二通りの方法が考えられる。
まず、 第一の方法としては、すでに前渡した扶助費から日割計算により算定した居宅基 準生活費を差し引いた残額を被保護者から施設へ直接納入させ、なお不足を生ずるときは、 実施機関が施設の長へ当該不足分を交付(返還額が生ずるときは、返還又は翌月収入充当) するという方法がある。 次に、 第二の方法としては、すでに前渡した扶助費から日割計算 により算定した居宅基準生活費を差し引いた残額を被保護者から実施機関へ返還させるこ ととし、改めて実施機関は施設の長へその月の日割計算による扶助費を交付するという方 法がある。
いずれの方法によるかは、被保護者の状況、前渡した扶助費の残額等に応じて決められ たい。
なお、この取扱いは入院患者日用品費が算定されていた者が保護施設に入所した場合に ついても同様である。
(問10-10)〔養護老人ホーム入所者の要否判定〕 養護老人ホーム入所者から医療扶助の申請があった場合、いわゆる要否判定の短期 医療の特例が適用されるか。
〔参照〕局 第10-2-(3) 平18.3.31老発 第0331028号老健局長通知 問7-6 (答)医療予定期間が6か月未満の傷病を理由とする医療扶助の申請については、養護老 人ホーム入所者についても当然要否判定の短期医療の特例が適用される。 養護老人ホーム 入所者が入院を要する場合、入院期間が概ね3か月を超えるに至ったときは老人福祉法に よる措置が廃止されることが予想され、その場合は措置が廃止された時から入院患者日用 品費の計上を必要とすることとなるので、その点に留意した上で要否を判定する必要があ る。
(問10-11)〔授産施設利用者の期末一時扶助費〕 授産施設を利用する者の世帯について、期末一時扶助費の支給はどのように取り扱 うべきか。
〔参照〕局 第10-2-(6)-ウ (答)授産施設を利用する者のうち、当該世帯がすでに何らかの扶助を受けている者及び 局 第10の2の(6)のウに基づき被保護者と決定された者については、12月において期末 一時扶助費を認定すべきである。
これに対し、施設事務費支出の特例の対象となっている者(いわゆるみなし被保護者) については、期末一時扶助費の認定は行わない。 また、保護施設以外の授産施設利用者に ついても同様である。
(問10-12)〔授産施設利用者と国民健康保険〕 授産施設を利用する者でその世帯が他にいずれの扶助も受けていない者の場合、国 民健康保険の被保険者となることができるか。
〔参照〕局 第10-2-(6)-ウ-(ア) 国民健康保険法 第6条 (答)「生活保護法による保護を受けている世帯(その保護を停止されている世帯を除く。 ) に属する者」は国民健康保険の被保険者となることができないわけであるが、授産施設を 利用する者であっても、局 第10の2の(6)のウの(ア)に基づき被保護者と決定されて いる者の世帯は、他のいずれの扶助も受けていない場合でも「保護を受けている世帯」と なるので、当該世帯員はいずれも国民健康保険の被保険者となることはできない。
(問10-13)〔保護決定の法定期間〕 保護の決定通知は、原則として申請のあった日から14日以内に、特別の理由がある 場合でも30日以内に行わねばならないことになっているが、町村長経由の場合の起点 はいつか。
〔参照〕局 第10-3 (答)町村長が申請書を受理した日がその起点となる。
(問10-14)〔決定通知書の決定理由〕 決定通知書の決定理由はどう記載されるべきか。
(答)本法において、決定通知書に決定理由を付記しなければならないこととされている (法 第24条第2項、第25条第2項及び第26条)ことは、本法の目的が国民の最低限度の生 活の保障にあるところから、保護の決定が、どのような理由によって行われたものである かを、申請者等に十分周知させることが望ましいとの趣旨によるものである。 したがって、 決定通知書に付記すべき理由は、そのような趣旨を満足させるものでなければならない。
これを保護の決定のそれぞれについて具体的に示すことは、困難であるが、個別のケース に応じて、決定の理由を周知させるに必要かつ十分な内容であり、申請者等が容易に理解 できるような表現を用いることが望ましい。
(問10-15)〔ケース移管時の保護費累積金の取り扱い〕 保護受給中のやり繰りにより生じた累積金の取り扱いについては、課 第3の18で示 されているが、転居等により実施機関が変わった場合(ケース移管)においても、こ れを適用して差し支えないか。
〔参照〕課 第3-18 課 第10-9 (答) 他の実施機関の管内で、保護を受けていた者が転入してきた場合の取り扱いは、課
2扶助費の再支給
(問10-16)〔保護金品の再支給〕 前渡された保護金品を災害盗難等により失った場合、必ず再支給しなければならな いか。
〔参照〕局 第10-4 課 第10-16 (答)本来、扶助費はこれを所定の方法で相手方に交付すれば給付として完了するもので あり、いかなる事情の場合も当然に再支給する義務を負うものではない。
実施要領に規定されているところは、特定の場合の取扱いを示したにすぎないものであ る。
したがって、盗難や災害の事例を種々の方法により確認するだけでなく預貯金・手持金 等の状況を勘案した上で最少限度の額を支給することとすべきである。
(問10-17)〔支給日に保護金品を紛失した場合の再支給額〕 前渡された保護金品を紛失した場合には、局 第10の4により、紛失した日以後の当 該月の日数による日割計算の額の範囲内で必要な額を再支給できることとなっている が、支給日(定例は毎月5日)に紛失した場合にはその全額を再支給して差し支えな いか。
〔参照〕局 第10-4 (答)お見込みのとおり取り扱って差し支えない。 局 第10の4は、1か月分の保護金品が 前渡されるという前提の下に、紛失した日以後の最低生活を保障するという趣旨から再支 給の限度額を示しているものである。 したがって、再支給額は、原則として日割計算の額 を限度とするが、設問のように支給日前の4日分を含めて1か月分の保護費が一括支給さ れ、しかもこれを受領した日に紛失した場合には、その月の最低生活を保障すべき保護金 品を、その月の生活費に充当することなく紛失したのであるから、日割計算による額では なく、紛失した金額の範囲内で必要な額を再支給することとして差し支えない。
(問10-18)〔収入として認定された金品の再支給) いったん収入として認定された金品を紛失した場合には、どの程度の額を特別基準 の設定があったものとして認定すべきか。 また、保護金品の一部もあわせて紛失した 場合はどうか。
〔参照〕局 第10-4 問10-16 (答)収入として認定された金品も、それが被保護世帯の所有に帰属していれば、扶助費 の額は確定しているものであるから、設問の後段の場合も含めて保護金品を紛失した場合 とまったく同様の考え方の下に扶助費の再支給を決定すべきである。
3保護の停廃止
(問10-19)〔停止の決定とその期間〕 停止の決定に当たってその期間を明示すべきか。
〔参照〕課 第10-12 (答)保護の停止は、法 第26条、第28条第4項又は第62条第3項の規定によって行われる。
すなわち、(1)被保護者が保護を必要としなくなったときは、実施機関はすみやかに保護 の停止を行わなければならず、(2)被保護者が保護の決定又は実施のために必要な立入調 査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は検診命令に従わないときは、実施機関は保護の停 止を行うことができ、(3)被保護者が必要な指導又は指示に従わないとき、又は保護施設 を利用する被保護者が、その施設の管理規程に従わないときは、実施機関は保護の停止を 行うことができるのである。
上記のそれぞれの場合における停止の意義について考えてみるに、(1)の場合は低賃金 所得者が12月に期末手当を受給する場合のように、一時的な収入の増加がみられたが、あ る時期が到来すれば、再び保護が必要となることが必然的に予見される場合に行われる保 護の実施の一時的中断であって、この場合は増加された一時的な収入の額に応じて、その 中断すべき期間は客観的に明らかであるから決定に当たっては期間を明示することとすべ きである。 (2)の場合は、そのような調査が不能となると、適正な保護を決定し、実施す るための基礎となる事実が把握されないこととなり、実施機関としては、保護の必要及び その程度、方法等を決定することができないのみならず、保護の適正な実施のために必要 な調査、検査等に対して、被保護者が誠実に協力すべきことは条理上も当然であるから、 この義務違反に対する制裁がなければならない。 この場合の停止は、このような意味で行 われるのであるが、停止の理由となった事情がなくならない限り、停止の解除を行うべき でない。 したがって、この場合は、あらかじめ期間を明示することは不可能である。 また、 (3)の場合には、法律の適正実施を図るため、法律上被保護者としてその履行を要求さ れている義務を果たさない者に対する制裁として行われる停止であるが、(2)の場合と同 様に取り扱うべきである。
停止後、保護を再開する時期については、(1)の場合は停止期間の満了した時期とすべ きであり、(2)及び(3)の場合は停止処分を行った理由が解消したと認められるに至っ た時期とすべきである。 しかしながら、被保護者が急迫した状況にあるときは、上記の再 開の時期にかかわらず保護を行うべきである。
(問10-20)〔保護の廃止日〕 保護の廃止日について、例えば6月30日まで保護し、7月1日から廃止されるケー スの廃止日は何月何日か。 また福祉行政報告例による報告においては何月分の廃止ケ ースとして数えるか。
(答)設問の廃止日は7月1日である。 法令の廃止において、その廃止が7月1日である ということは、その法令が有効に適用されるのは、6月30日までであるということを意味 するが、これと同様に、設問の場合に、もし廃止日を6月30日とすれば、6月29日まで保 護を行ったこととなるからである。
また福祉行政報告例による報告(社会福祉行政業務報告)については、決裁日に従って 廃止ケースを数えることになっているので、当該ケースの廃止について6月中に決裁があ れば6月分の廃止ケースとして、7月中に決裁があれば7月分の廃止ケースとして数える ことになる。
(問10-21)〔協議離婚により贈与した資産と保護の停廃止〕 甲は、10年前から引き続き医療扶助を受けていたが、最近妻と協議離婚し、五人の 子を妻乙が扶養することを条件として、家屋、漁船等の資産を乙に贈与した。 この資 産は、甲の療養中に妻子が生計を維持するのに活用しており、今後も妻子の生計の維 持のために必要な最少限度のものであって、一方、甲の社会復帰は当分望めない状況 である。 この場合、甲の行為は、法 第4条の規定に定める要件を欠くものとして、保 護の停止又は廃止を考慮すべきか。
(答)協議離婚により資産をすべて乙に贈与したことを直ちに保護の停止又は廃止の処分 に結びつけて考えるのは、当該資産が世帯の自立更生のために保有を認められたものであ ること、甲が所有しているとしても相当長期間甲による活用が期待し得ないであろうこと 等にかんがみ、適当でないものと考えられる。 ただし、離婚に伴う財産分与に当たって、 法 第4条第1項の要件を欠くところがあると判断される場合には、直ちに保護の停止又は 廃止をすることはできないので、甲に対して乙から相応の分与を受ける(事実上取り戻す ことになる)ように積極的に指導すべきであり、これに甲が誠意を示さない場合には法第 62条 第3項の規定に基づき保護の停止を行わざるを得ないこともなかにはあろう。
なお、上に述べたのは当該離婚が擬装離婚であると認められない場合である。 甲と乙と の離婚が保護の程度を大にするための擬装離婚であることが明らかに立証される場合は、 従前と生活の実態が変わらないものとして取り扱うことに加え、法 第85条等の適用を検討 すべきことはいうまでもない。 ただし、離婚の問題は身分法上の事柄であり、純粋な財産 権の移転と事情が異なるので、ケースの取扱いには、慎重を期する必要がある。
4海外渡航 (問10-22)〔世帯員の一部が海外渡航した場合の取扱い〕 被保護世帯の一部が海外渡航したが、渡航の目的が遊興であったため、渡航費用に ついて当該渡航期間中の基準生活費及び加算の範囲内で収入認定することとした。 こ の場合、収入認定の対象となる基準生活費及び加算の額は、世帯全体の基準生活費及 び加算に相当する額となるのか。 あるいは、海外渡航した世帯員分の基準生活費及び 加算に相当する額となるのか。
〔参照〕課 第10-19 (答)海外渡航した世帯員分の最低生活費及び加算に相当する額とされたい。 なお、2類経 費については、当該被保護世帯全体の2類経費の額から、海外渡航した世帯員以外の人数 に応じた2類経費の額を減じた額により算定されたい。
(問10-23)〔他からの援助金で海外渡航する場合の取扱い〕 被保護者が他からの援助金により海外へ渡航した場合であって、その援助金の額が 交通費・宿泊費の額を上回る場合は、どのように取り扱ったらよいか。
〔参照〕課 第10-19 次 第8-3-(2)-イ-(ア) (答)(1)当該渡航が課 第10の19で定める収入認定除外の要件を満たすとき この場合は、援助金のうち当該渡航のための交通費・宿泊費に当てられた額については、 課 第10の19により収入認定を除外し、それを超える額について次第8の3の(2)のイの (ア)により収入認定することとなる。
(2)当該渡航が課 第10の19で定める収入認定除外の要件を満たさないとき この場合は、援助金全額を収入認定することになる。
これを、実施要領上の根拠に当てはめると、当該渡航のための交通費・宿泊費に当てら れた額のうち当該渡航期間中の基準生活費及び加算相当額の範囲内の額は課 第10の19によ り、それを超える額については次 第8の3の(2)のイの(ア)により収入認定すること となる。
(問10-24)〔被保護者が海外に渡航した場合の渡航期間〕 被保護者が引き続き国内に居住の場所を有し、一時的かつ短期に海外へ渡航した場 合には、海外へ渡航したことのみをもって停廃止することはできないとなっているが 「一時的かつ短期」とは1か月を超えない期間として取り扱ってよいか。
〔参照〕課 第10-19 H20.4.1社援保発 第0401006号社会・援護局保護課長通知 (答)「一時的かつ短期」については、一律に1か月以内と期間を定めることは妥当ではな く、概ね1~2か月を目安に、渡航の目的・帰来可能性等を十分に考慮した上で判断する こととされたい。
その上で、生活保護法においては、実施機関に対して要保護者の資産状況、健康状態等 を調査するため立入調査及び検診命令の権限を与え、要保護者がそれに従わない場合は、 保護の申請を却下し、保護の変更、停廃止を行うことを認めている(法 第28条第4項)。
他方、被保護者に対しては、生活上の義務(法 第60条)、届出の義務(法第61条)、入所又 は入所委託の決定に対する受忍義務(法 第62条第1項)、管理規程遵守義務(法第62条第 2項)を課しているほか、実施機関は被保護者がこれらの義務を果たしていない場合その 他保護の目的達成上必要があると認める場合には必要な指導・指示をすることができる (法 第27条)こととして、さらに被保護者に対してこの指導・指示に対する受忍義務を課 している(法 第62条第1項)。
なお、文書で行った指導・指示に対して被保護者が従わない場合には、弁明の機会を与 えた上で保護の変更、停止又は廃止をすることができることとなっている(法 第62条第3 項、 第4項、法施行規則第19条)。
1 保護申請時における助言
(問11-1)〔保護申請者に対する指導指示〕 保護を申請してきた者について調査したところ、保護の要件を欠いていることが判 明した。 本人の努力によりこの点は直ちに是正できると思われるが、この場合法 第27 条に基づく指導指示はできるか。
〔参照〕局 第11-1 (答)保護の要件を欠いている場合は、申請を却下すべきことは当然であるが、受給要件 が本人の努力によって、直ちに是正できる可能性がある場合には、保護の申請者は被保護 者ではないから、これに対して法 第27条に基づく指導指示はできないが、申請者に対し法 の趣旨、制度の建前等を説明し、保護を受ける要件を満たす努力をするよう、助言援助を する程度の配慮は、保護の実施機関として必要であろう。
(問11-2)〔労働運動と能力の活用〕 労働運動に従事しているために稼働収入が減少したことは、法 第4条第1項にいう 能力の活用を図っていないものと考えられるが、組合役員をやめて通常の就労日数ま で就労するよう助言援助し、これに従わないときは、保護の要件を欠くものとして保 護申請を却下して差し支えないか。
〔参照〕昭和43年4月26日社保 第111号社会局長通知 局 第11-2-(1)-オ 問1-20 (答)労働組合の役職員として労働運動のみに従事しているために稼働収入が少ない者は、 能力の活用を図っているとはいえず、法 第4条第1項の要件を欠くから、同条第3項に該 当する場合を除き開始申請を却下すべきものである。 しかしながら、法の目的にかんがみ、 直ちにそのような決定を行うことなく、法の原理を説明し、通常の勤労をもあわせ行うよ う助言援助した上、これによってもなお能力を活用しないと認められるときに、はじめて 却下するのが適当である。
(問11-3)〔職業選択の自由〕 稼働能力のある者に職業を紹介した場合に、その職業を好まないとの理由で就労稼 働しない場合、申請の却下又は停廃止の理由となるか。 憲法が保障する職業選択の自 由との関係についてはどうか。
〔参照〕局 第11-1-(2) 局 第11-2-(1)-ウ (答)稼動能力があり、その機会があるにもかかわらず、就労稼働しない場合は、一般的 には法 第4条第1項に規定する保護の要件としての能力の活用を欠くものであると解され るから、そのような者からの保護開始申請は却下することになり、また、その者が被保護 者である場合は、実施機関はすみやかに法 第27条の規定による指導指示を文書で行い、こ れに従わないとき(なお、法の観点からみて紹介に係る職業と同等に評価される他の職業 に就くことは差し支えない。 )は、保護の停廃止の処分を行うことになる。 ただし、その 者の身体的能力等により社会通念上客観的にその職業に就くことを期待できないような場 合には、そのような職業に就くような指導指示を行うべきではないことは当然である。
なお、国民は、憲法 第27条第1項により勤労義務を負っており、憲法第25条はこれを前 提として国民の生存権を保障したものであるから、稼働の能力があり、その機会があるに もかかわらず、その者の能力の範囲内で紹介された職業に就くことをあえて忌避する者に ついては、生活保護法による最低生活の保障が及ばないとしても憲法上問題はないのであ る。
(問11-4)〔医療扶助と法 第63条の適用〕 医療費の支払い困難を理由として保護申請があったが、調査の結果、保有の認めら れない土地(処分価値は高い)を保有していることが判明した。 本人に事情を聴取し たところ売りに出しているがなかなか買い手が現われないとのことであった。
急迫保護として法 第63条の適用を前提として保護を開始することも可能な状態であ るが、本人は国民健康保険に加入しており、生活保護を適用すると10割額の医療費相 当の保護費を返還させることとなることから、かえって本人の自立を損う場合もある と考えられる。 このような場合はどのように取り扱うべきか。
(答)法 第63条の適用を前提に保護を開始した場合、資産売却時にそれまで受給した保護 費全額が返還させるべき保護費の対象となるが、国民健康保険に加入していれば高額な医 療費が必要となっても自己負担は高額療養費自己負担限度額までである。
したがって、設問のような場合はお見込みのとおり、生活福祉資金制度等を活用するこ とによって保護を受ける必要がなく、また、その方が本人の自立にも役立つ場合が少なく ないと思われる。
しかし、やむを得ない事情により保護を必要とする場合には、とりあえず保護を行い、 しかる後法 第63条によって費用の返還を求めることとなるが、この場合、本人に法第63条 の取扱いについて十分に説明し事前に理解を得ておくことが適当である。
(問11-5)〔生別母子世帯から保護申請があった場合の前夫(夫)の扶養について〕 次のように、「生別母子世帯」から保護の申請があった場合に、前夫(夫)の扶養 については、どのように取り扱えばよいか。
(1)離婚している世帯の場合 ① 前夫の扶養能力調査の結果、前夫に扶養能力(子が未成熟であれば、前夫の 最低生活費を超過して収入を得られる能力)があると判断されるにもかかわら ず、世帯主と前夫との間で養育費等の支払の取決めがなされていない場合。
② 離婚時に養育費等の支払の取決めがなされている場合。
(2)離婚していない(別居中)世帯の場合 (答)(1)の①の場合、世帯主から前夫に対して養育費の支払を請求させ、その取決めを させることになる。 夫婦間の共同財産がある場合には財産分与の請求を併せて行わせるこ ととなる。
なお、これらについて、当事者間で解決がつかない場合は、家庭裁判所に調停又は審判 を申し立てるよう助言する必要がある。
(1)の②の場合、その取決め内容が調査の結果、把握した前夫の扶養能力等からみて、 妥当なものかどうかを検討し、妥当でないと判断される場合には、養育費等の増額につい て働きかける必要がある。
また、離婚に際して養育費を将来にわたって請求しないという取決めがなされていたと しても、生活保護を適用する以上は、前夫の扶養能力に応じて扶養の履行を求めることは 当然である。
なお、取決めがなされているにもかかわらず、現実に支払が行われていない場合には、 速やかにその履行を請求させ、特に調停又は審判によって取決めがなされていた場合には、 家庭裁判所に対して履行勧告や履行命令を求めるよう助言する必要がある。
(2)の場合、扶養能力等を調査することもさることながら、単に別居という理由のみ をもって保護の申請に及んだような場合は、それぞれの生活の維持は何よりもまず当事者 間で解決すべきことを助言すべきである。 どうしても当事者間で解決がつかない場合であ って夫に資力があるときは、夫婦関係調整や婚姻費用の分担に関する調停、審判の申立て 等を家庭裁判所に対して行うよう助言する必要がある。
2保護受給中における指導指示
(問11-6)〔裁判を受ける権利と指導指示〕 被保護者がその勤務先の工場から解雇を言い渡されたところ、これを不当労働行為 であるとして裁判所に提訴した。 本人は健康体であり労働に支障がないので他の職場 に就労をあっせんし、しばらくの間はその職場で就労していたところ、最近では裁判 の進行状況につき関係団体との連絡や宣伝のために日々を費やすようになり、新しい 職場もほとんど勤務していない状況で、近々解雇を再び申し渡されることになった。
この場合の指導指示はどのようにしたらよいか。
〔参照〕憲法 第32条 局 第11-2-(1)-ウ 局 第11-2-(1)-オ (答)裁判所に出訴した場合、これを進めるためには相当の時間的余裕を必要とする場合 もあろうが、そのために次の職場も解雇される程の時間を費さねばならない特別の場合は 極めて少ないと思われる。 雇主に面接し、就労の状況を調査し解雇の理由を確かめてそれ が裁判の進行に直接関係のないものであるときは、本人に対し文書により就労を指示し、 なおこれに従わないときは保護の停止処分を行うべきである。 出訴を取り下げるよう指示 することは、憲法で保障されている裁判を受ける権利についてこれを侵害することになる ので指導指示に当たってはこの点に留意を要する。
なお、被保護者のように、裁判に要する費用を捻出することが困難な者に対しては、日 本司法支援センター(法テラス)の行う法律扶助制度があることを付言しておく。
(問11-7)〔信仰の自由と指導指示〕 被保護者が宗教団体の普及員となって宗派の宣伝に専念し、今まで従事していた仕 事を辞めてしまった。 再三現業員が家庭訪問の際注意し、就労するよう指導したが、 一向にこれに従おうとしない。 このような場合、宗教活動をしないよう指導する必要 があると思うが、どうか。
〔参照〕局 第11-2-(1)-ア (答)宗教活動そのものについてこれを禁止することはできない。 しかし宗教活動のため 本人が就業し得るにもかかわらず就労せず、そのために保護を行うことは、法 第4条第1 項の要件を欠く者に対して保護を行うことになる。 設問のような場合は、文書をもって就 労を指示し、これに従わない場合には法 第62条第3項の規定により保護の停止又は廃止を 検討することになる。
(問11-8)〔職業選択の自由と指導指示-その1〕 被保護世帯の世帯主の弟が退院し同一世帯内に戻ってきた。 同人は大学を出ており 容易に就職可能と思われたが、病後であったので、就労を指導しないまま保護を適用 し、本人も稼働しないまま1年を経過した。 最近訪問したところ身体も回復し通常の 労働に耐え得ると認められたので就労するよう指導したが、自分の学歴にふさわしい 手ごろな職業が見当らないからと申し立てて就労しようとしない。 このような場合の 指導指示はどのようにしたらよいか。
〔参照〕局 第11-2-(1)-ア (答)最低限度の生活が維持困難となった場合には、自己の学歴等を問うことなく現時点 における労働市場の中で自己の能力に相応した職を探すのが通常である。 知人等が本人に 対する個人的な援護的立場で職をあっせんする場合は、履歴等をも考慮する場合もあろう が、そのような職場がないからといって自己の労働力で十分耐え得る職があるにもかかわ らずこれに就労しないことは、法 第4条第1項の要件を満たすものとはいいがたい。 また、 保護の実施機関は本人の学歴等に相応する職を保障しなければならない公的義務はどこに もない。 設問のような場合には、現業員は以上の点を十分説明して就労するよう指示し、 なお健康を理由に従わずそれが疑わしい場合には法 第28条第1項の規定に基づく検診命令 を発し、検診の結果、就労可能である場合は、本人に対し就労指導を行い、適当と認めら れる職場があるにもかかわらず、実施機関の指導に従おうとしないときには、就労につい て文書で指示し、なおかつこれに従わない時は法 第62条第3項の規定により保護の停止 又は廃止を検討することとなる。
(問11-9)〔職業選択の自由と指導指示-その2〕 夫婦と中学校3年の長女及び小学校6年の長男の4人の被保護世帯がある。 妻は、 中風で長い間寝たきりになっている夫の看護のかたわら内職をしてわずかばかりの収 入を得ている。 最近隣市に清掃の求人が複数あることを聞いたので、妻に転職するよ う指導したところ、夫の看病に時間をとられることを理由に就職を断ってきた。 長女 は来春中学校を卒業すれば近隣の某会社に就職することが内定しており、長女の収入 と今度の妻の新しい職場で得られる収入とを合計すれば、この世帯は被保護世帯でな くなることになるが、この場合どのように指導したらよいか。
(答)夫の病状が常時介護を要する状態である場合には、通常相当時間、身体を拘束する ような職場への転職を指導することは適当でない。 例えば、パートタイマーのような、夫 の看護に支障を来たさないと認められるような短時間の拘束に止まる職場である場合に は、妻の不安を取り除くような積極的な指導が望まれるが、夫の病状をよく調査した上で 助言するよう慎重な配慮を必要とする場合が多いであろう。 特に子ども達は、学業に専念 せしめなければならないときでもあるし、就職の決まった長女の将来を犠牲にするような おそれのある指導は格段の留意を要する。 なお、設問の場合、本人の稼働時間及びその状 況を聴取し、転職が可能な状況であれば、積極的に説得につとめても差し支えないであろ うが、本人が就労し得るにもかかわらず全然就労していない場合であれば格別、本件の場 合たとえわずかな収入しか得られなくとも本人及びその実情からして相当の努力を払って 就労していると認められる以上は、転職を強制するような方法は指導として避けなければ ならないものと思われる。
(問11-10)〔被保護者が選挙に立候補した場合の指導指示〕 被保護者が公職に就くために立候補した場合に関して、次の点につき承知したい。
(1)公職に就くための立候補及びそのための運動は、生計維持に関する努力義務に 反するものであるか。
あるいは、自立更生の趣旨等から許容し得る範囲内の就職運動として認めるこ とができるか。
(2)選挙運動中における生活指導、立入調査等は、公職選挙法 第226条に規定する 選挙の自由妨害罪に該当する場合があるか。
〔参照〕局 第11-2-(1)-オ 公職選挙法 第226条第1項 「選挙に関し、国若しくは地方公共団体の公務員……(中略)……が故意にその 職務の執行を怠り又は正当な理由がなくて公職の候補者若しくは選挙運動者に追 随し、その居宅若しくは選挙事務所に立ち入る等その職権を濫用して選挙の自由 を妨害したときは、四年以下の禁錮に処する。 」 (答)(1)立候補をし又は選挙運動をすることをもって議員として能力を活用するための 準備行為であるから保護の要件を満たすとの論があるが、本法において許容しうる就業運 動の範囲は、その職業に就き得る見込みの程度、運動のための期間、本人とその職業との 関連性等の点でおのずから限界がある。 本法により保護の受給要件を満たしている者に最 低生活を保障するということと、憲法によって被選挙権が認められているということは、 別個の理念に基づくものであることから、本法による保護の要件を充たしているか否かの 判断を下すにあたってはあくまでも本法の立場から考察すべきである。 したがって、能力 を活用し保護の要件を満たしている者が立候補し、選挙運動すること自体、本法の実施上 何ら問題ないし、これを妨げるものではない。
(2)前記のとおり、立候補すること自体は能力の活用とはみなされないから、保護の 要件を満たしたまま立候補することは極めてまれであろうと思われるが、何らかの事情に より保護の要件を満たす者が立候補した場合で、保護の実施機関が保護を行っている場合 は、その後において生活指導等を行うことは公職選挙法に反しない限り法律上許されるの であって、実際上も本法の施行上必要な調査等について、「正当な理由なく」「職権を乱用」 することによって選挙を「妨害」したとされる懸念の存する余地は殆どないものと思われ る。
ただ、憲法上被選挙権が認められていることからいって現実の実施上においては慎重な 配慮が必要であることはいうまでもない。
これに関して選挙資金の取扱要領を次に示すから参考とされたい。
1 供託金の取扱い(公職選挙法 第86条、第92条) (1)推薦届出の場合において当該届出者が供託したときは収入認定の対象外となる。
(2)直ちに供託金にあてるべき旨の明示の意思表示のものに他から恵与され、又は貸付 けられた金銭であって当該被保護者の手許に滞留することなく供託されたものも収入 認定の対象外とする。
(3)収入の申告を怠り不正に秘していた預金から供託金を支出したときは、保護の不正 受給として費用徴収の対象ともなる。
2 選挙運動資金の取扱い(公職選挙法 第180条) 次のいずれにも該当するものは、出納責任者が当該被保護者本人であると否とを問わ ず、収入認定の対象外とする。
(1)選挙運動資金にあてるべき旨の明示の意思表示のもとに、他から恵与され又は貸付 けられたものであること。
(2)現実に選挙運動資金にあてられること。
(3)当該資金の経理が当該被保護世帯の家計と明確に区分されていること。
(問11-11)〔居住の自由と指導指示〕 単身の被保護者が入院の必要がなくなったにもかかわらず退院しようとしない。 事 情を調査したところ、退院後、居住する適当な住居がないということが判ったので、 民生委員の協力を得て貸間を探し出し本人にあっせんしようとしたが、入院中に本人 が内々求職し内定していた勤務先の所在地と相当離れており通勤に不便なため、容易 に退院しようとしない。 この場合は指導指示に従わないものとして保護を停廃止して 差し支えないか。 なお、本人の入院前の住居に戻ることはできない現状にある。
(答)主治医の意見を聴き、本人の予定している職場での就労が適当でないと判断された ときは、本人に対して事情を説明し新住居に移るよう説得し、これが聴き入れられないと きは文書をもって指示することになる。 主治医が就労を適当と認めたときは、通勤に要す る時間、交通機関の通勤時における状況等を調査し、本人の健康状態からして支障がない と認められるときは、よほどの事情でない限り、本人を説得する必要があろう。 本人の健 康状態からしてそのような通勤をすることが適当でないと判断されたときは、本人の意向 を尊重して予定している就職先の付近における適当な住居の確保につき本人に努力させる こととし、早急にこれが見当らない場合は、一時的にでも先の新住居に落ち着くこととす るよう本人を納得せしめる必要がある。
なお、その際には、入院の必要がなくなったにもかかわらず、相変らず入院のままの状 態でいることは生活保護制度上認められるものではないこと、退院後における就労及び住 居の確保については、公的機関がこれを保障する義務はないものであることから、本人は もとより、本人の身内の者知人縁故先をたどって積極的にその確保を努力しなければなら ないものであることを説明し、退院後の問題としてまず住居を確保し、そこに落ち着く必 要があることを強調する必要があろう。
これらの努力を払わず、設問のような事例の場合において、住居を提供したにもかかわ らず退院しないとして、一方的に退院に関する指示を文書で行い、直ちに行政措置に訴え ることは適当ではなかろう。
(問11-12)〔被保護者の届出の義務と指導指示〕 被保護世帯の子が隣県の某工場で働いており月々仕送りをしているので、その世帯 の世帯主の申立てによりその仕送り収入を認定してきたところ、最近になって子の収 入が増額し、出身世帯に対する仕送り額も相当程度増額していることを、現業員が民 生委員から聞いた。 そこで、現業員は、世帯主に対し現状を聞いたところ、あいまい な回答しか得られなかった。 事実を確認するため、郵便局におもむき仕送り額を調査 したところ、信書の秘密をもらすことはできないとのことであったので、世帯主に対 し了解を求めたが、本人はこれを拒否した。 この場合法 第28条第1項の規定に基づく 調査を拒否したものとして、同条 第4項の規定により保護を停廃止して差し支えない か。
〔参照〕局 第11-2-(1)-キ 局 第11-2-(1)-ク (答)設問の場合、法 第28条第1項の規定に基づく立入調査を拒否したものとして取り扱 うことは適当でない。 この場合は、世帯主に対して収入を届出ることについて法 第27条第 1項の規定に基づき指示し、これに応じない場合は法 第62条第3項の規定に基づき行政措 置を採ることとなる。
(問11-13)〔暴力常習者等への対応〕 暴力常習者等、生活保護法上の義務履行を免れるため暴力的言動によりケースワー カー等福祉事務所職員を威嚇し、指導に従わないケースがある。
福祉事務所職員に対して、直接暴力を振い、傷害を与えたり、又は、再三職員を脅 迫していることが明らかなケースについては、法に定める生活上の義務について十分 説明するとともに、かかる行為を厳に慎むよう法 第27条による文書指示を行い、再び 繰り返すようであれば法 第62条第3項により停廃止を行うこととして取り扱ってよい か。
〔参照〕法 第27条
したがって、設問のような場合には、所定の手続きにより保護の停廃止を行うこととし て差し支えない。 なお、具体的に暴力行為が行われた場合は速やかに警察へ通報する等の 手続をとること。
(問11-14)〔パソコンの購入と生活指導〕 保護の受給中に生活を切りつめて貯金をし、新規にパソコンを購入することは認め てよいか。
(答)現行法上、支給される扶助費を含め被保護世帯の収入の使途は、基本的には当該世 帯の自由とされている。 したがって、保有を認められている資産について、これを新親に 購入することとしても問題は生じない。 ただし、被保護者は常に支出の節約をはかり生活 の維持向上につとめなければならないとする法 第60条の要請に違反すると認められる場合 には法 第27条による指導指示を考慮することとなる。
(問11-15)〔資産活用の指導指示〕 夫婦のみの世帯で夫が医療扶助のみを受けている。 最近、夫の伯父が死亡し、その 遺産として山林5haを夫が相続したことが判明した。 この山林は、これを所有してい ても最低生活維持のために何ら役に立たず、また将来の自立更生を図るうえからも必 要としないものであって、しかも、わずかの努力を払うことによって買手のつくこと が明らかであったので、現業員が口頭でその売却を指導したところ、夫は、妻と協議 離婚し、その山林をすべて妻に贈与した。 妻は夫が病に倒れてから引き続き就労中で あるが、この場合夫は法 第4条に規定する保護の要件を欠くものとして保護の停止又 は廃止を決定して差し支えないか。 また、この贈与が夫の悪意によるものでなく、本 人の死に対する諦めから妻に対し感謝の意味においてなされたものである場合には、 そのような措置は適当でないとも思われるが、どうか。
〔参照〕法 第27条 法 第62条第1項、第3項 法施行規則 第19条 (答)保護受給中において保護の要件を欠くに至った場合に、それが本人の努力によって 是正し得るものであれば要件の欠除を理由として一方的に保護を廃止することは適当でな く、まず本人の努力による是正について指導指示を行い、その結果をまって措置するのが 妥当であろう。
本件の場合もまず、遺贈を受けた山林を離婚した妻に贈与したことについて、元来本人 の所有する資産は本人の最低限度の生活維持のために活用すべきであり、したがって、こ れが返還について努力をするよう、かつ、この努力を払わない場合には保護の要件を欠く ことになる旨、文書をもって指示し、これに従わない場合に初めて保護の停止又は廃止処 分を行うべきである。 次に、この贈与がたとえ本人の好意に基づくものであっても、法に 定める保護の要件を満たすことにはならないのであって自己の所有する資産は、まず自己 の生活維持のために活用することを要する以上、上記と同様に措置されて然るべきである。
(問11-16)〔恩給受給権に関する指導指示〕 施設に入所保護している者の恩給、公務扶助料、遺族年金等については、施設長が 自己負担分として本人から徴収しているが、本人が消費してしまって徴収が不可能と なる場合がある。 この場合、施設長が本人に対し恩給金等の受領を委任するよう強制 することができるか。 また、本人負担分を納入しない場合、法 第27条による指導指示 に従わないものとして、法 第62条により退所させることができるか。
〔参照〕恩給法 第11条 戦傷病者戦没者遺族等援護法 第46条 局 第11-2-(1)-サ (答)恩給を受ける権利は、受給権者の一身専属権であるとされており、これを譲渡した り又は担保に供したりすることはできず、また差し押さえることもできないこととされて いる。 これと同様の趣旨の法的措置は、戦傷病者戦没者遺族等援護法、国家公務員共済組 合法、地方公務員等共済組合法、厚生年金保険法等にもあるが、これはいずれも社会的経 済的に比較的弱い立場にある者を保護しようとする趣旨に基づくものであって、判例にお いても恩給法 第11条の脱法行為を防ぐ意味から、恩給金受領の委任と受領する恩給金によ る債務の弁済充当についての合意はもとより有効であるが、委任契約を任意に解除するこ とができない旨の特約をしているものは無効であるとされている。
したがって、設問の場合でも、受給権の施設長に対する恩給金等の受領委任につき保護 の実施機関や施設長が指導することは可能であるが、これを強制することはできないもの である。 ただ、最低限度の生活を維持する上で必要なものはすべて施設において現物給付 の形において与えられるのが建前であるから、強制できないけれども、できるだけ施設長 が代理受領の権限をもつよう指導する必要があろう。
つぎに、保護施設を利用する者は、その施設の管理規程に従わなければならない義務が ある(法 第62条第2項)。 これには通常自己負担の納入に関する規定があるから、施設長 が法 第48条第2項の規定に基づいて行う自己負担分納入の指導に従わない場合は管理規程 に違反するものとして法 第62条第3項の規定による措置を行うことになる。 ただし、これ はあくまで最終的な措置であって、事前に現業員等による指導指示が行われ、しかる後に 文書をもって指示をなした上で考慮されるべきものであるということはいうまでもない。
(問11-17)〔年金等の裁定請求の指導〕 年金受給権を有する被保護者が「年金等の支給を受けても、生活費の額に変わりは ないから年金の煩わしい申請手続はとらない」と申し出ることがある。 このような場 合、他法他施策の活用の必要を説明し、なおかつ申請しない場合は、指導指示違反に よる保護の停止又は廃止を考慮してよいか。
〔参照〕次 第6 局 第6 (答)年金等の受給権を有することが明らかである被保護者に対しては、保護の補足性を 説明して申請を行うよう指導すべきであり、受給権を有することが明らかであり、かつ、 申請を行うのに特別の障害のないのにもかかわらず、指導に従うことなく申請を行わない 場合には、保護の停止又は廃止を考慮することもまたやむを得ないであろう。
(問11-18)〔医療扶助単給世帯の自己負担分納入の指導指示〕 医療扶助の単給において、自己負担分の納入を怠るような場合の指導又は指示につ いてはどのように考えるべきか。
〔参照〕医療扶助編 問22 (答)医療扶助単給の一部自己負担分は、被保護世帯と指定医療機関との間の私法上の財 産関係であるにとどまるものであるから、実施機関はこれの納入について直接には関係を 有しないものであるが、自己負担分の納入を怠ることは、ひいてはその世帯にその額だけ 法による最低限度以上の生活を営むことを許す結果となり、これは、保護は最低限度の生 活を超えない程度において行われるとする法 第8条の規定に反することとなるので、本法 運営上の見地から、積極的にその納入を促し、又は指導若しくは指示を行うべきである。
なお、本法による保護が世帯を単位としてその要否及び程度が定められ、かつ、実施さ れるものである以上、単に医療を必要とする被保護患者のみでなく、それ以外の世帯員も 医療を必要とする者が医療扶助を受けることによって最低生活を保障されているのである から、医療扶助を受けていない他の世帯員も当然被保護者である。 したがって、これらの 者は一部自己負担を納入すべき責を直接有している者とともに最低限度の生活の維持に努 め、一部自己負担の納入に協力することを要することは当然であるから、指導指示は形式 的に医療扶助を受けている者に対してなされようとも、これを通じて実質上は全世帯員を 含めその対象とするものである。
(問11-19)〔命令入所患者等に対する指導指示〕 入院患者日用品費の支給を受けている感染症予防法 第19条、第20条又は第46条の規 定に基づく勧告入院患者に対しても保護決定実施上の指導指示は当然これを行い得る ものと解されるがどうか。 また、同じく入院患者日用品費の支給を受けている精神保 健福祉法 第29条の規定に基づく措置入院患者の場合もあわせて教示されたい。
(答)お見込みのとおり、保護の実施機関は被保護者に対して、生活の維持、向上その他 保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができることとなっており(法 第27条)、 入院患者日用品費を受けている感染症予防法の勧告入院患者及び精神保健福祉法の措置入 院患者の場合ともに、当然、必要な指導指示を行って差し支えない。
(問11-20)〔指導指示及び審査請求〕 法 第27条に規定する指導又は指示と、法第27条の2に規定する相談及び助言とは、 どのような違いがあるのか。 また、法 第27条に規定する指導指示は、法第62条の規定 により被保護者に受忍の義務を負わしている関係上行政処分と解されるので、行政不 服審査法に基づく審査請求の対象となるものであるか。
〔参照〕法施行規則 第19条 (答)法 第27条に規定する指導及び指示の事項は、局第11の2の(1)に列挙されている が、これらはいずれも実施機関の発意により行われるものであり、被保護者がこれを遵守 しなかった場合には、法 第62条の規定により保護の停廃止を行うことができるものである。
これに対して法 第27条の2に規定する相談及び助言は被保護者の求めに応じて行うもので あり、被保護者に対する強制力がない点で、両者は異なるものである。
法 第27条に規定する指導指示は、被保護者に受忍義務を負わせるものであるが、それに よって国民の権利・義務、その他法律上の利益に直接影響を及ぼすものではないので不服 申立ての対象となる行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為であるとはいえず、文 書でなされるか否かにかかわりなくこれに対して不服申立てを提起することはできない。
不服申立ての対象となるのは、文書でなされた指導、指示に違反したことにより、保護 の変更、停止又は廃止の処分がなされた場合の当該保護の変更、停止又は廃止の処分であ る。
3 検診命令
(問11-21)〔労働能力と検診命令〕 被保護世帯に、1年前に転入してきた成年男子がいる。 転入と同時に被保護者とし て同一世帯内で保護を適用し、今日に至っているが、身体も頑健のように見受けられ 通常の労働に耐えられると認められたので就労を指導したところ、2か月程前の医師 の診断書を呈示し、自分は病弱であるから適当な職がないと申し立てて就労しようと しない。 医師の診断書には、胃弱で適度の休養を要するとあるのみで、本人は2か月 前のこの時を除きこの1年間医師の治療を受けたようにも思われないし、医療扶助を 適用したこともない。 毎日遊んでばかりで、近隣からも非難の声があがっている状況 であるが、このような場合どのように措置したらよいか。
〔参照〕局 第11-4-(1)-ア (答)局 第11の4に定めるところにより本人に対して法第28条第1項の規定に基づく検診 命令を発し、嘱託医、公的医療機関その他保護の実施機関が適当と認めて指定した医師の 検診を受けさせ、その結果によって措置すべきである。 検診を拒否した場合は同条 第4項 の規定により保護の停止又は廃止処分を行う。 この際はいわゆる聴聞は必要としない。 検 診の結果就労可能である場合には、本人に対し就労の指導を行い、必要な場合には公共職 業安定所等の協力を得て適当な職場をあっせんしてもらう。 適当と認められる職場がある にもかかわらず保護の実施機関の指導に従おうとしないときは、就労につき文書で指示し、 なおかつこれに従わないときは法 第62条第3項の規定により保護の停止又は廃止を行うこ とになる。 この場合には同条 第4項の規定により聴聞を行わなければならないので、留意 すること。
(問11-22)〔検診命令と診断書-その1〕 局 第11の4の(1)のイにおける「障害者加算その他の認定」のうち「その他の認 定」とはどのようなものがあるか。
〔参照〕問8-27 (答)障害基礎年金等の申請のため診断書を必要とする場合、身体障害者手帳の交付を受 けるため診断書を必要とする場合などが予想される。
(問11-23)〔検診命令と診断書-その2〕 局 第11の4の(1)のクにより検診命令の対象としている「保護の決定実施上必要 と認められるとき」には、就職の際提出を求められた健康診断書の交付を受けるに必 要な場合も含むか。
(答)健康診断は医療扶助の対象とならない。 就職に伴って必要とするときは、お見込み のとおり、検診命令によって差し支えない。
ここでいう「援助方針」と自立支援プログラムでいう「支援方針」とは、「援助方針」 が実施機関の側が主体となるのに対し、「支援方針」は要保護者が主体となり実施機関の 側はそれを側面から支援する点で異なるものである。 なお、実務上「援助方針」の策定に あたって両者を明確に区別する必要はなく、必要に応じて「支援方針」としての性格を有 する方針を盛り込んで差し支えないものであるが、この場合「方針に従わない」ことのみ をもって「指導指示」を行うことは適当ではない。
(問12-1)〔援助方針策定上の留意点〕 援助方針を策定するにあたってどのような点に留意したらよいか。
〔参照〕局 第12-4 (答)次の点について留意されたい。
(1)方針の策定にあたっては要保護者の生活実態の把握と個々の要保護者の自立に向け ての課題分析が必要であること。
「生活実態の把握」や「病状調査」は方針決定の前段の作業であって、方針ではな いので注意が必要である。
(2)方針はできるだけ具体的に記載すること。
いわゆる4文字熟語で終わるような方針は極力避ける必要がある。 「療養専念」は 実施機関としての方針にすらなっていないし、「就労指導」とする場合も、具体的な 指導援助の方針を記載する必要がある。
(3)短期的な視点だけでなく、中長期的な視点に立った方針も検討すること。
短期的な視点とは、その世帯にとって解決しなくてはならない保護実施上の課題と、 その課題の解決に向けてのアプローチの方法である。 また、中長期的な視点とは、将 来に向けての世帯の自立(経済的自立、社会生活自立、日常生活自立)の目標と、そ の目標を達成するためのプロセスである。 これらの両方の視点について十分、意識的 に書き分けるなどの方法により明記することが望ましい。
(4)世帯全体の方針に加え、個々の世帯員にも着目した方針を策定すること。
特に、世帯内の子どもについて留意する必要がある。
(5)多様な問題を抱えた世帯については、ケース診断会議等を活用して組織的な検討を 行ったうえで方針を策定すること。
援助方針は組織としての方針であり、現業員がひとりで抱え込まないよう留意する 必要がある。
(問13-1)〔不当受給に係る保護費の法 第63条による返還又は法第78条による徴収の 適用〕 収入申告が過少であったりあるいは申告を怠ったため扶助費の不当な受給が行われ た場合については、法 第63条による費用の返還として取り扱う場合と法第78条による 徴収として取り扱う場合の二通りが考えられるが、どういう場合に法 第63条又は法第 78条を適用すべきか、判断の標準を示されたい。
(答)本来、法 第63条は、受給者の作為又は不作為により実施機関が錯誤に陥ったため扶 助費の不当な支給が行われた場合に適用される条項ではなく、実施機関が、受給者に資力 があることを認識しながら扶助費を支給した場合の事後調整についての規定と解すべきも のである。
しかしながら、受給者に不正受給の意図があったことの立証が困難な場合等については 返還額についての裁量が可能であることもあって法 第63条が適用されているわけである。
広義の不当受給について、法 第63条により処理するか、法第78条により処理するかの区 分は概ね次のような標準で考えるべきであろう。
① 法 第63条によることが妥当な場合 (a)受給者に不当に受給しようとする意思がなかったことが立証される場合で届出又は 申告をすみやかに行わなかったことについてやむを得ない理由が認められるとき。
(b)実施機関及び受給者が予想しなかったような収入があったことが事後になって判明 したとき(判明したときに申告していればこれは、むしろ不当受給と解すべきではな い。 ) ② 法 第78条によることが妥当な場合 (a)届出又は申告について口頭又は文書による指示をしたにもかかわらずそれに応じな かったとき。
(b)届出又は申告に当たり明らかに作為を加えたとき。
(c)届出又は申告に当たり特段の作為を加えない場合でも、実施機関又はその職員が届 出又は申告の内容等の不審について説明等を求めたにもかかわらずこれに応じず、又 は虚偽の説明を行ったようなとき。
(問13-2)〔扶助費の遡及支給の限度及び戻入、返還の例〕 次に示す場合について、扶助費の戻入、返還等の取扱いを教示されたい。
(a)世帯員の転入等の事実が明らかとなったため、既に扶助費を支給した月の最低 生活費の額を増額して認定する必要が生じたとき。
(b)世帯員の転出等の事実が明らかとなったため、既に扶助費を支給した月の最低 生活費の額を減額して認定する必要が生じたとき。
(c)収入減の事実が明らかとなったため、既に算定した収入充当額が過大となった とき (d)収入増の事実が明らかとなったため、既に算定した収入充当額が過少となった とき (e)扶助費を支給したあとで当該扶助の目的が消滅したような場合(例えば、就職 支度費を決定支給したあとで本人が死亡等により就職することができなくなった ような場合) 〔参照〕局 第10-2-(8) 課 第10-11 行政不服審査法 第14条第1項 (答)1 扶助費追加支給の限度 (a)の場合どの範囲まで最低生活費の認定を事後変更していわゆる追給の措置をとる べきかが問題となる。 本来転入その他最低生活費の認定変更を必要とするような事項につ いては、収入申告と同様、受給者に届出の義務が課せられているところでもあるし、また、 一旦決定された行政処分をいつまでも不確定にしておくことは妥当でないので、最低生活 費の遡及変更は2か月程度(発見月及びその前月分まで)と考えるべきであろう。 これは、 行政処分について不服申立期間が一般に60日間とされているところからも支持される考え であるが、2か月を超えて遡及する期間の最低生活費を追加支給することは、生活保護の 扶助費を生活困窮に直接的に対処する給付として考える限り妥当でないということも理由 のひとつである。
2 扶助費戻入決定の遡及の限度 (b)の場合、(a)と逆に、扶助費の額を遡及変更して、過渡分を戻入する必要がある わけであるが、この場合も遡及変更の限度は2か月程度と考えるべきである。 行政処分自 体に安定性が要請されると同様、行政処分の相手方にとっても既に行政処分がいつまでも 不確定であることは妥当でないからである。
この場合、不正受給が明らかとなった場合の取扱いに留意する必要があるほか、生活保 護法においては、次のような特例がある。
すなわち、遡及変更に基づき返還すべき扶助費の額であっても、法 第80条の規定に基づ き返還を免除することができるわけである。 既に決定支給した扶助費の額を減額変更して 扶助費を返還させる場合、財務処理上は「戻入」という手続がとられるが、法 第80条はそ のような戻入すべき額の免除を定めたものである。
なお、法 第80条は、保護廃止、停止、変更に伴う保護金品の返還命令自体の根拠となる 規定ではない(保護の廃止、変更等に伴い前渡した保護金品を支弁者に返還すべきことは、 民法 第703条に示されたところによっている。 )。
3 収入の増減が明らかとなった場合の取扱い (c)及び(d)の場合、それぞれ(a)及び(b)と同様である。
すなわち、収入の増減が事後になって明らかとなっても何らかの調整を考えるべき範囲 は2か月程度と解すべきである。
この場合の保護費支給額の事後調整の方法については、(c)のような場合で追加支給を 要するときは、課 第10の11にあるように収入充当額の認定を遡及変更して保護費の追加支 給を行う。 また、(d)のような場合で、既に支給した保護費の一部(場合によっては全部) を返還させるべき場合は、局 第10の2の(8)により、その返還を要する額を次回支給月 以後の収入充当額として計上することによって調整することができる。
この取扱いは、遡及変更が2か月までできるので、この戻入分を翌月の収入に繰入れる ことができることとしたものである。
すなわち、戻入として処理すべき金額を当該世帯の資力として認定するという考え方に 基づくものであるが、次の点に留意する必要がある。
ア この取扱いが認められるのは、確認月及びその前月までの分として返納すべき額に限 ること。 したがって、それ以前の返納額は法 第63条により処理すべきである。
イ 確認月及びその前月までの分であっても法 第80条を適用すべき事情があるときは、こ の取扱いは認められないこと。
なお、収入の増加が事後になって明らかとなった場合((d)のケース)も、(b)につい て述べたと同様、戻入、法 第63条による返還、法第80条の適用が考えられる。
ただ、収入の増について、届出義務との関連もあり、例えば、法 第80条の適用は安易に 考えるべきではない。 発見月又はその前月の収入増減(賞与、期末手当等による)につい ては、局 第10の2の(7)のエの規定により相当の範囲まで事後調整ができるものとして 取り扱うべきであろう。 (このことは臨時的な収入について6か月間の分割認定が認めら れていることとの均衡からも理解されよう。 ) 4 扶助決定の取消 (e)の場合、扶助費の決定処分を取消しで戻入決定すべきであろう。 (事情によっては 法 第80条の適用も可能ではある。 ) 事実上は、(e)のような場合でも、保護の廃止又は変更の決定が行われているが、理論 的には保護の廃止、変更と保護に関する処分の取消しとは区別されるものである。
(問13-3)〔戻入すべき場合の収入充当〕 局 第10の2の(8)により返納額を収入充当額として計上するのは、必ず次回支給 月1回でなければならないか。
(答)事情に応じて1回又は数回に分割して計上すべきである。
(問13-4)〔戻入又は返還の適用〕 扶助費の返還を要する事情が明らかとなった場合、発見月及びその前月の分の処理 は必ず戻入の決定又は局 第10の2の(8)によらなければならないか。
(答)発見月及びその前月の分であっても法 第63条の規定による返還として決定しても差 し支えない。
(問13-5)〔法 第63条に基づく返還額の決定〕 災害等による補償金を受領した場合、年金を遡及して受給した場合等における法第 63条に基づく返還額の決定に当たって、その一部又は全部の返還を免除することは考 えられるか。
(答)(1)法 第63条は、本来、資力はあるが、これが直ちに最低生活のために活用できな い事情にある場合にとりあえず保護を行い、資力が換金されるなど最低生活に充当できる ようになった段階で既に支給した保護金品との調整を図ろうとするものである。
したがって、原則として当該資力を限度として支給した保護金品の全額を返還額とすべ きである。
(2)しかしながら、保護金品の全額を返還額とすることが当該世帯の自立を著しく阻 害すると認められるような場合については、次の範囲においてそれぞれの額を本来の要返 還額から控除して返還額を決定する取扱いとして差し支えない。
なお、次 第8の3の(5)に該当する必要経費については、当該収入から必要な最小限 度の額を控除できるものである。
ア 盗難等の不可抗力による消失した額。 (事実が証明されるものに限る。 ) イ 家屋補修、生業等の一時的な経費であって、保護(変更)の申請があれば保護費の支 給を行うと実施機関が判断する範囲のものにあてられた顔。 (保護基準額以内の額に限 る。 ) ウ 当該収入が、次 第8の3の(3)に該当するものにあっては、課第8の40の認定基準 に基づき実施機関が認めた額。 (事前に実施機関に相談があったものに限る。 ただし、 事後に相談があったことについて真にやむを得ない事情が認められるものについては、 挙証資料によって確認できるものに限り同様に取り扱って差し支えない。 ) エ 当該世帯の自立更生のためのやむを得ない用途にあてられたものであって、地域住民 との均衡を考慮し、社会通念上容認される程度として実施機関が認めた額。
なお、次のようなものは自立更生の範囲には含まれないものである。
① いわゆる浪費した額 ② 贈与等により当該世帯以外のためにあてられた額 ③ 保有が容認されない物品等の購入のためにあてられた額 オ 当該収入があったことを契機に世帯が保護から脱却する場合にあっては、今後の生活 設計等から判断して当該世帯の自立更生のために真に必要と実施機関が認めた額。
(3)返還額の決定は、担当職員の判断で安易に行うことなく、法 第80条による返還免 除の決定の場合と同様に、そのような決定を適当とする事情を具体的かつ明確にした上で 実施機関の意思決定として行うこと。
なお、上記のオに該当するものについては、当該世帯に対してその趣旨を十分説明する とともに、短期間で再度保護を要することとならないよう必要な生活指導を徹底すること。
(問13-6)〔費用返還と資力の発生時点〕 次の場合、法 第63条に基づく費用返還請求の対象となる資力の発生時点はいつと考 えるべきか。
(1)障害基礎年金等が裁定請求の遅れや障害認定の遅れ等によって遡及して支給さ れることとなった場合 (2)被保護者が財産を相続することとなったが、相続人が多数のため遺産分割手続 に期日を要した場合。
(3)自動車事故等の被害により補償金、保険金等を受領した場合 (4)保護開始前の災害等に対する補償金、保険金等を受領した場合 (5)開始時において保有を容認されていた資産(土地等)が保有を否認された場合 (6)離婚訴訟等に伴い慰謝料等を受領した場合 〔参照〕昭和47年12月5日社保 第196号保護課長通知 課 第3-22 (答)(1)国民年金法 第18条によると、年金給付の支給は「支給すべき事由が生じた日の 属する月の翌月から」支給されることとなっているが、被保険者の裁定請求が遅れたり、 又は裁定に日時を要した場合には、既往分の年金が一括して支給されることになる。 つま り、年金受給権は、裁定請求の有無にかかわらず、年金支給事由が生じた日に当然に発生 していたものとされている。 したがって、この場合、年金受給権が生じた日から法 第63条 の返還額決定の対象となる資力が発生したものとして取り扱うこととなる。
このように、社会保険庁へ裁定請求した日又は裁定があった日を資力の発生時点として 取り扱わないので、受給権が発生しているにもかかわらず本人が裁定請求を遅らせる等悪 意的要票によって資力の発生時点を変えることはできないこととなる。
なお、上記により資力の発生時点が保護の開始前となる場合でも、返還額決定の対象を 開始時以降の支払月と対応する遡及分の年金額に限定することのないよう留意すること。
(2)相続は死亡によって開始され、相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属し た一切の権利義務を承継するもの(民法 第882条、第896条)とされており、また、共同相 続人は、協議によって遺産の分割をすることができ、その効力は相続開始のときに遡って 生ずること(民法 第907条)とされている。
したがって、法 第63条に基づく費用返還の対象となる資力の発生時点は、被相続人の死 亡時と解すべきであり、遺産分割手続により被保護者が相続することとなった財産の額を 限度として、被相続人死亡時以後支給された保護費について返還請求の対象とすることと なる (3)自動車事故等 第三者の加害行為により被害にあった場合、加害行為の発生時点か ら被害者は損害賠償請求権を有することとなるので、原則として、加害行為の発生時点で 資力の発生があったものと取り扱うこととなる。
しかしながら、ここにいう損害賠償請求権は単なる可能性のようなものでは足りず、そ れが客観的に確実性を有するに至ったと判断される時点とすることが適当である。
自動車事故の場合は、被害者に対して自動車損害賠償保障法により保険金(強制保険) が支払われることが確実なため、事故発生の時点を資力の発生時点としてとらえることに なる。
これに対し、公害による被害者の損害賠償請求等の場合は、請求時点では、加害行為の 有無等不法行為成立の要件の有無が明らかではなく、事後的にこれに関する判決が確定し、 又は和解が成立した時点ではじめて損害賠償請求権が客観的に確実性を有することになる ので、交通事故の場合とは資力の発生時点を異にすることになる。
(4)保護開始前の災害等により補償金(損害賠償金を除く。 損害賠償金は上記(3) の公害等の場合と同様に取り扱うこととなる。 )、保険金等が保護開始後に支給された場合 は、被災したことが明らかである限り、被災時より保障金請求権、保険金請求権等は客観 的に確実性を有するものであることから、保護開始時より資力があるものとして返還額決 定の対象となる。
(5)保護開始時において保有が容認された資産(土地等)については、保有が容認さ れている限りは、法 第63条の「資力があるにもかかわらず」の要件に該当しない状態にあ ると言える。
しかしながら、処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められる場合、ケース診 断会議において処分指導が適当と認められた場合等、保有を否認された時点以降は、当該 資産は活用すべき資産となり、法 第63条にいう資力の発生があったものとして取り扱うこ ととなる。
具体的には、文書により資産保有の否認、処分指導等を通知した時点以降の保護費が返 還額決定の対象となる。
なお、要保護世帯向け長期生活支援資金を利用した場合の取扱いは課 第3の22により別 途定められているので留意されたい。
(6)離婚、婚約不履行等に伴う慰謝料の支払いがあった場合、法 第63条に基づく返還 額決定の対象となる資力の発生は、調停、審判、訴訟等の結果、慰謝料請求権自体が客観 的に確実性を有するに至った時点でとらえる必要がある。
したがって、保護開始時において調停、審判、訴訟等が継続中の場合は、慰謝料請求権 が確定した時点から資力が発生することとなるため、その時点以降収入認定をすれば足り ることになる。
なお、ここで子供の養育料等の支払がある場合は、扶養義務者による扶養であるので、 将来にわたって収入認定をすることになる。 扶養義務者による扶養は、法 第4条第1項に いう利用し得る資産等には該当せず、生活保護に優先して行われるべきものであるが、そ もそも法 第63条の返還額決定の対象とはなり得ないのである。
以上、具体的に法 第63条の費用返還額の決定における資力の発生時点のとらえ方を説明 してきたが、いずれにせよ法 第63条の適用に当たっては、上記の事例の他、国民健康保険 加入者が医療費を必要とする場合、他法他施策等を活用した場合には高額療養費の自己負 担限度額までの借入れで済むものが、生活保護を適用した場合には医療費の全額が返還額 決定の対象となること等を説明し、適正な債権管理が行われるように対応する必要がある と言えよう。
(問13-7)〔返還金等の滞納処分〕 法 第63条による返還金、法第77条又は第78条による徴収金を納付しない者について 国税滞納処分の例による徴収ができるか。
〔参照〕地方自治法 第231条の3、第240条、同法施行令第171条~第171条の7 (答)地方公共団体の歳入については、法律で特に定めない限り、強制徴収の方法を講ず ることができないので、現在のところ、設問に係る返還金又は徴収金は、一般債権と同様 の保全手続(これについては地方自治法、同施行令等に規定があるほか通常の民事手続が 必要となる。 )に従って徴収すべきものである。
〔参照〕地方自治法 第231条の3 ① 分担金、使用料、加入金、手数料及び過料その他の普通地方公共団体の歳入 を納期限までに納付しない者があるときは、普通地方公共団体の長は、期限を 指定してこれを督促しなければならない。
③ 普通地方公共団体の長は、分担金、加入金、過料又は法律で定める使用料そ の他の普通地方公共団体の歳入につき 第1項の規定による督促を受けた者が、 同項の規定により指定された期限までにその納付すべき金額を納付しないとき は、当該歳入並びに当該歳入に係る前項の手数料及び延滞金について、地方税 の滞納処分の例により処分することができる。 この場合におけるこれらの徴収 金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
(注)「法律で定める使用料その他の普通地方公共団体の歳入」の例 国民健康保険法 第79条の2 地方自治法 第240条、同法施行令第171条~策171条の7
(問13-8)〔緊急保護と費用返還〕 A市に居住する幼児を抱えた母がB市に居住する元の夫のところに幼児を引き取ら せるためB市に来たが、元の夫から拒絶され、帰りの交通費もなく、B市の駅に仮泊 した。 このまま放置すればこの母子は、やがては生命の危険すら考えられるので、急 迫した状態にあるものと認め、保護を適用する必要があると思われるが、この場合の 取扱いはどうしたらよいか。
〔参照〕法 第19条第2項 法 第63条 法 第70条第2項 法 第72条第2項 (答)B市の実施機関は、法 第19条第2項の規定によって現在地保護を行い、応急措置と して食費及び交通費(それぞれ現物給付でも差し支えない。 )を母子に対して支給する必 要がある。 その結果、B市は法 第72条第2項の規定による繰替支弁を行ったわけであるか ら、A市はB市に対して、事後的にこの費用を償還しなければならない。 後にA市の実施 機関が母子の資産を調査した結果、母子に資力があるものと認定されたときは、法 第63条 の規定により、母子はA市に対し自分の受けた保護費を返還しなければならないことにな る。 A市の実施機関は、返還を決定するに当たり、幼児を抱えた本人の現在の生活状況及 び将来の自立助長を考慮して、妥当と認められる額とするよう配慮すべきである。
(問13-9)〔給料未支給期間に対する保護の適用と費用返還〕 A村の村長が村役場の雇用人甲を解雇した。 甲は公平委員会に提訴して、3か月後 に解雇処分取消及び解雇されていた3か月間の給料遡及支給の決定を得た。 この間甲 は生活保護の適用を受けていたのであるが、甲は法 第63条の規定に基づく費用返選義 務を負うか。
〔参照〕昭和47年12月5日社保 第196号保護課長通知 (答)法 第63条による費用返還義務には、保護決定時において、後に資力として活用しう る債権を有していた場合も当然含まれる。
この場合、設問のように被保護受給期間中には必ずしも確定しておらず不安定な状態に あるにすぎないものは含まれないという考え方もあり得るが、判定等により確定すれば遡 って存在したものとされるのであるから、このような債権も法 第63条の適用が問題となる 時点においては同条にいう資力と解して何等差し支えないものである。
また、給料の遡及支給が実際問題となっているわけであるが、もしこれが設例のように 甲の主張が認められ、保護受給期間中解雇されなかった元の状態に復することになれば後 に支給される給料は、当然、その間の生活費にあてられるものと解すべきである。 これを まったくかえりみないとすれば、甲はその間二重の生活の資を得た結果となってしまう。
したがって、この場合は裁定前の恩給受給権と同様、法 第63条の資力を有していたもの として、甲は保護費相当額の返還義務を負うものと解すべきである。
(問13-10)〔死亡後の費用返還〕 死亡時まで生活保護法による保護を受けていた者について、法 第18条第2項第1号 の規定による葬祭扶助を行う場合、当該死亡者の遺留金品が相当あり、葬祭費に充当 してなお残金が生ずる場合はこれに対して法 第63条による費用返還措置を採るべき か。
〔参照〕法 第18条第2項第1号 法 第76条 法施行規則 第22条 (答)生活保護法 第76条にいう保護費とは、法第18条第2項の規定による葬祭扶助を行う ための保護費のみをいうのであって、これ以外の保護費は本条に規定する費用充当の対象 となるものではない。 したがって、設例のごとく当該死亡者の遺留資産を葬祭扶助費に充 当しても、なお残金がある場合には、葬祭扶助費以外の保護費を対象として法 第63条の規 定を適用すべきものではなく、すべて施行規則 第22条第2項及び第3項により措置すべき ものである。
しかしながら、当該死亡者が、生存中、相当の不動産を有しながら現実に買手がない等 のため資力があるにかかわらず保護を受けていたかまたは不実の申請その他不正な手段に より保護を受けていたことが明らかである場合には、生存中の保護費について法 第63条又 は 第78条の規定による費用返還の問題が生ずるが、この費用返還義務は相続人に承継され るものと解されるので、この場合は相続人に対し、相続人不存在のときは相続財産管理人 に対して費用返還を請求することとなる。
(問13-11)〔保護施設入所者が月の中途で保護廃止となった場合の返還金の取扱い〕 保護施設において入所保護していた者が月の中途で、退所又は死亡することにより 保護廃止となった場合、既に前渡した保護金品のうち、廃止日以後の部分については 施設長に対して返還を求めることができるか。 それとも退所した場合は退所者本人に 対して求め、死亡した場合は遺留金品として民法の規定により遺産相続させることに なるものであるか。
(答)保護施設の長は、法 第31条第5項の規定によって生活扶助費の受領について被保護 者の法定代理人たるの地位を有し、受領した保護費の使途についてある程度の裁量権を有 しているところである。 したがって、施設長が保護費を受領していた場合でも所有権は被 保護者に属しているものであるが、その運用、管理は施設長が行うものであるから過払い 等が発生した場合の精算義務は施設長にあるものと解される。 したがって、廃止日以後の 保護費の返還は施設長に対して求めることとして差し支えないものである。
(問13-12)〔費用返還義務の相続-その1〕 世帯主、妻、世帯主の母からなる3人世帯で、世帯主は肝臓がん、妻は結核で医療 を必要とするために生活保護の申請があった。 世帯主は畑50a、山林1haを所有して いたので、これを処分させた上で保護を適用しようとしたところが、いずれも早急に は買手もないことが明らかであったため、その売却につき文書で指示をするとともに 保護を開始した。 その後、これらの資産の売却が済まないうちに、母が脳出血で、世 帯主及び妻はそれぞれ上記疾患で次々に死亡した。 この夫婦の間には子1人がいるが 上記のような事情のため世帯主の弟の世帯に引き取られ、そこで扶養されていたので あるが、この子が世帯主の資産を相続することになった。 しかしながら、その子は未 成年者のため後見人となった世帯主の弟によって引き続き養育されることになった。
最近になって上記資産が売却され、相当多額の金が子の手に入ったが、この場合の 措置はどうしたらよいか。
〔参照〕民法 第896条 (答)設問の場合は資力あるにもかかわらず保護を受けていたのであるから、世帯主及び 妻は法 第63条の規定による費用返還義務を負うものであり、これらの者の相続人である子 はこの費用返還義務をも相続するものである。
(問13-13)〔費用返還義務の相続-その2〕 単身の被保護者が死亡し、その者の居住のために必要なものとして保有を認めてい た家屋が相続された。 この場合、相続人に対し法 第63条の規定による費用返還の請求 はできるか。
(答)法 第63条の規定による費用返還兼務は、保護受給中において保有を認められていた ものについては及ばないと解される。 したがって、被保護者には費用返還義務はなく、相 続人にもこの返還義務はない。
(問13-14)〔費用返還義務の相続-その3〕 単身の被保護者が死亡したが、死亡後本人名義の貯金通帳が発見され、40万円の預 金があったことが判明した。 死亡者の葬儀は本人の弟が行ったが、他に身寄りがない ため、40万円の預金はその弟が相続することになった。 この預金は本人の保護開始前 からあったものであるが、保護開始の際における調査では発見できなかったものであ る。
本人に対する生前の保護費は約20万円であるが、相続人である弟に対し費用返還を 命ずることができるか。
〔参照〕問13-1 (答)設問の場合、資力があるにもかかわらず、調査不十分のため資力なしとして保護を 行ったケースであり、本人は法 第63条の規定による費用返還義務を負うものである。 ただ し、受給者に不正に受給しようとする意思があったことが立証され、届出又は申告を怠っ たことについてやむを得ないと認められる理由がないときは、法 第78条の規定により費用 を徴収することとなる。 また、本人の死亡後は、これらの規定に基づく費用返還義務は、 その限度で相続人に承継されるものである。
(問13-15)〔遺産相続と費用返還〕 結核で入院している母と昨年高等学校を卒業し町の工場で働いている子の2人世帯 から、生活保護の申請があった。 調査したところ、母に5haほどの山林があったが、 早急にはその買手が現われない見通しであったので、これを売却するよう指示すると ともに、子を世帯分離して、母のみ単身世帯とし、母に対する医療扶助を適用した。
適用後2年を経過したときに母の亡夫の兄が死亡し、子に300㎡の宅地が遺贈された この資産を当該世帯について検討するに資産保有の限度を超えているものである。 宅 地は町の中心部に所在し、売却しようとすれば1㎡10万円程度で容易に買手がつくこ とは明らかであるが、子に対し、宅地を売却するよう指示することができるか。 また 売却すれば多額の金銭を子は得ることになるが、母に対してこれまで行った保護費の 返還を命ずることができるか。
なお、母はまだ結核治療のため入院中であり、その所有する山林には買手がついて いない現状である。
〔参照〕問1-42 (答)世帯分離は、本来同一世帯として把握されるべき世帯を、世帯員の相互関係からみ て生活実態における社会通念上又は世帯の自立助長を図る観点から別世帯と擬制する措置 であるので、設問のような場合には、子に対し相当額の資産が遺贈されたのであり、かつ、 資産保有の限度を超えるものであるから、世帯分離措置を解除し、母と子とを同一世帯と して認定する措置をまず講ずべきであろう。 子が多額の資産を有するようになり、これを 活用すれば母の医療費は当分の間十分賄えるにもかかわらず、一旦世帯分離措置を行った からとして母の医療を生活保護でみることは社会通念上許されないからである。
世帯分離措置を解除した後において、その宅地の売却について指導し、売却資金入手を まって保護を廃止することになる。 費用返還義務は、原則として世帯分離措置を解除した 日から保護廃止の日までの間における医療費相当額については発生するが、それ以前にわ たる保護費についてまでは返還させることはできない。 ただし、母の所有する山林が売却 されたときは、その売却代金の範囲内において母に費用返還義務が生ずることはいうまで もない。
(問13-16)〔抵当権を設定されている資産の処分と費用返還〕 保護の開始申請があった時点において、抵当権(被担保債権:元金100万円、利息 年1割)が設定されている資産があった世帯に対し、当該資産が保有を認められる限 度を超えるものであったので、これを処分することにより当分の間保護の必要はない として、その処分を指示したが、急迫の状態にあると認められるとともにその資産を 直ちに売却することが困難であったため、保護の実施機関としては、当該資産を処分 した場合には、保護に要する費用を返還することを告知した上、一応保護を開始した 3年後に抵当権が実行され、当該資産は200万円で売却された。 抵当権を設定してい た債権者において、元金100万円と抵当権設定後3年分の利息30万円の計130万円の弁 済を受けようとしている。 この場合、保護の実施機関としては保護に要した費用の返 還額は如何程に決定すればよいのか。
〔参照〕民法 第369条 (答)抵当権設定後の利息のうち、満期となった最後の2年分の利息は抵当権によって担 保され(民法 第375条第1項)、抵当権者が優先して弁済を受けることから、保護開始時に おける資産の額は、売却価格(本件では200万円。 なお、3年間で資産価値に変動がなか ったものと仮定する。 )から、元金(本件では100万円)及び最後の2年分の利息(本件で は20万円)を控除した残額(本件では80万円)となり、この額と保護に要した費用とを比 較して返還額を決定することとなる。
なお、売却価格から元金及び最後の2年分の利息を控除した残額については、実施機関 は抵当権者を含めた他の債権者と共に債権額に応じて按分比例により平等に配当を受ける こととなる。 ただし、抵当権実行手続において配当を受けるためには、配当要求の終期ま でに民事執行法 第51条第1項の定めるところにより配当要求をしなければならず、このた めには、可能であれば、資産が売却されるのを待つことなく早期に資産の価値を把握し、 返還額の決定をすることが必要である。
(問13-17)〔法 第63条の費用返還と法第80条の返還免除との関係〕 法 第63条の規定による費用の返還と法第80条の規定による返還の免除との関係につ いて説明されたい。
〔参照〕民法 第703条 地方自治法施行令 第159条 (答)法 第63条の規定ほ、資力があるにもかかわらず保護を受けた者があるときは、もと の処分自体は有効なものとし、一方において、特別に費用返還義務を定めたものである。
法 第80条の規定は、保護の変更、廃止又は停止が行われたことに伴い、既に前渡された保 護金品のうち当該変更等のあった日以降の分を返還させるべき場合には、返還の免除が可 能である旨を定めたものである。 すなわち、前者においては、返還すべき費用に係る処分 決定は有効であるが、後者においては、返還すべき費用に係る決定処分は存在しない。 し たがって、次のような例においては、理論的に考えれば、現実に被保護者に支給された保 護金品は(A十A’+A”)であるが、法 第63条の規定により保護の実施機関が裁量の対 象とすべき額は(A+A’+B)であって、(A”-B=C)の部分は、法 第80条の規定 による返還免除の対象となり得ることとなる。 また、この二つの規定の前提となる返還義 務は異質なものである。 すなわち、法 第63条は、扶助費の変更決定を行わないままで費用 返還義務を定めたのである。 法 第80条は扶助費の廃止、変更に伴う保護費の返還義務自体 の根拠規定ではない。 すなわち、保護の廃止、変更等に伴い前渡した保護費を支弁者に返 還する義務は、民法 第703条により生ずることになり、法第80条は廃止、変更に伴い財務 処理上「戻入」すべき返還額の免除を規定したものである。
(参考図) 資力があるにもかかわらず 保護開始 (廃止) A A’ A” B C 5月1日 6月1日 7月1日 7月20日
(問13-18)〔費用返還請求の時期と消滅時効の開始時期〕 資産を有するが現実にこれを換金できないために保護を行った後、資産処分前に保 護を廃止した場合、法 第63条の規定による費用の返還の請求はいつ行うべきか。 また 同条の規定による返還請求権の消滅時効の開始の時期はいつか。
〔参照〕地方自治法 第236条 (答)保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村は、資力の発生の事実があったと き以降いつでも、保護の実施機関が決定した額について法律上の返還請求権を行使するこ とができるので、その消滅時効の起算点も「資力があるにもかかわらず保護を受けたとき」 と解することになる。 この返還請求権の消滅時効期間は5年間(地方自治法 第236条)な ので、実際に当該請求権を行使する日(法 第63条に基づき返還額の決定をする日)前5年 間を超える保護費については、消滅時効が完成したものとして取り扱って差し支えない。
具体例を挙げれば、 保護が1年間行われた後に廃止され、廃止後4年半経過したときにおいては、この返還 請求権の消滅時効は5年間であるから、はじめの半年間の保護費についての返還請求権の 消滅時効は完成していると解することができる。
(問13-19)〔返納告知書発行後の返還免除〕 保護の変更、廃止又は停止に伴い、前渡した保護金品の全部又は一部を返還させる 場合において、返還能力があるため戻入の手続をとり返納告知書を発行した。 ところ が、その後において生活保護法 第80条にいうやむを得ない事由により返還できなくな った場合は、同条に基づき返還を免除することができるか。
〔参照〕地方自治法 第240条 地方自治法施行令 第171条~第171条の7 (答)生活保護法 第80条の規定に基づく保護金品の返還免除の決定は、当該保護の変更、 廃止又は停止処分を行う時点において行うべきであり、返納告知書を発行する等の手続を とり返還債権として確定した後においては同条を適用することはできないものである。
したがって、返納告知書の発行等の手続をとった後において、返還不能の事態が生じた 場合は、債権管理一般の問題として処理すべきであり返還に関する処分について改めて何 等かの変更を加えることはできない。
(問13-20)〔保護金品の一部返還免除〕 法 第80条に基づく保護金品の返還免除は、返還すべき扶助費の一部について行うこ とはできないか。
(答)保護の廃止、変更等に伴い日割計算その他により算定される返納額の一部のみを返 還させることが妥当な場合は、法 第80条の要件に該当するかどうかについてその具体的な 事情を明確にした上で、当該返還可能な額を超える額について法 第80条を適用して差し支 えない。
(問13-21)〔法 第63条に係る資力について収入申告しなかった場合の取扱い〕 被保護者に対して交通事故に係る保険金の給付が行われることとなったので、法第 63条による費用返還義務が生じるため保険金を受け取った場合には、すみやかに収入 の申告を行うよう指示していた。
その後、被保護者からの申告がないことから、再度申告について指示したところ、 当該保険金は費消してしまったとの申し出があったが、この場合法 第63条又は法第78 条のいずれを適用すべきか。
(答)設問の場合は、保険金を受領するまでの間は「資力があるにもかかわらず保護を受 けていた」状態にあたり、この間に受給した保護費に不正はないが、保険金受領後は不正 に保護を受けていたことになる。 したがって、まず、保険金受領から発覚時までの保護費 については法 第78条を適用し、次に資力の発生時(交通事故発生時、保護開始前の事故の 場合は保護開始時)から保険金受領時までの保護費について法 第63条を適用し、なお残余 があれば収入認定を行うこととなる。
(問13-22)〔法 第78条の全部又は一部の解釈〕 法 第78条にいう「その費用の全部又は一部」とは何をさすのか。
(答)「その費用の全部」とは、支給した保護費の全額が不正受給である場合を言い、「そ の費用の一部」とは支給した保護費のうち一部が不正受給である場合を言うものである。
したがって、徴収額は、不正受給額を全額決定するものであり、法 第63条のような実施 機関の裁量の余地はないものである
(問13-23)〔法 第63条・法第78条と控除〕 法 第63条及び法第78条の返還対象額を算定するにあたり、収入認定の際に認められ る控除について適用することはできるか。
〔参照〕次 第8-3 課 第10-10-2 (答)(1)法 第63条を適用する場合で、保護開始時から資力を有していた場合 保護の開始時において既に資力を有していた場合は、もしその時点で資力が活用可能な 状態にあれば、それは現金化することにより最低生活の維持のために当てられていたもの である。 したがって、必要経費等を除き実際の受給額全額を返還の対象とすべきであり、 収入認定の際に認められる控除等は適用されない。
なお、課 第10の10の2に定める手持金の保有限度額については、あくまで保護開始時に おいて家計の繰越金として保有していた額を一定の範囲で容認する趣旨の規定であり、仮 に法 第63条の対象額が当該世帯の最低生活費の5割に満たなかったとしても、この取扱い により返還額を減じることはできないので、留意が必要である。
(2)法 第63条を適用する場合で、保護受給中に資力が発生した場合 (1)と異なり、保護開始後に発生した資力については、それが速やかに現金化できる 状況にあれば、本来収入認定を行うべきものである。 したがって、事後に資力が換金され、 その結果法 第63条を適用する場合には保護の実施要領に定める収入認定の各規定に従って 必要な控除等を適用すべきものである。
これを具体的な例に当てはめてみると、返還対象となる収入の種類が次 第8の3の(1) のアに規定する「勤労収入」であれば、必要経費のほか、基礎控除や特別控除、新規就労 控除、未成年者控除などの勤労控除を適用すべきであるし、生命保険の入院給付など、次
(3)法 第78条を適用する場合 保護の実施要領に定める収入認定の規定は、収入状況について適正に届出が行われたこ とを前提として適用されるものである。
したがって、意図的に事実を隠蔽したり、収入の届出を行わず、不正に保護を受給した 者に対しては、各種控除を適用することは適当ではなく、必要最小限の実費を除き、全て 徴収の対象とすべきである。
なお、被保護者が勤労収入について過少申告を行っていたことが判明した場合、不正に 申告していなかった収入額については必要最小限の実費を除き、全て収入額としてとらえ 返還させるが、当初申告された額については過少であっても収入申告されたものであるか ら無申告とは区別し、申告された額に応じた控除額を認定するものである。
(問13-24)〔法 第78条による費用返還義務〕 多額の保険金を受領していたにもかかわらず、収入申告をしていなかった者が、そ の後、保険会社から詐欺を理由に当該保険金の返還を求められているが、生活保護費 についても法 第78条により費用返還を求めるべきか。
(答)設問の保険金については受領時に収入申告が行われていれば収入として認定されて いたものであり、結果として不当に保護を受け、法に定める最低生活を超える生活を営ん だこととなるので、生活保護としても支給した保護費のうち、不正受給額について返還を 求めることとなる。
(問13-25)〔法 第78条による費用徴収と資力との関係〕 いわゆる不正受給について、法 第78条に基づいて費用を徴収すべき場合、相手方に 資力がないときはどう取り扱うべきか。
〔参照〕地方自治法 第240条 地方自治法施行令 第171条~第171条の7 (答)法 第78条に基づく費用の徴収は、いわば損害追徴としての性格のものであり、法第 63条や法 第77条に基づく費用の返還や徴収の場合と異なり、その徴収額の決定に当たり相 手方の資力(徴収に応ずる能力)が考慮されるというものではない。
法 第63条の返還額が「保護の実施機関の定める額」とされ、法第77条の負担額について 「保護の実施機関と扶養義務者の間の協議」が行われることになっているのに対し、法第 78条による徴収の額は、保護費を支弁した地方公共団体の長としての立場で決定すること になる。 この場合、保護の実施機関として額を定めることとされているものは、保護の目 的達成という見地からの配慮を強く要請される性格の返還や徴収であり、費用支弁団体の 長として額を定めるものと、主として財政支出の適正という見地から行われる徴収と解さ れるわけである。 (法 第63条に規定される返還額の決定の権限のほか、法第78条に基づく 費用徴収権限も福祉事務所長に委任されていることがあるが、前者が法 第19条第4項に基 づき「保護の決定及び実施に関する事務」として委任されているのに対し、後者は、保護 の実施機関としての権限の委任ではなく地方自治法に基づく一般的な権限委任として行わ れるものであり、その性格はあくまで区別されるものである。 ) 以上のような趣旨から、法 第78条に基づく費用の徴収は、相手方の資力にかかわりなく 決定されるべきものである。
そのように決定された費用徴収について、徴収の猶予を行うかあるいは最終的に徴収の 免除を行うかどうかということは、地方公共団体の徴収債権についての地方自治法その他 による一般的取扱いにより処理されるべきで、生活保護法には何ら規定がないものである。
(このことは、一旦決定された後の法 第63条による費用返還債権や、保護の変更、停廃止 に伴う戻入債権についても同様である。 ) なお、地方公共団体が、いわゆる不正受給について法 第78条の発動を怠っている場合は、 保護費の国庫負担に当たって当該地方公共団体に対し負担金返還措置がとられる場合があ る。
(問13-26)〔不正受給の徴収と罰則〕 法 第78条により費用の徴収を決定した場合は、必ず法第85条に定める罰則に関し告 発等の措置をとらなければならないか。
〔参照〕刑事訴訟法 第239条第2項 (答)法 第78条及び第85条の規定はいずれも「不実の申請その他不正な手段により保護を 受け」云々と同一の文言が用いられており、また、公務員が職務を行うにつき犯罪がある と思料したときには告発の義務が課せられていることから、設問のように解する余地もあ ろう。
しかしながら、法 第85条に基づく罰則の運用はあくまで司法処分として発動されるもの であり、法 第78条に基づく行政処分とはおのずと運用の主眼を異にするものであるので、 法 第78条により費用の徴収を決定した場合に必ず法第85条に定める罰則に関し告発等の措 置をとらなければならないというものではない。 したがって、告発等の措置をとるかどう かは、個々の事例の状況に応じて実施機関が判断することになるが、特に悪質な手段によ る不正受給の場合は、その社会的影響も考慮して正式に告発の手続きをとることが必要で ある。
(問13-27)〔司法処分と徴収額の関係〕 いわゆる不正受給について警察当局による摘発が行われた場合、起訴等の手続がと られなくとも、法 第78条に基づく費用の徴収を決定してよいか。
(答)問13-26にも示されるとおり行政処分としての費用徴収と司法処分としての罰則の 適用とはそれぞれ一応独立のものと解すべきである。
したがって、設問の場合であっても、行政機関として不正受給の事実及びその額が確認 できる範囲内であれば、警察当局の捜査又は起訴の有無にかかわらず費用の徴収決定を行 うべきである。 (関係書類の押収等により事実の確認が不可能なため事実上費用の徴収の 決定ができない場合も考えられるが、その場合であっても事実の確認ができるようになり 次 第、適正行政処分を行うべきである。 ) また、法 第78条に基づく費用徴収の額は必ずしも、司法処分において問題となる額(た とえば起訴又は判決において確定される額)とは一致することを要しないものであるが、 一旦徴収を決定した額を超える額が判決等において不正受給額として明らかにされるに至 ったような場合には、加えて費用徴収の決定を行うことも考えられる。
2 秘密保持
(問13-28)〔監査委員からの監査及び地方公共団体の議会からの検査と秘密の保持〕 生活保護事務について、地方自治法 第199条第1項、第2項(同法第98条第2項の 規定による普通地方公共団体の議会の監査請求に基づく監査を含む。 )の規定に基づ き、監査委員から監査の申入れがあった場合、又は同法 第98条第1項の規定に基づき 普通地方公共団体の議会から検査の申入れがあった場合は、これを認めてよいか。 ま た、地方自治法 第75条の規定による住民の監査請求に基づく監査についてはどうか。
〔参照〕地方自治法 第75条、第98条、第199条 地方自治法施行令 第121条の3、第140条の5 地方公務員法 第34条 (答)法定受託事務に関しては、地方自治法 第98条第1項、同法施行令第121条の3第2 項、同法 第199条第2項、同法施行令第140条の5第2項により、開示することにより個人 の秘密を害することとなる事項に係る事務(当該個人の秘密を害することとなる部分に限 る。 )については監査をすることはできないこととなっている。 そして、生活保護法に関 する事務は個人の秘密にわたることが極めて多いものであり、保護の決定及び実施に関す る事務、診療報酬の額の決定の事務等は開示することにより個人の秘密を害することとな るため監査をすることはできない。
これに対して、保護に要する費用は地方公共団体の歳入歳出予算に編入され経理される のであるから、この限りにおいて「普通地方公共団体の出納事務」であり、その側面にお いてのみ監査の対象となり、地方公務員法 第34条に規定する守秘義務に抵触しない限りに おいて監査の実施に協力することとなる。 しかしながら、これはあくまでも「普通地方公 共団体の出納事務」としてその側面においてのみ監査の対象となるということであり、開 示することより個人の秘密を害することとなる事項に係る法定受託事務について、出納事 務に関連させることにより保護台帳、ケース記録等を提出させて結果的に当該事務を監査 をすることは監査権の範囲を逸脱したものといわざるを得ない。 このように、出納事務の 執行の適否を問題にしつつその観点から離れた保護の決定及び実施の適否自体を監査する ことは許されるものではない。
なお、出納事務の監査が許される場合において、監査に際して必要があるときは、監査 委員は、地方自治法 第199条第8項の規定に基づき、関係人の出頭、関係書類の提出等を 求めることが可能であるが、被保護者の出頭を求める必要があることはないと考えられる。
また、法 第78条の不正受給に係る費用徴収事務のような特殊な場合でない限り、提出すべ き関係書類も保護費支給台帳にとどまり、ケース記帳等の提出は必要でないと考えられる。
地方公共団体の議会による検査についても、以上と同様に解される。
また、地方自治法 第75条の規定による住民監査請求に基づく監査の場合は、法定受託事 務についても特段これを制限する規定はないので、地方公務員法 第34条に規定する守秘義 務に抵触しない限りにおいて監査の実施に協力することとなる。
(問13-29)〔捜査機関からの照会に対する回答〕 被保護者について捜査機関から照会があった場合、どのように取り扱えばよいか。
〔参照〕地方公務員法 第34条 刑事訴訟法 第103条、第197条第2項 (答)照会が法令に基づくものであって、その趣旨、必要性を保護の実施機関の立場で充 分検討し、公益上の利益と他に開示されることによる本人の不利益とを比較衡量し開示す ることが社会通念に沿う場合には、必要な範囲内において回答して差し支えない。 具体的 には、例えば特定の者について保護費の詐取の事実が相当明らかになっている場合等がこ れに当たろう。
なお、特定個別の者についてなされた照会の場合に限り回答すべきであり、不特定多数 の者についての照会には、回答すべきでない。
なお、捜査機関が生活保護関係書類の押収をしようとする場合、保管者から職務上の秘 密に関するものである旨の申立てがあったときには、監督官庁の承諾が必要となる。
(問13-30)〔民間同体から説明を求められた場合と秘密保持の関係〕 一般民間団体や企業体から物品や役務を提供したいので被保護世帯の氏名住所を教 えて欲しいという要望があった場合の取扱い如何。
〔参照〕地方公務員法 第34条 (答)被保護者の氏名を明らかにすることは、正当な事由がない限り公務員の守秘義務に 抵触すると解すべきである。
設問のような場合、福祉事務所がひとまず当該物品を受け取ってこれを配布するか、物 品又は役務の提供を受ける場所、方法、手続を明らかにした図面のようなものを作成して これを福祉事務所側で被保護世帯に配布するなどの方法以外には要望にこたえる方法はな いものである。
(問13-31)〔被保護者の氏名と秘密保持〕
〔参照)地方公務員法 第34条 国家公務員法 第100条 民生委員法 第15条 (事)保護を受けることは国民に権利として保障され、したがって、現実に保護を受けて いる人は国家に対し国民の1人として、保障された権利を行使しているのであるからそう した権利を行使している者の氏名は秘密に当たる事項ではないと考えるむきもないではな い。 しかし、今日においても、できれば保護は受けたくないという気風も残っており、こ うした状況の下では、被保護者であるということを他人に知られたくないと考えることは 社会常識に反するとはいえないであろう。 そうだとすると、被保護者の氏名はやはり秘密 に当たる事項ということになる。 もっとも、このように被保護者の氏名は秘密に当たる事 項と解すべきであるが、いかなる場合、あるいは、どのような者に対してもこれを明らか にすることが守秘義務に反するというわけでもない。
このことについて簡単にいえば、まず、私人や団体から被保護者の氏名を知らせるよう 要請があった場合、これは許されないと解すべきである。 例えば、篤志家から義援の申し 出があったとき、学生などから調査、実習の目的で申出があったときのようにその目的が 不当なものでない場合であっても、被保護者の氏名を明らかにすべきではない。 その理由 としては、本人の立場からみて、秘密が保持されないということのほか、生活保護制度実 施上の見地からいっても特定の場合に保護受給者の氏名が、私人に対して明らかにされる ことは適当でないということも含まれるのである。
つぎに、公務員から要請があった場合であるが、法令の規定に基づく正当な権限の範囲 内での要求であり、かつ公益上の利益と他に開示されることによる本人の不利益等とを比 較衡量し、開示することが健全な社会通念に沿う場合であれば、必要な範囲内においてこ れに応ずべきことになる。 しかし、公務員からの要求であっても、職務以外の目的の場合 は拒否すべきである。
3 外国人保護
(問13-32)〔外国人保護の適用対象と実施責任〕 外国人の保護の適用対象及び実施責任について教示されたい。
〔参照〕昭29.5.8社発 第382号社会局長通知 昭41.1.6社保 第3号保護課長通知 昭57.1.4社保 第2号社会局長通知 (答)外国人(日本国籍を持たない者をいう。 したがって無国籍の者を含む。 )は法 第1 条及び 第2条により法の適用対象とならず、法による保護は受けられないが、昭和29年5 月8日社発 第382号厚生省社会局長通知により、当分の間法による保護に準ずる取扱いをす ることとされている。
対象となる外国人は、適法に日本に滞在し、活動に制限を受けない永住、定住等の在留 資格を有する外国人である。
具体的な在留資格等としては、 ① 「出入国管理及び難民認定法」(昭和26年政令 第319号)(以下「入管法」という。 ) 別表 第2の在留資格を有する者(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等及び定 住者) ② 「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例 法」(平成3年法律 第71号)の特別永住者 ③ 入管法上の認定難民 である。
なお、入管法別表 第1の5の特定活動の在留資格を有する者のうち日本国内での活動に 制限を受けないもの等の上記①~③以外の者について疑義がある場合には、厚生労働省に 照会されたい。
外国人保護の実施責任は、外国人登録上の居住地を基準として定めることとされ、この 点で法による保護と異なる取扱いを受けるのである。 ただ、一般的には前記通知3の問8 に示されているように、実際上は法による居住地と外国人登録上の居住地はほとんどの場 合一致すると考えられる。
(問13-33)〔外国人であるDV被害者の取扱い〕 配偶者による暴力等(以下「DV」という。 )被害から逃れるために、外国人登録 地と異なる居住地で生活している外国人に係る保護の実施責任はどうなるのか。
(答)外国人登録法(昭和27年法律 第125号)上、外国人が居住地を変更した場合は、新 居住地の市町村に居住地変更の登録をしなければならないことから、当該外国人に居住地 変更の登録を求めた上で、新居住地を管理する保護の実施機関が負うこととなる。
外国人登録原票の開示は、外国人登録法上、本人のほか、代理人、同居の親族、弁護士 等にしか認められていないため、新居住地の外国人登録原票を加害者が把握することは基 本的に考えられないが、実施機関においては、当該外国人が不利益を被る懸念を申し立て てきた場合等には、関係市町村の外国人登録担当部署に対して、当該外国人がDVの被害 者であることを周知するなど、不利益を被ることのないよう十分に配慮されたい。
なお、例外的に、法務省において実際の居住地とは異なる居所で外国人登録をすること が認められた場合には、実際の居住地において生活保護を適用して差し支えない。
(問13-34)〔外国人登録証明書を紛失した場合〕 甲はA市において外国人登録を行いその後B市に転入し生活していたが、その間に 外国人登録証明書を紛失したまま再交付手続をとらず、また居住地変更の届出も行わ なかった。 たまたま肺結核の発病により急拠入院治療を必要とするに至ったのでB市 所在の病院に入院するとともに保護の開始申請をした。 この場合の甲に対する保護の 実施責任はいずれの実施機関が負うべきか。
なお、甲はA市の告発に基づき外国人登録法違反容疑者として起訴され、現在裁判 所において審理中である。
〔参照〕昭29.5.8社発 第382号社会局長通知 (答)外国人に対する生活保護の措置は、有効な外国人登録証明書の提示を前提とするも のであるから、外国人登録証明書を有しない者に対し生活保護を行うということは通常は 考えられない。 しかし、保護の申請者が急迫した状態にあるため、登録原票は特定市町村 の事務所に備えつけてあるが外国人登録証明書を有しない者に対し保護を行うべき場合に は、当該原票に記載されている居住地によりその者の保護に係る実施責任を定めるべきで ある。 ただし、当該原票に記載されている居住地が実態と異なっていると認められる場合 には、すみやかに訂正がなされるよう関係当局に連絡すべきである。
なお、居住地の記載が実態と合致しているといないとにかかわらず、外国人登録証明書 の再交付の申請を行わせることが必要であることはいうまでもない。
(問13-35)〔外国人からの不服申立〕 生活保護に係る外国人からの不服申立ての取扱い如何。
〔参照〕平成13.10.15社援保発 第50号保護課長通知 (答)行政不服審査法(昭和37年法律 第160号)に規定する処分とは、公権力の主体 たる国又は地方公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形 成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいい、公権力の行使に 当たる事実行為で継続的性質を有するものを含むものとされていることから、法律上の権 利として保障されていない外国人に対する保護に関する決定は、当該処分に該当しないた め、生活保護に係る外国人からの不服申立てについては、処分性を欠くものとして、これ を却下すべきである。
なお、外国人に対する保護に関する決定に際しては、行政不服審査法 第57条第1項の 規定の趣旨から、不服申立てをすることができる旨等の教示をしてはならない。
4 その他
(問13-36)〔立入調査の時間的限界〕 法 第28条第1項の規定による立入調査は、真にやむを得ないときにのみ、日没後も 行い得ると解すべきか。
〔参照〕刑事訴訟法 第116条、第130条 (答)特別の事情がある場合の立入調査は、日没後も行うこととして差し支えない。 しか し法 第28条には、刑事訴訟法第116条第1項及び第130条第1項におけるような時刻の制限 は定められていないが、刑事訴訟法による差押、捜索又は検証において時刻の制限が設け られていることにかんがみれば、原則として夜間には立入調査を行わないこととするのが 妥当であろう。
(問13-37)〔調査に協力しない場合〕 保護申請時に要保護者が、保護の決定のために必要な調査に協力しないような場合 いかにすべきか。
〔参照〕法 第28条第1項、第4項 (答)調査に必要な要保護者の協力が得られないような場合には、その調査が必要な理由、 及び必要な協力の具体的な内容について墾切丁寧に説明し、それでもなお協力が得られな いのであれば、決定に必要な事実が明らかとならないから、実施機関は事実上決定ができ ないので、そのような場合は、調査が完了し、困窮の事実が明らかとなるまでは保護の決 定を行うべきでない。 なお、要保護者があくまで調査を拒み、妨げるときは、法 第28条第 4項に基づき申請却下等の措置をとることとなる。
現に受給中の者について同様の事実がある場合には、法 第27条に基づく文書による指導 又は指示を行い、なおかつ協力が得られないのであれば停廃止の処分を行うべきである。
(問13-38)〔委任状による保護費の受給〕 数世帯に対する保護金品につき、委任状持参の代理人から一括受領の申し出があっ た場合、これを認めてよいか。 特にこれによって保護の実施上支障をきたすような場 合はどうか。
(答)保護金品を交付すべき者は、被保護者本人であることを原則としているが、やむを 得ない事情がある場合、または保護の目的を達するために必要がある場合には、その他の 者に交付することが認められ、かつ、法はその範囲を明文によって厳格に決めているので ある。 すなわち法 第31条第3項、第32条第2項、第33条第4項及び第36条第3項ただし書 において、各扶助ごとに定められている規定がそれであるが、このことから推測しても、 保護金品の代理人による受領は法の運用上、一般的には許されないものである。
例えば、生活扶助についてみると、衣食に必要な経費等については、保護金品を被保護 者個々に交付するよりも世帯として一括して交付した方が、保護の目的を達する上で適当 であるから、「世帯主又はこれに準ずる者に対して交付するものとする」とされているの であり、また教育扶助に例をとってみると、教育扶助として交付される保護金品は、義務 教育に伴って必要なものであるから、これを他の目的に消費されてしまっては、保護の目 的を達することができないので、未成年者である被保護者に対して、直接交付することが 適当でないとき、又は保護金品が他の目的に消費されるおそれがあるときは、「その親権 者若しくは後見人又は被保護者の通学する学校の長」に対して交付することができるよう に定められているのである。
上記のような規定は、法 第58条(差押禁止)、第59条(譲渡禁止)等の規定がおかれた 趣旨と同様に、代理受領についても、社会的経済的に弱い立場におかれている要保護者の 権利を保障するための制限を加えたものであり、殊に、表面的には代理受領であっても、 実質的には権利の譲渡であると解されるような場合は、法 第59条の規定に反するものであ って、その代理人に保護金品を交付することはできない。 また、代理人による一括受額等 は保護の実施上支障をきたし、保護の目的が達成し難くなる場合が多いと思われるので、 このような場合には、担当員が法の規定により交付すべき者に交付し、又はその者に対し て法 第27条の規定に基づいて必要な指導又は指示を行い、適正な実施を図る必要がある。
この指導又は指示に従わないときは、法 第62条第3項(保護の変更、停止又は廃止)の規 定の適用も考えられるであろう。
(問13-39)〔保護施設入所等の場合の保護金品の前渡〕 保護施設入所等により生活扶助を行う場合の保護金品は、実害がなければ前渡しで なくても差し支えないか。
(答)法 第31条第2項に、「生活扶助のための保護金品は、1月分以内を限度として前渡 するものとする」と明示されている。 前渡しする時期についての議論の余地はあろうが、 少なくとも、生活扶助のための保護金品は、法律上前渡しをすべきことに議論の余地はな いので、保護施設入所等により生活扶助を行う場合においても前渡しすべきである。
(ア)保護の決定実施上の審査 (イ)効果的訪問調査の指導 (ウ)保護申請の処理状況の検討 (エ)ケースの個別的事項に即応する援助方針の指導 (オ)面接技術の指導 (カ)ケース記録の指導 (キ)事務処理の迅速化、能率化の検討 ウ 指定医療機関、管内町村等に対する連絡調整の総括 指定医療機関、管内町村等に対する連絡は地区担当員及び医療事務担当者が行う ことになっているが、これに不十分な点はないか等について総括的な連絡調整を行 う。
(2)地区担当員 地区担当員は、査察指導員の指導監督のもとにその担当する被保護世帯に関する保 護の要否及び程度を判定するための調査、決定手続及び生活指導に当たるとともに、 査察指導員、嘱託医等との組織的連携に努めるものである。 その業務のうち主なもの をあげると次のようなものである。 ア 医療扶助の要否判定並びに医療扶助の開始、変更、停止及び廃止に係る調査等の 事務 イ 入院外の患者を訪問して行う通院指導及び生活指導 ウ 入院患者を訪問して行う生活指導 エ 医療扶助受給世帯に対する一般的生活指導 オ アからエまでの事務を行うのに必要な各給付要否意見書等並びに診療報酬明細 書及び訪問看護療養費明細書の検討 カ 指定医療機関、管内町村等との連絡調整 (3)嘱託医 嘱託医は、医療扶助の決定、実施に当たって査察指導員、地区担当員等からの問 題提起に応え、専門的判断及び必要な助言を行う。医療扶助以外の扶助において医 学的判断を必要とする場合にも同様である。 その業務のうち主なものをあげると次のとおりである。 ア 医療扶助に関する各申請書及び各給付要否意見書等の内容検討 イ 要保護者についての調査、指導又は検診 ウ 診療報酬明細書及び訪問看護療養費明細書に内容検討 エ 医療扶助以外の扶助についての専門的判断及び必要な助言指導 (4)医療事務担当者 医療事務担当者は、医療扶助の決定、実施に当たり査察指導員、地区担当員及び嘱 託医による組織的連携体制の総括的補助者としての職務を担う。
その業務のうち主なものをあげると次のようなものである。
ア 地区担当員、嘱託医等がその職務を行う際これに協力し、問題点の検討資料を整 備する等の事務 イ 医療機関、管内町村等に対する一般的事項についての連絡 ウ 診療報酬請求明細書等の検討 工 医療券等の発行事務。 ただし、福祉事務所の事務処理の実態に応じその必要がな いと認められる場合は、この限りでない。
(問1)〔いわゆる三者連携について〕 現在の福祉事務所における医療扶助の実施の基本的考え方である三者連携とはどう いうものか。 〔参照〕医運 第2-2、別紙第1号-2、昭和42年6月1日社保第117号社会局長通知 (答)現在の三者連携は、査察指導員、地区担当員及び嘱託医により構成するものとし、 これに医療事務担当者を事務整理面の補助者として協力させ、もって医療扶助運営体制を 編成しているものである。 これは、医療扶助についても生活扶助等の事務処理と表裏一体 となる事務処理体制を図り、もって医療扶助受給世帯に対する指導の徹底を期そうとする ことによるものである。
(問2)〔嘱託医業務の兼務について〕 福祉事務所嘱託医の業務を、医師である保健所の所長や自治体職員が兼務すること は可能か。
〔参照〕医運 第2-2、別紙第1号-2 (答)保健所の所長や自治体の職員であっても、本来の業務と福祉事務所の嘱託医業務を 両立できるのであれば、福祉事務所の嘱託医業務を兼務しても差し支えない。
ただし、地方公務員法(昭和25年法律 第261号)第24条第4項において、一般職に属する 地方公務員が他の職員の職を兼務する場合においては、兼務している業務に対して給与を 受けてはならない旨、規定されているので、留意されたい。
(問3)〔医療扶助ケースに対する指導と他のケースに対する指導の差〕 医療扶助受給世帯に対する指導方法と、生活扶助等他の扶助受給世帯に対する指導 方法とはどのように違うのか。
〔参照〕法 第27条第1項、昭和42年6月1日社保第117号社会局長通知、 昭和45年4月1日社保 第72号保護課長通知、 昭和46年4月1日社保 第59号保護課長通知 (答)被保護者に対しては生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導、指示を 行うことができるものとされており(法 第27条第1項)、医療扶助受給世帯であるか生活 扶助等他の扶助受給世帯であるかを問わず、その指導についての考え方に差異はなく、ま た生活扶助等他の扶助における現業活動と遊離して行われるべきものではない。
ただし、医療扶助については、診療の要否、程度の判定等専門的判断を要する特殊性を もつ面があることから、具体的な指導に当たっては、この点を考慮されたい。
(問4)〔患者に対する指導方法〕 被保護患者に対する指導方針を教示されたい。 (答)被保護者の自立を助長するために行う個々のケース援助上の問題点に対応した指導 のほか、被保護患者及び世帯員については、特に、次により必要な指導を行うものとする。
ア 主治医の療養上の指示に従っていない患者については、これに従うよう指導を行 うこと。
イ 療養指導等の面において家族の側に問題のある場合は、家族についての不安の除 去等当該患者が療養に専念できるよう必要な指導を行うこと。
ウ 退院可能な患者については、就労の援助、社会福祉施設への入所等必要な指導・ 援助を行い、退院後なお入院外医療を要すると認められる者については、必要な指 導を行うこと。
工 入院外患者であって入院を必要とすると認められる者については、嘱託医と協議 し、必要な指導を行うこと。
オ 入院外患者であって就労の可能性があると認められる者については、主治医査察 指導員、嘱託医等と十分協議の上、必要な就労指導を行うこと。
カ その他、入院外患者及び家族に対し、生活環境、保健衛生等について問題のある 場合は嘱託医等と協議の上、必要な指導を行うこと。
(問5)〔地区担当員及び医療事務担当者が行う「指定医療機関、管内町村等との連絡」 内容の差異〕 地区担当員が行う「指定医療機関、管内町村等との連絡調整」と医療事務担当者が行 う「医療機関、管内町村等に対する一般的事項についての連絡」とはどう違うか。 〔参照〕医運別紙 第1号-2-(2)-カ、別紙第1号-2-(4)-イ (答)地区担当員の行う「指定医療機関、管内町村等との連絡調整」は、あくまでも医療扶助 患者の個別的検討を行う際に必要な連絡であって、例えば当該患者の病状、指導等必要な 事項を把握するための指定医療機関等への連絡照会、町村経由の被保護者について必要な 事項の町村への問い合わせ、さらに他法活用については、感染症の予防及び感染症の患者 に対する医療に関する法律(以下「感染症予防法」という。 )、精神保健及び精神障害者 福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。 )等の公衆衛生関係は保健所等に、 社会保険関係は社会保険事務所に、就労関係は職業安定所に対してそれぞれ必要な連絡を 行うことを指すものである。 一方で、医療事務担当者の行う「医療機関、管内町村等に対 する一般的事項についての連絡は、医療扶助に関する一般事項であって、例えば、医療扶助 運営要領等の改正通知、他法と医療扶助に関する厚生労働省からの通知等に関する指定医 療機関、管内町村、保健所等への連絡をいうものである。 3 町村関係 法 第19条第7項には「町村長は、保護の実施機関又は福祉事務所の長が行う保護事務の 執行を適切ならしめるため、左に掲げる事項を行うものとする。 ……(以下略)」と規定 し、福祉事務所を設置しない町村に対して協力義務を課している。 このことは町村長が 管内住民の福祉について 第一義的に責任を有するものであり、また、保護の実施機関の側 からしても町村長の協力を得て初めて本法の円滑な実施運営を期すことができるからに ほかならない。 福祉事務所を設置しない町村の医療扶助関係事務は次のとおりである。
ア 保護変更申請書(傷病届)、各給付要否意見書等の受払簿の作成、整備および保存 イ 各給付要否意見書等および診療依頼書(入院外)の交付 ウ 応急医療扶助の実施 工 その他医療扶助の実施に関する事項
2 各給付要否意見書 医療扶助は、指定医療機関等に被保護者を委託して行ういわゆる現物給付方式を採用し ているところであるが、医療の必要性、内容及び程度の判断については、専門的、技術的判 断が要請されるため、指定医療機関等の意見を聴いた上で、医療扶助の要否及び程度の決 定を行うこととしている。 このような指定医療機関等の意見が記載されたものが要否意見 書である。
なお、医療の給付は、原則として、要否意見書を記載した指定医療機関等に委託するもの であるので、要否意見書用紙を要保護者に交付する際には、要保護者の希望のほか、要保 護者の居住地からの距離等、指定医療機関等の状況に十分留意する必要がある。
(1)各給付要否意見書の種類 各給付要否意見書には、次の6種類がある。
ア 医療要否意見書(医科・歯科) イ 精神疾患入院要否意見書 ウ 治療材料給付要否意見書 エ 施術(柔道整復、あん摩・マッサージ、はり・きゅう)給付要否意見書 オ 訪問看護要否意見書 カ 移送給付要否意見書 (2)各給付要否意見書の徴取時期 各給付要否意見書の徴取時期は表1のとおりである。 表1 各給付要否意見書徴取時期一覧表(平成21年4月1日現在) 医療扶助開始時 継続 入院 入院外 入院 入院外 単給 併給 単給 併給 単給 併給 単給 併給 医療 徴取 徴取 徴取 徴取 3か月毎に3 か月毎3 か月毎6 か月毎 要否意見書 (ただし、 (ただし、徴取 に徴取 に徴取 に徴取 病状の悪 明らかに 化等によ 必要が認 ただし、慢性疾病は嘱 り明らか められ、 託医の判断により6か に入院医 活用すべ 月毎に徴取 療の必要 き他法他 が認めら 施策がな れ、かつ、 いと判断 活用すべ される場 き他法他 合を除 施策がな く) いと判断 される場 合を除 く) 精神疾患入院徴取 徴取 6か月毎に 6 か月毎 要否意見書 徴取 に 徴取 治療材料給付徴取 徴取 徴取 徴取 そのつど徴取 要否意見書 (ただし、消耗的なもので継続使用するも のについては、3~6か月毎に徴取) 訪問看護 徴取 徴取 6か月毎に徴取 要否意見書 施術給付 徴取 徴取 3か月毎に徴取 要否意見書 移送 徴取 徴取 徴取 徴取 3か月毎に徴取 要否意見書 (ただし、医療要否意見書等により移送を(ただし、医療要否意見書等により移送を 要することが明らかな場合で、かつ、移送に要することが明らかな場合で、かつ、移送に 要する交通費等が確実に確認できる場合を要する交通費等が確実に確認できる場合を 除く。) 除く。 また、被保護者の疾病等の状況により、3 か月を超えて移送の給付を必要とすること が明らかな場合であって、かつ、公共交通機 関を利用している場合は6か月毎に徴取。) (注)保護の新規開始で医療扶助を伴う場合は必ず事前に要否意見書が必要 (3)各給付要否意見書の検討及び受理 要保護者等から各給付要否意見書の提出を受けたときは、その記載事項を検討した上受 理し、その記載内容に不明又は疑義がある場合には、記載者等に照会を行うとともに、そ の内容を十分審査し医療扶助の要否を判定することとなる。 各給付要否意見書の内容審査、要否判定等医療扶助の決定実施に問題があると思われる ときは、検診命令、本庁協議等の方法により適正な実施が図られるよう留意する必要があ る。
(問6)〔町村長が発行する場合の取扱い〕 医療要否意見書(医療扶助運営要領様式 第13号)は、福祉事務所長が発行することが様 式上明確であるが、郡部福祉事務所管内において町村長が申請を受け取った場合は、その 発行者名をどうすべきか。 〔参照〕法 第19条、医運第2-3 (答)当該町村長名をもって発行するものである。また、各自治体の公印規則等に照らし て、取扱いが可能であれば、福祉事務所長印を押印した医療要否意見書をあらかじめ町村 役場に常備しておき、受払簿によりこれを管理させるという方法によっても差し支えない。
(問7)〔転帰事項の確認方法〕 医療扶助の継続の場合、医療要否意見書は3か月又は6か月ごとに徴取することとなって いるが、その間、治ゆ等の転帰をした場合は、当該事項について指定医療機関から届出を 行わせることとしてよろしいか。
〔参照〕法 第61条、医運第3-2-(5)-オ-(ウ) (答)被保護者の転帰事項について、指定医療機関に報告を義務づけることはできないも のである。
このため、福祉事務所は、被保護者に法 第61条の規定に基づく届出義務を励行するとと もに、適宜訪問活動等を行うことにより被保護者の実態把握に努め、継続して医療を要し ないと認められる場合には、一般の例に従い、医療扶助の廃止を行うべきである。
(問8)〔医療要否意見書等様式の追加事項〕 医療要否意見書に実施機関の判断により追加事項を設定してもよいか。 また、福祉事務 所の地区担当員の受付事務を簡素化する観点から、依頼欄に患者氏名及び年齢のほか住 所を記入させてよいか。 〔参照〕医運 第1-6 (答)医療扶助関係様式のうち、各給付券の様式、治療材料費、施術料の請求明細書の様 式の全部並びにその他の様式中の指定医療機関等の記載に係る部分を除いては、各実施機 関等の実情に応じて、創意工夫の上適宜必要事項を追加する等の補正を行って差し支えな い。
なお、様式の補正に当たっては、従来から、医療扶助関係様式をできる限り簡素化し、事 務処理の合理化を図っている趣旨を踏まえ、地区担当員の内部事務が過重とならないよう 十分留意されたい。
(問9)〔併発病がある場合の要否意見書の提出〕 入院の要否判定のためには、精神疾患及び一般の2種類の要否意見書があるが、併発病が ある場合の入院についてはいずれの要否意見書を提出させたらよいか。 (例) 主病・・・統合失調症 併発病・・・高血圧 (答)精神疾患により入院を要する場合においては、精神疾患を主たる傷病と認定し、精 神疾患入院要否意見書の提出を求めることとすべきである。 なお、設問の例についていえ ば、要否意見書の症状経過を記載すべき各欄に統合失調症及び高血圧の両疾患に対する所 要事項の記載を求めることとなる。
(問10)〔一時入院外治療を中止し、引き続き入院外治療を開始する場合の要否意見書〕 症状の観察を要するということで1か月半ほどの間入院外治療を中止していた被保護者 が、観察の結果、引き続き治療を行う必要があるとして入院外治療を再開する場合は、改め て医療要否意見書を徴収しその要否(継続)について判断する必要があるか。 〔参照〕平成20年3月5日保医発 第0305001号医療課長・歯科医療管理官通知 (答)設問の事例については、治療上必要な経過観察のための中止であって、観念的にはな お治療が継続していたと認められるものではあるものの、医療扶助の再開という事柄にか んがみて、改めて医療要否意見書の提出を求めるべきである。
なお、この場合には、初診料の請求は認められないこととされている。
(問11)〔費用概算額に差がある場合の取扱い〕 同一疾病について、医療要否意見書の所要医療費概算額が指定医療機関により差があ る場合、その取扱いをどうしたらよいか。 〔参照〕法 第52条、局第11-4 (答)医療扶助による診療方針は法 第52条に定められているが、診療については、一般的 に医師や患者によって若干の個人差が生じることはやむを得ないものである。 しかしながら、福祉事務所の嘱託医の審査検討の結果、医療扶助の診療方針に反すると 認められる場合はもとより、他の指定医療機関による当該患者の診療結果とも著しく差異 があるような場合には、電話連絡、訪問その他適宜の方法により当該医療機関からさらに 具体的な意見を徴し、必要に応じて補正する等の措置を講ずべきである。
また、ある医師が一般的に行われる診療と著しくかけ離れ、特異な傾向を示しているよ うな場合には、意見書の提出があった以降においてさらに検診命令を行う等、慎重に検討 する必要がある。
(問12)〔精神疾患入院要否意見書に「診察料・検査請求書」が含まれていない理由〕 医療要否意見書の様式には、「診察料・検査料請求書」が含まれているが、精神疾患入 院要否意見書の様式にこれがないのはなぜか。 〔参照〕医運 第3-1-(5) (答)あらかじめ入院が必要であると認められるようなケースについて、一般的に初診及 び検査のみで終わることは考えられないからである。 なお、入院を要すると認められ、精神疾患入院要否意見書用紙を発行したが、初診及び検 査のみで終わった場合、若しくは入院外医療で足りると診断された場合には、その旨を同 入院要否意見書に記載させ、改めてそれぞれ「診察料・検査料請求書」用紙又は入院外の 医療券を交付することとなる。
(問13)〔眼鏡給付に伴い医療機関が行った検査料等の請求方法〕 眼鏡等の治療材料の必要があって保護変更申請書(傷病届)(治療材料)を提出する場 合、指定医療機関において診療及び検査を受ける必要があるが、その費用についてはど のように請求させるべきか。 〔参照〕医連 第3-1-(5) (答)指定医療機関における診療及び検査が必要であると認められる場合には、給付要否 意見書(治療材料)用紙を発行する際に、同時に診察料・検査料請求書用紙を添付し、当該 給付要否意見書の作成に伴い医師が行った診療及び検査に要した費用については、この診 察料・検査料請求書によって当該指定医療機関から福祉事務所に請求させるものとなって いる。
(問14)〔医療扶助決定に当たり「問題があると思われるとき」とは〕 要保護者に対する医療扶助の決定に当たり問題があると思われるときは、検診を命ずる 取扱いと なっているが、ここでいう「問題があると思われるとき」とは具体的にどのような場合 か。 〔参照〕医運 第3-1-(4) (答)設問の「問題があると思われるとき」とは、各要否意見書の内容及び地区担当員の実 態把握の結果に基づき検討したがなお疑問がある場合等を想定しており、具体的には医療 扶助を決定するに当たり要保護者の病状に疑いがある場合や現に医療扶助の給付を受けて いるものについて当該給付の継続の必要性に疑いがある場合を指すものである。 なお、福祉事務所長は、要保護者から要否意見書の提出を受ける際には、その記載事項を 審査し、記載内容が不明確な場合にはそれぞれ記載者に照会するなど、その内容が十分給 付の要否の審査に資するように整備させた上で受理するように配慮されたい。 3 指定医療機関等の選定 医療機関等の選定は保護の実施機関の権限であるが、医療の給付は、医師と患者の信頼 関係等も考慮する必要があるため、各給付要否意見書用紙交付の際には、次の標準を満た す範囲内で、参考として要保護者の希望を聴いた上で指定医療機関等の選定を行うもので ある。
(1)要保護者の居住地等に比較的近距離に所在する指定医療機関であること。
(2)要保護者が人工妊娠中絶若しくは不妊手術又は結核の治療を受けようとするときは、 原則としてそれぞれ同時に母体保護法による指定医師又は感染症予防法による結核指 定医療機関としての指定を受けている指定医療機関であること。
(3)要保護者が各種社会保険の被保険者又は被扶養者であるときは、健康保険法による 保険医療機関であること。
(4)健康保険法、感染症予防法、精神保健福祉法又は障害者自立支援法による指定の取 消を受けている指定医療機関でないこと。
(5)過去3か月間に法による「戒告」を受けたことのない指定医療機関であること。
(問15)〔患者委託に当たっての医療機関の選定〕 患者を委託するに当たって福祉事務所長が配慮すべきことは何か。 また、福祉事務所長 が適当と認めた場合は患者の希望する指定医療機関以外の指定医療機関に委託すること としてよいか。
〔参照〕医運 第3-1-(3)-オ、 課長問答 (問3)〔要保護者の希望を参考とすることとは〕、 課長問答 (問6)〔県外入院の取扱い〕 (答)患者を委託すべき指定医療機関を選定するに当たっては、当該患者の医師に対する 信頼、その他心理的作用が医療効果をさらに増大させ得るものである点を考慮し、患者の 希望を参考として取扱うこととしているものである。 このため、保護の円滑な実施に支障 が生じる場合や、適正な医療が期待できない場合以外は、これらの趣旨に基づき医療機関を 選定することとされたい。 4 医療扶助の決定 (1)開始時の決定 要保護者の申請書、各給付要否意見書等の内容を十分審査し、医療の給付が必要不可欠 のものであると判断された場合であって、かつ、医療扶助に優先して活用すべき他法他施 策によっても必要となる医療費の全部又は一部が賄われない場合に、いつから、どこで、 どのような内容の医療を行うかを決定し、被保護者に決定通知書及び医療券を交付するこ ととなる。
この場合、要保護者が医療扶助のみの適用を受けるものである場合には、保護の実施要 領についての通知の定めるところにより当該要保護者の属する世帯の収入充当額から当該 世帯の医療費を除く最低生活費を差し引いた額をもって本人支払額(自己負担額)とする こととなる。
なお、保護変更申請書(傷病届)に基づき医療扶助の決定をした場合で、他に適当な方 法で決定を知らせることができるときは、決定通知書を省略してもよいこととしている。
(2)変更決定 保護の開始は申請保護の原則がとられているのに対し、変更の決定は必ずしも申請を前 提とするものではなく、また、生活保護法 第25条(職権による保護の開始及び変更)により 変更の決定を行う場合もある。
次のような場合には、変更決定を行うこととされている。
ア 本人支払額を変更すべきことを確認したとき イ 指定医療機関を変更すべきことを確認したとき ウ 入院から入院外に、又は入院外から入院に変更すべきことを確認したとき エ 介護老人保健施設から医科に変更すべきことを確認したとき オ 医科から歯科に、又は歯科から医科に変更すべきことを確認したとき カ 他法による負担の程度に変更すべきことを確認したとき キ 診療中に訪問看護、治療材料、施術又は移送の給付を必要とすることを確認したと き、又はこれらの給付につき変更すべきことを確認したとき ク 検診命令に従わない場合で医療扶助の変更を必要と認めたとき (3)医療券の発行 医療券は、被保護者が指定医療機関において受診する場合の受給資格の証明書であると ともに、実施機関である福祉事務所が被保護者を指定医療機関に個別委託する際の委託書 の性格をも有しているものである。 また、指定医療機関はこの医療券に基づき診療報酬の 請求を行うものである。 このように医療券は、医療扶助の決定実施において非常に重要な 書類であることから、作成交付、修正等に当たっては慎重な取扱いが要請される。 保護は、暦月を単位として決定することとされており、また、診療報酬の請求、支払に ついても暦月を単位としていることから、医療券は暦月を単位として発行することとされ ているが、月の中途を始期又は終期とする場合には、有効期間を記載した医療券を発行す ることとなる。
(問16)〔決定通知書を省略できる場合とは〕 医療扶助運営要領 第3の2の(4)のただし書中「保護変更申請書(傷病届)に基づき医療 扶助の開始又は変更に関する決定をしたときで、当該通知書により通知する必要がない 場合」とは具体的にどのような場合を指すのか。
〔参照〕法 第24条第1項、第25条第2項、第26条第1項、医運第3-2-(4) (答)傷病届による入院外の併給開始又は変更の申請であって、明白に医療の必要性が認 められる場合に、医療要否意見書の提出を求めることなく、必要な保護の決定後直ちに医 療券を発行する場合を指すものである。
このような場合には、医療券を直接交付することによって十分決定の内容を伝達するこ とができ、決定通知書の目的を事実上果たしているため、当該決定通知書の交付による通 知を省略して差し支えないとしているものである。 なお、決定通知書を省略する場合には、 被保護者に対して、医療券の発行の際に当該決定処分の内容を十分説明するとともに、決 定通知書の交付による通知を省略する旨併せて知らせるなど、適切に配慮されたい。
(問17)〔診断が確定しない場合の保護の要否判定〕 患者の病状について診断が確定しない場合の、保護の要否判定はどのようにして行えば よいか。
(答)要保護者の病状について診断が確定しない場合であっても、「○○の疑い」として当 面必要な診療計画の概要、診療見込期間及びその概算医療費について、医療要否意見書を徴 し、その診療計画が医療扶助の診療報酬に照らして適当と認められる場合には、当該意見書 に記載された医療費概算額によって保護の要否の判定を行うこととして差し支えない。
なお、保護の要否の判定結果が「否」となった場合であっても、後日に診断が確定し、診 療計画が著しく変更された結果、医療扶助が必要になったような場合には、改めて保護の 申請を行うよう指導されたい。
(問18)〔福祉事務所が指定医療機関に対して行うことができる病状調査の範囲について〕 被保護者の稼働能力の判定に必要であれば、指定医療機関が保有する被保護者のレン トゲン写真や検査の詳細なデータ等を無償で交付させることができるか。
〔参照〕昭和25年8月23日厚生省告示 第222号 (答)交付を求めることは可能である。
指定医療機関医療担当規定 第7条により、保護の実施機関が指定医療機関に対して行う ことができる病状調査の範囲には、当該指定医療機関に対して医療扶助の委託をした医療 に関するもののほか、稼働能力の有無や程度の判定など生活保護の決定・実施及び自立助 長に必要なものであれば含まれるものである。
なお、設問の「レントゲン写真」のように、交付に際して費用が生じるようなものにつ いては、できる限り貸与にて対応するなど、指定医療機関に過重な負担がかからないよう 配慮されたい。
(問19)〔医療扶助単給における患者以外の世帯員について〕 医療扶助を単給として行う場合、患者以外の世帯員は被保護者であるのか。 被保護者 でないとすれば、他の世帯員は最低生活を行う法的義務はなく、したがって、本人支払 額を納入すべき義務はないと思うがどうか。
〔参照〕法 第10条、第27条、第61条、第62条第3項 (答)法 第10条の規定により、保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めること になっていることから、同条ただし書の規定により、いわゆる世帯分離の取扱いが行われ た場合を除いては、医療扶助単給の場合の患者以外の世帯員についても被保護者と解すべ きである。
したがって、本人支払額を滞納したり、あるいは法 第61条の規定による届出を怠ったり するような場合には、福祉事務所としては当然法 第27条に基づき、必要な指導又は指示を 行うべきであり、この指導及び指示に従わないときは、法 第62条第3項の規定の適用を検 討して差し支えないものである。
(問20)〔入院患者日用品費の累積額に係る調査について〕 指定医療機関に対して、被保護者の入院患者日用品費の累積額について調査を行い、 回答を求めることは可能か。
〔参照〕昭和25年8月23日厚生省告示 第222号 昭和58年3月31日社保 第51号社会局保護課長通知 (答)入院患者日用品費については、昭和58年3月31日社保 第51号社会局保護課長通知に より、原則として、その基準額の全額を計上することとされているが、この額では合理的 な目的のない手持金の累積を生ずる場合には、当該基準額の計上を停止することとされて いる。
このため、入院患者日用品費の累積額の調査は、入院患者日用品費の額の認定に欠かせ ない情報であり、保護の実施のために必要なものであることから、指定医療機関等の長又 はこれらに準ずる者が入院患者の金銭を管理している場合には、当該指定医療機関に対し て入院患者日用品費の累積額に関する調査を行い、回答を求めることが可能である。
(問21)〔医療券を直ちに発行する取扱いの趣旨及び留意点〕 入院外医療扶助の併給開始又は変更申請の場合であって、明らかに医療の必要が認め られるときは、医療要否意見書の提出を求めることなく直ちに医療券を発行することが 可能となっているが、この取扱いの趣旨及び留意点を承りたい。
〔参照〕医運 第3-1-(3)、第3-3-(1)、 課長問答 (問2)〔市部福祉事務所における診療依頼書の交付〕 (答)保護を実施する場合には、要保護者の需要の確認と、その需要を満たすための資力の 調査が前提となるが、医療扶助の対象は極めて技術的な領域に係るので、その要否を判定 するためには、単に医療の要否のみを確認するのでは足りず、所要医療費概算額、診療見込 期間及び他法の給付の有無(さらに場合によっては入院の要否など)をも確認しなければ ならないので、医療要否意見書により指定医療機関等の専門家の意見を徴してこれらの事 項を確認することを原則としているのである。
新規の保護を受ける者の場合は、これらのすべての事項について調査を行わなければな らず、そのために常に意見書を徴することが必要となるが、すでに保護を受けている者か ら医療扶助の申請があった場合には、医療の要否以外の事項については通常調査をする必 要がなく、また、医療の要否についても、特に医療のうち外来診療で足りるような場合に は、すでに過去何回かの訪問指導の場を通じ当該ケースの実態が把握されている場合があ り、その場合には、必ずしも意見書を徴するまでもなく、これを判断し得る場合があるも のと考えられる。 また、入院の場合も急性疾患の場合や初診の段階で直ちに入院を要とする場合、あるい は入院外医療の受給中であっても急激な症状の悪化等により直ちに入院を要する場合等入 院することにつき時間的緊急性が認められる場合においても医療要否意見書の提出を求め ることは実態にそぐわない点がある。 つぎに、郡部福祉事務所の場合には、従来、その管内に居住する被保護者が入院外医療 の給付を受けようとする場合は、保護変更申請書(傷病届)を町村長を経由し福祉事務所長 に提出して医療券の交付を受け、当該医療券を指定医療機関に提示して受療することとさ れてるが、患者の早期治療の確保という趣旨から、明らかに医療の必要が認められ、かつ活 用すべき他法他施策がないと判断される場合には、町村長が被保護者からの入院外医療扶 助の併給開始又は変更申請を受け取った時点で直ちに診療依頼書(入院外)を交付し、被 保護者をして受療させるとともに、当該保護変更申請書を福祉事務所長に送付することと している。
(問22)〔保護施設等に入所中の被保護者の取扱い〕 入院外医療扶助の併給開始又は変更申請で医療の必要が明らかである場合には、医療要 否意見書の提出を求めることなく医療券を発行できることになっているが、この取扱いは 保護施設等に入所中の者についても同様であると解してよいか。 〔参照〕医運 第3-2-(1)-カ (答)お見込みのとおり取扱って差し支えない。
(問23)〔婦人保護施設入所者の取扱い〕 売春防止法に定める婦人保護施設の入所者に対して医療扶助を適用する場合にはどの ように取扱うべきか。 〔参照〕医運 第3-2-(1)-カ (答)医療扶助運営要領 第3の2の(1)のカ「保護施設等における医療の取扱い」に準じて取 扱われたい。
(問24)〔保護変更申請書(傷病届)と学校保健安全法との関係〕 要保護者の児童又は生徒が、学校保健法施行令 第7条に定める感染病又は学習に支障の 生ずるおそれのある疾病にかかり、学校において治療の指示を受けたときは、その医療費 については学校保健安全法 第24条の規定に基づき、地方公共団体が援助することになって いるが、保護変更申請書(傷病届)のみでは、同法による援助が受けられるかどうかを確認 し難い場合が多い。 このような場合、他法活用との関係においてどのように取扱うべきか。 〔参照〕医運別紙 第2号(10) (答)本人の申立てによる病状等から判断し、他に活用すべき他法があることが明らかな 場合には、まず当該他法に基づく申請手続きを行うよう指導することが必要である。
また、嘱託医と相談しても、本人の申立てによる病状等からは他法該当の要否について 的確な判断がつきかねるケースについては、医療要否意見書の提出を求め、これに基づい て検討した上で医療扶助の適用の要否を判定すべきである。
(問25)〔医療券の有効期間の取扱い〕 「傷病届」により医療券を発行する際に、傷病の診療見込期間が不明である場合には、 有効期間を月末までとして発行して差し支えないか。 〔参照〕医運 第3-2-(5) (答)医療券の有効期間は、暦月を単位に必要な期間を記して発行することとなっている。
したがって、設問の場合には、福祉事務所において診療期間の見込みを立てることが可 能なときは有効期間を記して医療券を発行することになるが、診療期間の見込みを立てる ことが困難である場合には、月末までを有効期間として発行しても差し支えない。
(問26)〔「傷病名」欄の記載方法〕 「傷病届」に基づいて直ちに医療券を発行する場合、医療券の「傷病名」欄の記載はどうす るのか。
〔参照〕医運 第3-2-(5)-エ-(ウ) (答)「傷病届」に基づいて直ちに医療券を発行する場合には、指定医療機関から医療要否 意見書の提出を求めないので患者の傷病名が確定しないが、このような場合には、医療券の 「傷病名」欄は空欄のままとし、「備考」欄に症状などを記載して発行することとなる。 なお、指定医療機関で診断の結果傷病名が確定したときは、診療報酬明細書の「傷病名」 欄に、これを記入し請求することとなる。
また、医療要否意見書を徴した場合であっても、傷病名が確定しがたいときがあるが、そ の場合における取扱いも同様である。
(問27)〔生母入院中、新生児に医療扶助を適用する場合の取扱い〕 医療扶助により入院中の患者に新生児が出生した場合で、当該新生児についても医療 の必要がある場合には、傷病届を提出させ、新生児に対して新たに医療券を発行する取 扱いでよいか。 また、新生児が命名前である場合、医療券の「氏名」欄はどのように記 入したらよいか。 (答)前段については、お見込みのとおり取扱って差し支えない。 後段の命名前の新生児 の医療券の「氏名」欄の記入方法については、生母の姓と命名前である旨記入して発行す ることとされたい。 5 急迫保護等 被保護者が受診する場合は、あらかじめ福祉事務所又は町村役場に傷病届を提出し、医 療券又は診療依頼書の交付を受けた上で、指定医療機関を受診し、必要な医療を受けるこ ととなるが、被保護患者が急迫した状況にあるため医療券又は診療依頼書の交付を受ける ことができないときは、福祉事務所長は、指定医療機関にその状況を説明し、とりあえず 必要な医療を受けさせ、事後速やかに医療扶助の決定手続を行い、医 療券を交付するこ ととなる。
(問28)〔休日、夜間における受診確保〕 休日、夜間等の福祉事務所閉庁時において急病のため受診する必要が生じた場合、医療 券がないため一時的に医療費の支払いを余儀なくされることも予想されるが、その対応策 はどのようにすればよいか。 (答)福祉事務所閉庁時において急病になった場合は、とりあえず指定医療機関で受診し、 翌日速やかに傷病届を提出して当該医療機関に医療券又は診療依頼書を届けることになる が、設問のような事態に対応するため、あらかじめ地域の医師会等と協議し、適切に受診 できるような措置を講じておくことが適当である。
(問29)〔修学旅行時における児童生徒の傷病への対応〕 修学旅行時において、児童又は生徒が急病のため受診しなければならない事態も予想さ れるが、それに備えてあらかじめ修学旅行期間に限って有効な被保護者であることの証明 書等を交付することはできないか。
(答)お見込みのとおり取扱って差し支えない。 この場合において、修学旅行期間中に被保護世帯の児童等が急病で医療を受けたときは、 事後速やかに保護変更申請書(傷病届)を提出するよう指導されたい。 また、地域の教育委 員会に対しては、あらかじめその取扱いを説明するなどの配慮が必要である。
6 給付方針及び費用 (1)診療方針及び診療報酬 医療扶助の診療方針及び診療報酬は、国民健康保険の診療方針及び診療報酬の例による ことになっている。 ただし、これによることができないとき、及びこれによることを適当 としないときの診療方針及び診療報酬は、厚生労働大臣の別に定めるところによるものと されている。 この厚生労働大臣の定める診療方針及び診療報酬は、昭和34年5月6日厚生省 告示 第125号により定められており、その主な内容は次のとおりである。 ア 歯科の歯冠修復及び欠損補綴の取扱いにおいて歯科材料として金は使用しないこと。
イ 国民健康保険の診療方針及び診療報酬のうち、保険外併用療養費の支給に係るもの(厚 生労働大臣の定める評価療養及び選定療養(平成18年9月12日厚生省告示 第495号)第2 条 第7号に規定する療養につき別に定めるところによる場合を除く)は指定医療機関及 び医療保護施設には適用しないこと。
ウ 75歳以上の者及び65歳以上75歳未満の者であって高齢者の医療の確保に関する法律施 行令(平成19年10月19日政令 第318号)別表に定める程度の障害の状態にあるものに係 る診療方針及び診療報酬は、後期高齢者医療の例によること。 エ 健康保険の保険医療機関又は保険薬局である指定医療機関が、国民健康保険法 第45条
(問30)〔ニコチン依存症管理料について〕 ニコチン依存症管理料について、医療扶助を適用してよいか。
〔参照〕平成20年3月5日保医発 第0305001号 (答)医療扶助については、国民健康保険の診療方針及び診療報酬の例によることとされ ているため、被保護者に対して、保険診療の規定に沿って禁煙治療が行われる場合には、 医療扶助を適用して差し支えない。
(問31)〔病室の差額請求〕 被保護者が、治療上の必要によりやむを得ず個室に収容され、当該指定医療機関から病 室の差額について請求された場合、医療扶助でどう取り扱ったらよいか。 〔参照〕平成18年3月13日保医発 第0313003号 (答)医療機関は、患者の選択により、個室など特別な療養環境を提供した場合には、保 険外併用療養費として、患者に特別な料金の負担を求めることができることとされている が、患者本人の治療上の必要により個室などへ入院させる場合については、特別な料金を 求めてはならないこととされている。 したがって、設問のケースの場合は、入院料との差 額を医療扶助により支給する必要はない。
(問32)〔高度先進医療や治験の取扱いについて〕 高度先進医療や治験に関する費用は、医療扶助の対象となるのか。
〔参照〕平成18年9月12日厚生労働省告示 第495号 昭和34年5月6日厚生省告示 第125号 (答)高度先進医療や治験については、「厚生労働大臣の定める評価療養及び選定療養」(平 成18年9月12日厚生労働省告示 第495号)」により、保険外併用療養費の支給に係るものと されているため、原則として、医療扶助は適用されないものである。
(問33)〔被保護者の治験参加について〕 製薬会社や医療機関が治験に係る費用を保険診療部分も含めて全額負担する場合、被 保護者を治験に参加させてよいか。
〔参照〕平成18年9月12日厚生労働省告示 第495号 昭和34年5月6日厚生省告示 第125号 (答)設問のように、製薬会社等が入院、手術、処置等の保険診療部分や治験期間以外の 前後観察期間を含めて、治験に係る費用を全額負担するような場合には、費用負担の面か ら被保護者の治験への参加を妨げるものではない。 ただし、稼働能力を有する被保護者が、 単に安全性の試験を目的とした治験に長期間参加し、当該治験参加中は、就労や求職活動 を行うことができない場合など、治験への参加が被保護者に対する福祉事務所の援助方針 に反する場合には、設問のようなケースであっても認めるべきではない。
(問34)〔入院治療について嘱託医と主治医の意見に相違がある場合の取扱い〕 福祉事務所嘱託医が入院患者の医療要否意見書を審査したところ退院可能と判定し、 指定医療機関にこの旨を連絡したが、指定医療機関は入院が必要であると回答してきた。 このため嘱託医は、指定医療機関と意見の交換を行ったが、話し合いがつかなかった。 こ の場合、福祉事務所としてはどのような措置をとるべきか。 〔参照〕医運 第3-2-(1)-ウ (答)福祉事務所嘱託医は、単なる書面審査だけでなく、必要に応じ指定医療機関に出向 いて実地に検討し、主治医と話し合っていることと思われるが、その結果においてこのよう なケースが生じた場合には、速やかに都道府県(指定都市及び中核市)本庁に技術的助言を求 め、その結果等に基づいて退院の要否を決定することとなる。
(問35)〔同一疾病によリ国保の被保険者が医療扶助患者となった場合の初診料の取扱い〕 同一医療機関における同一患者の同一の疾病又は負傷について、国民健康保険の被保険 者から医療扶助患者となった場合、改めて医療扶助において初診料を請求することが認め られるか。 〔参照〕平成20年3月5日保医発 第0305001号保険局医療課長・歯科医療管理官通知 (答)国民健康保険の被保険者から医療扶助患者となった場合であっても、同一指定医療 機関における同一患者の同一の疾病又は負傷について、改めて初診料を算定することは認 められない。
(問36)〔指定医療機関の開設者の変更に伴う初診料の算定について〕 開設者が変更したことに伴い従前の医療機関は廃止し、新開設者の申請書に基づき、新 たに医療機関の指定を行った。その後、従前の指定医療機関当時からの患者のほとんど全 員につき初診料を請求している事例があるが、医学的に初診といわれる行為があれば初 診料を算定できると考えてよいか。 (答)原則的に開設者の変更のみでは初診料は算定できない。 ただし、患者の病態変化等 により、受診時に医学的に初診と考えられる行為があれば初診料を算定することも可能で ある。
(問37)〔主治医の許可を得て外泊中である患者への往診料〕 精神科病院に入院中の医療扶助患者が主治医の外泊許可を得て帰宅中に、病状に変化が 生じ、医師の往診を受けたが、医療扶助でこの往診料が支払えるか。
(答)設問のように、外泊許可を得て帰宅中に病状の変化により往診を受けた場合であっ ても、当該患者が入院中の指定医療機関から往診を受けるのであれば、それは入院治療の 一連の医療行為であるため、往診料の算定は認められない。 しかしながら、当該患者が 急迫した状況にあるため、やむを得ず付近に所在する他の指定医療機関等の医師の往診を 求めた場合には、この限りではない。
(問38)〔骨髄提供者の入院費について〕 被保護者が骨髄移植を受ける場合の骨髄提供者の入院費について、医療扶助を適用し てよいか。
〔参照〕平成20年3月5日保医発 第0305001号 (答)国民健康保険においても、骨髄移植のために要した提供者の療養上の費用を保険給 付の対象としていることから、医療扶助においても同様に支給して差し支えない。
(問39)〔骨髄移植のための組織適合性試験の費用について〕 骨髄移植のための骨髄提供者の組織適合性試験の費用について、医療扶助を適用して よいか。
〔参照〕昭和48年5月1日社保 第87号社会局保護課長通知 (問19) (答)骨髄移植のための事前の適合検査に適合した者に係る検査費用については、骨髄移 植の費用として保険給付の対象となることから、医療扶助の対象として差し支えない。
なお、適合検査の結果、不適合であった者に係る検査費用については、保険給付の対象 とならないものとされているが、当該検査費用を請求されたときは、昭和48年5月1日社保
(問40)〔外泊中に準備した給食費の請求〕 主治医の許可を得て外泊した医療扶助による入院患者が、帰院予定日の予定時刻に帰 院せず、指定医療機関が当該患者のために調製した食事が無駄になった場合、その食費は 請求できるか。 (答)給食に係る費用については、現実に患者に給与したものについてのみ支払われるの が原則であるが、設問の場合には、帰院予定時刻以後に給与すべきものに限り、例外的に 医療扶助の給付対象として差し支えない。
(問41)〔違法行為により自傷した者に対する医療扶助の適用について〕 国民健康保険法 第60条において、「被保険者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故 意に疾病にかかり、又は負傷したときは、当該疾病又は負傷に係る療養の給付等は、行 わない。 」と規定されているが、医療扶助についても同様に取扱うこととしてよいか。
(答)お見込みのとおり取扱うものである。
ただし、負傷した被保護者について、扶養義務者からの援助、他法他施策等を活用して もなお急迫状態にあるときは、必要最小限度の範囲で医療扶助を適用することもやむを得 ないものと考える。
(問42)〔精神保健福祉法の規定に基づく仮退院の期間と医療扶助の取扱い〕 県内精神科病院の一部では精神科病院入院患者について治療上の必要から1週間ない し10日間程度の外泊をさせることがあるが、この外泊中の入院料等について、健康保険 と精神保健福祉法とでその取扱いに差異があるように思われるが、医療扶助においては どのように取り扱うべきか。 〔参照〕昭和38年7月18日衛発 第568号公衆衛生局長通知、 平成2年3月19日保険発 第22号保険局医療課長・歯科医療管理官通知 (答)お見込みのとおり、精神疾患入院患者が特定の病状により試験外泊を必要とするこ とがあるが、この場合、健康保険においては院長の承認によって保護者に同伴させ、5~7日 間位の予定で家庭療法を行わせる場合、保険給付として入院料の一部は請求して差し支え ないこととされている。
一方、精神保健福祉法 第40条の規定に基づく仮退院中の精神障害者の経過観察に要する 費用として、同法の国庫負担の対象として入院料の一部を請求し得る期間は14日以内とさ れている。 医療扶助においては、治療上真に必要と認められる場合に限り健康保険の取扱 いに準じて取扱うこととされたい。
(問43)〔精神保健福祉法 第29条の措置入院患者の併発疾病〕 精神保健福祉法 第29条の規定に基づく措置入院患者の併発疾病について、すべて同法に よる公費負担の対象となると解するがどうか。 〔参照〕昭和36年12月2日衛発 第957号公衆衛生局長通知 (答)精神保健福祉法による措置患者に対する精神障害以外の疾病に係る医療費について は、原則として精神保健福祉法により負担するものであるが、当該措置患者が入院してい る精神科病院以外の医療機関で当該医療を受けた場合には、公費負担の対象とはされない ことになっている。なお、当該病院において、歯科その他の合併症の治療を行うことができ ない場合には、他の適当な国若しくは都道府県の設置する精神科病院又は指定病院に転院 させることについて、同法の措置権者である都道府県知事(指定都市市長)に要請する等 適切に配慮されたい。
(問44)〔感染症予防法による入所患者の併発疾病〕 感染症予防法 第19条の規定に基づき、特定感染症指定医療機関等に入院した結核患者 が結核以外の疾病を併発した場合の医療費については、同法 第37条による公費負担の対象 となると解するがどうか。
〔参照〕昭和37年5月16日衛予 第22号公衆衛生局結核予防課長通知 (答)お見込みのとおりであるが、一般的に医師又は歯科医師としての診療の必要性があ ると認められる場合に限り感染症予防法により負担されるものである。
(問45)〔入院措置の解除と医療扶助との関係〕 精神保健福祉法 第29条の4の規定により入院措置が解除された要保護者から医療扶助に よる入院の申請があった場合、措置入院解除をもって入院不要と判断し、入院を認めない こととしてよいか。 (答)措置入院が解除された要保護者について、これを医療扶助において即入院不要と一 概に割り切ることは適当ではない。すなわち、措置の解除は単に入院を継続しなくても自 傷又は他害のおそれがない状態となったことを意味するに過ぎず、病状によってはなお入 院を要する場合があり得るので、要保護者の病状等を勘案した上で、個々の事案ごとに慎 重に判断されたい。
(問46)〔月末に翌月にわたり投薬した場合の取扱い〕 月末に翌月にわたって投薬した場合は、投薬月の診療報酬明細書にその分を含めて請求 してよいとされているが、翌月の初めから医療扶助廃止の決定を行った場合には、保護 はすでに廃止されているにもかかわらず、事実上は廃止後数日分の投与をしているので 決定と事実の不一致を生ずることとなるが、この場合の事務処理はどうしたらよいか。 (答)この取扱いは健康保険における取扱いと同様に、主として請求事務の簡素化を図っ たものである。 すなわち、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(昭和32年4月30日厚 生省令 第15号)第20条第2号のヘによれば、投薬量は予見することができる必要期間に従っ たものとしている(特殊の事情がある場合において必要があると認められるときは、1回1 4日分、30日分又は90日分を限度としている)ので、例えば、3月31日に2日分の投薬を行 った場合、本来の方法によると、これを3月請求分と4月請求分とに分けて各月に請求する こととなり、請求事務が煩雑となるので、その手続を簡素化したものである。
設問のようなケースは、医療扶助の場合、医療券(調剤券)の有効期間との関連から、 月末のみならず月の中途においても生ずることがあり得るが、その場合には、投薬の日の 属する月に要した医療とみなして取扱うこととして差し支えない。
(問47)〔初診時の検査の程度について〕 初診の場合の検査は、診断に必要な最小限度のものになっているが最小限度とはどの 程度のものであるのか。
また、その程度を超えていると認めた場合には福祉事務所長において減額査定してよ いか。
〔参照〕医運 第3-1-(5) (答)初診時における検査の最小限度の程度については、被保護者の傷病の程度等によっ て当然に異なるものであり、その具体的な判断基準を明確に示すことは困難である。 この ため、個々の事案ごとに主治医訪問、嘱託医協議等により、当該初診時における検査が医 療扶助の診療方針からみて必要最小限度の範囲であるか否かを適切に判断されたい。
(問48)〔時間外診療〕 農繁期や稼動時間の都合などにより、午後以降において受診しなければならない患者に ついての診療報酬は、時間外の取扱いによるべきか。
〔参照〕平成20年3月5日保医発 第0305001号医療課長・歯科医療管理官通知 (答)設問のような患者が多い場合には、当該指定医療機関に対して、指定医療機関医療担 当規程 第4条に基づき患者のために便宜な時間を定めて診療を受けるよう措置すべきであ ることはいうまでもない。この場合の診療報酬を時間外の取扱いにするかどうかについて は、同条の規定が医師法 第19条(医師の応召義務)に対応する入念規定であることから、こ れによって直ちに時間外加算を認めないとすることはできないので、それぞれ指定医療機 関との話し合いにより、例えば午後8時までを実態的な診療応需態勢にあるものとして(診 療時間内と同様な取扱いで診療を行っている場合)時間外の取扱いを行わないように取り 決めるべきであろう。
ただし、医師が一人の診療所などで医師の診療応需態勢が前記のような状況におかれて いない場合は、時間外の取扱いを行わざるを得ないので、指定医療機関の実態を十分考慮す べきである。
(問49)〔A医療機関にX線撮影設備がないためB医療機関に依頼した場合の検査料の請求〕 A指定医療機関にX線撮影設備がないためB指定医療機関に診療状況を示す文書を添えて 撮影を依頼した場合の検査料はどのように請求させるべきか。
〔参照〕平成20年3月5日保医発 第0305001号医療課長・歯科医療管理官通知 (答)A指定医療機関の依頼により、B指定医療機関が単にレントゲン写真を撮影した場合 のように、Bが検査設備をAに提供したにとどまる場合は、その検査料はAにおいて請求させ ることとなる。 なお、設備提供に対する報酬は、AとBとの話し合いの上、AからBへ支払うこととなる。
また、BにおいてAの依頼により診察及び読影をも行った場合は、Bにおいて初診料及び レントゲン検査料を請求しても差し支えないので、この場合は、Bから診察料・検査料請求 書によって福祉事務所長に直接請求させることが適当である。
以上の取扱いは、健康保険の取扱いに準じたものである。
(問50)〔入院中の施術料金の請求〕 指定医療機関の整形外科等に入院中の患者に対して、施術を行う必要が生じた場合で あって、当該医療機関にあん摩・マッサージ師がいないため外部から施術者を招いて施 術を行わせることとした。 この場合の施術料の請求については、当然当該医療機関の責任 において行うべき業務の一部を便宜上施術者に行わせたものとして医療機関から施術料 を含めて請求させることが適当と考えられるがどうか。 (答)お見込みのとおり、診療報酬点数表所定の点数により、医療機関から診療報酬として 請求させるものである。
(問51)〔2戸以上の患家に対して引き続き往診を行った場合の往診料について〕 指定医療機関から有料老人ホームに赴いて、複数の被保護者を診療した場合、2人目以 降の世帯の往診料についても、医療扶助を適用してよいか。
〔参照〕平成20年3月5日保医発 第0305001号 (答)2戸以上の患家に対して引き続き往診を行った場合の往診順位 第2位以下の患家に対 する往診距離の計算は、指定医療機関の所在地を起点とせず、それぞれ先順位の患家の所 在地を起点とすることとなっており、 第2順位の世帯については指定医療機関からでなく、
ただし、同一の患家で2人以上の患者を診療した場合は、2人目以降の患者については往 診料を算定できないこととされている。
設問の有料老人ホームについては、その形態から当該ホーム全体を同一の患家とみなす ことが適当であることから、2人目以降の患者については往診料は算定されず、診察料に ついてのみ医療扶助を適用することになる。
(問52)〔医療扶助の診療報酬の不服申立て〕 指定医療機関は、知事が決定した診療報酬額に不服がある場合、再決定を求めることは できないか。 〔参照〕法 第53条第5項、医運第5-2-(1) (答)診療報酬額の知事決定については、法 第53条第5項の規定により、行政不服審査法に よる不服申立てを行うことができないことになっており、これに不服な場合には訴えを提 起して争う以外に方法はない。 したがって、生活保護法の体系では、知事決定に対する再決定の請求はできないことと されており、当然にこのための手続規定も設けられていない。 なお、知事決定後において、指定医療機関の申出等を契機として当該決定処分の内容に 誤りが発見されたような場合には、当該決定処分を取り消し、再決定することは可能であ り、知事決定の明白な誤りはこの方法により救済することが適当である。 (2)調剤 調剤の給付は、医療機関の内部処方により医療機関が自ら給付する方式と、医師の発行 した処方せんにより薬局が調剤して給付する方式がある。 指定医療機関が被保護者に処方 せんを発行したときの医療扶助における調剤の給付の方式は、まず被保護者がこの処方せ んを福祉事務所長の発行した調剤券に添付し、調剤券に記載された指定薬局に提出して調 剤の給付を受ける。 指定薬局はこの調剤券に基づき医療機関の場合に準じて調剤報酬の請 求を行うこととなる。
(3)治療材料 医療扶助における治療材料は、被保護者の最低生活を守る観点から、医療保険において は認められていないものについても相当広範囲にわたって認められており、治療の一環と して必要とする場合に治療材料券により現物給付することとされている。 なお、治療材料券は医療券と同様の性格を持つものであるが、治療材料の性格から、有効 提示期間は発行の日から1O日間であり、また所定の治療材料の1回限りの交付によってそ の効力を消滅するものであるので、その発行に当たっては、被保護者、取扱業者等に十分周 知徹底を図る必要がある。
(問53)〔手術時における多量のサラシ〕 膀胱手術を受けた被保護者が、その患部を覆うため多量のサラシを必要とする場合、 そのサラシについては医療扶助の治療材料として認められるか。
〔参照〕平成20年3月5日保医発 第0305001号保険局医療課長・歯科医療管理官連名通知 (答)手術に際して通常必要とされている衛生材料は、診療報酬の所定点数中に含まれる こととなっているため医療扶助の治療材料として支給することは認められない。 なお、処 置及び手術に際して使用した薬剤並びに特定の治療材料(その範囲は「特定保険医療材料 及びその材料価格」(平成20年3月5日厚生労働省告示 第59号)の別表に定められている)を 使用した場合は、処置及び手術の点数にその費用を加算することができることとなってい る。
(問54)〔コルセット運搬に要する旅費の請求は認められるか〕 コルセットの製作業者が、飛行機などを利用しなければならないような遠距離にある要 保護者の家庭に出張した場合に、その出張旅費をコルセットの価格に含めて請求させるこ とは問題ないか。
(答)コルセットの価格にすでに製作業者の出張旅費が含まれている場合と含まれていな い場合があるが、明らかに含まれていない場合であって、設問のように遠距離に出張したも のと認められるときは、当該出張旅費の最低限度の実費を価格に含めて請求させて差し支 えない。 なお、近距離で、通例自転車・オートバイなどによって出張営業しているような製作業者 の場合には別個にその出張旅費を請求させることは適当ではない。
(4)施術 施術には、柔道整復、あん摩・マッサージ、はり・きゅうの種類があり、これらの給付 についても、基本的には、医療の給付と同様の手続により行うこととしているが、施術の 性格から、柔道整復師が打撲又は捻挫の患部に手当をする場合及び脱臼又は骨折の患部に 応急手当をする場合を除き、医師の同意を要するものである。 特に、はり・きゅうについ ては一つの独立した治療体系に近いものであり、医師の治療と競合することが多いため、 その給付対象は、指定医療機関による医療の給付を受けても所期の治療効果が得られない もの又は今まで受けた治療経過からみて治療効果があらわれていないと判断されるものを 対象とするので留意されたい。
(問55)〔計画的な往療について〕 被保護者の希望に基づき、施術者が被保護者の希望に沿った訪問計画を立てて、定期 的に施術を行っているような場合に、往療料を算定しても差し支えないか。
〔参照〕医運 第3-7-(3)-イ (答)往療料については、治療上真に必要があると認められる場合に支給できるものであ る。
このため、個々の事案ごとにその内容を審査した上で、被保護者の病状・障害等の状況 に照らして、通所して治療を受けることが可能であると認められる場合や定期的な治療の 必要性がないと判断される場合など、その往療が治療上真に必要があると認められない事 案については、医療扶助を適用することは認められないものである。
(問56)〔柔道整復の医師の同意について〕 柔道整復については、打撲又は捻挫の患部に手当する場合や脱臼又は骨折の患部に応 急手当をする場合は医師の同意は不要とされているが、医師の同意が必要であるかどう かを確認する観点から、被保護者に事前に指定医療機関を受診するよう求めてもよいか。
〔参照〕医運 第3-7 (答)指定施術機関での施術を希望する被保護者に対して、合理的な理由なく、事前に指 定医療機関を受診するよう求めることは適当ではない。
福祉事務所は、被保護者から施術の給付申請があった場合には、医運 第3-7に基づき、 施術の給付要否意見書に必要事項を記載の上、指定施術機関において給付要否意見書の所 要事項の記入を受けるよう指導し、必要に応じて、医師の同意を求めるべきである。
(5)移送 医療扶助による移送の給付対象は、患者が受診する場合等の患者自身に係る移送費用、 患者移送のために真にやむを得ない事情により付添人を必要とするときの付添人の移送費 用、医師の往診等に伴う費用等であって、患者の傷病等の状態に応じ、最も経済的な方法 及び経路により移送を行ったものについて認められている。
移送の給付においても、他の項目の給付方法と同様に事前に要否意見書により必要性を 判定し、乗車船券等又は必要な金銭を給付する等の方法で行うこととしているが、緊急の 場合であって、事前の申請が困難なやむを得ない事由があると認められる場合については、 事後の申請であっても内容確認の上、給付を行っても差し支えないこととされている。
なお、移送の給付はその他の給付方法と異なり給付券により行うのではなく、乗車船券 等又は必要な金銭の給付により行うこととされているので、その旨の記録を保存し、原則 として領収書を徴する必要がある。
(問57)〔自家用車による往診の燃料代の算定方法〕 往診のため、医師が自家用車を使用した場合、その燃料代(ガソリン代)を認めること になって いるがその算定方法を具体的に教示されたい。 〔参照〕医運 第3-9-(1) (答)自動車の燃料消費量は、車種、地形及び道路の良否等によりかなり相違があり、全 国一律にその価格を決めることは困難であるので、各地域ごとに、次の方式により1km当 たりのガソリン代を算出し、これにより所要燃料代を認定することとされたい。
1L当たり単価(小売現金取引価格) ―――――――――――――――― = 1km当たりガソリン代 1L当たり走行距離
(問58)〔自家用車による往診の燃料代の支給方法〕 往診のため、医師が自家用車を使用した場合、その燃料代を認めることになっているが、 この支給は次のいずれかによるべきか。 1 往診の都度医療機関から福祉事務所へ請求させるべきか 2 1か月分まとめて請求させるべきか 3 給付要否意見書(移送)が必要か 〔参照〕医運 第3-9-(1) (答)被保護者に、指定医療機関からの請求書など事実を証するに足る書類を添付させた 上で、1か月分をまとめて請求させることが適当である。
(問59)〔給付要否意見書(移送)の見積りについて〕 給付要否意見書(移送)の所要経費見積りは、地区担当員でもできると思うが、逐一 取扱業者の見積りを要するか。 応急の場合、病院輸送について、タクシー、電車、バスの すべてを利用しなければならない場合などもあり、事務的に非常に不便である。 (答)移送は最小限度のものを原則として現物支給するものであるが、福祉事務所におい て明らかに承知できるような費用については取扱業者の見積りを求めることなく処理して 差し支えない。
(問60)〔福祉事務所管外の医療機関を受診する際の移送費の取扱いについて〕 被保護者の疾病等の状態により、福祉事務所管内での医療機関での対応が困難である と認められる場合については、福祉事務所管外の医療機関への受診であっても移送費の 支給を認めて差し支えないか。
〔参照〕医運 第3-9-(1)-イ 平成20年4月4日社援保発 第0404001号社会・援護局保護課長通知 平成20年6月10日社援保発 第0610001号社会・援護局保護課長通知 (答)被保護者の疾病等の状態により、福祉事務所管内の医療機関では、治療を行うこと が困難であると認められる場合や、被保護者が管轄区域の境界付近に居住しており、福祉 事務所管外の医療機関を受診する方が近距離である場合等については、お見込みのとおり 取扱って差し支えない。
なお、その場合であっても、受診する医療機関は、治療が可能な医療機関のうち、被保 護者の居住地から最寄りの医療機関であること。
(問61)〔福祉事務所管内の範囲について〕 福祉事務所管内の範囲について、福祉事務所の所管区域が広大なため、地域を細分化 したほうが妥当と考えられる場合には、各福祉事務所の判断により、その範囲を設定し てもよいか。
〔参照〕医運 第3-9-(1)-イ 平成20年4月4日社援保発 第0404001号社会・援護局保護課長通知 平成20年6月10日社援保発 第0610001号社会・援護局保護課長通知 (答)福祉事務所管内の範囲については、各都道府県の地域医療計画等を踏まえた上で、 地域の実情に応じて細分化したり、逆に近隣の福祉事務所管内を含めて設定して差し支え ない。
(問62)〔福祉事務所管内医療機関での対応が困難な場合について〕 精神疾患の患者などで、福祉事務所管外の医療機関に長期間受診しており、患者の医 師に対する信頼、その他心理的作用の及ぼす効果が、病状の安定や改善、日常生活の維 持向上に寄与していると認められるような場合については、管外の医療機関への受診で あっても、移送費の支給を認めてもよいか。
〔参照〕医運 第3-9-(1)-イ 平成20年4月4日社援保発 第0404001号社会・援護局保護課長通知 平成20年6月10日社援保発 第0610001号社会・援護局保護課長通知 (答)福祉事務所管外の医療機関を長期間受診している場合であっても、病状上転医が可 能であれば、福祉事務所管内の適当な医療機関を選定して、当該医療機関に転院させるこ とが適当である。
しかしながら、設問のようなケースであって、保護の実施機関において、嘱託医協議、 主治医訪問等により調査を行った上で、転医による環境等の変化が、当該患者の病状悪化 につながる蓋然性が高いと判断される場合等については、福祉事務所管外の医療機関への 受診であっても移送費を支給して差し支えない。
なお、その場合であっても、移送の給付の継続の要否を検討する際には、福祉事務所管 外の医療機関への受診の必要性についても併せて検討を行うなど、移送費の適切な給付に 努められたい。
(問63)〔過度の受診に対する移送費支給の可否について〕 過度の受診であると認められる場合であっても、当該受診にかかる移送費を給付しな ければならないか。
〔参照〕医運 第3-9 (答)過度の受診については、その受診行為自体が適正受診の指導対象となるものである。
当然ながら、当該受診に要する交通費については、必要な費用とは認められないことか ら、移送費の給付対象にはならない。
(問64)〔付添人の日当について〕 被保護者に看護師が付き添って通院しているが、看護師に対する日当の支払いは可能 か。 また日当の支払いが可能であった場合、その日当額について、具体的な基準はある のか。
〔参照〕医運 第3-9-(3)-ア (答)付添人の日当については、主治医訪問、嘱託医協議等により、医学的管理等のため に付添人が必要と認められた場合に限り、移送費として最小限度の実費を支給して差し支 えない。
なお、付添人の日当額については、付添いに必要となる時間や付添人が医師であるか看 護師であるかによって相違があることは必然であるため、明確な基準は定めていない。 こ のため、各自治体の条例等に規定された類似の日当、旅費支給事例等を参考にして給付額 を決定されたい。
(問65)〔宿泊費を伴う場合の取扱いについて〕 被保護者が、治療上の必要性から遠方の指定医療機関を受診する場合であって、治療 に要する時間等により、日帰りが困難であると認められる場合には、宿泊費を医療扶助 の通院移送費として支給してよいか。
〔参照〕医運 第3-9-(3)-ア (答)お見込みのとおり取扱って差し支えない。
ただし、本人の希望のみによることなく、各福祉事務所において、医療の必要性や通院 に要する時間等を考慮して、真にやむを得ない理由があるかどうかを厳正に審査すること。
(問66)〔待機料の取扱いについて〕 通院に際し、タクシー等の移送を行った際、医療機関の受診中に待機していた間の料 金については、給付の対象となるのか。
〔参照〕医運 第3-9 (答)医療機関を受診中のタクシーの待機料金については、通院に際して直接必要となる 費用ではないため、医療扶助の移送の給付対象としては認められないものである。
ただし、待機時間が短時間なため迎車料金等と比較して再度手配するより経済的である と認められる場合や待機料金も含め往復で契約等を行った方が片道ずつ利用するより経済 的であると認められる場合等については、待機中に係る費用も移送の給付対象として差し 支えない。
7 他法関係 生活保護制度は、保護の補足性の原理により他法他施策の活用を図った後なお不足があ る場合に初めて保護が適用されるものであり、医療扶助においても例外ではないことから、 医療扶助が他制度の肩代わりとならないよう十分留意する必要がある。
なお、国民健康保険制度については、国民健康保険法 第6条第9号により、被保護者は保護 を停止されている場合を除き同法の適用除外とされるため、保護の決定実施に当たっては、 要保護者、市町村当局、指定医療機関等の関係機関と十分連絡調整を図り、適正な実施を 行うことが必要である。
(問67)〔従前、国民健康保険の被保険者であった者が保護決定前において国保による受 診をした場合の取扱い〕 国民健康保険法による被保険者が生活保護法の新規申請を行ったのち、受診(療)行為が あった場合、生活保護の決定とともに被保険者であった被保護者に対する一部負担金等の 返戻等の具体的な取扱いについて教示されたい。 〔参照〕医運 第5-4-(3) (答)国民健康保険の被保険者に対して生活保護法による保護の開始の処分が行われたと きは、当該被保険者はその旨を国民健康保険法の定めるところに従い保険者たる市町村の 長等に届出することになっているので、その届出に基づき速やかに資格喪失の処分がなさ れ、かつ、その連絡が遅滞なく行われることにより、国民健康保険団体連合会が被保護者 に係る診療報酬を支払うという事例は、通常は起こり得ないものと考えられる。
例外的にこのような事例が生じた場合における被保護者に係る一部負担金等について は、領収書等により確認の上、金銭給付することとされたい。
また、保険者負担分については、保険者から被保険者であった被保護者に対する不当利 得返還請求書に基づき金銭給付することとされたい。
なお、月の中途開始の場合にあっては、生活保護法負担分と国民健康保険法負担分の振り 分けは、医療機関の協力なしには困難なので、不当利得返還請求書の審査に当たっては慎重 な取扱いを行う必要がある。
(問68)〔医療費貸付金との関係〕 保護開始申請者に対する生活福祉資金(療養費)活用の指導は、どのようにしたらよい か。例えば、必ず療養費の貸付申請をさせ、その却下を待って医療扶助を適用する取扱いは 行きすぎか。 〔参照〕医運別紙 第2号-(8) (答)生活福祉資金(療養費)は、低所得者が医療費を負担できないために治療を遅らせ、 その結果病状を悪化させ、ひいては被保護階層に転落するようになることを防止する趣旨 によるものであり、被保護者は貸付対象から除外されている。
したがって、一般に貸付申請を要件として保護の要否を決定することは適当でない。 なお、保護を要するほどに生活に困窮していないとして保護の申請を却下したときは、一 般的にはこの貸付資金の貸付要件を具備する場合が少なくないので、このような場合にこ そ、この制度の活用について積極的に配慮すべきである。
(問69)〔障害者自立支援法 第5条第18項に規定する自立支援医療のうち精神通院医療と の関係〕 「自立支援医療費の支給認定について(平成18年3月3日障発 第0303002号障害保健福祉 部長通知)」別紙4によれば自立支援医療(精神通院医療)の対象となる医療の範囲は、精 神障害及び当該精神障害に起因して生じた病態に対して病院又は診療所に入院しないで 行われる医療とすることとあるが「精神障害に起因して生じた病態」とは具体的にいか なるものか。また、往診による医療は、精神通院医療の範囲に含まれるか。
〔参照〕平成18年3月3日障発 第0303002号障害保健福祉部長通知 (答)精神障害に起因して生じた病態とは、精神障害の症状である躁状態、抑うつ状態、 幻覚妄想、情動障害、行動障害、残遺状態等によって生じた病態である。 なお、精神障害 に起因するか否かの判断は、症例ごとに医学的見地から行われるべきものではあるが、一 般的に感染症(慢性のもの)、新生物、アレルギー(薬剤副作用によるものを除く)、筋骨 格系の疾患については、精神障害に起因するものとは考え難い。 また、後段の往診による 医療も、往診料を含め公費負担医療の範囲に含まれるものである。
(問70)〔自立支援医療の認定を受けている者が生活保護開始や廃止になった場合の取扱 い〕 自立支援医療の認定を受けている者が生活保護開始や廃止となった場合、当該者の自 立支援医療の所得区分の取扱い如何。
(答)現に自立支援医療の認定を受けている者が生活保護開始となる場合、当該者の自立 支援医療の所得区分は生活保護開始日より「生活保護」として取扱うことになる。
また、自立支援医療の認定を受けている被保護者が生活保護廃止となる場合、自治体の 職権により、所得区分「生活保護」から変更認定を行い、変更認定日以降、新しい所得区 分として取扱うことになる。
なお、福祉事務所においては、自立支援医療の認定を受けている被保護者について、生 活保護を廃止する場合には、各都道府県・指定都市の自立支援医療担当課あてに情報提供 すること。
(問71)〔妊娠中毒症等療養援護制度との関係〕 生活保護法による医療扶助と妊娠中毒症等療養援護制度との関係について、次のことを 御教示願いたい。 (1)保護開始申請世帯の世帯員が妊娠中毒症等にかかり受療の後、援護費の支給申請を 行った場合であって、援護費支給の可否により保護の要否が決定されるときは、県 衛生主管部長からの支給決定の通知があった後に保護の決定をしなければならない か。 (2)指定医療機関が妊娠中毒症等療養援護費を代理受領することになった場合、援護費 の支給に伴う本人支払額は、医療券にどのように記載すべきか。 (3)妊娠中毒症又は糖尿病の患者が、月の25日以降に入院したため、その月の医療費全 額が援護費によって賄い得ると認められる場合はその月の医療券を交付しなくても よいか。
〔参照〕昭和39年9月30目社保 第110号社会局保護課長・児童家庭局母子衛生課長連名通知 (答) (1)お見込みのとおり、援護費の支給決定を待って保護の要否を決定するものである。
なお、援護費の支給が決定されたときは、保健所長は福祉事務所長に対してその旨を文 書によって連絡することとなっており、この連絡を受けた福祉事務所長は速やかに保護の 要否について判定を行い、要となった場合には当該被保護者に対して医療券を交付するこ と。
(2)援護費の支給に伴う本人支払額の記載については、本人受領であるか代理受領であ るかを問わず、本人支払額欄に援護費の額を朱書する等、収入との対比による本人支払額 と区別すること。
なお、援護費の本人支払額は併給の場合にも生ずるので記入漏れのないよう留意する必 要がある。
(3)月の中途で入院した等、その入院日数が少ないため医療費が少額であると推定され る場合は、指定医療機関に対し当該月の医療費所要見込額を照会し、その結果、援護費に よって賄うことが可能であると認められた場合は、その月の医療券は、交付しないことと して取扱って差し支えない。
したがって、翌月の医療券を交付する場合の援護費支給に伴う本人支払額は、援護費支 給額から前月の医療費を控除した残額となる。
(問72)〔集団検診と医療扶助〕 市町村が生活習慣病対策として保健所に委託して心臓病又はガンの集団検診を行った 結果、当該疾病に該当の疑いありとされたものが精密検査を受ける場合、これについて医 療扶助を適用してよいか。 (答)集団検診の結果精密検査を行う必要があると認められる場合であって、当該市町村 が集団検診の一環として精密検査を行わない等、他に活用すべき施策がないときは、当該 精密検査を医療扶助の対象として取扱って差し支えない。 なお、このような場合の精密検査は、健康保険においても療養の給付の対象とされるので、 その活用に遺漏のないよう留意されたい。
(問73)〔原爆援護法との関係〕 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律 第18条第1項の規定によって一般疾病医療費 の支給対象から除かれている「遺伝性疾病」と、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律
原子爆弾の放射能を浴びた時以後にかかった遺伝性でない精神疾患については、一般疾病 医療費支給の対象となるものである。 (注)原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律による一般疾病医療費の支給対象となら ない疾病は、次のとおりである(同法 第18条第1項及び平成7年6月23日厚生省告示第126号) (1)遺伝性疾病 (2)先天性疾病 (3)原子爆弾の放射能を浴びた時以前にかかった精神疾患 (4)齲歯のうち 第1度齲蝕(C1)及び第2度齲蝕(C2)のもの なお、同法 第10条第1項の規定による医療給付を受けることができる傷病が、この対象と ならないことは、いうまでもない。
(問74)〔感染症予防法との関係〕 被保護者が感染症指定医療機関以外の病院に入院中、一類又は二類感染症等にかかり、 入院措置等された場合、当該措置等が継続される間の医療費は、一類又は二類感染症等罹 患前からの疾病(例えば高血圧)についての医療費を含め、感染症予防法で負担されると解 してよいか。 〔参照〕医運別紙 第2号-(2) (答)感染症予防法 第19条若しくは第20条(これらの規定を第26条において準用する場合 を含む)又は 第46条の規定により感染症指定医療機関に入院の措置等が実施された一類又 は二類感染症等の患者等のうち、要保護者については、お見込みのとおり、当該入院等が 継続する間の医療は、すべて同法 第58条第1項第10号の規定により当該患者の発生地の都 道府県が支弁すべきものであり、生活保護法の医療扶助の対象とはならないものである。
(問75)〔母体保護法による不妊手術〕 母体保護法 第3条による不妊手術は、同法の指定を受けていない医師によって差し支え ないか。
〔参照〕医運 第3-1-(3)-オ、別紙第2号-(1)、 平成8年9月25日社援発 第186号・児発第830号社会・援護・児童家庭局長連名通知 (答)差し支えない。 母体保護法上、同法の指定医師でなければ実施できないものは人工 妊娠中絶のみである。
(問76)〔肝炎治療特別促進事業との関係〕 社会保険に加入している被保護者については、肝炎治療特別促進事業が医療扶助に優 先して適用されることになるのか。
〔参照〕昭和51年8月7日保険発 第82号別添3(3) (答)お見込みのとおり、肝炎治療特別促進事業(インターフェロン助成事業)が医療扶 助に優先するものである。
(問77)〔予防接種と医療扶助〕 健康保険で認められていない予防注射を医療扶助で対応することができるのか。
(答)医療扶助により対応することはできない。
(問78)〔町村合併による所在地の変更〕 A市がB町を吸収合併したため、B町が開設していた指定医療機関である病院等につい ては、その開設者、名称及び所在地表示が変更することとなったが、当該指定医療機関につ いての指定の効果は影響ないものと解し、単に名称、所在地の変更を告示するのみで足り るか。 〔参照〕法 第50条の2、昭和29年7月16日医収第261号医務局長通知 (答)法における医療機関の概念は、医師等の個人ではなく、病院、診療所などを人的要素 と物的要素に結合した一つの組織体としてとらえているのであって、その構成は極めて複 雑であり、その内容は絶えず変動しているとみるべきである。
そこで、医療機関の一定範囲の内容の変動については、その状況を把握するため、生活保 護法50条の2において変更、休廃止等の届出をさせることとしているところであるが、医療 機関の所在地の変更(単なる所在地表示の変更を除く。)や開設者の変更のような場合は、 医療機関の本質にかかわるものであって、その同一性が著しく損なわれる場合があること から、一旦廃止の届出をさせることとしている。
設問については、当該指定医療機関の開設者がB町長からA市長に変更されたのであるか ら、B町長の開設に係る指定医療機関は一旦廃止し、新たにA市長の開設に係る医療機関とし て指定する取扱いを行うべきである。 なお、市町村合併又は町村の市若しくは町への昇格に伴う公立医療機関に係る医療法上 の開設許可の取扱いは次のとおりであるが、医療法で一旦廃止の手続をとることとしてい る場合は、いずれも本法の指定医療機関についても同様に取扱うべきものである。 1 吸収合併の場合 (1)吸収した側の開設した病院、診療所又は助産所については、改めて開設許可を受け る必要はない。
(2)吸収された側の町村の開設した病院等については、一旦廃止の手続をとった後、改 めて開設許可を受けるべきである。
2 対等合併の場合 対等合併を行った町村の開設した病院等については、一旦廃止の手続をとった後、改め て開設許可を受けるべきである。
3 単独昇格 町村が単独昇格して市又は町となった場合(その際町村の名称を変更した場合を含む)、 当該町村の開設した病院等については、改めて開設許可を受ける必要はない。
(問79)〔開設者の死亡後相続人が引き継いでいる場合の取扱い〕 指定医療機関が開設者の死亡により廃止された場合に、その相続人等が引き続き経営 し、本法の指定を受ける意思を有するときは、改めて指定の申請をさせることとなるが、廃 止は理由の発生した日をもって決定し、指定は申請後調査などのため相当日数を経過して から行われているのが現実であるが、その間継続受療中の患者の取扱いに疑義があるの で、このような場合には指定申請時に遡って指定するのがよいと思うがどうか。 〔参照〕昭和32年7月18日保険発 第104号保険局健康保険課長通知、 昭和33年8月21日保険発 第110号の2保険局健康保険課長通知 (答)指定医療機関の開設者が死亡すれば、指定の効力が失われるので、廃止の手続を要 することはいうまでもないが、相続人などが引き続き経営する場合であっても、通常は直ち に指定申請書が提出されないことが多く、また、審査のため改めて指定を受けるまでに相当 期間を要することが通例である。 しかし、指定の効力は、医療機関の指定の申請に対して都道府県知事、指定都市市長又は 中核市の市長が同意した日(当事者双方の有効な意思の合致のあったとき)に成立するも のであるから、原則として指定申請書の提出時に遡って指定することは適当ではない。 こ のような場合に医療機関として指定を受けない期間を生ずることがあり得る。 ただし、この指定を受けない期間中の被保護委託患者の診療については、引き続き指定を 受ける意思があり、現に申請書が提出されている事情を考慮し、本法の診療方針によって 診療が行われることを期待できるときは、転院などの措置を行う必要はなく、指定を受ける までの間、便宜的に指定医療機関に準じて取扱って差し支えないものである。 なお、このような場合に指定医療機関としての実質的な内容には変更がなく、単に開設 者が変更したにとどまる場合が少なくないので、指定申請書の早期提出を指導する一方、 都道府県、指定都市又は中核市においても、可及的速やかに所要の審査を経て指定する配 意が必要である。
(問80)〔指定医療機関の告示事項〕 医療扶助指定機関の指定、変更、その他諸手続については、省令に規定されるところによ って処理されることになっているが、次の事項について疑義があるので御指示願いたい。 1 施行規則 第12条による指定告示に開設者の氏名又は名称は必要ないか。 2 開設者の異動については、届出手続を要しないか。 3 医療法 第28条(管理者の変更命令)以外の管理者の変更は届出を要しないか。 〔参照〕法 第50条の2、省第12条、第14条 (答) 1 指定医療機関の開設者の氏名又は名称の告示は要しないものである。 2 指定医療機関の開設者の人格の変更(開設者の名称上の変更を除く)の場合は、医 療法上、医療機関として廃止及び新規開設の手続きを要するものであり、本法の指 定医療機関としても施行規則 第10条及び第14条に基づき廃止及び新規指定の手続き をとるべきものである。
3 医療法 第28条以外の管理者の変更については届出を要しないものである。
ただし、必要と認めるときは、あらかじめこれが届出を要することとして指導する ことは差し支えないものである。
(問81)〔指定申請書が出された場合いかなる判断に基づいて指定を行うか〕 医療機関から施行規則 第10条第1項の条件を具備した指定申請書が、都道府県知事(指 定都市又は中核市の市長)に提出された場合、いかなる判断に基づいて指定を行うか否 かを決定すべきか。
〔参照〕法 第49条、省第10条、第11条 (答)医療扶助の給付は、保護の実施機関による医療券の発給のみでは完了せず、指定医療 機関から必要な医療を受けることによって初めて完了するため、指定医療機関の果たす役 割は、非常に重要なものである。 すなわち、法において委託を受け、医療扶助の現物給付 を行う指定医療機関は、関係法令の定めるところに従って、誠実、適正に診療を行うもので あることを要するものであり、法ではそのような保護の適正な給付を確保するため、指定医 療機関制度を設けているのである。 したがって、法 第49条の規定に基づいて行われる指定は、当該医療機関が本法における指 定医療機関の地位を理解し、その地位に違背することなく責務を果たすという信頼的基礎 を前提としているのである。 もちろん、指定制度は医療機関を理由なく制限しようとするものではないが、最小限度前 記の信頼をもち得ることが必要であり、指定権者においてこのような信頼をもち得ない限 り、指定を行うべきではない。施行規則に都道府県知事(指定都市又は中核市の市長)は、 指定の申請があったものの中から指定を行うものとし(施行規則 第10条第3項)、指定に際 しては、医療機関の所在地の保護の実施機関の意見を聴くことができる(施行規則 第11条) と規定されているのも同様の趣旨と解される。
なお、実際問題としては、医療扶助としての医療に関しては社会保険の診療方針及び診療 報酬の例に倣っている点が多く、また、被保護者が同時に被保険者又は被扶養者として、保 険診療を併せて受ける場合もあるから、保険診療に習熟している保険医が診療に従事して いる医療機関を指定するのが適当であろうし、あるいは感染症予防法 第37条の2に規定する 内容の医療を行う医療機関である場合は同法の指定医療機関であることを必要とするもの である。
(問82)〔届出を行わないため移転先が分からないものの取扱い〕 指定医療機関が施行規則 第14条第2項第1号及び第2号に定める届出を行わずに所在地を 変更し、移転先も分からないときは、一方的に取消しを行ってよいか。
また、その手続はどうしたらよいか。 〔参照〕法 第50条の2 (答)指定医療機関の所在地が変更された場合には前所在地の医療機関は廃止されている から、指定の効力も自然に消滅すると解すべきであり、したがって、取消す必要はない。
(問83)〔無届転居し新たに開業した場合の指定の取扱い〕 指定医療機関の開設者が無届で転居して新たに開業した場合(主に個人診療所)の指 定は、どのように取扱ったらよいか。 1 管内への転居の場合は指導の上変更届を提出させるか、又は開設者より別段の意思 表示がないので廃止の手続をとるべきか。
2 管外への転居の場合は廃止の手続をとらせるべきか。
(答) 1 開設者の住所の移転により指定医療機関の所在地が変更した場合は、旧住所地の指定 医療機関は廃止し転居先において新設した医療機関について改めて指定の申請手続をさ せるべきである。
2 お見込みのとおり取扱って差し支えない。
(問84)〔分院の指定は本院と別個に行うべきか〕 指定医療機関が分院を設けたときは、別にこの分院を指定医療機関として指定する必 要があるか。 (答)指定医療機関の分院が、医療法上本院と同一の医療機関として取扱われている場合、 すなわち単に本院と病棟を画しているに過ぎず、診療報酬の請求も分院として別個に行っ ていないなど、実態としては病床又は診療科目を増設したに過ぎない場合を除いては、分 院も別個に指定すべきである。
(問85)〔検査によらないで不正を発見した場合でも指定医療機関の取消しができるか〕 不正のあった指定医療機関について生活保護法による行政措置を行う場合、次の点に疑 義があるので教示願いたい。 関係診療録及び帳簿等は、検察当局に押収されており、生活保護法 第54条による検査が できない状況にあるが、この場合警察関係の調査により相当の不正容疑があることを確認 すれば、これに基づいて、生活保護法による行政措置(指定取消し)を行ってよいか。 〔参照〕法 第54条、医運第6-2、3 (答)警察関係の調査により相当の不正容疑があることが予想されるときは、不正の事実 を確認するために速やかに当該指定医療機関に対し実地に検査を行った上で、行政措置を 行うことが適当である。 なお、診療録等関係書類が押収されている場合については、司法警察当局と連絡をとり 借覧することや押収書類が返還されるのを待って検査を行う場合もあり得るものである。
(問86)〔指定医療機関の有期指定はできるか〕 立入検査を拒否したので指定の取消しを行ったところ、行政処分取消請求訴訟を行い、 5年後に棄却の判決があり敗訴した医療機関から、その後、再指定について数回にわたり 口頭あるいは文書をもって申入れがなされたが、その都度相互の信頼がいまだ充分に回復 されていないとして指定しないまま今日に至ったものである。 今回改めて正式に指定申 請が提出されたので、関係機関の意見を聴き、また、種々調査した結果、 1 国民健康保険及び健康保険においては、診療行為及び診療報酬請求について特異な 事項が認められないこと 2 行政訴訟敗訴後、非を認めて反省していること 3 指定取消処分後相当の期間経過し、その間当時の管理者も退職していること等も勘 案の上、指定の期間を1か年として再指定してもよいと思うがどうか。 〔参照〕医運 第4-1 (答)期限を付して指定することは、特に積極的な根拠のない限り適当でないと解される ので、指定の基準に該当するものであれば期限を付すことなくこれを指定するべきである。
なお、本件事例を含め、従前不適正な医療行為のため指定取消し等の行政処分を受けたこ とのある事例については、再指定された場合、特に随時適切な指導を行う等の措置を講じ、 もって適正な医療の実施が図られるよう十分配慮することとされたい。
(問87)〔指定取消し後の再指定〕 指定取消し後、再指定の申請があった場合、適当と思われる時期に再び指定することは できないか。
〔参照〕医運 第4-1、平成7年12月22日保発第117号保険局長通知、 平成10年7月27日老発 第485号・保発第101号老人保健福祉・保険局長連名通知 (答)指定の取消処分を受けた医療機関が再び指定の申請を行った場合は、原則として取 消処分を受けた日から5年以上を経過したものでなければ再指定することができないもの であるが、単に5年以上経過しているだけでなく、取消処分を受けるに至った事由について 反省のあとが顕著であるか、又は改善の事実が認められる場合でなければ再指定すること は適当でない。
ただし、取消処分後5年を経過しない医療機関であっても、例えば次の要件のいずれにも 該当する場合は、再指定することも可能と考えられる。 ア 取消処分を受けるに至った事由について改善の事実が認められること。
イ 健康保険法においても再指定を行っていること。
ウ 地域医療確保のため必要であること。
(問88)〔施術所を開設していない施術者の指定の取扱い〕 施術者の中には、出張営業のみで一定の施術所を開設していないものがあるが、施術機 関の指定に当たっては、施術所を開設しているものに限定してもよいか。 〔参照〕法 第49条、医運第4-4 (答)施術機関及び助産機関の指定については、医運 第4の4により医療機関の指定基準を 準用することとしているが、医療機関の指定の対象としては、 1 医療法(昭和23年7月30日法律 第205号)第1条の5第1項に規定する病院 2 同法 第1条の5第2項に規定する診療所 3 同法 第5条第1項に規定する医師又は歯科医師(いわゆる往診医師又は往診歯科医師) 4 薬事法(昭和35年法律 第145号)第2条第11項に規定する薬局 の4つがある。
前記3の一定の医業をなす場所を有せず、専ら往診のみにより診療を行う医師は、機関指 定の原則に反するかに見受けられるが、これらの医師は形式的には医師個人であっても実 態上は病院、診療所等に勤務する医師とは自らその性格を異にしており、これを医療機関の 中に包含することは機関指定の原則には何ら矛盾しないものと考えられる。 このため、法
(問89)〔指定の辞退を拒めるか〕 指定医療機関から廃止の届出があった場合に、都道府県知事、指定都市又は中核市の市 長は、 第51条第1項(30日以上の予告期間を前提とする指定の辞退)の規定を根拠として 当該届出受理を拒むことができるか。 〔参照〕法 第50条第2項、第51条第1項 (答)指定医療機関が廃止された場合が、法 第51条第1項の指定の辞退に該当するかどう かは、法文上明確にされていない。 しかし、医療機関の指定が当該医療機関の存続を前提とするものであること及び医療機 関の廃止自体について医療法上何ら規制の存しないことを考えれば、法に医療機関の廃止 につき明文の規定がない限り、廃止の際にも30日以上の予告期間を要すると解釈する余地 はないものと考えられる。(健康保険法においても、保険医療機関の指定の辞退に際して は1か月以上の予告期間を設けることとなっている(同法 第79条)が、医療機関の廃止の 場合には予告期間を要しないものと解釈されている。 ) ただし、現実には、指定医療機関の廃止の際には委託中の患者の転医などの問題が生ず ることは、指定の辞退の場合と同様であるので、指定医療機関の開設者は、これを廃止しよ うとするときは、事前に、都道府県知事、指定都市又は中核市の市長及び患者を当該医療機 関に委託している福祉事務所に対し廃止の旨を連絡し、委託された患者の適切な措置につ き考慮することが必要である。 また、都道府県知事、指定都市又は中核市の市長は、法 第51条第1項の規定を根拠として 廃止の届出の受理を拒むことはできないとしても、あらかじめ廃止に伴う問題を解決した 上でその手続をとるよう、法 第50条第2項の規定により指定医療機関に対して指導すること ができるのであり、この場合の指導に対し、指定医療機関は当然従わなければならないの であるから、このような場合には極力指導により事態を解決すべきものと考えられる。 こ の場合、指定の辞退におけると同様、最小限1か月の余裕を見込んだ上で廃止することとす べきである。
これらの審査及び支払事務については、社会保険診療報酬支払基金との委託契約により 支払基金に委託して行われている。 なお、急迫等真にやむを得ない事由により非指定医療機関等へ委託した被保護者に係る 診療報酬の審査及び支払は、社会保険診療報酬支払基金に委託されないため、非指定医療 機関から被保護者を委託した福祉事務所長へ請求させ、福祉事務所長は、必要に応じ都道府 県知事の技術的な助言を受け、請求関係書類を審査した上で、当該非指定医療機関等へ支 払うこととしている。
(問90)〔診療報酬等の年度区分〕 指定医療機関の診療報酬、施術料等医療扶助費の支払年度区分について教示されたい。
〔参照〕昭和39年6月1日社保 第47号保護課長通知 (答)診療報酬についての支払年度区分は他の扶助費と同様、地方自治法施行令 第143条第 1項 第5号の規定に基づき当該診療報酬等に係る支出負担行為をした日(支出決定の日)の 属する年度をもって支払年度区分とすることとされている。 また、治療材料等特定の物品を現物給付するもの(物件契約を伴うもの)についての支 払年度区分は、上記施行令 第143条第1項第4号の規定に基づき、契約に基づく物品の納入が あり、かつ検収があった日の属する年度とされている。
(問91)〔現在使用を認められていない薬品の調剤の審査〕 薬局用の調剤報酬明細書を審査したところ、その内容に現在使用が認められていない薬 品が調剤されていた場合の取扱いについて承りたい。 〔参照〕法 第52条 (答)薬局もまた指定医療機関として指定を受けている以上、法 第52条に規定する診療方 針に則って医療(調剤)を担当すべきであることはいうまでもない。そして、この診療方針 としては、具体的には保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(昭和32年4月厚生省令 第16号) の規定の例によることとなっている。 したがって、指定医療機関たる薬局としては、上記規則に定められているとおり、使用を 認められた医薬品以外の医薬品を使用して調剤してはならない(同規則 第9条)ものであ り、被保護者が調剤券と処方せんを提示して調剤を求めた場合には、その処方せんに記載さ れた薬品が使用を認められているものかどうかを確認した後に調剤すべきである。 もし、 その薬品が使用を認められていないものであった場合には、その処方せんを発行した指定 医療機関(病院及び診療所)にその旨連絡し、訂正してもらった上で調剤を行うべきであ る。
設問の場合は、このような指定医療機関として当然払うべき注意を怠り、使用を認めら れていない薬品を使用して調剤を行ったのであるから、その薬剤料及び調剤料の請求を認 めることはできない。
また、このような処方せんを発行した病院及び診療所の取扱いも本法の診療方針に反す ることはいうまでもない。
(問92)〔調剤券による診療報酬明細書の審査要領〕 調剤報酬は、指定医療機関の医師の発行する処方せんに基づいて調剤した結果の請求で あるから、審査は困難であるが、どのようにすればよいか。 (答)例えば、同一患者の同一月分についての診療報酬明細書と突き合わせを行う等の方 法によって適正な調剤又は処方であるか否かを審査検討することとされたい。
(問93)〔支払基金審査後知事決定を行った額は、支払基金審査委員会の意見に拘束され ることなく決定してよいか〕 指定医療機関から請求された診療報酬について、支払基金審査委員会の審査後に知事 (市長)決定を行う場合の支払額は、支払基金審査委員会の意見に拘束されることなく都 道府県(指定都市又は中核市)独自に決定してよいか。 〔参照〕法 第53条第3項 医運 第5-2、3 (答)法的には差し支えない。単なる計算上の過誤又は法による診療方針に反するなど修 正を要することが明白である場合は、過誤調整を行う。 これらの場合を除いては、意見を付して支払基金審査委員会に再審査を請求することが 望ましい。 なお、支払基金審査委員会における審査が終わった後、都道府県知事(指定都市市長又は 中核市市長)より疑義その他の申出を行った場合の取扱いについては、その案件について 軽重難易の差があり、種々問題を生じやすいのであらかじめ審査委員会と十分に話し合い をつけておき、当事者間に争いのないよう留意する必要がある。 しかし、具体的適用に当たり、個々の診療内容に関し協議が整わない場合には、一方的に 知事(市長)決定を行って差し支えないことはもちろんである。
(問94)〔知事決定後、個別指導の結果によって減点する場合の支払基金への再審査依頼〕 支払基金審査委員会において審査を終了し、知事(市長)決定した診療報酬明細書につい て都道府県(指定都市又は中核市)において個別指導を実施した結果、診療内容に問題が あると思われるものがある場合及び明らかな事務上の誤りが認められる場合、当該請求額 の処理はどう行うべきか。
〔参照〕法 第53条第3項、医運第5-2、3 (答)指定医療機関に対する個別指導の際、診療内容に問題があると認められるときは、医 療機関側の意見を聴取の上、十分な指導を行うこととされたい。 また、明らかな事務上の過誤については、再び支払基金審査委員会の意見を徴する必要は なく、直ちに過誤調整して差し支えない。 2 診療報酬以外の費用 診療報酬以外の施術、治療材料費等に係る費用の審査及び支払については、福祉事務所長 が行うこととしており、各給付券等により請求を行わせ、各給付要否意見書等の給付決定時 の書類等と照合する等の審査を行い、請求額が適正なものであることを確認した上で請求 者に支払うこととしている。 3 金銭給付 医療扶助は、現物給付を原則としているが、保護が遡及決定された場合等で、保護申請以 後の医療費を、真にやむを得ない事情のため当該被保護者が支払った場合には、金銭給付 してもよいこととしている。
1 指導 指定医療機関等に対する指導は、被保護者の援助の向上と自立助長に資するため、医療の 給付が適正に行われるよう制度の趣旨、医療扶助に関する事務取扱い等の周知徹底を図る ことを目的として、講習会、懇談、広報、文書等の方法により行う一般指導と、個別の指定医 療機関等に対して実地に行う個別指導の方法により行う。 2 検査 検査は、個別指導の結果、検査を行う必要がある指定医療機関、個別指導を受けることを 拒否する指定医療機関及び診療内容又は診療報酬の請求に不正又は不当の疑いがあり、直 ちに検査を行う必要があると認められる指定医療機関に対して、被保護者に係る診療内容 及び診療報酬請求の適否について、関係書類の照合、設備等の調査を実地に行い、必要に応 じて患者調査も併せて行うこととされている。 検査の結果、不正又は不当が認められた場合には、行政上の措置(指定取消し、戒告、注意) を行うこととされている。
(問95)〔指定医療機関に対する個別指導について〕 医療扶助運営要領 第6の指導及び検査の項に関し、次の3点について教示されたい。
1 個別指導は、被保護者の医療給付に関する事務及び診療状況等について診療録その他 の帳簿書類等を閲覧し、懇談指導を行うこととされたが、この場合診療報酬明細書と診 療録との照合確認を行っても差し支えないか。 2 個別指導の結果発見された診療報酬の過誤について、過誤調整等必要な措置を講ずる ことができると解してよろしいか。 3 個別指導の結果、診療内容又は診療報酬の請求に不正又は不当を発見した場合は、 当該指導を打ち切り、直ちに検査に切り替えて差し支えないか。
〔参照〕医運 第5-3-(5)、第6 (答) 1 個別指導は、本法の趣旨の徹底を図る等のほか、個々の患者の診療状況及び診療報酬 の請求に関する事項についても指導を行うものであり、当然にその過程においては実態的 方法として診療録と診療報酬明細書の照合はあり得るものである。 2 お見込みのとおり、医療扶助運営要領 第5の3の(5)の規定に基づき過誤調整を行うこ とができるものである。 3 指導の過程で直ちに検査に切り替えることは適当ではなく、改めて文書による通知を 行った上で検査を行うべきである。
(問96)〔行政区域外の医療機関の検査と行政措置〕 都道府県(指定都市又は中核市)の行政区域外に所在する指定医療機関に対する法 第5 4条の規定による検査については、一般的には当該都道府県知事(指定都市又は中核市の 市長)が実施できないものと解されるが、これに対する見解はどうか。 〔参照〕法 第54条 (答)法 第54条の規定に基づいて行う都道府県知事(指定都市市長又は中核市市長)の立 入検査権は、指定医療機関の行う診療内容及び診療報酬請求の適否を調査するため必要で ある場合に発動されるものである。 したがって、管轄区域外の都道府県知事(指定都市市長又は中核市市長)も、その管轄 に属する保護の実施機関が当該指定医療機関に被保護者を委託している限り、その診療内 容及び診療報酬請求の適否を調査する必要があるときは、上記の立入検査を当該指定医療 機関の所在地を管轄する都道府県知事(指定都市市長又は中核市市長)と同様に実施し得 るものと解すべきである。
(問97)〔指定医療機関の取消しについて〕 指定医療機関において故意に不正な診療報酬の請求を行った事実が発見され、知事が指 定取消しを行うに先立ち、当該指定医療機関より指定辞退届が提出された場合、30日の予 告期間内であっても取消措置を行ってよいか。
〔参照〕医運 第6-3 (答)行政措置を行うに先立ち指定辞退届が提出された場合、これを受理せざるを得ない。 しかし、指定辞退の予告期間満了日以前であっても指定の取消措置を行うことは何ら違 法ではないのでその事柄の性質、軽重等に応じて直ちに取消しを行うべきか否かを慎重か つ適切に判断されたい。 なお、指定辞退の予告期間満了日以後においては、取消し等の行政措置を行い得ないが、 不正の事実等については、後日の参考として明確に記録しておくことが必要であろう。 また、これを刑事事件として告発するか否かは、その事案に応じて慎重に検討の上決定し なければならないことはいうまでもないことである。
(問98)〔立入検査を拒否した場合の診療報酬支払停止の根拠〕 法 第54条の規定に基づく立入検査又は報告の徴収に故なく従わなかった指定医療機関 に対しては、指定を取消し、又は真実の診療報酬が確認できないとしてその支払を停止す ることができるか。 〔参照〕法 第50条、第51条、第52条、医運第6 (答)立入検査及び報告の徴収は、法 第50条第2項に規定する指導の内容とみるべきもので あり、正当な理由なくこれに応じないときは、法 第51条第2項の規定により、指定を取消し得 るものと解される。 また、本法においては、設問の場合、単に、法 第86条の罰則があるにすぎないが、指定医 療機関が正当な理由がなく立入検査又は報告の徴収を拒否した場合は、都道府県知事が真 実の診療報酬を決定することが不可能になったのであるから、当然、支払義務者である保 護の実施機関は当該指定医療機関に対して診療報酬の支払を一時停止せざるを得ない結果 となる。
(問99)〔福祉事務所職員による立入検査結果の是正状況の確認〕 指定医療機関に対して立入検査を行った結果、是正改善を必要とする事項があり、都 道府県知事、指定都市又は中核市の市長から当該医療機関の管理者に対し文書をもって 通知を行った。 その後、一定期間経過後に是正改善状況の確認を行うに当たり、本庁の 運営体制が十分でないため立入検査まで手が回らない状況にあるので、福祉事務所の医 療扶助関係職員をしてこの確認を行わせたいと思うが、本庁の職員以外の者であっても、 法 第54条第1項に規定する「当該職員」に該当すると解してよいか。 〔参照〕法 第54条、医運第6、別紙第1号 (答)法 第54条の規定(法第84条の2において準用する場合を含む)により都道府県知事、 指定都市又は中核市の市長が立入検査を行わせることができる者は、法律上は、当該都道 府県、指定都市又は中核市の職員であれば誰でもよいものと解されるが、実際上は立入検 査は、本庁の業務として行われるべきで、本法の施行に関する事務、特に医療扶助関係の事 務に従事する者をもってこれに当てることとすべきである。
したがって、都道府県、指定都市又は中核市本庁の職員をもって設問の場合の確認を行 うことが適当である。
(問100)〔指定施術者に対する指導及び検査〕 指定施術者に対する立入検査はできるか、できるとすれば法的根拠を示されたい。
〔参照〕法 第50条、第55条、医運別紙第4号の1 (答)法 第55条により準用される法第50条によって、都道府県知事、指定都市又は中核市 の市長は、指定施術者に対する指導はできるが、立入検査については法律上の規定はない。 しかし、医療扶助運営要領別紙 第4号の1において、都道府県知事、指定都市又は中核市 の市長と施術団体との間に締結すべき協定書案を示しているが、この協定書案に基づく協 定の締結を行ったときは、その 第3条において立入検査をなし得る。
(問101)〔個別指導において看護師等の定数を欠く場合の処置〕 指定医療機関において、看護師などの定数を欠く疑いがあるときは、法としてはどの 程度の内容まで個別指導することができるか。 また、個別指導に当たって、帳簿その他の関係書類の閲覧を管理者が拒否した場合には どうするか。 〔参照〕法 第50条第2項、第54条第1項、医運第6 (答)法 第50条第2項の個別指導は、被保護者の医療給付に関する事務及び診療状況等につ いて実施されるものであるので、当該医療機関に対し問題を提起するとともに、医療法の主 管課と連絡をとり、しかるべき措置を依頼すべきである。 なお、関係書類の閲覧を管理者が拒否した場合は、法 第54条第1項の立入検査を行うもの とする。
(問102)〔医療扶助に関する審議会において入院継続を要しないと判定された者に対す 事後処理〕 医療扶助に関する審議会において、精神疾患について入院継続を必要としないと判定 された者に対する事後処理について教示されたい。 (答)医療扶助に関する審議会の結論として、入院医療の継続が否となった者については、 その結論をもととして、福祉事務所嘱託医等が主治医から意見を聞くことが適切である。 なお、退院措置が必要と認められるものについては、主治医の意向を尊重しながら、円 満に退院措置が推進できるよう留意する必要がある。
(問103)〔入院に関し同意あるときは精神保健福祉法の措置入院の対象にならないので はないか〕 精神障害者の入院形態については、精神保健福祉法 第22条の3に基づく任意入院、同法
(答)精神保健福祉法 第29条第1項に基づく措置入院は、医療及び保護のために入院させ なければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれ(以下「自傷他 害のおそれ」という)があると認められた精神障害者を、都道府県知事(指定都市市長) の権限により強制的に入院させるものであるため、本人又は保護者の同意の有無にかかわ らず、自傷他害のおそれがある場合には措置入院の対象となる。
(問104)〔保護の実施機関で精神保健福祉法 第23条の申請を行うこととされている趣旨〕 精神障害者について医療扶助の申請がなされた場合で、当該精神障害者を医療及び保 護のため入院させなければ自傷他害のおそれがあるときは、福祉事務所長は精神保健福 祉法 第23条に規定する申請を行うことになっているが、この申請は当該精神障害者の保 護者が行うべきではないか。
(答)精神保健福祉法 第23条は精神障害者又はその疑いのある者のうち精神保健指定医の 診察と必要な保護を要する状態にあるものの所在を知った者が、都道府県知事(指定都市 市長)に対して適宜の措置を採るよう申請することができるとする規定であり、保護者に よる申請の有無にかかわらず、自傷他害のおそれがある場合には申請手続を行われたい。
(問105)〔保護の実施機関からの精神科病院又は指定病院等への連絡〕 医療扶助運営要領 第7の1の(2)において「精神障害のため医療扶助による入院を申請し たときは、国若しくは都道府県の設置した精神科病院又は精神保健福祉法による指定病院 (同時に法による指定医療機関であるもの)と連絡をとり」とあるが、この趣旨はどうい うことか。 (答)精神保健福祉法 第29条の規定によって都道府県知事(指定都市市長)は、精神障害 者で自傷他害のおそれのある患者について、本人及び関係者の同意がなくても入院させる ことができるとされており、この場合、必要があれば、入院に伴う費用は都道府県(指定 都市)が負担することになっている。
したがって、前記の症状に該当する場合で、精神保健福祉法による入院措置を受けると きは、医療扶助による入院を必要としないことになる。 このため、医療扶助による入院の 申請があった場合には、福祉事務所長は当該被保護者の疾病等の特性からみて、他法他施 策の活用が可能であるか否かについて速やかに判断する必要がある。
設問にあるような医療機関は、精神保健福祉法による措置入院患者を入院させており、 かつ医療扶助による入院患者をも委託している関係上、そこから得られる意見は精神保健 福祉法と生活保護法のいずれの立場からも最も適切なものであることが期待できるので、 このような病院と連絡をとることとしているのである。
この結果、仮に精神保健福祉法による入院措置を行うことが適当でない患者であること が判明した場合には、その者については同法による申請を行う必要がなく、直ちに医療扶助 による手続を進めることができるなど、適正な事務処理を図ることができる。 なお、精神保健福祉法指定の病院等と連絡をとることができない事情があるときは、都 道府県又は指定都市本庁の精神科嘱託医に連絡して、その意見を求めることは何ら差し支 えない。
(問106)〔急迫時の保護と精神保健福祉法との関係〕 保護の実施機関は精神障害者に急迫した事由がある場合に必要な保護を行って差しつ かえないと思われるが、この場合の措置において、精神保健福祉法との関係はどうか。 (答)当該精神障害者の症状が、自傷他害のおそれがあると認められる場合には、急迫時 の保護の実施と併行して、精神保健福祉法 第23条に規定する申請手続を行われたい。
(問107)〔精神科嘱託医の立入検査及び立入調査〕 精神科嘱託医を委嘱することにより、精神科領域における医療の適正化が大きく期待さ れるところであるが、嘱託医は、法 第54条にいう「当該職員」として取り扱ってよいか。 (答)精神科嘱託医は、精神疾患に対して、専門的立場から精神疾患入退院要否などにつ いて適正な判定を行うため、技術職員の技術的協力を目的として設置されたものであって、 その身分は非常勤職員であるから、設問の法 第54条にいう「当該職員」ではない。 したがって、精神科嘱託医は、法律上は立入検査を行うことはできないが、あらかじめ指 定医療機関の了解を得た上で技術職員と同行し、技術面における協力をすることとしてい る。